軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第35話 突然の強襲

ペイシャの森に入って五日が経過。

採取は順調そのもので、俺は大量のレイゼン草とゲンペイ茸に加え、新種の毒草らしき植物を二十種類の採取に成功。

今回も非常に順調に成果を上げられている。

この採取した新種の植物の中に、筋力を増強させる植物が含まれていることを祈りつつ、俺は植物を通気性の良い籠に入れて天日干しにした。

有毒植物が乾燥し切るまでは特にやることもないため、適当にぶらつきながら今日食べる植物を探しに行こうか。

いつもと変わらないペイシャの森。

植物採取に夢中になっていた俺だが…………それは突如としてやってきた。

――嫌な気配が全身を襲い、ガクガクと体が震えだす。

何かは分からないが、とにかく危険な何かが物凄い速度で俺に迫ってきているのが分かった。

ひとまず一度大きく深呼吸を行い、冷静になって落ち着く。

南の方角から迫ってくるのが分かったため、俺はすぐに木に登って気配をできる限り消した。

両手で口を押さえて呼吸も最小限にし、迫りくる何かを木の上から観察する。

凄まじい勢いで木々を突き抜けて飛び出てきたのは、バカでかい熊型の魔物だった。

俺が先ほどまでいた位置で立ち止まると、臭いを嗅ぎながらキョロキョロと探し回っている。

気配でもそうだが、見た瞬間に俺が倒したオークと比べ物にならない強さを誇っているのが分かった。

もしかしたら、ペイシャの森の奥地にはこの魔物がいるから、他の動物や魔物の姿がないのかもしれない。

そんな考えが頭に過るほど、強烈な圧を放っている。

“来るな。来るな。来るな”

心の中で必死に唱え続けるが、熊型の魔物は地面に残っているであろう臭いを嗅ぎながら、一歩また一歩と俺が身を隠している木へと近づいてきた。

さっきまで何もかも順調だったのになんでだ!

いきなりの強襲に、何処にもぶつけられない怒りが心の中で爆発する。

……くそっ、このままではあと数十秒で見つかってしまう。

必死に頭をフル回転させ、どう乗り切るかを思考するが――走っても追いつかれるし、隠れる場所を別の場所に移してもすぐに見つかる。

どう思考しても、ここから逃げる方法が一つも思い浮かばない。

こうなれば、こっちから攻撃を仕掛けるしか――生き残る道はない。

俺は覚悟を決めて奇襲を仕掛けることを選択した。

木から叩き落とされ、無防備となったところを襲われるよりは、極僅かながら俺から襲い掛かった方が勝機がある。

荒くなる息を無理やり整えて剣をゆっくりと引き抜き、熊型の魔物に攻撃を仕掛けるタイミングを必死に見極める。

あと二歩……あと一歩……今だッ!

木から飛び降りた俺は、迫ってきていた熊型の魔物目掛けて全力で斬りかかった。

位置は完璧、熊型の魔物は臭いを嗅いでいて下を向いているため、飛び降りた俺に気づいていない。

更に、高い位置からの重力を最大限駆使した渾身の一撃。

危機的状況だからこそ、ここ一番の集中力が発揮され、完璧な一撃を熊型の魔物に浴びせることができた。

――のだが、俺の完璧な一撃を以てしても、熊型の魔物には致命傷を負わせることはできなかった。

体長五メートル、推定体重八百キログラムの化け物魔物。

肉は裂けたが骨にすら到達せず、鮮血を噴き上げながらの強烈な拳が飛んできた。

俺はとっさに剣を体の間に挟ませてガードをしたが、剣ごしに伝わる威力によって完全に息が止まる。

くの字に体を曲げそうになりそうなところを必死に堪え、追撃を図る熊型魔物の動きをしっかりと目で追う。

脇腹に激痛が走り、息もまともにすることができていないが、心はまだ折れちゃいない。

背中から血を流しながらも、俺を食おうと噛みついてこようとしてきた熊型の魔物に、俺の方から剣を手にした右腕を大きく開けた口に目掛けて突っ込む。

先ほどの一撃で剣は既にボロボロだが、一瞬くらいならば開口機代わりにはなるはずだ。

上顎に突き刺すように剣を立て、噛みつきを一瞬だけ防いだ隙に、左手でホルダーを弄り先ほど採取したレイゼン草を取り出すと、熊型魔物の口の中へとぶち込んだ。

口は開きっぱなしのため、ぶち込んだレイゼン草は一直線に胃の中へと入っていく。

すぐに毒の効果が現れなければ、俺はここで殺されるのだが……。

熊型の魔物は突如として体を横に揺らし始めると、噛みついていた俺の腕ごと胃の中のものを吐き出すように、大暴れし始めた。

このままこの暴れ攻撃に巻き込まれて死んだらたまったものではないため、俺は息ができない体を必死に動かして距離を取る。

少し離れた位置で地面に両手を置きながら、熊型魔物の動向を目で追っていたのだが、その場で死ぬことはなく、巨体をふらふらと揺らしながら先ほどやってきた道を戻って行った。

………………………俺は生き残ることができたのか?

安堵と共に、体中に激痛が走る。

息もまだ絶え絶えだし、しばらく動くことができそうにない。

この間に何者にも襲われないことを全力で祈りつつ、俺は回復するまで必死に体を休めたのだった。