軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百三十八話 再び探索をしよう

◎ロードゾラン大樹林

「行ったぞ」

「おりゃぁあ!」

「任せよッ」

『撃ちます』

ロードゾラン大樹林の中で、凶悪な発射音が木霊する。ジンライとレームのダブル 雷神砲(レールガン) とタツオのメガビームがその場で一斉に放たれ、風音とユーコーがタツヨシくんケイローンに乗って誘導してきたデュアルモーターマシラオーを次々と撃ち倒していく。

「うーわー、凶悪ね」

タツヨシくんケイローンに乗ったユーコーが目の前で起きている状況を前に、そう口にする。

「ちゃんと当たれば闇の森の魔物にだって通用するからね。メガビームもあいつらなら問題ないし。タツオー、やっちゃえー」

その風音の言葉にくわーっと鳴き声が返り、デュアルモーターマシラオーを倒す勢いは増していく。そして、数分と経たずに殲滅はほぼ完了し、残りのデュアルモーターマシラオーもその場から逃げていった。

「風音、倒した魔物はどうするの?」

「呑気に素材回収してる余裕はないよ。ひとまず大型格納スペースに入れられるだけ入れて、後は囮の撒き餌代わりと考えて諦めるしかないね」

そう言いながら風音はさっさと戦闘後の後始末を始めていく。例え戦闘が終了しても、他の魔物がいつやってくるかが分からない。この場でゆっくりしている時間などないのだ。

そして五体ほどのデュアルモーターマシラオーの亡骸を収納すると、一行はその先へと進み始める。

すばらくすると、さきほどのデュアルモーターマシラオーと戦った地点で巨大な炎が巻き上がり、凄まじい叫び声とバキバキと木々の倒れる音が響き渡ってきた。どうやらデュアルモーターマシラオーの亡骸を巡って他の魔物たちが戦闘になっているようである。

「カザネ、すごい声が響いてんぞ」

『強そうですね』

レームとタツオの言葉に風音も頷く。あれらがデュアルモーターマシラオーの元に向かうルートと自分たちのルートがバッティングしなくて良かったと思いつつ、これからのことを考える。

「今回でエンジェルヘア・デトネイターの捕獲が無理なら、次に通るルートはまた変えないといけないね」

一度通った場所には、その臭いを辿って別の魔物が待機している。それも闇の森の厄介なところであった。そんなことを風音が思案していると、前にいるジンライから声がかかる。

「カザネ、来るぞ」

「え、もう?」

スキルの『インビジブルナイツ』をかけていても、この様である。厄介という他なかった。

「ていうかさー。どうやって指定の場所までハーディさんたち辿り着いたわけ?」

弓花が疲れた顔でそう尋ねる。

「運と実力かなあ……この森だとスニークスキルよりもプレイヤースキルでの隠密行動の方が使えるって結果になってるし」

風音も自信なさげにそう答えたが、そう言っている間にも魔物が再び迫って来ていた。そして、森の木々の隙間からそれが見えたのだ。

「あれはセンチピードカノンッ!?」

そう風音は言うと慌てて走り出してパーティの先頭に立った。そのとっさの行動にはジンライも驚くが、続けて何かを感じてジンライがセンチピードカノンの方へと視線を向ける。

「なんじゃ。何か……来る?」

その言葉の直後にセンチピードカノンと呼ばれた巨大ムカデの口から何かが射出された。

「スキル・マテリアルシールド」

同時に風音が両手を前にかざして叫んだ。そしてスキルの発動により不可視の壁が発生したが、それはわずか一瞬で破壊される。その威力にパーティ全員の顔が驚愕に染まったが、続けてのふたつめの防御手段である『暴風の加護』によってそれはわずかに逸れて、離れた森の中へと飛んでいき、そのまま地面に激突して凄まじい破壊音と爆発音が鳴り響いた。

「今のって……何かの弾かよ?」

「爆発するの? あんなのが!?」

ライルとエミリィが目の前の魔物を見る。それはメタルブルーの緑の目をした巨大な百足であった。

「風音、牽制するわ」

そして、仲間の中ですぐさま立ち直ったユーコーがそう言って一歩前に出る。

「お願いゆっこ姉!」

偽りの名を呼ぶことすら忘れて焦っている風音の言葉に、ユーコーは頷くことすらもせずにセンチピードカノンへと『フレアレイン』のスペルを唱える。

「グギャァアアアアアア」

巨大な百足が叫び声を上げた。上空に発生した黄金の雲から炎の矢が大量に降り注いできたのだ。もっともセンチピードカノンもすぐさまグルグルと丸くなって己の甲殻で火の雨を防いでいく。もっともそれは風音たちの狙い通りであった。

「オッケー。レームたちも撃ってぇえ」

そして風音のかけ声とともに、ジンライとレームの 雷神砲(レールガン) とタツオのメガビーム、さらにはエミリィの四重ファイア・ヴォーテックスが放たれる。

その同時砲火に甲殻の一部が割れ、

「続けて投擲、てぇええええ!」

続いてライルの彗星の投槍の、弓花のムータンの、ライノーのグングニルの雷神槍が放たれ、ついにはその甲殻が破壊された。そして準備は整った。

「ジュエルカザネ、ゴーッ!」

風音の杖の先から 魔金剛石(マナダイヤ) が飛び出し、そのまま小さな風音の姿となってセンチピードカノンの甲殻の割れた場所へとダイブする。

「巨大なのにはもう必勝パターンねえ」

「いや、そうでもないみたい」

ユーコーの言葉に風音が眉をひそめながらそう返した。その意味をユーコーが問おうとするが、それよりも早くに理由は判明する。

バキバキとセンチピードカノンが自ら身体を割って、その身を分けたのだ。断面から慌ててジュエルカザネが出てきたところを無数の足が振り下ろし、その小さな身体が宙を舞った。

「あー、コアに到達する前に対処された」

「なるほどね。けど、ダメージは十分。いけるわよ」

そう言ってユーコーが両手を掲げる。

「スペル・ラストマジック・コロナゲート」

ユーコーのもっとも得意とする魔術が発動し、太陽のような爆炎がその場に生み出されてセンチピードカノンを包み込んだ。その中で自ら千切った身体の傷口から燃えていくセンチピードカノンが悶え苦しんでいる。

「続けて撃って」

風音の言葉に射撃が継続されるが、しかしセンチピードカノンは倒されることなくコロナゲートの炎の中からも抜けて、一目散に逃げていってしまった。

「ああ、惜しい」

「千切られた半分だけ拾って、さっさと離れるわよ」

悔しそうな風音にユーコーがそう口にする。風音も「あいよー」と言いながら、センチピードカノンの下半身をスキル『真・空間拡張』の大型格納スペースの中へと収納すると、すぐさまその場を後にする。逃がしてしまったのだから、センチピードカノンの仲間がやってくるかもしれないのだ。

それから少し経った後に、また戦っていた場所で魔物同士の戦闘の音が響いていた。

その様子をこわごわと見ながら、風音たちはさらに先へと進んでいったが、やはり予想は的中した。

風音たちの前に眼前を埋め尽くすようなセンチピードカノンの群れが出現し、戦うことなく退却を余儀なくされた。本日はここで終了であった。

◎メゾトルの森 風音コテージ リビング

「敵が強すぎるし、多すぎるよ」

探索終了後のミーティングで風音が「うがーーー」と叫んでいた。闇の森とはいえ、ここまで敵とのエンカウント率が高いとは思わなかったのだ。それだけではなく、群れである率も妙に高かった。

「ひょっとすると前に来た冒険者の臭いに集まって、この辺りの魔物の密集率が高くなってるんじゃないかしら?」

別パーティの通った後の道でも魔物が待機するのは闇の森では常識だ。もっともすでにハーディたちが挑んでからそれなりに時間も経っている。ゲームで考えればすでにそれも解除されているはずであった。

「ゲームとは違って時間が経過しても魔物の分布は戻らないってわけか。もうこりゃ仕方ないね」

風音はそう言って地図を広げる。それは周辺の大雑把な地図の上にメゾトルの森から撮影した航空写真、風音たちが実際に探索したウィンドウのマップを重ねて記述したものである。

「となれば明日はここから離れた場所を経由してから進んでみよう。相当遠回りでもエンカウント率を下げる方向でいかないと身が持たないよ」

「今の闇の森の状況が元々あれなら、意味はないけどね」

ユーコーの言葉に風音が「うっ」となる。

今が風音たちの知らないレベルキャップ解放後のバージョンが高い闇の森で、今日のような状況が常態化している可能性もあるのだ。

「そうだった場合は諦めるしかないね。まあハーディさんたちが探索できたことを考えれば、今のこの地域がたまたまそうなっているだけって可能性の方が高いと思うけど」

そう風音は口にする。ともあれ、探索はまた翌日に持ち越しである。

今度はなるべくハーディたちが通ったであろうルートとは離れて移動する方向で決めて、風音たちはその日は休み、次の日にはまた探索を再開するのであった。