軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第144話~歓迎会と……~

「「「お二人ともおかえりなさい! そしてようこそ、グランデちゃん!」」」

「うむ」

「おう」

「う、うむ……ありがとうなのじゃ」

アーリヒブルグに帰ってきたその夜、領主館でハーピィさん達主催によるお帰りなさい会&グランデの歓迎会が開催された。発案は三十分前、料理や飲み物は俺が提供ということで、主催というよりは発起人と言ったほうが正確か。

「それじゃあお土産披露しまーす」

「「「わーっ!」」」

ぱふぱふぽふぽふとハーピィさん達が翼で拍手をする。アイラとメルティもぱちぱちと拍手をしていた。

「えー、まずはアイラに。黒き森の奥地で採取してきた珍しい花、土と根っこ付きです」

「おー……」

インベントリからテーブルを出し、その上に鉢植えに入った高地の花をずらーっと並べていく。

「物凄い高い場所に生えてた植物だから、平地だとあまり長持ちしないかもしれないけど」

「ううん、珍しい花は嬉しい。薬効があるかもしれないし。ありがとう」

「綺麗なお花ですねー」

「確かに見たことのない花です」

「お花のプレゼントなんてロマンチックやねぇ」

メルティやハーピィさん達も色とりどりの花に目を輝かせた。やはり女性は花が好きなものであるらしい。

「ピルナ達にはエルフの里周辺で採れた果物の詰め合わせとドライフルーツ、ジャムなんかをお土産にしてきたぞ」

「わー、懐かしいなぁ」

「森を出てから食べる機会がなかったもんね!」

「森にいた頃は果物の甘味が唯一の楽しみだった」

籠に盛られた果物や袋に入ったドライフルーツ、それに見事なガラス細工の瓶に収められた色とりどりのジャムにハーピィさん達が目を輝かせる。

「メルティにはエルフの里のワインを。当たり年の良いやつだって」

「ありがとうございます、コースケさん」

メルティには瓶に入った赤ワインと白ワインのセットを渡す。宴会で騒ぎながら開けるようなタイプのものじゃない、いわゆるヴィンテージワインみたいなものだ。

「後は皆にエルフの織った反物を色々と。これは皆で相談して分けてくれ」

最後に出したのは柄物、単色のものを含めて多数の反物だ。宝石の原石や魔晶石、魔化された素材、食いしん坊ドラゴンズの持ってきた魔物素材などを対価にエルフの共同倉庫で交換してきたものである。

「うわー! 綺麗な反物ですねぇ!」

「街の仕立て屋さんに持ち込んで服を作ってもらいましょうか」

ハーピィさん達が反物に群がってキャッキャとはしゃいでいる。それを見ながら蜜酒を飲んでいると、ハーピィさん達が反物を広げてグランデを囲み、彼女の身体に当てて、グランデに盛んに話しかけ始めた。どうやらエルフの反物を使ってグランデに着せる服を考えてくれているらしい。

「あの服――とも言えない何かはコースケさんの趣味じゃないんですか?」

「断じて違う。俺の手持ちの服であの翼とごっつい手足の爪に影響されず局部を隠せる装備があれしかなかったんだ。ブラとショーツだけ履かせるよりは幾分、ほんの少しマシかと思ってのあのチョイスだ」

「そうなんですか……? 私も着ましょうか? ああいうの」

メルティがそう言いながら腕で自分の胸を押し上げてその大きさを強調してくる。くっ、視線が誘導される。なんと卑怯な。

「……今度ね」

「二人きりの時に?」

「そ、そうだな」

しなだれかかってくるメルティから目を逸らしながらなんとか心を落ち着けようとしていると、俺を挟んでメルティの反対側に座っていたアイラが俺の胴体にぎゅっと抱きついてきた。

「私も着る?」

大きな瞳がジッと俺の顔を見上げてくる。アイラの体型でビキニアーマー……うん、それもまたよし。あれは肉感的な美人が身につけるのが正道だと思うが、アイラのようなつるーんぺたーんが着るのもまた一興だと思います。

「こ、今度ね」

「ふふ……」

「……」

メルティが蠱惑的な笑みを漏らしながら、アイラは無言で頬を少し緩ませて俺の身体をさわさわとソフトタッチで弄ってくる。あー、いけませんいけません! お客様! お客様困りますお客様! あー! お客様お客様!

「あー! メルティさんとアイラさんがコースケさんといちゃついてる!」

「ズルいですよー」

「抜け駆けはよろしくない」

「ほら、グランデはんも行こうなぁ」

「ぁ、ぉ、ぅぉ……」

わーっ! とハーピィさん達が押し寄せてきて薄い胸を俺に顔に押し付けたり、軽いキスを頬や唇、首筋にちゅっちゅしてきたり両腕の翼でこしょこしょしたりパフパフしたりしてくる。グランデも目をぐるぐるさせながら長椅子に座った俺の足に抱きついている。何をしているんだ、君は。

「むむ、この場所は譲らないですよー」

「負けない」

「痛い痛い」

メルティとアイラが俺に抱きつく力を強めるが、単純に締まって痛い。シルフィはと言うとそんな俺達をにこにこと眺めながら静かに蜜酒の瓶を傾けている。余裕の笑みというやつか。その余裕少し分けてくれません?

「こら、どこに手を……待て、脱がすな! いたっ!? 誰だ首に噛み付いたのは! 目立つところに歯型とか残すのはNO!」

「まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ」

「やめっ……ちょ、待てっ!? 待って!? まだ歓迎会始まったばかりでしょう!? 飯もロクに食って無いじゃ……」

「大丈夫ですよ、多少冷めても美味しく食べられるものばかり出してもらってますから。途中で食べさせてあげますから、ね?」

「なっ……!? 料理のリクエスト内容は最初からこれを見越して……!?」

確かにピザやスープ、グラタンなどの熱々が美味しい料理は殆どなかった……ま、まさか!?

「あ、あれをやるつもりか……!?」

「うふふ……私達、あれが大好きなんです」

「旦那様は飲み込むだけでいいよ!」

「ぜぇんぶお世話してあげますさかいなぁ……」

蕩けるような笑みを浮かべたハーピィさん達が俺を寝室に向かって引きずり始める。くっ、良心が咎めて振り払うことができん。ここで振り払ったりしたら彼女達を悲しませることに――。

「ん、慣れたら私も好きになった」

「私も結構好きですよ、これ」

両手にサンドイッチやハンバーガー、果物などが載った皿を持ってアイラとメルティがハーピィさん達の後ろに続く。グランデはオロオロしながら大きめの水瓶を運んでいた。水分補給もばっちりですかそうですか。

「あとで混ざりに行く」

「「「はーい」」」

シルフィがそんな俺達を笑顔で見送りながら蜜酒の入った瓶を掲げた。そして扉は閉じられた。

☆★☆

「……ぐったりとしているな」

「自業自得なのであるな。生きているだけマシというか、コースケのしぶとさは一級品だと思うのである」

変な感心の仕方をしながらレオナール卿が俺を介助して椅子に座らせてくれる。ああ、テーブルがひんやりしてつめたい。といかレオナール卿戻ってきたのか。昨日はいなかったのに。

「へへ……燃え尽きちまったよ……真っ白になぁ……」

昼過ぎに起きた俺は領主館一階の談話室に足を運んでいた。ふらつく足取りで。ライフとスタミナの上限値? 双方ともに二割くらいですが何か?

「その、程々にな。身体を大事にしてくれ」

「腎虚で死ぬとかやめてほしいのであるな。我輩達からもちょっと気遣うように言ったほうが良いかもしれないのである」

ダナンとレオナール卿が本気トーンで対策を話し合っている。いたたまれない。

「それは置いといて、聖王国との交渉はどうなってるんだ?」

「ふむ……聞きたいのか?」

「だから聞いてる。聞かれちゃマズいのか?」

「別にマズいことなど何もない。隠すほどの進展もないしな」

「無いのかよ」

「窓口の聖女は権威はあっても全てを差配できる権限は無いのであるな。一緒に派遣されてきた政務官と軍監がいて、政務と軍務はそれぞれが掌握しているのである。聖女が掌握しているのはあくまで宗教の部分だけなのである。それでも、三人の中では一番権威が強いので聖女の意向を無視して軍監が軍事行動を起こすことはできないようであるな」

「なんせ真実の聖女様だからな。彼女の前に立っただけで真実も嘘も丸裸だ。彼女を出し抜いて何かをするのは難しかろうよ」

「なるほど」

真実の聖女である彼女には一切の嘘が通じないらしいからな。俺にはよくわからんかったが。

「ただ、軍は兵員の再編成と補充を進めている段階でどちらにせよこちらに攻め寄せてくるのは難しそうであるな。治安維持や魔物の退治も傭兵や冒険者を使ってなんとかギリギリ、という状況のようである。足元がそんな状態では軍をこちらに向けるのは不可能である」

「聖王国の本国から大規模な増援でも来ない限りはな」

「なるほど。それで、領土返還交渉に関しては?」

「難航中であるな。こちらの要求は旧メリナード王国全土と奴隷にされた国民の返還、あちらとしては既にメリナード王国に植民した聖王国民もいるわけで、こちらの要求は呑めないと」

「戦争か?」

「ま、手っ取り早いのはそうであるな。話し合いで片付かないなら力で奪う他無いのである。南部の平定も終わり、解放軍は勢いを増しているのである。今ならメリネスブルグまで攻め上ることも可能なのであるな」

捲土重来を目指す解放軍と、一度勝利してメリナード王国を支配下に置いた聖王国。話し合いで解決できればと思ったが、さて……?

「他国に介入してもらうか?」

「悪手であろう。国と国というのは手に手を取り合って仲良しこよしとはいかぬものである。この状況下で他国に介入されると戦後にどんな要求を突きつけられるかわかったものではないのである」

「西部に国境を接している小国家連合に怪しげな動きもある。場合によっては二正面作戦を強いられる可能性もある」

「ならどうする? 仕掛けられる前に仕掛けるのか?」

「そこで意見が割れているのである。姫殿下は積極的に仕掛けるのは否定的なようであるが、メルティは内政官の観点からして向こうが譲歩するというのはほぼあり得ないので、とっとと攻め寄せて国土を回復するのが良いと主張しているのである」

「攻撃的だなぁ。二人はどう考えているんだ?」

「吾輩は戦うことに否やはないのであるな」

「私はもう少し待ったほうが良いと思っている。聖女の属する懐古派が聖王国の現政権と現在のアドル教の主流派を牽制してくれるなら、それを待ったほうが確実だ。いくらコースケから与えられた武器が強力であっても、我々と聖王国では元々の地力が違いすぎる」

レオナール卿は消極的賛成、ダナンは慎重派ってところか。

「ただ、あまり時間を与えすぎるのは良くないのであるな。ハーピィの爆撃戦術に対応される可能性が高まるし、時間をかければかけるほど地力の大きな向こうが有利になるのである」

「それはそうだろうな」

エレン――真実の聖女であるエレオノーラの働き次第か。こちらから何か向こうの手助けになるようなことはできないものかな? 確か遺跡がどうとか言ってたよな。ちょっとそっち方面で俺が何かできないか検討してみるか。