作品タイトル不明
第293話 中継地点
単純な視界の悪さもあるが、瘴気が常にこもっているため魔物の数が尋常ではないことになっている。
その上、瘴気の発生源となっているバハムートの洞窟に近づくにつれ、魔物の強さも増してくるときたものだ。
前に出されていたバハムートの洞窟の発見依頼がヒヒイロカネランクなのも納得だし、ロザの大森林東エリアに匹敵する危険度と言われているのも納得できる。
ただ俺から言わせてもらえば、足場がしっかりしているだけで十分だし、魔物が強くて多いというシンプルなのは非常に分かりやすい。
その分自力の高さが求められるが、俺達はその求められている強さを持っているという自負がある。
「ここからはどう動く? さっきと変わらずでいいのか?」
「バハムートの洞窟に入るまではこの陣形で進むつもりだ。瘴気次第では変えるかもしれないけどな」
「私も賛成です。ひとまず次の中継地点を目指して進みましょう。途中で瘴気が濃くなったら対処が難しくなりますからね」
陣形は変わらず、ラルフを先頭に俺とスノーで三角形のような陣形を取る。
その真ん中にヘスターが陣取り、戦闘を歩くラルフに進む方向の指示を出してもらう。
俺とスノーが気をつけるべきは、横と背後からの魔物の存在。
正面から現れる魔物に関しては、余程のことがない限りはラルフ一人で対処可能なため、不意を突かれないことだけに注力して進んで行く。
ただ、不意を突かれないように――とは言ったものの、瘴気の中に入ってからは本当に魔物の数が多い。
一番多いのはオーガ系統で、次に多いのが猪のような見た目をしたブル系統の魔物。
その他にも、散々戦ったオーク系統やゴブリン系統。
厄介なアンデッドの魔物までも姿を表し始め、俺が戦うのを一番苦手とする虫の魔物まで現れ始めた。
「ラルフ、正面の魔物を抑えておいてくれ。倒そうと考えなくていいからな」
「分かってるって! 時間稼ぎしときゃいいんだろ?」
「そうだ。ヘスターは小さな魔物を狙って攻撃してくれ。俺とスノーで囲いに来ている魔物を一気に倒していく」
「分かりました。任せてください」
正面の魔物全般をラルフに、すばしっこく飛行する虫の魔物はヘスターに任せて、俺とスノーでぞろぞろと集まってきている魔物の処理を行う。
求められるのは速度だが、極力最低限の力で倒していくことを心掛ける。
発動させるスキルは【肉体向上】と【戦いの舞】のみ。
後はタイミングを見計らい、適材適所で【粘糸操作】と【硬質化】の合わせ技で仕留めていく。
背後から迫り来る魔物から、徐々に前方に向かって魔物を屠っていき、最後はラルフが抑えている魔物を斬り飛ばしていく。
俺の敵は攻撃してくる魔物ではなくて、反対側から俺と同じように魔物を屠っているスノー。
速度で後れを取らないよう、最低限の動きで魔物を倒していき――スノーとほぼ同じタイミングでラルフの下へと到着。
勢いそのままに正面の風穴を開け、一気に駆け抜けていく。
「流石はクリスとスノー! 楽々突破したな!」
「油断はしないでください。魔物は次々に湧いていますからね」
「こりゃ本当に酷いな。常人が迷い込んだら即死だぞ」
「常人はこんなとこまで来ないだろ! ……でも、この瘴気がエデストルまで覆われたらかなり危ないよな?」
「正面でまた魔物が湧いてきてます。雑談はそこまでにして備えてください」
「休む暇もなしってことか。スノー、一気に倒しに行くぞ」
「アウッ!」
魔物の群れを抜けた思ったら、また新たな魔物の群れが目の前で生成され始めた。
一息吐くことも許さない状況だが、今はヘスターを信じて魔物を倒すことだけを考える。
スノーに合図を送りながら、今度はラルフも戦闘に参加させて正面に湧いた魔物の討伐へと向かった。
湧き続ける魔物と戦うこと約一時間。
瘴気が立ち込めている山の中腹に足を踏み入れてから、ほとんど休むことなく魔物と戦闘をし続けている。
そろそろオーガ共の顔が煩わしく感じ始めてきたところで、ようやく道案内を行っているヘスターから歓喜交じりの声が聞こえた。
「ラルフ! そこを道なりではなく左に入ってください」
「この獣道みたいなところか? ここに入って魔物に囲まれたら流石に危険だぞ!」
「確かに見るからに獣道だが、この先に例の中継地点があるんだよな?」
「そうです。私が調べた正確な情報ですので信じてください」
「分かったよ! まずは俺が入るから後ろのケアは任せたぞ!」
人一人分の狭い道をラルフが進みづらそうに入っていき、その後をヘスター、スノー、最後に俺が入って行く。
ここでもし背後、草木を掻き分けて横から一気に魔物に襲われたら対処が遅れるのだが……獣道に入った俺達は襲われることはなく、そのまま何やら広い場所へと抜け出た。
「なんだここ。魔物がいない……?」
「瘴気もこの一区域だけ立ち籠っていないな」
「本当に魔物が少ない場所があるのかどうか少しだけ不安でしたけど……情報通り、実在したみたいで良かったです」
なだらかな大きな穴のような感じの少しだけ開けた場所。
さっきまでの魔物の大群が嘘のように、この凹んだ区域だけ静かで魔物気配が一切ない。
ここがヘスターの言っていた中継地点で、バルバッド山の数少ない安全な場所。
……疑っていた訳ではないが、ヘスターの案内は完璧だったって訳だな。