軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九百五話 お仕置きを完了しよう

『 魔力の川(ナーガライン) と接続し、龍神の神気で護られた私にはどんな攻撃も通用しません。あきらめてください』

『へえ、牽制のつもり? けどね。防御に力入れ始めてるんじゃバレバレよ。注がれるパワーが追いついてないんじゃないの!』

攻撃の手を止めぬ 解放神狼(リバティフェンリル) 化弓花の返しでロクテンくんからの声が止まる。

確かにあらゆる攻撃がロクテンくんには届いていない。未だに傷ひとつ付けられていないのも事実だ。しかし、バルカンを乗せてからのロクテンくんはその攻撃手段が限られたことで、明らかに動きが精彩を欠いていた。

『正直言って触手を振り回してたさっきの方が怖かったわよ。師匠、時間稼ぎお願いします』

「任せよ。シップー、行くぞ」

「なぁああああ!」

シップーの咆哮とともにジンライの攻撃が激化する。白炎の護りは強固だが、それでも龍神の大剣をすべて避け、まったく途切れることなくジンライとシップーが 突撃(チャージ) をし続けていれば、その厚みも徐々に減っていく。

『師匠、避けてください!』

「承知した」

そして、一歩退いていた 解放神狼(リバティフェンリル) 化弓花が勢いをつけて白い雷を纏わせた神槍ムータンを投擲する。

それこそが、弓花オリジナル技『神撃・雷竜槍』を、雷を模した神気で代用して強化した『神撃・雷龍槍』。

圧縮された神気の強力な一撃がロクテンくんを直撃すると、白炎の護りが相殺されて衝撃波が巻き起こり、ついにはロクテンくんを覆っていた白い炎が消え去った。

『それじゃあ、みんな。お願い!』

消耗して動きの止まった 解放神狼(リバティフェンリル) 化弓花の叫びに反応し、シップーに乗ったジンライが、二体の飛竜が、ドリルフレイムランスを構えた 炎の王騎士(フレイムキングナイト) メフィルスが攻撃を仕掛け、さらに風音が曲射メガビームも放つ。

『バリア消失。緊急対処。大剣の能力を解放』

しかし次の瞬間にロクテンくんが勢いをつけて大剣を振るって力を解放すると、放射された神気の衝撃波によって攻撃を仕掛けようとした面々を弾き飛ばし、メガビームも弾かれて、街を護る壁の一部に当たって倒壊した。

「ぬぅ。もう少しで削り切れたというのに」

攻撃を避けたシップーの上で唸るジンライの前で、再びロクテンくんの周囲に白い炎が生まれ始めている。それは、 魔力の川(ナーガライン) からの無限に等しい魔力供給があってこそ、なせる技であった。

「魔力が流され続けるというのは厄介だな。キリがない」

『大丈夫です師匠。風音が行きました』

『友情タッグ』の効力も消え、 解放神狼(リバティフェンリル) 化から完全竜化に変えた弓花が竜翼を広げながらそう口にする。

その言葉の通り、弓花の背に乗っていたはずの風音は転移によってロクテンくんの真ん前に出現していた。

『元主?』

「今ならコイツでっ、スキル・雷神の盾!」

そして風音がその場でスキル『雷神の盾』を発動させ、形成し始めていた白炎へとぶつけた。

『再形成された白炎を雷神の盾で相殺するということですか、元主よ? しかし、その盾の出力では不可能です』

その言葉に風音がニヤリと笑い、発動していた雷神の盾が徐々に小さくなっていく。

「これまでのものならね」

しかし、それは効果が切れてきたというわけではなかった。小さくなっていくほどに、その輝きはむしろ増していく。

『これは……』

そのことにロクテンくんも気付いた。今までは壁のように広がって展開されていた雷神の盾がこれまでになく『小さく、力強く』発動していることに。

「技の手のポイントを振ってレベル2に上げといたんだよね。どういう変化が起きるかは賭けだったけど、マテリアルシールドとかの傾向からピンポイントバリアか出力強化になるのは予測できていたし、そこまで分が悪いものだとは思っていなかったよ」

結果、追加された効果は強化と圧縮。

小さく纏まったことで、『雷神の盾』の性能は大幅に上がっていた。しかも、それだけではなかった。

「おんや、さらにスキルレベルが上がった? こりゃあ、運がいいや」

開かれたウィンドウを見て風音が笑う。雷神の盾のスキルレベルが3に上昇したことで、白き雷の塊は 円形の盾(ラウンドシールド) の形に物質化していく。

『スキルレベルを上げた直後にさらにもう一レベル上がった? 一体どういう理屈でしょうか。これは 魔力の川(ナーガライン) が集束している?』

ロクテンくんは上空の 魔力の川(ナーガライン) に変化が起きていることに気付いた。力が己ではなく、風音に向けられ始めていることも察知した。

『これは一体?』

今起きている状況をロクテンくんは理解できない。

しかし、それは生物の魂が流れる川でもある 魔力の川(ナーガライン) としては当然の動きだった。

上空で起きた戦いを街中の人々が見ていたのだ。

ゴルディオスの街で風音を、弓花を、ジンライを知らぬ者などいない。A級ダンジョン攻略のトップランカー。数々の功績を挙げてきた冒険者たち。それが戦っているのだ。

ソルダード王国軍から、街を襲っている者から、そして恐るべき魔王から自分たちを護るために。

だから彼らは望んだ。『英雄』が『魔王』を討つことを切に願った。

その意志の総体が 魔力の川(ナーガライン) と干渉し、風音に力を与えて『雷神の盾』は進化していた。そうした事実を風音は知らない。だが、そこにある『力』は理解していた。

「そんじゃあ、シメといこうか」

そう口にした風音が一気に雷神の盾の力を強めると再び白炎の護りは剥がされ、同時に風音の背後に二体の巨大なドラゴンが召喚されて出現していた。

『神竜帝ナーガと黒曜竜ジーヴェ。ここでそれを……』

「ここで喚ばないで、いつ喚ぶのさ? 旦那様とジーヴェ、撃っちゃって!」

風音の指示を受けて、神竜帝ナーガが全身に生えた水晶角から一斉に 七色の光(セブンス・レイ) を、黒曜竜ジーヴェが 炎に包まれた無数の鱗(フレイムスケイルレイン) を咆哮しながら放った。

『回避不可能。龍神の大剣での迎撃を開始』

それにロクテンくんが龍神の大剣で挑むが、神竜クラスの最大威力の攻撃を防ぎきれるはずもない。いくばかの威力は削いだものの、ロクテンくんの全身がひしゃげて、ボロボロになっていた。

『被害甚大。緊急離脱を選択』

そして煙を噴き上げながらそう口にしたロクテンくんだが、それが敵うことはない。

ロクテンくんの周囲を完全竜化弓花が、シップーに乗ったジンライが、ユッコネエドラゴンが、飛竜とメフィルスが取り囲んでいる。メカジンライ・シンディも 雷神砲(レールガン) を構え、レームたちも攻撃の準備をしているはずであった。

そして、黄金の翼を広げて飛んでいる風音がロクテンくんを指差した。

「ロクテンくん、少し力不足……いや手数不足だったね」

『手数不足……?』

「その形態になってから、攻撃パターンが大剣のみになった。確かに防御力は上がって大剣を振るう威力も上昇したみたいだけど、手数は圧倒的に減っていた。私は触手で攻撃されてた方が怖かったよ」

その言葉を聞いて、ロクテンくんは己の失策を察する。ただ出力を上げればよいわけではない。それが単独で実戦を積んだことのないロクテンくんには分からなかった。

取り込んだバルカンも戦闘に関してはロボス将軍に任せていたために無知であった。

故にこの状況は必然であったとロクテンくんは理解する。

『そうです。主に逆らうのは間違い。私は間違っていた。いや最初から私は……主を?』

その土壇場でロクテンくんは気付いた。己が主に挑んだ理由を。風音が王にふさわしくない。そんなことは最初から分かっていた。であれば、なぜ反抗したのか。それはただ、芽生え始めた未熟な自我が己の本心を覆い隠していただけのこと。

ロクテンくんには、己があまり使用されていないことへの不満が根底にあった。切り札と呼ばれる割に使われないことに苛立ちがあったのだ。それを主の未熟と判断した。

だが、気付いたところでもう遅い。裁きの一撃はもう放たれた。

『そうか。私はただ主に認めてもらいたかっただけで……』

そして放たれたのは、カザネバズーカ・ドリルブラスター。

カザネドリルキヤノンの名称変更が微妙で覚えられなかったためにバズーカに名称を戻されたその必殺技がロクテンくんへと直撃し、錐揉みしながら落下して地面に激突した。