軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第340話 裏通り巡り

ラルフ達が王都から戻ってきた翌日。

今日は約束通り、裏通りの散策を行う予定となっている。

ちなみに昨日の見回りでも目立った人物はおらず、至って平和な街そのものだった。

黒ローブの男を殺している――正確に言うと俺が殺した訳ではないんだが、死んでいる訳だし必ず『アンダーアイ』の連中はレアルザッドに現れる。

警戒だけは常にしておきながら、今日のところは裏通りの散策を楽しむとしようか。

今回のルートについてはラルフとヘスターに全て任せている。

個人的に行きたい店もあるようだし、知り尽くした二人だからこそ良い店を紹介してくれるだろう。

「クリス、早く行こうぜ! 俺もヘスターも準備できてるぞ!」

「早すぎるだろ。まだ早朝だぞ」

「昨日ずっと留守番させられたからな! 昨日の内から準備してたし、早朝から開いてる店もあるんだよ!」

「分かったよ。準備するから待ってろ」

急かしてくるラルフにそう伝え、俺もすぐに準備を整える。

裏通りは基本的に店が開くのは遅いイメージがあるが、本当に早朝から開いている店なんてあるんだろうか。

まぁわざわざ嘘を吐くわけないし、本当なんだろうけど。

あくびを噛み殺しつつ準備を整えた俺は、ラルフに連れられるがまま裏通りへと足を運んだ。

「早朝の裏通りは正直見てられないな。色々と汚すぎる」

「確かに、朝に見たくない景色ナンバーワンかもしれませんね」

「おい、裏通りを悪く言うなよ! ……でも、確かに見てられないな」

酔っ払いの残骸を見て、流石のラルフも擁護できない様子。

ゴミもあちこちに散らかっているし、少し暗くなってからじゃないと見てられない景色の中を進み、ラルフはとあるテントの前で立ち止まった。

「ここが一番最初の店か?」

「そうだ! マキシムって名前の婆さんの店で、早朝しか開いてない店なんだよ!」

「早朝だけしかやってない店なんてあるのか。やる気があるのかないのか、よく分からない店だな」

「私もかなり久々に来ます。昔はお世話になっていたんですけどね」

どんな店なのか期待しつつ、シートを潜って中に入ると……テントの中は強烈に良い匂いで充満していた。

この香ばしい匂いは――パンの香りだ。

「いらっしゃい。……って、ラルフかい?」

「マキシム婆さん、久しぶり!」

「おんや、珍しいお客さんだね! てっきりくたばっちまったのかと思ってたよ! 何より元気そうで良かった」

「マキシム婆さんの方こそ元気そうで良かった! ほら、こっちはヘスターだぜ? 覚えてないか?」

「……ああ! たまーにラルフの横にいた、もじもじしていた女の子かい! 随分と変わっていたから気づかなかったよ」

ヘスターのことも思い出したのか、大きな声を上げてから手をポンッと叩いた。

そういえば、俺と出会ったばかりの頃もあまり喋らなかったよな。

今はしっかりしているイメージしかないが、ヘスターは大人しかったのを思い出した。

盗みを働いた罪悪感からかと思っていたが、元々の性格が内向的だったのか。

「思い出してくれて良かったぜ! それでこっちが、今一緒に旅をしている仲間のクリスだ!」

「どうも。俺がクリスという者だ」

「あれ、若いのにしっかりしてそうだねぇ」

「今はこの三人ともう一匹で色々と旅をしているんだよ! だから最近は来れてなかったって訳!」

「そうかい、そうかい。とにかくラルフの元気な姿が見れて一安心だよ。なんだかんだ言って、常連客ではあったからね。……パンの耳しか買っていかなかったけども」

「あの時は本当に助かった! お礼と言ったらおかしいが、今日はしっかりと買わせてもらうぜ! まだ残っているんだよな?」

「ラルフがパンの耳以外をねぇ……。もちろん残っているよ。好きなのを買っていっとくれ」

テントの中にある食品棚には様々なパンが置かれており、どれも美味しそうな匂いを発している。

お世辞にも見た目が整っているとはいえない、手作り感満載のパンばかりなのだがそこが逆に惹かれるな。

「朝食はここのパンって決めてたんだぜ! クリスも好きなのを選んでくれ!」

「どれも美味しそうですね。私もここのお店のパンはパンの耳しか食べたことなかったので、非常に楽しみです」

楽しそうにパンを選んでいる二人の横で、俺も目についたパンを手に取り購入した。

ラルフとヘスターが食べていたという、激安のパンの耳も少しだけ購入し……ラルフおすすめのマキシム婆さんのパン屋での買い物を終えた。

店を後にした後は、適当なところに座りながらパンを食べることになり、俺達は匂い見た目に負けず劣らずの美味しいパンを朝食として食べたのだった。

ちなみに二人の思い出の品ということで買ったパンの耳は、味もほとんどせず硬かったせいであまり美味しくなかったのだが……。

俺の余らせたパンの耳を食べた二人の顔が、どのパンを食べた時よりも満足そうな表情していたのが非常に印象的だった。