作品タイトル不明
第六百六十八話 全力攻撃で粉砕しよう
カザネバズーカと並ぶ風音の必殺技『天翼剣身十二斬』。それは『天翼十斬』にも対応できるようになってしまった対ジンライ用に風音が編み出した必殺技である。
それは一体どういう技なのかといえば、要するに『天翼十斬』にスキル『ソードレイン』スキルレベルアップ時に使用可能となった二剣の空中自動制御を追加した技であった。それがロクテンくん阿修羅王モードの巨体からベヒモス・ビーストへと繰り出されていく。
「グギャアアアアアアアアアアッ」
その攻撃により血飛沫が舞い、ベヒモス・ビーストが叫び声を上げた。とっさにベヒモス・ビーストは右前足を前に出して『天翼剣身十二斬』の直撃は防いだのだが、ロクテンくん阿修羅王モードの攻撃によってその血肉が容赦なく削られていく。その勢いはまるで巨大な粉砕機のようであり、その攻撃によりベヒモス・ビーストが受けているダメージも相当なもののはずだが、しかしその右前足をロクテンくん阿修羅王モードは突破できない。削り切るにはその腕は硬過ぎた。
(斬れてるけど、押し切れないッ!?)
風音が焦りを感じながらも攻撃をし続けていると、直後に『直感』が働いた。
『むっ?』
攻撃が来る。それは分かった。しかし攻撃を続けていた風音はその反応への対処をとっさに取れなかった。
「ガァアッ!」
それはベヒモス・ビーストの左前足からの横殴りの攻撃だったのだ。それはロクテンくん阿修羅王モードのボディに直撃し、黄金巨人の巨体が呆気なく宙を舞った。
『しくじったぁあ!?』
風音がロクテンくんの中でそう叫びながら地面に落ちてゴロゴロと転がっていく。
『おっと、ヤバい』
そしてそこにベヒモス・ビーストが息を大きく吸い込んでから、一気に口をガバッと広げて叫んだ。
『グガァアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
『スキル・イージスシールド!』
そのベヒモス・ビーストの叫びと同時に風音は物理・魔法の両方も防ぐ不可視の盾をとっさに生み出した。その次の瞬間にはロクテンくん阿修羅王モードの正面の障壁とベヒモス・ビーストの発した衝撃波が接触し、干渉し合う力の本流によって魔力光が火花のように周囲に飛び散っていく。
(声で衝撃波……喰らったらヤバかったか)
風音の頬に冷や汗が垂れた。『イージスシールド』の影響外となる周辺のガレキが砂となって崩れ落ちたのが見えたのだ。恐るべき破壊力であった。そして敵の攻撃が終わった後、風音がロクテンくんを後ろに下がらせながらベヒモス・ビーストを見ると、切り裂いたはずの腕が徐々に再生していくのが見えた。
『一番弱いって言っても厄介なのには変わりないか。狂い鬼ッ! ライルッ!』
その風音の言葉に呼応するかのようにベヒモス・ビーストの左右からふたつの塊が突撃していく。
「ぶちかませジーヴェ」
『ウォォオオッ!』
それは竜気を纏って突撃するライルと、
「グォォオオオオオンッ」
白き翼をはためかせながら重量級の身体で突進する狂い鬼であった。そのどちらの攻撃も無防備であった両脇腹へと直撃し、ベヒモス・ビーストの臓腑を抉った。そのダメージは大きく、魔物が叫び声を上げて巨体が仰け反った。
『そんで、ここぉぉおおおっ!』
そこにさらに風音が突撃する。それに気付いたベヒモス・ビーストが両前足を上げて攻撃を仕掛けるが、
『スキル・タイタンウェーブ』
風音はストーンタイタンより手に入れたスキルを発動させて、ロクテンくん阿修羅王モードの足を強く地面に叩きつけた。それと同時にその場に波紋のようなものが発生し、ベヒモス・ビーストの周辺空間に擬似的な振動を生み出す。それによりベヒモス・ビーストは踏ん張りが取れず、体勢を崩した。それはわずかな隙、しかし戦場では無二のチャンス。
『うぉおりゃぁああっ』
そこに風音がスキル『ブースト』を発動して突撃し、ベヒモス・ビーストの懐へと一気に入り込んでその胸部へと六本腕に握っているカタナたちで貫いた。
「グガァアアッ」
身体を貫かれて悲鳴を上げながらもベヒモス・ビーストはロクテンくん阿修羅王モードを睨みつけた。その金色の瞳が怒りに染まっている。対して風音もベヒモス・ビーストににらみ返した。そしてこう口にした。
『この距離なら『暴風の加護』の影響もないよね』
風音が不敵に笑いながら、その目を文字通りに輝かせる。
『喰らっちゃえッ』
ロクテンくんの頭部から覇王の仮面が外れ、風音の素顔が現れると同時に膨大な魔力の光が瞳から放たれた。それはメガビーム。風音の単体スキルとしては最大の火力を誇る攻撃がベヒモス・ビーストの頭部へと直撃する。
「グギャアアアアアッ」
『おっとぉ』
あまりにも強烈な一撃にベヒモス・ビーストが叫び声を上げながらロクテンくん阿修羅王モードを両腕で弾き飛ばす。
『くっ、焼かれろぉお!』
崩れていく体勢でも風音はメガビームの光をベヒモス・ビーストへと向け続ける。そしてメガビームはベヒモス・ビーストの身体を斜めに焼いていく。そのことによりベヒモス・ビーストの悲鳴がさらに上がったがダメージ自体は拡散されてしまった。故にトドメを刺すには至らない。
『ならばスキル・戦艦トンファー』
だが風音も食い下がる。ロクテンくんを飛ばされながらも次のスキルを発動させると、ベヒモス・ビーストの上空に魔法陣が発生した。そこから20メートルクラスの戦艦が出現するとそのまま落下しベヒモス・ビーストへと直撃し悲鳴が上がった。
「ガァアアッ」
『続けて自爆っ!』
その直後に風音は戦艦トンファーを自爆させベヒモス・ビーストを中心に大爆発が起きる。その威力にライルが思わずガッツポーズを取りながら叫んだ。
「やったか?」
『われよ。それは『フラグ』と言うものだとカザネが言っていたが』
そのジーヴェの言葉と同時に光の中から巨大な影が飛び出してくる。
「グガァアアアッ!」
それは全身が焼け爛れ、金毛のたてがみをちぢれさせたベヒモス・ビーストであった。もはや死に体にしか見えない姿だが、その動きはダメージ前とほとんど変わらない。それがロクテンくん阿修羅王モードに飛びかかって行く。
『まあ、そう来るのは分かってたよ』
そう言う風音の前にはゴーレムメーカーで造られた巨大な土壁ができていた。
「ウガアァッ」
それをそのまま打ち砕かんと飛び込んだベヒモス・ビーストだが、奇妙な感触に囚われた。たかだか土でできた壁を破壊できない。いや、それだけではない。見た目に反して弾力性を帯びた土壁を前に目を見開いたベヒモス・ビーストは、次の瞬間には自らの勢いの反動を受けて後ろへと弾き飛ばされた。それは三色ジルベール戦でも見せた土壁とスキル『弾力』のコンボであった。不意打ちのようなカウンターにさすがのベヒモス・ビーストも対応できず、地面を転がる。
『今だよ!』
そして風音が叫びながらロクテンくん阿修羅王モードで飛びかかる。
狂い鬼も、ライルも、ダークオーガ軍団も転げ倒れているベヒモス・ビーストへと突進していく。それに気付いたベヒモス・ビーストがのしりと立ち上がり、叫び声を発しながら、たてがみから金毛のニードル攻撃を行った。
『無駄だってのっ!』
それを風音がスキル『暴風の加護』で、狂い鬼は 爆発反応装甲(リアクティブアーマー) で、ライルは反響の盾章を吸収したことで得たスキル『反響の盾』で防ぐ。
『残念だったね。ここのメンツにはあんたの特殊能力が効かないんだよ』
風音が叫ぶ横では、ダークオーガ軍団が針鼠のようになってのたうち回っているがノーカンである。見なかったことにしておくことで計算通りという顔を崩さずに済んだ。
そのままベヒモス・ビーストの一撃を防いだ三者の攻撃が再度ベヒモス・ビーストへと直撃し、再び獣の絶叫がその場に木霊す。
だが、それでも目の前の敵は終わらない。ベヒモス・ビーストの目は死んではいない。対して風音もそれをも予測していた。今の攻撃で倒せると考えてはいなかった。
リヴィアタン・ダークネスやバハムート・シーラカンスに比べて無尽蔵の体力があるのがこのベヒモス・ビーストの特徴だ。どれだけダメージを喰らっても、その再生力によって回復されてしまう。だからその再生力を超えるほどのトドメの一撃を風音は用意していた。
『これで決める。旦那様の出番だよ!』
その風音の声と共にロクテンくん阿修羅王モードの前に巨大なクリスタルドラゴンが出現した。それはガッシリとベヒモス・ビーストの両前足を掴んで睨みつけて、その巨大な口を広げて咆哮した。それは風音の『虹竜の指輪』より召喚された神竜帝ナーガであった。そして『第六天魔王の血珠』移植前の元のままの神竜帝ナーガの身体より突き出ている無数の水晶の角が同時に七色の輝きを帯び始める。
その光にベヒモス・ビーストが初めて怒りではなく怯えた表情を見せたが、両前足は掴まれたままで逃げることはできない。また『暴風の加護』もその至近距離では、先のメガビームと同様に発生されないことはベヒモス・ビーストにもよく分かっていた。であれば、と再び衝撃波を発せようとベヒモス・ビーストは肺に息を溜めようとするが、それはすでに遅かった。
『旦那様フルバーストレンジゼロ! ブッ放せー!!』
風音のかけ声と同時にすべての水晶角からセブンス・レイの七色の光が放たれ、ベヒモス・ビーストを直撃したのだ。その光の奔流はベヒモス・ビーストの全身を貫き、今度こそ完全にその身を打ち砕いた。