軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第023話~へにゃるエルフ耳は可愛い~

「ふむ……食べ慣れない食感だが、悪くないな」

「それは良かった」

今日の夕食は俺が作った生パスタのようなものをペペロンチーノ風にしたものである。例の穀物粉を水と少量の植物油で捏ねて伸ばし、折って重ねて平麺状に包丁で切ってなんとかでっち上げた。あとはそれを二分ほどさっと茹でで、ガリケやペパル、塩漬け肉と一緒に油で炒めて塩で味を整えればペペロンチーノのようなものの完成だ。

「うーん、出来が今ひとつ」

「そうか? 食感は楽しいと思うが」

「コシが弱いんだよね。卵でも入れればもう少し違ってくるかな」

そもそもこの穀物粉自体がパスタに合ってないのかもしれないけど。とりあえず今日の夕飯はこれに果物と野菜サラダで済ませた。出来に納得がいかなかったので、是非リベンジしたいところだ。

さて、夕飯が終わったら束の間の自由時間である。特にやることがなければシルフィと蜜酒でも飲んでそのままベッドにGOしたいところなのだが、やっておきたいことがあるのでイチャイチャはお預けだ。

「今日は何をするんだ?」

「クロスボウの量産化をしておかなきゃならないのと、改良型クロスボウの試作もしようと思ってな。あと、シルフィ用の武器を作ろうかと」

「ほう、それは嬉しいな」

女性へのプレゼントに刃物を贈るのは自分でもどうかと思うが、本人が喜んでいるので良いということにしよう。

まずは改良型作業台で作るものをいっぺんにクラフト予約しておくことにする。

・改良型クロスボウ――素材:鋼の板バネ×1 木材×2 機械部品×3 強靭な弦×1

鋼の板バネはそこそこの数を作っておいたし、強靭な弦はギズマの後ろ足から採れた強靭な腱で代用できる。なので、とりあえず自分用も含めて三台作ることにする。後は普通のクロスボウを三〇〇台だ。木材や繊維関係は昨日の大量伐採で十分すぎるほどの量が手に入ったし、ネックとなる動物の骨に関してはギズマの甲殻で代用できるのでこれも問題ない。

そして、後は手持ちの鉄鏃を全てクロスボウボルトにしておく。これも軸材となる枝は大量にあるから問題ない。ただ、五〇〇〇本作るには圧倒的に鉄鏃が足りないから、これは作らなければならない。改良型作業台で作るものはこれだけだな。次は鍛冶施設を使って作るものだ。

「うーん、シルフィ用に作ろうと思っていたものがリスト内に無いな」

「……作れないのか?」

長い耳をへにゃって下げて落ち込むシルフィが可愛くて生きるのが辛い。

「い、いや、そんなに落ち込まなくても……多分大丈夫だ。バルディッシュと同じ要領で作れるはず」

あの時は鍛冶施設のメニューを開いて頭の中でどういうものなのか想像していたら追加されたからな。きっと同じ感じでいけるはず。

作ろうとしているのはククリという刃物だ。内側に『く』の字に曲がったいわゆる『内反り』の形状となっている。見た目からしてかなり特徴的な刃物だ。根本より先端部の方が幅広であるため先端が重くなっており、非常に切断能力に優れる。俺がネットで見た動画だと、吊るされた分厚い肉を一刀で断ち切り、骨付きの肉も骨ごと切断していた。投擲して木の板に深々と突き刺さるというのもあったな。

と、そこまで思い浮かべるとクラフトメニューにククリが追加された。うん、やっぱりこの方法で行けるみたいだな。

「いけそうだ」

「そうか」

先ほどとは一転してニコニコ笑顔のシルフィさんである。へにゃっていた耳もピーンとした。そんなに嬉しそうな顔をされるとこっちもなんだか嬉しくなるな。で、レシピの内容は……?

・ククリ――素材:鋼の板バネ×2 木材×1 動物の皮×1

なんで板バネ……? まぁいいけども。それよりも問題は動物の皮だ。在庫切れなんですよね、動物の皮。チラリとシルフィを見る。目をキラキラさせてワクワクしているシルフィにこの結果を伝えるのは忍びない。忍びないが、俺は事実を伝えなければならない。

「シルフィ、すまん……動物の皮が無くて作れない」

「なん……だと……?」

再びへにゃりとシルフィの耳が下がっ……たかと思ったらピンと立った。そしてシルフィが家の中へと駆け込んで、すぐに戻ってくる。

「これでいけるのではないか?」

「おお、いけそう」

シルフィが持ってきたのは綺麗に鞣された何かの革だった。受け取ってインベントリに入れると、代用品として使えるということがわかる。

「大丈夫だ、作れるぞ」

「よし」

シルフィの持ってきてくれた革は動物の皮二枚分として使えるようだったので、ククリを二本作ることにした。程なくしてククリのクラフトが終わる。

「お待たせ。これがシルフィ用に作ったククリというナイフだ」

出来上がってきたククリは綺麗な革の鞘に収められていた。もしかしたら材料によって外見が微妙に変わったりするんだろうか?

「おおっ……変わった形だな?」

「内反りの刃物って珍しいよな。でも、もの凄く切れ味は良いぞ。切断力重視のナイフなんだ」

「なるほど。重さもあるし、確かによく斬れそうだ」

「もう一本作ったから是非試してみてくれ。投擲にも使えるはずだから、練習してみると良い。切れ味が鈍ったりしたら俺に言ってくれ、直すから」

「うむ、大切にしよう」

抜き身の刃物を手にシルフィは花が咲くような笑みを浮かべてくれた。うん、可愛いけどブンブンと凄い勢いでククリを振るのはやめて欲しい。ストレートに命の危険を感じる。

すぐ近くで聞こえる風切り音はできるだけ聞こえないことにして、残りの鉄を使って鏃を量産さしておく。でも全然足りないな、こりゃ。作業台で予約を入れている分と合わせても一〇〇〇にも届いていない。やはり明日採掘に出るのは必須だ。

鍛冶施設の操作が終わったので、今度はまた改良型作業台の方に戻る。この作業台の間を行ったり来たりするの、実にクラフトゲーって感じだよな。

改良型クロスボウが出来上がっていたので、作業台から取り出してインベントリに入れる。一つは今試すとしよう。

「ん? 新型のクロスボウか?」

「ああ、弓の部分に金属を使ってるんだ。威力はかなり高くなっていると思う。んぐっ、堅っ!? おもっ!?」

流石に金属バネのクロスボウは重い。引けないことはないが、さほど身体を鍛えているわけでもない俺では何度も連続で引くのは厳しそうだ。腰を悪くするかもしれん。

「そんなにか?」

「俺には重く感じるなぁ。試してみるか?」

もう一台改良クロスボウを取り出し、シルフィにも渡してみる。シルフィも俺と同じように改良型クロスボウの弦を引いたが、俺よりも簡単に引いているように見えた。

「確かに堅いな。体を鍛えている兵や力自慢なら問題ないだろうが、一般の市民が何度も引くのは難しいかもしれん」

「だよな。とりあえず撃ってみるか」

改良型クロスボウには粗雑ながらも丸型のフロントサイトのような物がついていて、狙いやすくなっている。装飾などは特に無いが、金属パーツが多用されていてより頑丈そうな作りだ。狙いをつけるとクロスボウのフロントサイトとは別に照準マーカーが表示される。見る限り、ちゃんとフロントサイトにピッタリ重なっているようだ。引き金を引く。

バシュッ、と鋭い音が鳴ったかと思った瞬間には既にボルトが標的の丸太に突き刺さっていた。通常のクロスボウに比べてかなり初速が高いようだ。シルフィも同じように射撃し、やはり丸太に命中させている。

二人共無言で数射する。俺は疲れるのが嫌だからコマンドアクションでリロードした。このクソ堅い改良型クロスボウを右手だけでスッと引くコマンドアクションはぶっ壊れ過ぎだと思う。

「なるほど、この照準器は良いな」

「だな。あと初速が高い分威力も高いっぽい」

「かなり深く突き刺さっているな。これは抜けないのではないか?」

「手で引っこ抜くのはしんどいな」

アクセスしてインベントリに入れる分には何の問題もないけど。そんな俺の様子を見てシルフィが苦笑している。俺の能力は本当にインチキくさいよな。わかるよ、うん。

「これは少数生産にして射撃の達者な者、力の強い者に支給する特別仕様品みたいな感じで扱うか。鋼の板バネが要るから、鉄を大量に使うんだよこれ」

「そうだな……いずれはこちらの改良型を主軸に使うべきだろうが、まずはその方向でいいだろう」

「じゃあそういう方向で行こう」

「そうだな。ところで、まだ何かやるのか?」

「え? うん、そうだな。作れるものも多くなったし、もう少し頑張ろうかと思うけど」

「うん……そうか」

シルフィの耳がちょっとへにゃる。うーん? どうしたんだろうか。怒っているとかではないようだけど。

気にはなるが、気を取り直して鍛冶施設のクラフト可能品一覧をチェックする。ガラス関係の製品がきっと増えている筈なんだが。

・試験管ー――素材:ガラス×1

・ビーカー――素材:ガラス×2

・フラスコ――素材:ガラス×2

・ガラスの乳鉢――素材:ガラス×2

・ガラスの乳棒――素材:ガラス×1

・蒸留装置――素材:ガラス×8 鉄×2

鍛冶施設で作れるもの一覧にこんなものが追加されていた。どう見ても製薬フラグである。とりあえず鉄鏃の制作をストップして鉄を確保する。きっと製薬関係の作業台を作るのに使うはずだ。

しかし、鍛冶作業台のクラフト一覧には調合台っぽいものはないな? 改良型作業台のほうかな? と考えて改良型作業台のクラフト可能品をくまなく探してみた。

・薬研――素材:石×5 木材×1

・調合台――素材:蒸留装置×1 ビーカー×2 フラスコー×2 試験管×4 ガラスの乳鉢×1 ガラスの乳棒×1 薬研×1 木材×10 釘×20 鉄×4

あったけど素材が重い、というか多い! でも、ガラスは足りるし作れるな。ちょっとクラフト予約の優先順位を弄って調合台の作成を優先することにする。

そう言えば、アチーブメントとスキルも確認しないと。やることが……やることが多い……っ!

・初めてのクラフト――:初めてアイテムをクラフトする。※スキルをアンロック。

・初めての解体――:初めてクラフトアイテムを解体する。※スキルをアンロック。

・初めての採取――:初めて採取を行う。※スキルをアンロック。

・初めての採掘――:初めて採掘を行う。※スキルをアンロック。

・初めての獲物――:初めて生体素材を獲得する。※スキルをアンロック。

・初めての修復――:初めてアイテムを修復する。※スキルをアンロック。

・???――:隠されたアチーブメントです。

初めての解体と修復はこの前はアンロックされてなかったな。まだ何か単純な『初めて』の作業がありそうだ。

・初めての鍛冶施設――:初めて鍛冶施設をクラフトする。※アイテムクリエイション機能がアンロックされる。

あー、このアイテムクリエイション機能ってのが想像したらレシピが追加されたやつかな? 何の説明もない辺り、相変わらずユーザーフレンドリーの欠片もねぇなこの能力。他にもざっと見てみたが、獲得したアチーブメントは見当たらなかった。

・熟練工――:クラフト時間が20%短縮される。

・解体工――:クラフトアイテムを解体する際の獲得素材料が10%増加。

・修理工――:アイテム修復時間を20%短縮、必要素材数を20%減少。

・大量生産者――:同一アイテムを十個以上作成する際、必要素材数を10%減少。

・伐採者――:植物系素材の取得量が20%増加。

★採掘者――:鉱物系素材の取得量が20%増加。

・解体人――:生体系素材の取得量が20%増加。

スキルも増えている。うーん、考えてみればこの前の大量伐採する時に伐採者を取っておけばよかったよな……不覚。採掘者はもう取ってあるから、伐採者、解体人の二つも今取ってしまおう。

・強靭な心肺機能――:スタミナの回復速度が20%上昇。

・俊足――:移動スピードが10%上昇。

・豪腕――:近接武器による攻撃力が20%上昇。

・優秀な射手――:射撃武器による攻撃力が20%上昇。

・鉄の皮膚――:被ダメージを20%減少。

・生存者――:体力が10%上昇、体力の回復速度が20%上昇。

・爬虫類の胃袋――:空腹度の減少速度が20%減少。

・ラクダのこぶ――:乾き度の減少速度が20%減少。

身体強化系のスキルは増えてないな。レベルは上がっていないから、取れるスキルはあと三つだ。ここは強靭な心肺機能と俊足、優秀な射手を取っておこう。クロスボウを使って一撃離脱ってスタイルで行こうと思う。

そろそろ調合台関係の素材ができてきたかな? と鍛冶施設に向かおうとしたらいきなりシルフィが後ろから抱きついてきた。柔らかいものが背中に押し付けられる。

「うひょう! ど、どうした?」

「……チャしないのか?」

ぽそりと小さな声でシルフィが呟く。小さくて最初のほうが聞こえなかった。そして耳朶に触れる息がくすぐったい。ヤバいヤバい。どきがむねむねしてきたぞ。

「だから、その……早く帰ってイチャイチャしようって言ってたじゃないか。もう、夜も遅いぞ?」

ストレートなお誘いにほぼイキかけました。

オーケーオーケー。ちょっと作業が中途半端だが、可愛い可愛いご主人様にこう言われてしまっては忠実な奴隷であるこの俺としては応えざるをえまい。

不肖コースケ、吶喊します! ひゃっほーい!