作品タイトル不明
品川晴子の発見
はい。私、品川晴子です。
迷宮探索課のメンバーで、プレイヤーで、小林先輩や太田先輩と同じ迷宮攻略班の一員です。
本日は快晴。今日はお仕事という名目で風音ちゃんたちとショッピングモールでお買い物です。
この場にいるのは風音ちゃん、弓花ちゃん、レームちゃん、エミリィちゃんにタツオくん。それに風音ちゃんと弓花ちゃんのお母さん方と、何故か付いてきた竜崎班長。
オーリさんとカルラ王さんはいませんが、オーリさんは風音ちゃんたちとは元々別パーティだったらしくて、今は寄宿舎を借りて迷宮探索課の職員として見習い研修をしています。さすがランクA冒険者で、実力は私よりもかなり高いし、リーダーをしていた経験もあって早速有望株として扱われてるみたい。日本語もそれなりに覚えてるしね。正直、先輩方よりも頼りがいありすぎて惚れちゃいそうです。彼女さん、いるらしいけど。
後、カリスマスキンヘッドのイケメン王様であるカルラ王さんは都内の温泉巡りをしてるって風音ちゃんが言ってました。温泉好きらしいのよね。
それにしてもどちらも美形。エミリィちゃんやレームちゃんもそうだけど、あっちの人は妙に顔立ちが良いのが多いから困る。
そういえば、そのことを話して風音ちゃんと弓花ちゃんも可愛いけど少し埋もれてしまうわよねって言ったら、弓花ちゃんが少しムキになって「実は私、あっちでアイドルやってたんですよ」とかおかしなこと口にしてたのよね。
風音ちゃんが「偶像崇拝という意味でなら、まあ……」なんて言っていたからまったくの間違いではないようだけど。後、太田先輩に聞いたら「絶対に否定するな。死にたいのか」とか顔を青ざめていたのよね。弓花ちゃんはちょっと地味系だけど可愛い女の子なのに、太田先輩は妙な誤解をしているみたい。
まあ、ともかく今日はみんなでショッピング。
弓花ちゃんも昨日は久々に身体を動かしたらしくて、いつも以上に元気そう。他のみんなもそういう意味ではイキイキしてるし、私も早朝訓練に参加させてもらいたいかも。けど、それを小林先輩に言ったら「絶対に駄目だ」って怒られたし、色々と秘密にしなきゃいけないことも多いみたいだから、まだまだ一緒に訓練とか無理っぽい。
あ、竜崎班長がまたタツオくんの世話を焼いてる。
なんでも昔の上司の子供さんらしいのよね。詳しくは教えてくれないけど、竜族で偉いさんって言ったら竜の里でしょ。それぐらいは私も知ってるし、タツオくんは竜の里出身なのかもしれないわね。
それにしてもタツオくんは『インビジブル』のスキルを自力で使えるから、こういう人通りの多いところでも普通にしてるし、凄い賢い。
あ、風音ちゃんが飽きて、携帯でゲームとか始めてる。自宅にいる分身風音ちゃんはほぼ24時間フルピッチでオールドブラッド・キルゼムオールやってるって話だし、本当にゲーム好きなのね。すでにプレイ時間200時間オーバーしてると聞いたときにはさすがに正気を疑ったわ。
あ、風音ちゃんのお母さんがゲーム機取り上げて叱ってる。けど「ゲーム用は家にいるでしょ」って叱ってるのは普通に意味が分からないわね。慣れって怖いわ。
「ユミカ。私、こっち見て回りたいんだけど」
そうこうしているウチに、エミリィちゃんがショッピングモールの中のお店のひとつを指差している。
「あ、私も行くぜ。こっちの服は薄いけど、見た目は悪くねえな。私にあったサイズのがなかなかないのが残念だけど」
「レームのは子供用の方がサイズあるんじゃないの。ほら風音、あんたも来なさい」
「え、私は中古売場に行きたいんだけど」
「ゲームのでしょ。そんなのいつでもいいでしょ。いいから来なさいよ。レームの服買うんだから。お母さん、ちょっとあの店よるわよ」
そう言って弓花ちゃんが先導して、それを私やお母さん方が続いていく。エミリィちゃんとレームちゃんは日本語ができないから、風音ちゃんや弓花ちゃんが通訳代わりをしているのよね。さすがに意志疎通が可能になる『情報連携』を見知らぬ他人に繋げるわけにも行かないし、こればかりは仕方ない。
とはいえ、みんな元気がいいな。まあ、私も二十前半だから別に若い方なんだけど、なんかやっぱり若さってのを感じる。
そんなことをしみじみと感じていて良いのかと考える私の横で、いつの間にか弓花のお母さんが静かに涙を流して、風音のお母さんに肩を叩かれていた。
まあ、死んだと思っていた娘さんがああして帰ってきたのだから当然よね。弓花ちゃんがいないときにはこうして泣いているときがあるのを私も何度か見ている。
「本当にあの子が戻ってくるなんてねえ。まだ、夢なんじゃないかって……起きたらいなくなっちゃうんじゃないんじゃないかって思っちゃうのよ。いえ、今朝いなくて旦那に詰め寄っちゃいましたけど」
そう言って泣きながら笑う弓花のお母さんの言葉に、私も風音のお母さんも少しだけ笑い返す。弓花ちゃんたちは朝は早朝訓練として、とある場所で訓練をしているのだ。
私は近付かないように言われているが、どうやら今は迷惑になるからってロボットさんたちが穴を掘って地下に訓練場を作ってるらしいとかそんな話をしていた。どうやら、あの最初に目撃したタツヨシくんツインソードというゴーレム兵とは違い、掘っているのは本物のロボットらしい。実際に見たわけじゃないから、よくは分からないけど。
それから涙を拭いて鼻をかんだ弓花ちゃんのお母さんが私を見た。
「ともかく迷宮探索課には感謝してますよ。娘を連れ戻してくれて、ありがとうございます」
「いえいえ。全部、娘さんの努力のたまものですから。私たちなんてホント何もしてません」
実際にこの世界に戻ってきたのは彼女らの努力によるものだ。ダンジョンの最深層がこちらと繋がる確率は実は高くはない。だから、繋がっているという情報のあるダンジョンに潜るという判断自体は正しいけれど、それにしても国の規模によっては即刻封印処理されるであろうA級ダンジョンを踏破とか普通にあり得ない。少なくとも私には絶対に無理な話だ。
だから、これは弓花ちゃんたちの努力が実った結果の再会なのだ。私たちはただそのお膳立てをしただけでしかない。
とはいえ、お母さんにとってはソレも重要らしい。それからまだ鼻を少し鳴らしながら、とある人の名を呟いた。
「娘のこと、『達良くん』にも連絡付くといいんだけどね」
「達良くん?」
誰だろう? 聞いたことのない人の名前だ。苑私の疑問の顔を見て、弓花ちゃんのお母さんが「ああ」と呟いた。
「そりゃ晴子ちゃんは知らないわよね。達良くんってのは、旦那の事務所の元職員でね。弓花が雇えないかって引っ張ってきたのよ。旦那も最初は娘に付いた悪い虫……みたいな感じだったのに、すっかり惚れ込んじゃってね。弓花を嫁にやるのはアイツしかいないって口にして、弓花がよく嫌そうな顔してたのよね」
ああ、お父さんが盛り上がっちゃったのね。だったら、まあ娘としてはそういう反応になるわ。そう私が思っていると、弓花ちゃんのお母さんが辛そうな顔になった。
「ただねぇ。ふたりが死んだと聞いてから、随分と人が変わっちゃってね。風音ちゃんとも仲が良かったし、友達だったからね。辛すぎたんだろうねぇ。あの子が悪いわけでもないのに泣きながら謝って、自分が死んだ方がマシだったって……それで、旦那が怒っちゃって。そのまま飛び出して、それから音沙汰なし」
「あの、家の方には?」
私の問いに「帰ってないって」と弓花のお母さんは返してきた。
「実家にも戻ってないらしいの。だからね。早まった真似してなければいいんだけどね。ウチの娘、あんなに元気なんだから」
「そうですね。本当に……達良さん。今、どうしてるのかしら」
風音ちゃんのお母さんも知り合いだったらしく、気遣わしげな表情を見せていた。
けど、ちょっと待って。達良って……あの? パーティ『TATU☆YOSHIと 愉快な仲間たち』のリーダーの殺魅使いのTATU☆YOSHI? って……ああ、そうだわ。よく考えてみれば私、知ってる。その達良さんもそうだけど、風音ちゃんも私知ってた。随分前にオフ会で風音ちゃんと会ったことあるじゃない。
あーあー、思い出した。そうか。すっかり忘れてたわ。風音ちゃんがあのジーク様の使い手だ。カラオケ屋でコーラ盛大にこぼして店員さんに土下座してたあの子だわ。
けど、風音ちゃん。見た目変わってないわよね。あのときの年齢を考えると、えーとオフ会はあの子が中一だったはずだけど。
あれ……もしかして、あの子ってまったく成長してないんじゃない? おっぱいとか。