軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第149話 シャンテルへのお願い

褒めたことで顔を真っ赤にさせているシャンテル。

落ち着くまで待った方がいいんだろうが……俺はすぐに本題を告げることにした。

「今日来た理由なんだが……俺達、オックスターを離れることにした」

「…………………は?」

真っ赤になっていた顔が一瞬にして通常色へと戻り、しばらく間を置いたあとに一言そう言葉を漏らした。

いつもテンションの高いシャンテルから発せられたとは思えない、気が抜けつつも怒気が籠められたような返事。

恐らく色々と勘違いしているだろうし、俺は続けて言葉を発する。

「離れると言っても、カーライルの森で暮らすってだけだから、今すぐに遠くへ行くわけじゃない」

「……っほ。それなら良かったです! てっきり遠くの街に行っちゃうのかと思って安心しました――とはならないですよっ!? 急に森で暮らすなんてどうしたんですか!? クリスさん頭でも打ったんですか!?」

「詳しいことは言えないが、追手に追われているんだよ。それで身を隠す。そこでシャンテルに一つ頼みがあって、週に一度オックスターの森の入口まで来てほしいんだ」

「もう頭がぐっちゃぐちゃですよ! ……私が森の入口に?」

「これまで通りポーションの生成と、日用品の買い出しを頼みたい。追手がオックスターまで来ることが予測されるから、シャンテルが運んでくれないかの相談のために今日は来た。……もちろん報酬は弾ませてもらう。頼まれてくれないか?」

まだ何の整理もできていなそうな顔をしているシャンテルに、俺はそう頼み込んだ。

上を見ながら色々と考えていたようだが、結局考えがまとまらなかったのか……。

「なんかよく分からないけど、引き受けてあげます!! クリスさんにはいつもお世話になっていますからね!」

「シャンテル、本当にありがとう。それじゃ週に一度、ジンピーのポーションと日用品を持って森に来てくれ。俺はその際にジンピーと金を渡すから――よろしく頼む」

「はい! ドーンと私に任せてください!」

それから、くれぐれも俺のことは外で話さないように注意をし、貰ったポーションのお礼を伝えてから、俺は【旅猫屋】を後にした。

面倒くさい性格だし、最初は仲良くなるかどうかも躊躇ったのだが……シャンテルと親しくなって良かった。

この性格だからこそ、俺は気兼ねなくお願いできたわけだし、その俺のお願いを嫌な顔一つせずに引き受けてくれた。

面倒くさいけど本当に良い奴だし、シャンテルにもいつか必ず礼をしなくてはいけないな。

翌日の早朝。

昨日の内にオックスターでのやることを終えた俺達は、これからまとめた荷物を持って、カーライルの森へと向かうつもり。

家自体はそのまま残しておき、数ヶ月分の家賃も既にキッチリと支払ってある。

俺達に何かあった場合に限り、シャンテルに契約解除をしてもらう手筈になっているが――必ずまた戻ってくる。

そう強い覚悟を持ち、俺は荷物をまとめて家を後にした。

ラルフとヘスター、それからスノーを連れて、俺達はカーライルの森の拠点へとやってきた。

元はゴブリンの巣だけあり、三人が余裕で暮らせるくらいの広さはあるし、俺が改良しているため不便さはあるものの、ただの野宿なんかとは比べ物にならないくらい快適ではある。

「へー。ここがいつもクリスの拠点にしている洞穴か」

「思っていたよりも全然いいですね。……『シャングリラホテル』よりも快適なんじゃないでしょうか?」

「それはないだろ――とも言い切れないのが悲しいな。あの部屋は本当に狭かったから」

俺の拠点を見て、ラルフとヘスターが各々感想を述べている。

思っていたよりも悪くはなかったようで、これなら数ヶ月ぐらいなら暮らしていけると思う。

「それじゃ、ここからは一切手を緩めず――自分自身を強くさせることだけを考えてくれ」

「分かってる。レオンさんの仇を討つため、俺は俺自身を曲げてでも強くなる」

「私もです。もう誰にも負けず、逃げなくてもいいように……必ず強くなります」

「アウッ!」

ラルフ、ヘスター、そしてスノーが宣言したことで、カーライルの森での特訓が開始された。

俺もこれからは強くなることだけに集中し、死ぬ気で修行に励むつもりだ。

食べる物は全て有毒植物。採取している時はスキルの発動解除の練習をしながら、追手のカルロに勝つためにやれることを全て行う。

頬を思い切り叩き、気合いを入れた俺は……。

まず家から持ってきた自家栽培に使用していた苗を、拠点の近くに植えることから始めた。

家に置きっぱでも良かったのだが、世話ができなければ枯らせてしまうし拠点近くに植えれば育つと考え、運び込んできたときと同じように、わざわざ鞄に詰め込んで持ってきた。

この付近に大きな畑でも作ってしまってもいいと思うのだが、数ヶ月間と時間は限られている。

畑を作る労力を割く時間はないため、植え直してこれまで通り世話を行うだけに留めた。

レイゼン、リザーフ、ジンピーを土に植えて、ゲンペイ茸とエッグマッシュは原木を拠点の洞穴に立てかけるように置く。

あとは頃合いを見つつ、水を上げるだけで育つはずだ。

家で育てていた環境とはガラリと変わるため、能力上昇値にも変化があるかもしれないが、さすがに識別を行うことはできない。

自然界で育った植物と同じように、能力上昇は1と考えて摂取を行うつもりだ。

自家栽培植物の移動を終えたあとは、有毒植物の採取へと向かうことにする。

拠点付近の植物はかなり採取してしまっているため、離れた場所での採取を積極的に行っていく予定。

ゴブリンやコボルトの相手をしなくて済むよう、索敵と討伐はスノーに任せることにし……俺はスノーと共に有毒植物の採取へと向かったのだった。