軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第255話 ポテンシャル

ヘスターを中心に氷魔法で足場を作って進んで行くこと約三十分。

水位が高くなり、一人の力ではどうにもならない水の深さとなり始めた。

「ここから先は流石に一人の力では厳しいかもしれません。クリスさん、どうしますか?」

「全員で力を合わせた方がいいのか? それとも一人人数を増やし、一人は休ませる形で進んで行くか?」

ヘスターは俺に尋ねてきたのだが、どのようにやったらいいのかが正直検討もつかない。

魔法に精通している三人の方が圧倒的に詳しいだろうし、俺の判断よりかは三人がやりやすい方を選んだ方がいいと判断した。

「ヘスターが予想以上に魔法が使えるし、フェシリアさんは想定以上の戦力。二人で足場を固めて、一人は休憩に回るほうがいいんじゃないかしら?」

「私もおおむね賛成です。ただ私は一人でも大丈夫ですので、ミエルさんとヘスターさんの二人と私一人の交代交代で行きましょう」

ミエルの提案が妥当だと傍目に聞いてて感じたのだが、フェシリアは予想の斜め上の提案を出してきた。

確かにフェシリアの魔法は、素人目に見てもヘスター、ミエルよりも練度も威力も高いため、一人でも足場を固められる魔法を使えるのだろうが……。

一人に負担をかけるのはどうかとも思ってしまう。

魔法がいくら凄かろうと魔力は有限。

ヘスターとミエルも返答に困った様子を見せているし、俺が間に入って提案を却下しようとした瞬間。

ずっと静観して三人の姿を見ていたスノーが大きく一つ吠えた。

「スノー、どうしたの?」

「アウッ! アウッ!」

ヘスターの裾を引っ張り先頭に立たせると、隣に立ったスノーが威嚇をするような前傾姿勢を取った。

すると、三人が魔法で行っていたように前方の泥水が凍り付き始め、しっかりとした足場となった。

「スノー、凄いです! 氷属性攻撃だけでなく、広範囲の氷属性スキルを操れるんですね!」

「……これは驚いたわ。狩りに索敵に可愛さだけじゃなくて、氷属性も扱えるの? この子、めちゃくちゃ優秀じゃない!」

「私も驚きました。氷の足場の質に関しても私達と遜色ないですし、スノーさんはこんな芸当もできたのですね」

女三人に囲まれ、褒められながら撫で回されているスノー。

スノーに関しては、一応氷の足場作りの戦力としても数えていたが……。

軽いサポートをしてくれればいいな――ぐらいに思っていたのだけど、まさか自力でここまでできるとは思っていなかった。

「スノー! 本当にお前って奴はすげぇな!」

「ポテンシャルの高さにはずっと驚かされる。……ただ、これで足場を作れるのが三人と一匹になったということだ。ヘスター、ミエル。フェシリア、スノーの順番で上手く回せるんじゃないか?」

「ですね! 水位が上がっても、速度を落とすことなく探索できますよ!」

スノーの嬉しい予想外の活躍によりモチベーションも上がった様子の三人は、上手く交代を繰り返しつつ素早く足場を作っていってくれた。

進むにつれて水位が上がり、前回は腰の位置ほどまで水で浸かっていた場所もこうして楽々と歩いて進むことができている。

「今のところ順調そのものですけど……私達囲まれてませんか?」

「さっきからずっと狙われているわよね! ガシガシと足場の氷に体当たりしている水棲魔物もいるし!」

「一度、電撃魔法で水中にいる魔物を一掃しましょうか? 私の魔法であれば――遠くからついてきている足長鳥も感電死させられますよ?」

前回同様に肉食の水棲魔物に加えて、足長鳥も俺達を狙うように後をついてきている。

三人は心配気にそんな会話をしているが、たまーに水中から水棲魔物が打ちあがってくるだけで実害自体はほとんどない。

わざわざ魔法を使ってまで殲滅する必要はないと俺は思ってしまうが、足場を作っている側からすれば鬱陶しいのだろう。

「できれば、まだ温存してくれると助かる。襲われたとしても俺とラルフで対応できるし、この先どんな魔物がいるか分からないからな。奥の手は出来る限り隠しておきたい」

「そういうことでしたら、襲われた時はそちらで対応よろしくお願いします」

フェシリアの少し棘のある言い方が気になるが……納得してくれたみたいで良かった。

前回俺は、大きな水棲魔物の死骸を見ている。

あの魔物がここら一帯に生息していることを考えると、安易に魔力は使ってほしくないからな。

それから俺とラルフで打ちあがってきた魔物は即座に殺し、並行してついてくる足長鳥には時折氷の礫を投げて威嚇した。

殺すまでは至らなかったが十分な効果を発揮することができ、一度も襲われることなく水位が更に高くなったことで、足長鳥は俺達の追跡を諦めた様子。

「あの鳥、ついてこなくなりましたね。と言いますか……かなり水位が上がっていませんか? 森というよりも川の中にいるみたいです」

「確かにそうね。私としては虫のいる陸地よりも川の方がマシだけど」

「そうは言ってられないんじゃねぇか? 水をよく見てみろよ! かなり大きな魔物がいるぞ!」

ラルフが指さした先を見てみると、二メートル近い魚のような魔物が俺達の周りを泳いでいた。

魚のような魔物ならばまだ大丈夫だが、ヘンジャクが危険な魔物の一匹として話していたフォレストリザード。

水陸両用の魔物で力が強い上に攻撃性も高く、強い毒も持っているという魔物。

この氷の足場も上ってこられるだろうし、十二分に気を付けなければいけない。

「俺もこの先は未知の領域だ。くれぐれも細かな変化にも気を付けて注意してくれ」

「分かってる! 何か変化あったらすぐに――って、ちょっとクリス! あれ、見てみろ!」

俺が注意した矢先、ラルフは口をパクパクとさせながら先ほどと同じように水中を指さした。

また大きな魚の魔物でも現れたのかと思ったが……どうやら早速危険な魔物のお出ましのようだ。

水面から顔を出し、俺達に近づいてきていたのはフォレストリザードの特徴と似た魔物。

体の五分の一は口となっている見るからに凶暴な魔物で、鋭い爪と牙に長い尻尾。

それから、黒と黄色の特徴的な硬い革に覆われている大きな体。

フォレストリザードにも匹敵すると言われている、東エリアで危険な魔物の一匹――サンダーアリゲーターだ。