軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百二十二話 訓練を見よう

◎魔道大国アモリア ジェッカの渓谷

「きえええいい!」

『やあああッ』

空をふたつの光が飛んでいく。

それは黄金の翼を生やした巨大な銀狼と、銀色に輝く流星であった。それらが空中で何度となく衝撃している。

『風音ッ』

「あいよっ」

合図とともに風音が発生させたマテリアルシールドを次々と踏み越えながら、巨大な銀狼は加速していく。風音は今や弓花の一部となっていた。己のすべてのスキルで感知したものを『情報連携』で弓花へとダイレクトに送り、ただひたすらに弓花の望む通りに動き続けている。

今やふたりは完全なる一心同体となっていた。

その一方で銀の流星の正体は、ジンライとシップーのコンビである。

ジンライの白の竜牙槍『神喰』は、先の戦いでゼクウの聖者の剣を吸収した結果、 聖一角獣(セイントユニコーン) の槍へと変わっていた。また、シップーもプラチナトゥースタイガーの肉を喰ったことで銀の縞の部分が若干 白金(プラチナ) 色に変わっており、尻尾が五本に増えて今は出力が上がっていた。

その上に元々風の属性も持っていたために、今のシップーは空を駆けることも可能となっていた。

正確に言えば、シップーは黒竜ハガスの戦いを見て、それに抗するべくさらなる自己進化を行っていた。

そして、 聖一角獣(セイントユニコーン) の槍を掲げたジンライを乗せたシップーが空を駆けて、両者が空中で激突する。

「ぬぉぉおおっ」

『いけぇええ』

一角猫(ホーンキャット) モード『疾風迅雷』はまさしく縦横無尽の勢いで空中を駆けていく。

また時折シップーの背に付いた 雷神砲(レールガン) も襲ってくる。攻撃だけではなく、その勢いを利用してその場から離れるのにも使っているようだった。

もっとも弓花も黄金翼だけで移動しているわけではない。発生させたマテリアルシールドを踏み渡り、変則軌道で空中を跳び回りながらジンライの攻撃をさばいている。風音の全感覚能力までをも共有している弓花に一撃を与えるのは例えジンライでも容易なことではなかった。

そうして空で二つの輝きが激突している下では、直樹たちとタツヨシくんケイローンたちが模擬戦に入っており、さらに少し離れたところでは狂い鬼ベヒモスライダーとユッコネエドラゴンが召喚体であることを良いことにガチの殺し合いを行っていた。

**********

「ヤバい。マジでやり辛ぇえ」

『感覚を研ぎ澄ませろ。転移パターンは決まっている』

ライルとジーヴェがそう言い合う。彼の相手をしている黒ミノくんはある付与魔術を追加されたことで今までとはかなり戦い方が変わっていた。激変したと言っても良い。

「見てるけどよ。出がかりが見えねっ!?」

そう言っている間にも黒ミノくんがフッと消失し、次の瞬間にはライルの横に出現した。

黒ミノくんが新たに付与された魔術は『テレポート』。今の黒ミノくんは戦闘中に短距離転移を行えるのだ。もっともジーヴェの言う通り、黒ミノくんは正面10メートルと固定での移動か、または戦闘には向かない長距離転移しか使えない。だが、無属性故に出がかりが読めない。いつ転移するかが分からない。

そもそも黒ミノくんの巨体が突然瞬間移動すると言うだけで十分に驚異であった。

「マジかッ」

そして、黒ミノくんの攻撃にライルがジーヴェの槍を握構えて防御するが、そのまま後方へと吹き飛ばされる。

「くっそぉおお」

それからライルは地面を転がりながらも態勢を立て直し、さあ反撃だと立ち上がったときには遅かった。

「がはっ」

『終わりか』

いつの間にやら背後に転移していた黒ミノくんが、フォレストロブスターで使用したまま変えていない 刺股(さすまた) の武器腕をライルに押し付けて捕縛したのであった。

「抜け出せねえ!?」

もはや両腕の 刺股(さすまた) で押さえつけられたライルは動けない。

「兄さんったら」

「来るぞエミリィ。死んだヤツのことは忘れろ」

直樹が無情にそう告げる。ライルいち死にである。

「けれども。こちらにだって、まだまだ戦力はありますわ。お爺さまッ」

『任せよッ』

続いて攻めるのは、 炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) 姿のメフィルスが率いる 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) だ。

その 炎の鷲獅子(フレイムグリフォン) に乗った十体の 炎の騎士団(フレイムナイツ) がタツヨシくんケイローンへと突撃していくが、それを察知したタツヨシくんケイローンはその場で分離し、ヒポ丸くんがドラグホーンランスの 突撃(チャージ) で突撃して蹴散らしていく。そこに分かれたタツヨシくんドラグーン、タツヨシくんウワン、タツヨシくんサワンと、従僕となっているホーリースカルレギオン、さらにはジン・バハルもがそれぞれ 炎の騎士(フレイムナイト) たちへトドメを刺していく。

今やタツヨシくんドラグーンに宿っている 知性の金属(インテリジェンスメタル) は、戦術を己で構築して戦えるのだ。連携すらも今のドラグーンたちには可能であった。

「お爺さまっ」

それを見て不利を悟ったティアラが召喚騎士たちを解除し、すべての力を結集させてメフィルスを 炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) から 炎の王騎士(フレイムキングナイト) へとランクアップさせる。

『エミリィ、今だ』

「えいっ」

対してケイローンへと合体しようとしていたタツヨシくんたちを、エミリィが四重ファイア・ヴォーテックスで牽制し、直樹も狂骨の王衣を纏って飛び出していった。

そして、そこに立ちはだかったのはホーリースカルレギオンである。

「甘いッ」

イダテンの脚甲を発動させた直樹は、瞬時に懐に飛び込んだ。しかし、ホーリースカルレギオンの中にはもう一体の骸骨兵が潜んでいるのだ。ホーリースカルレギオンの胸元までたどり着いた直樹が闇魔王剣エクスを振るうが、胸が割れて出てきた骸骨兵に受け止められてしまう。

のみならず、ホーリースカルレギオンはその身をバラバラと崩し始め、気が付けば直樹は再構築された無数の骸骨兵によって取り囲んでいた。

「こりゃ、仕込みすぎだろ姉貴」

全身をアダマンチウムの武器で突き付けられた直樹が両手を上げる。

知性の金属(インテリジェンスメタル) の計算能力が今やそこまでの個別行動を可能とさせていた。さらに言えば祝福されたホーリースカルレギオン相手では、元よりも闇属性の骸骨騎士の状態の直樹では勝ち目は薄かった。

そして、

『ぐぬぅぅうう』

メフィルスの方もタツヨシくんケイローンに破れていた。

メフィルスの持つ魔導兵装『フレイムドリルランス』は三つのスペルを重ねた『トルネードファイアドリル』を放つ。対してタツヨシくんケイローンの攻撃はファイア・ドリルを二つ重ねただけと技の格として若干落ちていた。

もっとも元より強力な突進力のあるケイローンは、地力でそれを補い、両者の激突は結果相打ちとなっていた。

しかしケイローンには、最後の手としてロケットパンチがあったのだ。力を使い果たしたメフィルスはその飛んでくる鉄拳に為すすべもなく倒される。全力を尽くしてなお、メフィルスはケイローンには届かなかったのだ。

『もの足りぬが終いだな』

「参った」

「参りましたわ」

最後に残ったティアラとエミリィだが、ふたりの前にはジン・バハルがいた。それで、直樹組とケイローン組の決着が付いたのだった。

**********

そして最後の戦場は、完全に本気での勝負であった。

「グガァアアアア」

ベヒモスビーストを駆りながら、狂い鬼が叫び声を上げてベヒモスホーンクラブを振るい、そこにユッコネエドラゴンが黄金の高熱ガスブレスを己自身に纏いながら突撃していく。そのユッコネエが今、竜体化にスキルセットしているのは最速ゼンラーとタイタンウェーブだ。

ユッコネエドラゴンと風音ドラゴンは、その身を水晶の外殻で護っているため、それが鎧判定となるのでゼンラー率は50%程度でしかない。故に全力でのゼンラー力を発揮することはできないが、それでも速いことは速く、その恩恵は十分にあった。

その上にユッコネエドラゴンはタイタンウェーブで踏みしめて空間を揺らし相手の動きを牽制していく。狂い鬼も踏み込んでの攻撃ができないため、全力でベヒモスホーンクラブを振るえない。

「ガァアアアアア」

その状況に苛立った狂い鬼が叫び、アーマード化する。同時にベヒモスビーストもアーマード化していった。

元よりアーマード化は狂い鬼がベヒモスの肉を食って覚えたものである。同じ種であるベヒモスビーストも狂い鬼を通してその因子を与えられ、今ではそれが可能となっていた。

そして、両者が激突した瞬間に大爆発が起こった。

『ぎにゃあああああああ』

その爆発の煙の中から弾き飛ばされたのは、ユッコネエドラゴンだった。さらに美形のネイキッドベヒモスに乗った美形のネイキッド狂い鬼の美形コンビが煙の中から飛び出してユッコネエドラゴンに飛びかかる。

「グガァッ」

『にゃあああっ』

狂い鬼たちが迫るのを感じたユッコネエドラゴンは、慌てて態勢を建て直して狂い鬼たちにガスブレスを吐く。しかし、一瞬でその場から狂い鬼たちは消えてしまった。

『にゃ?』

ユッコネエドラゴンが首を傾げるが、ゼンラー率100%のベヒモスライダーに50%のユッコネエドラゴンでは速度で敵わない。だがユッコネエは本人のスキルである『直感』が発動し、感じるままにその爪を振るった。

「グガァアアッ」

そして、ドラゴンの爪によって狂い鬼の方が切り裂かれ、叫び声を上げた。速度の速さを利用してカウンターを取った結果だった。

『にゃにゃにゃっ!?』

だがそれで怯む狂い鬼ではなかった。何度かカウンターをもらっても気にせずに走り回り、ユッコネエドラゴンを滅多打ちにしていく。そして、ついにユッコネエは悲鳴を上げてドラゴンを解除した。

「グッガァア!」

「ウガァアア!」

それを勝機と見て狂い鬼とベヒモスビーストが飛びかかる。

ユッコネエは既にダメージが大きく、また猫形態では全身が毛で覆われているため、ゼンラー率はドラゴン以下である。

もっともユッコネエは、この状態であれば風音のスキルのほとんどを使えるのだ。そして、ユッコネエが選んだスキルは『知恵の実』だった。

「ガァアアアア」

「グガァアア」

次の瞬間にはネイキッド狂い鬼とネイキッドベヒモスビーストの視線はユッコネエから知恵の実へと向けられる。

そのままユッコネエが投げた知恵の実に、ネイキッド狂い鬼とネイキッドベヒモスビーストが同時に飛びかかった。どちらも自分が食べようとして動き出したのだ。

「にゃっにゃーー」

そして勝負は決した。そこにユッコネエがメガビームを放ったことで狂い鬼たちは消失していく。もはや暴風の加護も発生せぬほどの近距離には、さすがのベヒモスビーストも直撃するしかなかったのである。

「にゃぁああああ」

そして、両前足を掲げてユッコネエが勝利の咆哮を発する。本日はユッコネエの勝利であった。

なおタツオとレームは二人で仲良く少し離れた場所で射撃訓練をしていた。

現在は夕刻。このように早朝に比べると白き一団の夕刻の訓練は若干ハードではある。少々やり過ぎな面も否めないが、しかしこうした日々のたゆまぬ努力こそが、彼らが強くあり続けられる理由のひとつでもあったのだ。