軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第140話~予測可能回避不可能~

のじゃあああぁぁ……という悲鳴を遠くに聞きながら、俺はゴーレム作業台を設置してアイテムクリエイションを試していた。

「何を作るんだ? あの身体の小ささだと鞍でどうにかなるとは思えんが」

「鞍を作るわけじゃないぞ。もっといいものだ」

と言いつつ、デザインをどうしようか悩む。

俺が作ろうとしているのは持ち運び式のゴンドラのようなものだ。スキー場のリフトみたいに空飛ぶ座席方式が良いか、バスケットや鳥籠のような形にするか、それとも文字通り空飛ぶ馬車のようなゴンドラにするか……作りが簡単で軽いのは座席式だよな。まずは座席式のものを作ってみるか。

フレームの素材は鋼鉄で頑丈に、着地時に地面に置けるように四隅に足をつけて、座席は布張りで綿を詰めて快適に、シートベルトと、上部にグランデが持ちやすいように取っ手をつけて……こんなものか。

・グランデ用ゴンドラ――素材:鋼の板バネ×6 布類×4 繊維×20 皮革類×3

よし、アイテムクリエイション成功。早速ゴーレム作業台にクラフト予約を入れておく。

ゴーレム作業台になってからアイテムのクラフト時間が大幅に短くなった。モノによるが、大体半分以下から最高で十分の一ほどのクラフト時間になっている。苦労してアップデートした甲斐があったよな。

少しして出来上がってきたのは鋼鉄製のフレームとシートベルトのついた長椅子といった感じの物体だった。

「これは?」

「グランデに持ち運んでもらうためのゴンドラだ。俺とシルフィがここに座ってこのシートベルトを使って身体を固定し、グランデにこの上にある取っ手を持って飛んでもらう」

「なるほど……だが安全を考えるなら箱状にした方が良いんじゃないか?」

「それも考えたんだが、空気抵抗が強くなりすぎるんじゃないかと思ってな」

「ああ……それもそうだな」

箱型のゴンドラだと真正面からの空気抵抗がかなり大きくなるだろうということが予想される。そうするとゴンドラを持つ手と腕が後ろに流されてしんどいだろうし、飛びにくいんじゃないかと思ったのだ。

「ただ、グランデが慣れるまでには時間がかかりそうだしな……色々な形のを作っておくか」

「そうだな、選択肢は多いほうが良いだろう」

グランデ用ゴンドラ一号を参考にしてシルフィと意見を出し合い、ゴンドラのバリエーションを増やしていく。シルフィの提唱した箱型のもの、気球のゴンドラのような籠型のもの、鉄格子で周りを囲んだ鳥籠型のもの、金属のフレームに鎖で座席を吊り下げたブランコ型のもの……それぞれ二号、三号、四号、五号を作ってみた。

「一通り作ってみたが……どれが良いんだろうな?」

「グランデが飛びやすいものを優先するのが良いのではないか?」

「そうだな……とりあえず持って飛んでもらうか。グランデーーーーーッ!!」

大声で呼ぶと、グランデが物凄いスピードで俺達の頭の上を通り過ぎていった。背後で岩の砕ける音と「みぎゃぁ!?」という悲鳴が上がる。

後ろを振り向くと、グランデが頭から岩に突き刺さっていた。ぐったりとなった尻尾がぷらーんぷらーんと揺れていて非常に痛々しい。

「ぐぬぬ……加減が難しいのう」

岩から頭を引っこ抜いたグランデがブンブンと頭を振って小石やら何やらを振り払う。普通の人間なら完全に即死してるレベルのダメージだと思うんだが、ピンピンしてるな。流石ドラゴン、つよい。

「コースケ呼ん……なんじゃ、それは?」

「俺達が座って、これでグランデに運んで貰おうかと思ってな」

「ほほう、なるほどの。上の取っ手を掴んで飛ぶわけじゃな」

グランデがずらっと並ぶゴンドラを興味深げに眺める。

「そうだ。どれが飛びやすいか試してくれないか?」

「うむ、任せるが良い」

そう言ってグランデは翼を広げてふわりと浮かび上がり、気球のゴンドラのような籠型の三号を持ってすっ飛んでいく。中に何も入っていないせいもあってか、軽すぎてかなり飛びづらそうだな。一度グランデを呼び、適当に重りを入れてからもう一度飛んでもらう。

重りを入れたらさっきよりも飛びやすそうに見えるな。他のゴンドラ用にも重りを作って座席に乗せ、シートベルトで固定しておく。重さはひとつあたり80kgのものにしておいた。シルフィも俺もこれより軽いが、今後ダナンやレオナール卿なんかを乗せてもらう可能性もあるからな。

ゴンドラを掴んで飛行訓練をするうちに慣れてきたのか、グランデの飛行も安定してきたようだ。

「飛びやすいのはこれとこれとこれじゃな」

小一時間ほど試験飛行をした結果、座席型の一号、鳥籠型の四号、ブランコ型の五号がグランデにとっては運びやすい物だということが判明した。箱型や籠型は空気抵抗が大きすぎて保持するのが大変であるようだ。

「肝心の飛行の方は大丈夫なのか?」

「うむ、大丈夫じゃろう。慣れてくるとなんでもないの。普通に飛ぶ分には問題ないと思うぞ」

「普通に?」

「うむ。空中戦をしようとすると力んで速度が出すぎるからまだ無理じゃ」

「なるほどな。まぁ俺達を運んだまま空中戦なんてことにはならないから大丈夫だろう」

「そうだと良いんじゃがな。まぁ、速度は前よりも出るからの。いざとなったらまっすぐぶっ飛んで振り切れば良いじゃろ」

「それだと私達が危険な気がするのだが……」

シルフィが苦笑いをする。確かに急加速されると急激なGの変化で気絶とかしかねないよな。ブラックアウトとかレッドアウトみたいな感じで。あと風圧がヤバいかもしれん。風圧に関してはグランデとシルフィの魔法での防御だけが頼りだからなぁ。

「とりあえず乗ってみるか……どれで行く?」

「私としては一番安全そうな四号を推すが……」

「じゃあ四号で行こう」

四号は一号を鳥籠状に鉄格子で覆った防御力強化型だ。一応バードストライク対策である。もしストライクしたら確かに直撃は避けられるけど血とか中身は浴びることになりそうだよな、これ。そもそも風魔法で守られているから大丈夫なんじゃないかと思うんだが。

「よし、準備完了だ」

俺とシルフィはゴンドラ四号に乗り込み、シートベルトで身体が固定されていることを確認してグランデに声をかけた。

「うむ、ゆくぞ。舌を噛んだりしないように気をつけるんじゃぞ」

浮かび上がったグランデがゴンドラ四号の上部についているハンドルを掴み、空へと飛び上がった。流れる景色、吹き付ける風、身体を座席へと押し付ける強烈なG! その果てにあるものとは……!

「う、うぷっ……」

「おろろろろろ……」

エルフの里の門前広場に降り立つなりシルフィは顔面蒼白になり、俺は吐いた。

あのね、これ、むり。スピードと絶妙な揺れとアップダウンがあまりにもヤバい。光の精霊魔法で乗り物酔いを治癒したシルフィが俺にも回復魔法をかけてくれる。ああー、これ気持ち良いわー……なんとか気分が良くなってきた。

「な、なんかすまんの……」

「い、いや、グランデは悪くない、ぞ」

「ああ、これは座席が悪かった。座席を吊り下げている五号の方が良かったかもしれんな」

四号はしっかりと座席がフレームに固定されているせいか、グランデの身体の揺れがダイレクトに俺達に襲いかかってくるのだ。座席がブランコのようになっている五号ならもう少しマシだったかも知れない。というか、五号にも改良の余地がありそうだ。吊り下げるブランコの鎖に伸縮性を持たせるとかして縦揺れ対策もしたほうが良さそうな気がする。

なんとか元気になったので、俺が吐いたものはシャベルを使って埋めておく。久しぶりに吐いた気がするぜ……うぷっ、思い出しゲロしそう。

「少し休んだらエルフの職人のところにグランデ用のリミッター作りの相談に行こう。あまり時間的に余裕もないし」

今日で休みに入って四日目だ。休みの期間は一応一週間ということになっているので、今日含めておよそ三日間しか時間がない。早めに相談したほうが良いだろう。

「そうだな、早い方が良かろう。こちらにいる間に完成すれば良いのだがな」

「間に合わなかったら向こうで作ってもらうしか無いな。アイラ達でも作れるだろうし」

そう言いながらインベントリから飲料水のペットボトルを取り出し、口を濯ぐ。シルフィにも一本飲料水のペットボトルを渡しておいた。

「グランデも水飲むか?」

「うむ、もらおう!」

グランデの手ではペットボトルのキャップは外せないだろうからキャップを外して渡してやる。ごつい爪の生えた手は意外と器用なのか、問題なくペットボトルを握ってその中身を飲むことができるようだった。

「うーむ、この身体とこれっぽっちの水でもなかなかの量に思えるな」

「ははは、そうだろうな。身体の大きさが何十分の一、いや下手すると百数十分の一くらいになってるのか? 色々と勝手も違うだろうし、慣れていかなきゃいけないな」

「そうだな。ひとまず今日のところはリビングにベッドでも追加して寝かせるか」

「む? 妾は別に地面の上で構わんぞ?」

「人族としての姿で生きるなら生き方も変えないとな。柔らかくて温かいベッドは良いものだぞ?」

「ふぅむ、そういうものか……人族の生活を満喫するというのも確かに一興かもしれんな」

グランデが首を傾げて考え込んでから納得したように何度も頷く。うんうん、その調子で人族の生活に染まってくれ。正直その容姿で地面の上で寝かせるとか絵面的に虐待か何かにしか見えないからな。見てて痛々しいというか、いたたまれない気持ちになること必至である。

「そろそろ体調も回復したか? なら職人達のところに向かおう」

「アイアイマム」

「うむ、ついてゆくぞ」

そうして俺達三人は連れ立ってエルフの里へと再び足を踏み入れるのだった。