軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第189話~初戦~

斥候のハーピィさんに伝書鳩的な怪しい鳥を捕殺してもらったりしながら街道を進む。どうにも森の中に斥候が潜んでるみたいだな。まぁ今は構ってる暇は無いし、俺達の速度についてこられるわけがないから放置だけど。

そうして進むこと約一時間。俺達は聖王国の勢力圏にある街、ボブロフスクへと辿り着いた。予め斥候ハーピィさん達が情報伝達を妨害していたためか、ボブロフスクの防衛隊は俺達を目視するまで侵攻に気づかなかったようである。城門では入市検査を受けていた民間人を慌てて街中へと緊急収容しているようだ。この調子だと防衛準備も全く整っていないことだろう。

「コースケ、スピーカーを使うぞ」

「ああ」

シルフィが運転席と後部座席の間に設置されているマイクを手に取り、声を張り上げた。

『ボブロフスクに存在する全聖王国軍に告ぐ、我々はメリナード王国解放軍である! 直ちに武装解除して降伏せよ! 四半刻後までに降伏しない場合は攻撃を開始する!』

防壁や城門とは矢が届かない程度に距離を取っているので、相手の反応はよくわからない。しかし、少なくとも即刻打って出てくるというような暴挙には出るつもりはないらしい。

そして、こうしている間にも後続のエアボードが次々と街道から姿を現し、ボブロフスクを包囲していく。機関銃を装備している銃士隊は勿論のこと、レオナール卿の指揮下にある精鋭兵もクロスボウの扱いには熟達しているので、高速打撃部隊の面々は全員が遠距離攻撃の手段を持っている。

当然ながらエアボードの上からでも射撃することは可能なので、特に下車しなくても全員がある程度の戦闘能力を有しているのだ。

「降伏すると思うか?」

カンカンカン、カンカンカン、と緊急事態を知らせるものなのか、ボブロフスクの街中から鐘の音が断続的に鳴り始めた。今頃ボブロフスクの中は大混乱だろう。

「しないだろうな。戦いもせずに降伏したということになれば、ボブロフスクの防衛指揮官の進退に大きく関わってくるし、基本的に最前線に配置される指揮官というのは敵に懐柔される心配のない堅物だ……銃士隊から三台、北門に回って通行を封鎖しろ。強行突破しようとする者は殺せ」

『了解』

今度は車載のゴーレム通信機のマイクを手に取り、シルフィが各方面に指示を出し始める。

「ハーピィの斥候はボブロフスクから慌てて出ていく早馬がいないか確認しろ。爆撃部隊は爆装開始、うち二名は斥候と連携してもし早馬が封鎖から逃れたら爆撃で仕留めろ。伝書鳩の類は今まで通り捕殺せよ」

『りょうかいです!』

シルフィから割と容赦のない指示が飛ぶ。まぁ敵方の情報を封鎖するのは大事だものな。完全に防ぐのは無理だと思うけど、やらないよりはやったほうがこっちに有利に働く。

聖王国軍と俺達解放軍で俺達の勝っている点というのはまぁそれなりに沢山あるわけだが、一番大きいのは情報のアドバンテージである。俺達はゴーレム通信機を有しており、距離があってもリアルタイムで情報をやり取りすることができる。

それに対し、聖王国軍の情報伝達手段は最速のものが伝書鳩、次点で早馬だ。伝書鳩に関しては討ち漏らしもあり得るがそもそもの確実性に欠ける、馬に関しては攻撃時間を差し引いてもエアボードによる電撃的な侵攻とほぼ等速であるという致命的な速度の差がある。

そして情報が伝わらなければ聖王国軍側は常に奇襲を受ける形になる。四半刻――30分ではまともな防衛体制を整えることは非常に難しい。彼らは民間人の避難誘導などもしなければならないわけだからな。そういうのを一切放り出せばある程度の防衛体制を整えることは出来るかも知れないが……。

『こちら北門、伝令と思しき一団が出現、騎兵と共にこちらに突進中』

「やれ」

『了解』

遠くからガァァン、ガァァン、と小刻みな発砲音が聞こえる。

『処理完了。こちらに被害なし』

「よくやった。引き続き警戒せよ」

『了解』

☆★☆

「聞いての通りだ。二番機と三番機は私に続け。この場の指揮は四番機に任せる、何かあれば姫様に指示を仰げ」

『了解』

姫様の指示を受け、私はゴーレム通信機で銃士隊の面々に支持を出してから運転席の後ろについている窓を軽く叩いた。それを受けてエアボードがボブロフスクの周りを囲む畑の上を滑るように動き始める。こうして畑の上を移動しても畑を踏み荒らすことがないというのは素晴らしいことだと思う。しかも速いし、馬車より小回りが利くのだから非の打ち所がない。弓矢や魔法で撃たれると身を隠すところがないのが玉に瑕だが、障壁魔法を使える魔道士が二名配備されているからそうそう敵の攻撃を通すこともないだろう。

今回の行軍において、銃士隊の乗るエアボードには銃士隊員が二名、魔道士が二名の計五名が搭乗している。魔道士は装填手も兼ねている形だ。試験的な配備ではあるが、なかなか理に適った編成だと思う。

ボブロフスクの裏手、北門方面に回り込むと、街道はすでに閑散とした状況だった。先程から緊急事態を告げる鐘が鳴り響いているので、野良仕事していた農民や近くを訪れていた旅人の類は全員街の中に収容されたのだろう。いや、よく見ればまだ門の辺りでなんかごちゃごちゃやっているようだ。運転手には城門から十分に距離を取った場所に展開するよう指示を出しておく。

「街道を塞いで待機だ。すぐ撃てるように機関銃の点検をしておけ」

「はい、隊長」

部下に指示を出しながら、自分も機関銃の点検をしておく。整備は昨日のうちにコースケがしてあるから、動作の確認と弾の装填だけしておけば良い。

少しすると城門が開き、騎馬が十二騎ほど飛び出してきた。明らかに私達の封鎖を突破してやろうという動きだ。伝令らしき軽装の騎手を乗せた駿馬が二騎、他は武装した騎兵だ。騎兵が盾となって突撃し、その間隙を突いて伝令を突破させるつもりだろう。私はすぐさまゴーレム通信機で姫様に連絡を取る。

「こちら北門、伝令と思しき一団が出現、騎兵と共にこちらに突進中」

私からの報告に対する姫様の返事はごく短く、決断的であった。

『やれ』

「了解。一番機から二番機、三番機へ。目標、敵騎兵。引きつけろ、まだだ……殲滅射撃、用意──撃ち方はじめ」

号令を下すと共に自らも引き金を引き、こちらへと向かってくる敵騎兵に弾丸の雨を浴びせる。

ガァァァン! ガァァァン! という凄まじい音が鳴り響き、騎兵達が血煙に変わる。

ボルトアクションライフルですら鎧兜を身に着けた敵兵を一撃で吹き飛ばしていたというのに、この機関銃という武器はそんな攻撃を一秒間に二十発も連射するのだ。どんなに鎧を着込んでいようとも、馬に乗っていようとも、この攻撃力の前には紙屑同然である。

エアボード一台につき二丁、つまり六丁の機関銃から放たれた弾丸の嵐はごく短時間で騎兵の集団を文字通りに全滅させた。生存者ゼロ名。当然馬も戦死である。

「ボルトアクションライフルなら騎手だけ殺せましたね」

確かに。敵の数が十二騎なら騎手は十二名。六人がボルトアクションライフルで射撃すれば接敵される前に全員を仕留めることは出来たと思う。

「そうかもしれないけど、圧倒的な力を見せつけるというのも今回の作戦の目的だからね」

「お馬さんが勿体無いです」

「仕方ないね」

馬という家畜は非常に使い途の広い家畜だ。乗ってよし、耕させてよし、食べてよしと三拍子揃っている。馬系の獣人に言うと嫌な顔をされるけどね……って今はそんなことはどうでもいいか。報告報告。

「処理完了。こちらに被害なし」

『よくやった。引き続き警戒せよ』

「了解」

通信機越しに報告を終え、周波数を切り替える。

「敵兵の死体を道の端に寄せるよ。二番機と三番機からも一人ずつ人を出して。残った方は回収班の援護。魔道士は車上で待機」

『了解』

『りょーかい』

二番機と三番機から返事が返ってくる。

「んじゃ、行ってらっしゃい」

「えっ!? 私が行くんですか!?」

「あたし隊長だし。指揮しなきゃいけないし」

「うぅっ! ジャギラのばかぁっ!」

あっはっは、持つべきものは忠実な部下だねぇ。さぁて、敵さんはどう出るかな?

☆★☆

北門で突破を試みた敵騎兵隊が居たようだが、それ以降はまるで殻に閉じこもった貝のようにボブロフスクは沈黙を保っていた。いや、防壁上に守備隊らしき兵士の姿がちらちらと見えているから、適切な表現ではないか。とにかく、降伏勧告に応えるような動きは何もなかった。

「……時間だな」

太陽の位置を確かめたシルフィがボソリと呟いた。俺には殆どわからないが、シルフィは太陽の位置で割と正確に時間を測れるらしい。俺の体感だともうとっくに三十分過ぎていると思うんだが、どうにも気が急いていたらしい。

シルフィが再びスピーカーのマイクを手にする。

『刻限だ! 降伏の意思あらば白旗を掲げよ。さもなくば、攻撃を開始する!』

再度呼びかけるが、ボブロフスクに動きはない。ここまでのようだな。

「ハーピィ爆撃部隊。ボブロフスクの南門を破壊しろ」

『了解、爆撃開始します』

シルフィの指示で既に上空に展開していたハーピィ爆撃部隊が爆撃を開始する。上空からの急降下爆撃だ。爆弾を投下し、跳ね上がるようにハーピィさん達が上空に戻っていく。そして次の瞬間、ボブロフスクの城門で大爆発が起こった。実際には中規模の爆発が複数同時に起こっただけの筈なのだが、タイミングが完璧だったせいで大爆発を起こしたように見えるのだ。

「ハーピィさん達息合いすぎでは?」

「暇があればひたすら訓練していたからのぅ。妾の寝床とかよく仮想標的にされとったぞ。模擬弾集めをよく手伝ったもんじゃ。あと土で防壁もどきもこさえてやったりしたぞ」

後ろからグランデの眠たそうな声が聞こえてくる。ハーピィさん達何やってんの。

ともあれ、職人芸のような一撃で南門が一撃で粉砕されて崩れ落ちてしまった。そこにもう一撃爆弾が投下され、今度は瓦礫が跡形もなく吹き飛ぶ。これでハーピィさん達は両足の爆弾を撃ち尽くしたはずなので、再爆装が必要に……って戻ってくるのはえぇな。

「次の攻撃目標は防壁上の守備兵と兵舎、武器庫だ」

『りょーかい!』

再びハーピィさん達が飛び立って行き、今度は防壁上の守備兵が一斉に爆破され、続いてボブロフスクの内部守備施設が散発的に爆撃されていく。俺達はそれを見守るばかりだ。

「うーん、一方的」

「そういう構成になってるんだからそうなるのが当たり前。弓矢も魔法も届かない高さから攻撃してくるんだから、抵抗のしようがない」

後ろからアイラの冷静な分析が聞こえてくる。まぁうん、アウトレンジから一方的にボコボコにしてるんだからそうだよね。

「ええと、この後はどうするんだ?」

「処理は後続に任せて私達は前進する」

「そうなるよな」

俺達は戦後処理などにかかずらっている時間はない。高速打撃部隊の役割というのは、圧倒的速度と火力で敵拠点を次々に破壊し、後続の本隊が容易に敵拠点を制圧するための筋道をつけることである。いちいち本隊が追いついてくるのを待っていては足を速くした意味がない。

「戦果を報告しろ」

『こちら斥候。防壁上の守備兵は全滅。主要な防衛施設の破壊も確認』

「よし、ハーピィ爆撃隊は帰投しろ。十五分の小休止後、進軍を再開する。各員水分補給などを怠るなよ」

『『『了解』』』

「十五分ね。じゃあ今のうちに航空爆弾補充してくるわ」

「ああ、何も心配はいらんと思うが、気をつけろよ」

「了解」

シルフィにそう返事をして俺はエアボードの操縦席から飛び降りた。さぁ、サクサク補給しようかね。