軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第220話 アンダーアイ

「ちょっと待って! 昨日伝え忘れていたんだけど、協力者の一人について教えておきたいことがあるの」

「協力者の一人について教えておきたいこと? 昨日話した内容とは別のものか?」

「昨日の情報の補足って感じね。クラウスのパーティメンバーの異質者については覚えてる?」

「『アンダーアイ』のミルウォークって奴だろ? それがどうしたんだ?」

これはノーファストの情報屋からも聞いた情報。

クラウスがチンピラ集団のリーダーを、パーティメンバーとして引き入れたという話。

昨日ミエルからも軽く聞いたが、ミルウォークって奴についての追加情報はなかったはずだ。

「そう! ミルウォークっていうよりも『アンダーアイ』についてなんだけど……」

「何が言いたいのか分からん。時間はやるから説明してくれ」

「分かったわ。まず『アンダーアイ』というのは王都のチンピラ集団。目的が決まっている訳じゃないただの半グレの集まり。あんたが殺したっていうカルロがリーダーを務めていた『ザマギニクス』は、悪いことを高額の金銭で請け負う犯罪者集団なの」

「知ってる。別に今更その話は――」

「順を追って説明しているんだから、ちょっと黙って聞きなさいよ。……それで、昨日はそのカルロを殺したって聞いた驚きで整理できていなかったんだけど、カルロが死んだとなると高確率で『アンダーアイ』が動くかもしれないわ」

話している内容の意味が分からない。

なぜカルロを殺して『アンダーアイ』が動くんだ?

頭をやられた『ザマギニクス』が動くなら理解できるのだが……。

何度かミエルの話を頭の中で反芻したが理解できないため、これはミエルの説明が悪いとしか思えないな。

「意味が分からない。順を追って話したなら、もう少し詳しく話せよ」

「だ、か、ら。『アンダーアイ』が本格的に動き出すってことよ。もし『アンダーアイ』がエデストルに来たら、本格的に逃げ出した方がいいわ」

「リーダーをやられた『ザマギニクス』ではなく、『アンダーアイ』が本格的に動くのか?」

「ええ。昨日話した通り、どちらの組織もクラウスの協力者なの。そこでクラウスはあんたの首を『ザマギニクス』の方に依頼した。理由としては恐らく、『アンダーアイ』のリーダーをパーティに迎え入れたから。そしてその依頼を『ザマギニクス』、それもリーダーが失敗したのよ。となれば『ザマギニクス』の信頼は落ちただろうし、必然的にもう一方である『アンダーアイ』に依頼すると考えるのが妥当でしょ?」

「……なるほどな。だから『アンダーアイ』が本格的に動くって訳か。でも、『ザマギニクス』より『アンダーアイ』の方が組織としては格下なんだろ? 別に過剰に恐れる必要はないだろ」

情報屋の情報も合わせて考えても、『アンダーアイ』よりも『ザマギニクス』の方が危険な組織なはずだ。

『アンダーアイ』のリーダーがクラウスのパーティに引き入れられたって部分だけは引っかかるが、俺の認識は間違っていないと思う。

「組織としては……ね。個人の能力で見たならば、『アンダーアイ』の方が圧倒的に上よ。とはいっても末端のチンピラはゴミ以下だけど、『アンダーアイ』を作った五人は実力が図抜けているのよ。元々存在した『ザマギニクス』には入らず組織を作り、クラウスがわざわざ裏から引き入れたくらいだから少しは想像がつくでしょ」

「そこまで強いのか? チンピラなんて冒険者以下の実力しかないと勝手に思ってた」

「基本はその認識で大丈夫よ。『ザマギニクス』はカルロが頭抜けていて、その下の幹部が冒険者でいうゴールドくらいの実力。『アンダーアイ』は創設者五人がカルロ並みの力を持っていると聞いたわ。その中でもリーダーのミルウォークは【剣神】を凌ぐとも言われていたみたい」

『アンダーアイ』には、五人もカルロ級の実力者がいるのか。

リーダーのミルウォークは更に上のようだし、クラウスをも凌ぐ実力を持っているとも言われているレベル。

ミエルがわざわざ忠告してくれた理由は、今完全に理解した。

「クラウスを凌ぐ力を持っている――か。完全に化け物だな」

「そう噂になっていただけであって、傘下に下っている訳だしクラウスの方が上なんじゃない? 圧倒的な実力を持ちながらも、型にハマりたくないからチンピラ集団を形成したのに、あんたの弟はその集団の手綱を握っている訳だからね」

……正直、俺の思い描いているクラウスとイメージが違いすぎるな。

急に手に入った力で好き勝手暴れ回るだけだと思っていたけど、俺と同じかそれ以上にクラウスは地を固めている。

クラウスへの警戒を更に強め、全力で対応しなければあっさりとやられてしまう可能性がある。

圧倒的格下である【農民】の俺相手に、ここまでやってくるんだからな。

「とりあえず忠告感謝する。全て理解できた」

「それなら良かったわ。私からの追加の報告は以上よ」

「くれぐれも警戒だけはする。ミエルもまた何か追加の情報を手に入れたら教えてくれ」

今度こそ、俺達は裏路地を後にした。

クラウス、クラウスのパーティメンバーだけでなく、『ザマギニクス』や『アンダーアイ』の動向にも気をつけなければいけない。

特に『アンダーアイ』については、こちらでもしっかりと情報を集めておいた方がいいかもしれないな。