軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第342話 手作りポーション

「なら、そのポーションを買おうか。俺は正直買いたくはないけど、ヘスターの我儘なんて今までなかったしな」

「クリスさん、ありがとうございます! ということで、リスト草のポーションを売ってもらってもいいですか? シャノンさん」

「私からしたらありがたい限りだけど……本当に買うのかい? 何度も言ったけど値段も安くはないし、このポーションだけは大幅値引きとかできないからね?」

「全然大丈夫です。定価で買わせて頂きます!」

「そこまで言うなら売らせてもらおうかな。定価は金貨一枚。一割引きならできるからね!」

金貨一枚と聞いて、思わず声が出そうになった。

高価高価と言っていたため、てっきり白金貨一枚くらいはするのかと思っていたが……まさかの金貨一枚。

俺の金銭感覚がおかしいだけで、確かに裏通りで売られているポーションなら高価と言える。

ただまぁ、金貨一枚なら何の相談もなしに買ってくれてもよかったな。

……俺は能力判別だけで金貨一枚を平気で支払っている訳だし。

「金貨一枚で買わせて頂きます! クリスさん、いいですよね?」

「もちろんいいぞ」

「……あのヘスターがポンッと金貨一枚支払えるようになるとはねぇ。なんだか嬉しいような悲しいような感じがするよ」

少し涙ぐんでいるシャノンからリスト草のポーションと、ヘスターおすすめの激安ポーションをいくつか購入し、ポーション屋での買い物を終えた。

ラルフおすすめのパン屋もそうだったが、裏通りのテントの店巡りも悪くないな。

入ってみないと分からないドキドキ感に、商品の質も悪くない店が多い。

まぁ質に関しては、ヘスターとラルフおすすめの店だからなのもあるけども。

「ヘスター、たくさん買ってくれてありがとね。クリスも無理やり買わせて悪かったよ。……それと、ヘスターを不幸せにしたら許さないから覚えておいて。――そこでボケッとしてるラルフも!」

「ふへ!? なんで俺なんだよ! ヘスターなら勝手に幸せになるだろ!」

ポーション選びに飽きていたのか、ぼけーっとしていたラルフは急に名前を呼ばれて体を跳ねらせながら反論している。

「うるさいね! あんたらが連れ出したんだから、最低限の責任を取るんだよ!」「シャノンさん、大丈夫ですよ。私は既に幸せですので! 気にかけてくれてありがとうございます」

「……良い笑顔を見せるようになったね。裏通りは汚いところだけど、また顔を見せに来てね」

「はい。また顔を見せに来ます!」

ヘスターはシャノンに深々と頭を下げ、俺達はシャノンのポーション屋を後にした。

俺でいう『七福屋』の爺さんが、ヘスターにとってはシャノンなのだろう――なんとなくではあるが、最後の会話で俺はそう感じた。

「良い店だったな。店主のシャノンも感じが良かった」

「シャノンさんは、私をずっと気にかけてくれていた人なんです。ラルフを手当てした時に色々と融通を利かせてくれたのもシャノンさんだったんですよ」

「親父に高所から投げ飛ばされたんだったんだよな。孤児院を出たばかりヘスターがどうやってラルフを手当てしたのか、今考えれば確かに不思議だったがシャノンからポーションとかを貰っていたのか」

「そうなんです。ラルフにとっても命の恩人なんですが、どうにも態度が悪いんですよ!」

「だって、俺にはいっつも厳しかったんだぜ? ヘスターはめちゃくちゃ甘やかす癖によ!」

「それはラルフの態度が悪いからですよ。……と、その話は置いておいて、リスト草のポーションを買うのを了承してくれてありがとうございました。少しはシャノンさんにお礼ができたと思います」

やはりというか、ヘスターなりのお礼のつもりで買ったんだな。

なら事前に話しておいてほしかったが、俺に事前に話して購入するのは何か違うというのは俺にも分かる。

「別に構わない。金貨一枚なんて、俺は二人に断りもなく使ってるからな」

「能力判別だろ!? あれもったいないと思うんだよなぁ……。確かに自分の能力が数値化されるのは面白くはあるけどよ、金貨一枚は高すぎるって!」

「二人は頑なに能力判別を受けないもんな。俺としてはクラウスとの決戦前に見ておきたいところなんだが」

「いやいや! 能力を見たところで実際にはどうにもならないからな! 強くなってたらそりゃ自信はつくかもしれねぇけどよ、なってなかったら逆に落ち込む!」

こんな感じで頑なに断ってくるんだよな。

参考程度に能力を見たいところだが、金貨一枚かかるわけだし無理に能力判別させてもと思ってしまう。

「そこまで嫌って言うなら無理にとは言わない。それよりも次の店に移ろうぜ。どっちが案内してくれるんだ?」

「次はラルフの紹介するお店です。交代交代で紹介していこうって決めていますので」

「そういうこと! 次の店も面白い店だから期待してくれていいぜ!」

「……まぁラルフだし、そこまで期待してないから気楽でいいぞ」

「俺は期待しろって言ってんだよ! 絶対ギャフンと言わせてやる!」

こうして、俺達は次なる店へと向かった。

裏通りは店自体の面白さだけでなく、俺の知らない二人の一面も見れて本当に楽しい。

俺の生まれ育ったデジールの街での思い出はほとんどないため、少し羨ましい気持ちもありつつ……俺は裏通りの店巡りを楽しんだのだった。