軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第347話 罪悪感

首を刎ね飛ばし、力なく死んでいる死体を見下ろす。

ラルフとヘスターの思い出の地であるはずの場所で、二人も人間を殺してしまった。

一人は自死したから不可抗力とはいえ、パブロに至っては俺が明確な殺意を持って殺しているからな。

死体の処理を行う前にラルフの後を追わなくてはいけないし、パブロの血は確実に部屋にこびりついてしまう。

不本意とはいえ先ほどラルフに怒鳴ったこともあり、何とも言い知れぬ罪悪感を抱えつつ――俺は廃屋を後にした。

外に出るとラルフとヘスターが廃屋の前で立ち止まっており、その視線の先には黒ローブの二人がこちらを見ていた。

パブロから情報を聞き出したものの、フードを深くまで被っていることから誰だかは一切分からない。

それでもラルフが言っていた通り、かなりの実力者だということだけはハッキリと分かった。

「…………クリス、あの男を殺したのか?」

「ああ。……それよりも今はあの二人の男について教えてくれ」

ラルフとの間に一瞬気まずい空気が流れたが、俺はすぐに目の前の黒ローブを纏った二人についての情報を求めた。

「教えるっつっても急に現れたから俺も何も分からん。ヘスターを呼びに行ったから碌に観察できなかったし」

「そうか。なら、あの二人組は俺がメインで相手するから二人はサポートに回ってくれ」

「分かりました。魔法でサポートさせてもらいます」

「……また一人でやる気かよ」

ラルフが俺に聞こえる声量で呟いたが、あえて返事はせずに俺は二人の下へとゆっくりと歩いて向かった。

背丈はかなりデコボコのコンビで一人は子供のようなサイズ感なのに対し、もう一人は二メートル近くある巨体。

ただ、生命反応は子供ぐらいの背丈の人間からの方が強く感じる。

「やあやあ! どうやら君が僕達の仲間を捕まえているようだね! できれば返して欲しいんだけどどうかな?」

俺はすぐに斬りかかるつもりだったのだが、明るい声色で話しかけてきたのは子供のような男。

少年のような若干甲高い声質だし、背丈から鑑みても本当に少年の可能性が高いな。

「無理な相談だな。そっちから仕掛けてきたのに、タダで返してほしいなんて都合が良すぎるだろ」

「嫌だなぁ。タダでなんて言ってないよ! 返してくれたら今回だけは見逃してあげる! 数日間だけでも生き延びれるって考えたらいい提案でしょ?」

一切悪意や他意を感じない純粋な喋り口調。

心の底から本当にそう思っているのが分かり、治まっていた怒りがまた沸々と再燃してきた。

「頭がイカれているな。こちらは吞むつもりはないとだけ伝えておく。……それと、捕まえた奴は情報を吐かせてからもう殺している」

「………………なら、残念だけど交渉決裂だね! 僕の温情を無碍にした訳だし、簡単に死ねるとは思わないでね?」

「温情を無碍っていうか、交渉に応える余地すらなかったがな。……まぁ大丈夫だ。死ぬのはそっちだから」

ローブの少年の雰囲気が一気に変わり――次の瞬間、俺の視界にはローブだけが残り少年の姿が消えた。

分身のことが頭を過るが、今回は分身ではなく超速で移動しているだけ。

すぐに大きく一歩バックステップで移動し、視野を広くして目の前から消えた少年を探すが――視界に捉えることができていない。

暗さも相まっているのもあるため、【深紅の瞳】で夜目を効かせようとも考えたのだが……。

目で探すことを止め、俺は目を瞑ってから【聴覚強化】と【音波探知】のスキルを発動。

耳を頼りに視界から消えた少年の捜索を行い、右側から微かに地面を蹴る音を捉えた。

音波からもバッチリ認識することができ、目では見えないが動きを完璧に把握できている。

あとは俺の下まで近づくのを待ってから、突っ込んできた少年の動きに合わせてヴァンデッタテインを振り下ろした。

「――ッあエ!? 僕のこと、視えてるのかよ!」

どうやら少年は叫びながら空中で体勢を変えたようで、直撃は防がれてしまったようだが軽く傷を負わすことはできた。

ただ本当に軽い傷で、ダメージは一切入っていないと言っても過言ではないほど。

もう情報はパブロから聞き出したため、殺すつもりでヴァンデッタテインを抜いたのだが……動きの速い相手の戦闘では大剣は使い勝手が悪い。

逆にただの鉄の剣の方を振っていれば、深い傷を負わせることができていた場面だったな。

「ダイン。目が良い相手のようだ。私が相手するから下がっていろ」

「えぇ……ウッドが戦うの? あれだけ啖呵切ったのにカッコつかないじゃん!」

「相手が悪いから諦めるんだ。トドメはダインに刺させてやるから我慢してくれ」

「ちぇっ、分かったよ。絶対に殺しちゃ駄目だからね!」

ダインと呼ばれた少年は後ろへと下がり、今度はウッドと呼ばれた大男の方が出てくる様子。

ヘスターの魔法もあるし二人一辺にかかってきても問題ないのだが、律儀に一人一人かかってくるようだ。

俺は背後に控えているヘスターに手出し無用と伝え、相手の戦いに乗ることに決めた。

わざわざ相手の土俵に合わせる必要はないのだが、絶対に俺に勝てると思っているウッドの実力が知りたくなった。

パブロが挙げていた幹部の名前にウッドの名はなかったし、ただの構成員である可能性の方が高い。

そんな人間に負けるようでは、ミルウォークやクラウスには絶対に勝てないからな。

向こうから一人で仕掛けて来てくれるというのならば、そんな絶好の腕試し機会を俺は逃すつもりはない。