軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 ヘドロスライム

さて、ここからどうするかなのだが……。

とりあえず過剰な準備はせずに、ゴブリン狩りに行っていた時と同じ装備で向かおうと思う。

丁寧にやるのであればヘドロスライムの情報を集め、対策と準備を行うのが正解なのだろうが、そこまでやるのであれば指定なしの依頼を受けた方がいい。

舐めてかかる訳ではないが、今回はやり方を変えずに討伐に向かう。

ミツリア川の位置だけ正確に確認してから、俺はレアルザッドを後にした。

レアルザッドを出て、南にしばらく歩くと大きめの川が見えてくる。

これがミツリア川で、川沿いに沿って下っていけばヘドロスライムと遭遇できるだろう。

比較的大きな川だからヘドロスライムは一匹だけじゃないだろうし、ヘドロスライム以外の魔物も潜んでいるはずだ。

警戒しながら土手を歩いていると、水際に大量の虫型魔物が蠢いているのが見えた。

何かの死骸に群がっているようで、食い荒らしているのが分かる。

恐らくあの虫型魔物の依頼も出ているのだろうが、俺では狩ることが出来ないタイプの魔物だな。

対人相手には自信があるが、ああいった小型の魔物にはどう対処していいか分からない。

鈍器で叩き潰すか、スキルや魔法を使えば簡単に狩れるのだろうが、あの数を剣で一匹一匹倒すのは無謀。

ブロンズのクエストをこなしていくのであれば、クエスト内容を精査して得意分野で勝負出来るクエストを選んでいかなければならない。

大量の虫型魔物を横目に、俺は改めて知識の有用さを考えさせられた。

それから土手を二十分ほど歩いていると、本川から分かれている支川の先に、濁った黒い水の塊のようなものが動いているのが見えた。

形状は定まっておらず、パッと見では生物とは思えないのだが、あれがヘドロスライムだろう。

スライムは核の周りにドロドロとした液体を纏っている魔物で、通常のスライムはその纏っている液体を飛ばして攻撃を仕掛けてくる。

ヘドロスライムは見た感じでは、核を纏う液体がヘドロになっているようだ。

このミツリア川自体も生活排水が流れているため汚いのだが、あのヘドロスライムはこの川の汚い部分を濃縮させた存在。

まだ距離は大分離れているのだが、吐き気を催すような酷い臭いがここまで漂ってきている。

バブルウィスプは物体のないアンデッド系の魔物だと想像していたため、消去法でこのヘドロスライムを選んだのだが……こりゃ失敗だったかもしれないな。

上手く倒せたとしても、あのヘドロを完璧に躱すことは不可能だし、臭いがついたままレアルザッドに戻らなければいけない可能性が出てきた。

武器や防具に至っても、下手すれば臭いが付着し廃棄しなければいけない可能性もあるし、このまま引き返したい欲に駆られる。

ただ依頼失敗のデメリットは大きいし、手持ちの金を考えると帰ることは出来ない。

「…………ふぅー」

深いため息と共に覚悟を決め、俺はヘドロスライムの下に向かって歩き出す。

自在に動く球状の魔物。

どっちが前か後ろかも分からない相手に不意打ちなんて出来ないため、堂々と正面を切って向かう。

近づくにつれて酷くなる臭いに顔を歪ませながらも、集中だけは途切れさせることなく、剣を引き抜き構える。

ヘドロスライムも近づく俺に気が付いたのか、川から這い上がり地を這うように俺の下へとゆっくり近づいてきた。

全長は俺と同じくらいで、近くで見るとデカく見えるな。

核が纏っている液体は黒紫色に変色しているが、核は真っ黒のため視認することができる。

核は進む際にその方向に移動し、核を追うようにヘドロがついてくるような感じだ。

静止している時は核が中心に位置してしまうため、前方に移動するタイミングに合わせ突きを放つのがベスト。

もし核を視認することができなければ、ヘドロにまみれることは覚悟していたが、見えるのならば突きで一撃で仕留めてやる。

そう意気込み、俺は突きを行うタイミングを推し量る。

三……二……一。

ヘドロスライムが間合いに入り、核が前へ動いたタイミングに合わせ、俺は一気に突きを放った。

ブレも一切なく、完璧な一撃。放った瞬間はそう確信していたのだが……。

ヘドロの中に何か物体が混ざっていたのか、剣先が微妙にズレて核を捉えきることが出来なかった。

核に触れた感触はあるが、壊し切れていない。

即座に剣をヘドロから引き抜き、逃げの一手に移る。

ヘドロスライムも逃げようとする俺に対し、体を震わせるようにヘドロを飛ばしてきたが、俺は死に物狂いでそのヘドロを回避。

先ほどと同じように、タイミングを推し量って突きを放つのは不可能と判断した俺は、腕を引き絞って強引に突きを放ちにかかる。

核は球状のヘドロの中心にあるが、腕をヘドロに突っ込む勢いで核目掛けて突きを放つ。

無理な体勢に加え、ヘドロに威力を吸収されたため、一撃目よりも手ごたえはなかったのだが……。

一撃目で核は半壊していたのか、剣が核に触れた瞬間に砕けた感触があった。

俺はすぐにその場から離れ、ヘドロスライムの様子を窺う。

核が壊れたせいで形を保てなくなったのか、球状の形を成していたヘドロスライムは溶けるかのように、ただのヘドロとなってしまった。

討伐したという証のため、ただのヘドロとなったヘドロスライムの残骸から核の破片だけ取り出し、俺はすぐに川で腕と剣を洗いに向かう。

袖の部分はヘドロが染み込んでしまっているため、破って捨ててから入念に洗い落としていた。

ある程度手が綺麗になったところで、続いて剣も洗っていく。

柄の部分までどっぷりとヘドロがかかっているため、こちらも入念に洗ってから刃物油を差して応急処置は完了。

安い剣だが値段を考えるとまだ捨てられないため、武器屋で手入れをしてもらった方がいいだろう。

大して戦闘は行っていないが、ドッと疲労が押し寄せてくる。

……これで報酬が銀貨四枚は割りに合わないな。

剣の手入れで銅貨五枚は飛び、破いたインナーを新調するためにもう銅貨五枚が飛ぶ。

実質報酬が銀貨三枚で、ヘドロの臭いが体に染みつくんだもんな。

まだ午前中と時間だけは短く済んでいるが、もう二度とヘドロスライムの依頼は受けないと俺は心に決めた。

気落ちしかけている自分を奮い立たせてから、俺はレアルザッドへと帰還したのだった。