作品タイトル不明
第七百九十七話 地上に戻ろう
◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十四階層 風音コテージミニ リビング
「レーザーバルカン砲。銃口が四つあって、それぞれにバッテリーが入っていて、回転しながら順に撃ってく武器みたいだね」
ステータスとスキル欄を見てうぇーっとなったものの「温泉大好き温泉大好き」と繰り返しながら温泉に入ったことでどうにか気力を回復させた風音が、この隠し部屋で発見した戦利品のレーザーバルカン砲を見ていた。
「結構強力なものなんだよな?」
レーザーバルカン砲を挟んで反対側に座っているレームの言葉に風音が頷く。すでに試射もしており、その威力について申し分ないことも風音は把握している。それから風音はレーザーバルカン砲の後ろ側をレームに向けながら口を開いた。
「かなりの火力はあるね。それにこれの利点はね」
「なんか、すごい機能があるのか?」
「あるよ。こうしてケーブルを永久バッテリーに繋ぐことで」
「お、おう」
「中に入っている普通のバッテリーを充電することが可能なんだよ」
「あ……そう」
風音の言葉にレームは少しばかり肩を落とした。四連のレーザーをひとつにまとめて強力なレーザーを撃てるとかそんなのを期待していたのだが、そういう機能ではないようだった。
「これで冷蔵庫や洗濯機とか使うときに永久バッテリーを蛸足配線にしなくても良くなったからね。バッテリーチャージャーとしても使えるんだから、すごく助かるよ」
「いや、もっと別の褒めどころはねえのかよ」
ガーッと叫ぶレームに風音が「えーとねえ」と口にする。
「そりゃあ、まあ威力は結構なもんだしね。連続で撃てるから、後衛に近付かれた場合にも撃ちまくって敵を足止めするのにも使えるよ。ゴレムスキャノンの武器に使うんなら十分に有用なんじゃないかな」
「よっしゃ。じゃあ、こいつはもらっちまうぜ」
そう言ってレームが喜んでいた。すでにゴレムスキャノン用として使うことは内定されていて、その最終チェックが今であったのである。
その様子をジンライは、「ふむ」と言いながらすごく羨ましそうな顔で見ていた。しかし、レーザーバルカン砲はその大きさや重量からして人間向けのものではなく、強化型マシンナーズソルジャーやパワードスーツオンリーの兵器なので生身の人間であるジンライには使用できないものであった。ジンライは誰にも気付かれてはいないが、少し拗ねていた。
「うーん。これでゴレムスキャノンも武装は結構充実してきたかな。フライの付与魔術で動きはいいけど、後はブーストが欲しいんだよね」
「 飛ぶ(フライ) のか?」
「どちらかというと 跳ぶ(ジャンプ) って感じ?」
できれば足の装甲がカパッと開いて、そこから炎を噴出させて飛ばしたいと風音は考えていた。
(まあ足にふたつはともかく、背中にバックパックウェポンとしてチャイルドストーンをひとつ付けてファイア・ブーストを……いや飛べても着地の段階での逆噴射ができないか。逆噴射まで含めると、それ用のチャイルドストーンを用意するのも、制御パターンを構築するのも結構手間になるしなあ)
そこまで考えてから、風音はまあいいかとその考えを放り出した。面倒になったのである。
そもそも付与されている『フライ』の魔術によりゴレムスキャノンの機動力は十分ではあるし、落下リスクが怖いので今のままの方が安全だろうという判断もあった。
そうしたことを考えながらうんうんと頷く風音に、レームが訝しげな視線を向ける。
「な、なんだよ?」
「いんや。とりあえずレーザーバルカン砲はゴレムスキャノンに使うのは問題なしだけどさ。ひとまず今回のダンジョン探索はここらで切り上げてさ。明日には帰ろうかなって思って」
「む、もう戻るのか? この階層はまだ入ったばかりだぞ?」
ジンライが少し不満そうな顔でそう口にする。
風音たちは第七十四階層のメインである廃ベガスシティの敷地内にこそ今入っているが、まだ街の中の探索はできていない。なので、そのジンライの反応は、それはそれでもっともなものではあったが、風音は顔をこわばらせながら両手でバッテンを作った。
「今回はパスで。街へはこの水路からゴーレムメーカーで入り口を造ろうと思うんだけど、しばらくはアレが外をうろついていそうだし、今はほとぼりを冷ましたいんだよ」
そう言いながら風音は身体をガタガタと震わせていた。どうやら軽くトラウマになっているようであった。
そして、ジンライとしては探索を続行したかったようではあったが、帰ろうという女子組の意見に押され、結局は翌日に地上へと戻ることとなったのである。
なお、街の外に出ていた例の奴らは巨大ワームと戦っているようで、それを無視して風音たちは第七十三階層へと登っていった。
そして風音たちは、その翌日の夕方には第七十階層へと到達し、そのままダンジョンポータルで地上に戻ると、風音はさらに次の日の昼頃に冒険者ギルドマスターのルネイ、同じプレイヤーであるオロチと会うことにしたのである。
それは以前にメールで打診を受けた竜牙衆についての話し合いをするためであった。
◎ゴルディオスの街 中央通り
「おい、アレ見ろよ」
「白き一団だ」
「銀色の狼の仮面を付けた人が、アレだろ。確か」
「 血塗れの狂戦士(ブラッディベルセルク) だ」「銀狼将軍だ」
「どっちだよ。それよりも一緒に並んでるの誰だよ?」
「ああ、最近パーティに入った、確か……黒竜将軍とかいうヤツだろ。宝石でできた剣を操ってたのを見たことがある」
「ドラゴンを喰って生きてるとか、ドラゴンに頭を喰われたとか言われてたよな。そもそもなんで将軍なんだ?」
「よく分からないがヤバいな。けど、ヤバいと言えばあのリーダーの格好だろうな」
「ああ、前よりも凶暴なデザインになってるな。あれ、魔物素材だろ。どんだけ戦ってりゃ、ああなるんだよ」
「なんか俺、あのチンチクリンの横に透明なドラゴンとオーガが並んで歩いているように見えるんだけど」
「おいおい。ちょっと疲れてるんじゃないか」
「今日は萎んだままか。チッ」
いつも通りのひそひそ声の中、風音たちはゴルディオスの街の中央通りを歩いていた。
それはもう普段通りの光景であった。風音たちはあまりにも有名になり過ぎたのだ。なので、そんなひそひそ話をされることにも慣れっことなっていた。とはいえ風音も女の子だ。多少、気になることもある。
「萎んだと言ったヤツに魔王の威圧をピンポイントで当ててやる」
「止めなさいよ。危険だから」
『母上をバカにした者など私が燃やします』
そう言い合いながら風音たちが歩いていくと、正面からオロチと、共に歩いてくるとある人物の姿が見えてきた。そしてちょうど冒険者ギルド事務所の前で両者は接触し、風音はオロチと挨拶をしてから、もうひとりの人物へと視線を向けた。
「えーと、トールさんが来るってのは聞いてなかったけど?」
そう口にした風音の前にいたのは、パーティドッグソルジャーのリーダーにしてプレイヤーのひとりであるトールであった。
風音の後ろにいる弓花とタツオも警戒した顔をしている。そして、そのことに気付いたトールが少しばかりほほえんでから挨拶を交わす。
「やあ風音さんに弓花さんに……それにタツオくんかな。竜牙衆の話をオロチさんに聞いたものでね。少しお力になれればと思って、無理を言って同行させてもらったんだよ」
「カザネ、すまないな。だが話を聞くだけならば損はないと思う」
オロチが申し訳なさそうな顔をしながらも、そう口にした。どうもオロチは今日風音たちと話し合いをすることをトールに知られてしまったようだった。そのことに風音が少しばかり目を細めながら口を開く。
「むぅ……まあ、いいけどさ。うちにはジンライさんがいるんだから、今度からは最初に話を通しておいてよね」
「ええ、申し訳ありません」
トールがさして申し訳なさそうでもない顔でそう返す。
「それでトールさんの話ってなんなの?」
「そうですね。それについては私の種族にも関係することなのですが……」
そう立ち話が始まろうとしたときである。ギルド事務所の扉が開いて冒険者ギルドマスターのルネイが出てきたのは。
それには風音とトールも会話を止めて、ルネイに挨拶を返した。それにルネイもにっこりと笑って「おはようございます」と返すと、事務所の中へと風音たちへと手招きをした。
「こんなところで話していい内容ではありませんので。ひとまずは事務所の中へ。さあ、どうぞ」