軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第368話 分断

アレクサンドラ率いる王国騎士軍とは離れ、俺達はミエルと共に奥側にある建物へと向かった。

右側奥の建物は一番生命反応も少なく、一際強い反応もない制圧しやすいであろう建物。

ここはラルフとヘスターに向かわせて、俺とミエルで左側奥の緑の垂れ幕がある建物の制圧へと動く。

「それじゃ俺達もここで分かれる。……絶対に死ぬなよ」

「死なねぇよ! てか、それは俺の台詞だわ! どうせそっちの建物の方が危険な奴がいるんだろ?」

「どこも同じくらい危険だ。何度も言うが、危ないと判断したらすぐに退け。ヘスターは常に冷静でいてくれよ」

「大丈夫です。本当に危ないと感じたら、ラルフを引きずってでも逃げますので」

「それなら安心だ。またすぐに再会しよう」

そんな言葉を交わしてからラルフとヘスターが右側へ向かっていくのを見送り、俺達も左側の建物へと向かった。

まずは建物の入口で身を伏せながら、中の様子を探っているのだが……。

建物の中は激しく人が動いている様子が感じられなく、俺達の襲撃に気づいているのかどうか悟ることができない。

「ねぇ、さっきラルフがこっちの建物には危険な奴がいるって言ってたけど……あの話本当なの?」

「どこの建物も危険だっての。それより黙っててくれ。中の様子を窺いたいんだよ」

「本当のことを言いなさいよ。強敵がいると分かれば、こっちだって準備のしようとかあるんだから」

「……いる。恐らく幹部クラスがいると思うぞ」

「はぁー、やっぱりそうだったのね。なんでこうも毎回貧乏くじを引かされるハメになるのかしら」

うるさいため事実を伝えると、露骨にため息をついて表情を歪ませたミエル。

確かに巻き込んだのは悪いと思うが、基本的には俺一人で戦うつもりだし危険な場面は作らないつもりでいる。

「危ないと思ったら逃げてくれて構わない。約束通り、前衛は俺が担う……というより基本は俺一人で戦うつもりだからな。離れた位置で見て、俺が不意打ちを食らいそうになった時だけ助太刀してくれ」

「危ないと思ったら逃げろって、もう既に危ないと思っているんだけど。……とりあえず戦闘では一切期待しないで。それだけは事前に言っておくわ」

「分かった」

刺のある言葉で伝えてきたミエルに適当に返事をしてから、俺は再び建物の中に集中する。

……やっぱり人が大きく動いている感じはない。

気づいていないのか、それとも気づいていないフリをしているのか。

これ以上は考えても仕方がないため、慎重に行動することを頭に入れてから建物の中へと侵入した。

真昼間のため前回侵入した時と違い、【深紅の瞳】を使わずとも視界は良好。

敵の位置が非常に把握しやすい状態な訳だが、逆を言うのであればこちらも気づかれやすい。

鉢合わせないように広範囲を見ながら進んでいるが、一階だからというのもあるのか人が一人としていない。

上の階層から小さな物音は聞こえるものの、建物の中は静まり返っており攻め込んでいるという感じが一切しないな。

バッチバチの斬り合いを想定していたのだが、思いの外気づかれていないようなため隠密行動となってしまっている。

ミエルにはくれぐれも足音を立てないように、慎重に動けとハンドサインで指示を飛ばしつつ、階段を上がって上の階層へと向かった。

二階からは生命反応が感じ取れたが、強い生命反応はまだまだ上から感じるため、無視してそのまま強い反応のする階層を目指す。

雑魚敵から倒して回るか、それともいきなり幹部を狙うのか……。

建物に入るギリギリまで悩んでいた択だったが、こちらに気づいていないのであれば強敵に不意打ちした方が効果的と判断。

気づかれないように動き、一番強い生命反応を持っている人間の下まで向かうことに決めた。

この判断が吉と出るか凶と出るかはまだ分からないが、待ち伏せされていたら完全に凶と出る――そんなことを思考しつつ、ようやく闇市場で一番強い生命反応を持つ人間がいる建物の五階層へと辿り着いた。

生命反応は感じ取れたものの、ここまで上ってくるまでの間に見た人間は一人もいない。

運が良かったとも捉えることができるが、ここまで無警戒だと逆に怪しいと感じてしまうのが俺の性分。

ラルフだったら全てをポジティブに捉え、このまま部屋に突撃しているのだろうけど、俺にはその行動を取ることができない。

不意打ちを行うためにここまで慎重に上ってきたのに、矛盾した行動を取ることになるが……。

「ミエル。あの扉に魔法を打ち込んでくれ」

「えっ? あの部屋に魔法を?」

「あの部屋の先に強い反応を感じるんだが、なんとなく嫌な予感がする」

「言っている意味が分からないけど、とにかく魔法を打ち込めばいいのね。……ったく、慎重に行動しろって命令したと思えば、急に魔法を打ち込めって何なのよ」

ブツブツと俺に対して文句を言いつつも、エミルは魔力を練り上げ始め――そして扉に向かって魔法を放った。

「【ヘイルバレッド】」

大きな氷塊がミエルの手から放たれ、物凄い衝撃音と共にそのまま扉に衝突。

扉にぶつかったものの……【ヘイルバレッド】の威力は留まることはなく、そのまま部屋の中に突っ込んでいったその瞬間――。

【ヘイルバレッド】が扉にぶつかった時の衝撃音とは比べ物にならないほどの爆発音が俺の耳に届く。

慌てて階段から一つ下の階層へと飛び降りたことでなんとか無傷で済んだのだが……俺達が先ほどいた場所は爆発によって黒焦げになっていた。

噴き出た冷や汗で背中はぐっしょりと濡れ、俺は呆けた顔をしているミエルと顔を見合わせた。