軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第103話 心臓

カーライルの森に入って、特段事件が起こることもなく六日が経過した。

結局、スノーはリスを殺めることはせず、ただただ楽しそうに一緒に遊んでいただけだった。

まぁリスが必死に逃げてくれたお陰で、スノーの遊び相手にもなってくれたし、追いかけ回すコツを掴んだのか、初日と比べると見違えるほど追い回し方が様になっている。

このリスはスノーの餌にするつもりだったが――施されたら施し返すのが俺の心情。

スノーの遊び相手兼、獲物役になってくれたことに敬意と感謝を込めて、大量のどんぐりをこのリスの巣らしき場所に置いてから、俺は大事に手に持ってリスを森へと逃がした。

さて、そろそろ帰りの支度を整えようか。

結構な時間をスノーの狩りを教えることに費やしてはいたけど、有毒植物の採取の方も順調そのもので、レイゼン、リザーフ、ジンピーの三種の苗と、ゲンペイ、エッグマッシュの生えた原木の採取に成功。

これで丁度、一部屋に一種類の植物が育てられる準備が整った。

自作の植物図鑑のお陰で、その植物に適した環境は把握済みだから、事故さえなければ自家栽培に漕ぎ着けることができるはず。

なんとなく作った図鑑だったが、本当に作っておいて良かった。

それから自家栽培用以外の有毒植物の採取も順調で、ジンピーの葉を中心に一ヶ月分くらいは一気に採ることができた。

あとは、シャンテルにポーションにしてもらう様にお願いするだけなのだが……はたしていくらかかるだろうか。

前回は一本につき金貨二枚かかったが、話によれば一度作れてしまえたら大分安く抑えられるとのことだったため、ここは交渉次第となる。

ジンピーのポーション化は必須だし、良い折り合いをつけることができたらいいな。

…………そして。

俺はこれから、オンガニールの木の場所へと向かう。

ずっと楽しみにしていた、オークジェネラルに作付されているかどうかの確認作業。

上手いこといっていたらいいのだが、こればかりは実際に見てみないと分からない。

スノーを拠点におき、一人でオンガニールの場所へと向かう。

自家栽培に成功し、植物採取の手間が軽減されたら、カーライルの森でオンガニールを探しまくりたい。

一本だけじゃ、研究するのにも手間がかかりすぎるからな。

そんな願望を抱きながら森を進んで行き、俺はオンガニールの近くまでやってきた。

相も変わらず嫌な気配が…………ん?

訪れたのが前回から少し空いているからなのか、なんとなくだが嫌な気配が強くなっている気がする。

恐る恐る近づいてみると、オンガニールの生えたゴブリンの死体が目に入った。

そして、その奥にオークジェネラルの死体もしっかりと残っているのが見える。

更に近づくと――オークジェネラルの心臓部分から、芽が出ているのが分かった。

…………ただ、芽は緑色ではなく茶色で、枯れてしまっているのが分かる。

惜しい結果に悔しい気持ちが強いが、俺は冷静にこの状況を分析することにした。

死体だったから駄目だったのだろうか?

――いや。この感じだと芽は出ているし、死体でもしっかり作付はされている。

だとすれば、栄養が足りなかったとかか?

……うーん、それもないだろうな。

討伐してから時間を空けずに、ここまで運び込んできた。

ゴブリンの栄養で成長できるのだとしたら、死体といえどオークジェネラルで育たない訳がない。

だとすれば――。

そこまで考えて、俺は一つの重要な見落としに気が付いた。

オンガニールは、“心臓”に作付して栄養を吸い上げながら成長する植物。

対するこのオークジェネラルは……俺が心臓を突き刺して殺したため、心臓が形成されていない状態となっている。

多分だが、そのせいで上手く育たなかった可能性が非常に高い。

俺は剣を引き抜き、オークジェネラルの胸を切り開く。

「……やっぱりそうだったか」

オンガニールの根は、貫かれた心臓部に根付こうとしていた痕跡があったものの、うまく根付くことができなかったのが分かった。

これは完全に失念していたが――この失敗は決して無駄ではない。

オークジェネラルのスキルや能力上昇を実に反映できなかったのは勿体ないが、それ以上に得られた成果はあった。

本当に少しずつだが、オンガニールについて徐々に解明できてきている。

とりあえずこのオークジェネラルの死体を片してから、新たな宿主を試すべくコボルトでも殺して、オンガニールを咲かせているゴブリンの傍に置いておこうか。

正直、コボルトでオンガニールが成長するのかは怪しいところだが、この森には丁度良い獲物がいないから仕方がない。

ゴブリンから生えたオンガニールに、新しく成った実の採取だけはしておこう。

死体に作付することが分かり、俺は頭の中で色々と試したいことを想像させながら、コボルト探しに向かったのだった。