軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百四十一話 探しに行こう

◎カザネ魔法温泉街 カザネ水晶大浴場

「ふぅ」

ドップリと真っ裸の風音が湯の中に浸かる。それから天井を見上げながら呟いた。

「あー、ここ最近はずっと炭酸泉だったから普通の温泉も久しぶりだねぇ」

「つっても白の館の浴場も湯船代えて普通のお湯のヤツも用意してあったけどなー」

風音の横ではちんちくりん二号ことレームが一緒にお風呂に入っていた。ちなみにレームの言う湯船には炭酸泉が苦手なユッコネエがよく入っている。

現在風音たちがいるのはカザネ水晶大浴場。風音たち白き一団の面々はマッカとサキューレとの話が中断したため、ひとまずは久方ぶりにこちらの魔法温泉に入ることにしたのである。

ちなみに中断の理由は金の幻炎球に収録したゆっこ姉のビデオレターを見てマッカとサキューレがその場でダウンしたのであった。

『隠居したらそちらで暮らすことになるわけだし、これからも末永くよろしくね』

幻の炎によって映し出されたゆっこ姉はニコリと笑って消えていったのだが、それまで『ここまで散々こき使ってくれてありがとう』とか『もう息子には近付かないでくださいね』などと笑顔で言われてはマッカとサキューレも心を折られざるを得なかった。身内には存外に甘いゆっこ姉だが、強権を振るうことで知られ、邪魔になる相手をことごとく闇に葬ってきた恐怖の女王様でもある。それをよく知っているふたりはすっかり怯えてしまったようである。

そんなわけでマッカとサキューレも一応一緒に来てはいるのだが、ふたりとも温泉の端っこで魂が抜かれたような姿で呆然としていた。

その様子を見ながら弓花が風音に口を開いた。

「どちらもアンタが原因よね」

「えー、マッカさんはお願いした先がゆっこ姉だって言ってなかった私のせいかもしれないけど、サキューレさんは完全に本人の落ち度だから知らないよ」

風音の言葉にドプンとサキューレが湯船に沈んだ。

(あ、馬鹿。余計なことを)

(弓花が振ってきたんじゃないのさ)

風音と弓花が慌てて小声で言い合うが、シクシクと悲しいビージーエムが流れ出したのを見てひとまずは放置することにした。自業自得なのでかける言葉もない。そして話題を変えるべく風音が選んだネタは、

「しっかしさー。何ソレ?」

「何とは?」

弓花の乳であった。ここ最近、また大きくなった感がありその成長ぶりに風音は理不尽な怒りを覚えていた。

「ティアラやルイーズには敵わないのは当然としてもさ。チッ……見せつけてくれるぜ」

風音の横にいるレームも舌打ちをする。そばにいるティアラとルイーズはいつものことなので特に何も言わない。関わらないように無言でいる。エミリィも戦力外ではあるが、風音やレームよりは膨らみがあり、同類ではないという自負心と彼氏持ちという強みがあるため参加する気はないようだった。

「いや、ふたりしてジッと見るの止めてくれる? 怖いから……ね?」

ガン見するチンチクリンズの視線に弓花の口元がヒクッと吊り上がる。それから今にも掴みかかられそうな気配を感じて一歩下がる。

「少しぐらい吸収させてくれても良いと思うんだよ」

「そうだぜ。私らから奪い取った分を返してもらうだけさ」

ワキワキと両手を動かすチンチクリンズに弓花は両腕でたわわなものを隠し防御した。健康的で艶と張りが良いものが揺れて隠され、風音とレームが同時に「チッ」と舌打ちをした。まことに態度の悪いお子さまたちである。

「そ、それよりももっとまともな話をしよう。その、ほらドラゴンとか色々と問題もあるじゃない」

続く弓花の妥協案には風音が眉をひそめるも、これ以上迫ってもズーレになってしまうのでその話に乗ることにした。風音もズーレではないのだ。ただ自分よりデカい乳を見るともぎたくなるだけで。

「まあ、あのドラゴンだけどさ。片方がグリグリなのは間違いないと思うよ」

そう風音は言葉を返す。

マッカから話の出たドラゴン問題だが、上がってきた報告を聞く限りではドラゴンの一体は鷲獅子竜と呼ばれるドラゴンの特徴と一致していた。そして鷲獅子竜はすでに全滅して久しい種なのでそれがグリグリであるのは間違いないと見られた。

「けど、もう一体の方がなあ……」

狩人の話ではどうも普通のドラゴンとは違うようにも見えたらしいのだ。妙にテカっていて腹が銀色だったそうである。話によればグリグリらしいドラゴンが銀腹のドラゴンっぽいのを小突きながら飛んでいたのだが、銀腹が森に落下したのを見て諦めたのか鷲獅子竜はアルゴ山脈へと去っていったとのことであった。

「状況がよく分からないけど、グリグリが攻撃を仕掛けてたってことは害竜の類だと思うし、ひとまずはグリグリを探してみようとは思うんだよね。どうせ探さないと行けないんだし」

風音はそう言って肩まで浸かる。カザネ魔法温泉は魔力回復と共に精神をリラックスさせる効能もあるのだ。しばらくしてマッカとサキューレも凍り付いていた顔も少しほぐれて出て行った。ふたりが今もここで仕事ができているのは、この温泉の効能によるものなのかもしれない。

それから風音たちが温泉を出ると街総出での歓待が待っていた。ドラゴンの探索に出ていたキンバリーたちも戻ってきて合流し、その夜は領主の館で盛大なパーティが開かれたのである。そして翌日、風音たちは街の入り口へと集まっていた。

◎カザネ魔法温泉街 入り口

「そんじゃあ、行くかな」

「にゃー」

早朝である。カザネ魔法温泉街の正門の前に白き一団とキンバリー、それにキンバリーの部下である警護団の者たちが並んでいた。

「本当に行くのですか? 確かに片方はカザネ様の身に覚えのあるドラゴンなのかもしれませんが……」

心配するキンバリーの言葉に風音は頷く。このままキンバリーとジンライたちは銀腹ドラゴンの探索に再度赴き、風音はグリグリの捜索に向かう予定となっている。とはいえ、ここでの風音の立場を考えればあまり危険なことはさせられないと言うしかないのがキンバリーの役目である。

「グリグリは私が行かないと下手すると戦闘になるかもしれないからね。それよりももう片方も警戒していて。何かあれば直樹に言ってもらえれば私たちもすぐ戻ってくるから」

風音の相手取るのは神竜に匹敵するかもしれない鷲獅子竜である。キンバリーもそれを聞いているし到底相手にできるわけもないので、頷くしかない。そもそも危険度で言えば正体の分からぬ魔物を追うキンバリーたちの方が大きいのだ。

「確かキンバリーさんたちが見に行った落下地点で銀色の鱗が見つかったんだよね?」

「ええ、これです」

キンバリーが懐から銀の鱗を出した。その形状を見て風音は「やっぱり……これって」と口にする。前日に聞いた話から風音は銀腹のドラゴンらしきものの正体をある程度推測できていた。そして目の前の銀の鱗で確信したようである。

「知っているのですか?」

「うん。これが相手だとちょっと厄介かもしれない」

そう口にする風音はひとまず自分の把握している事実をキンバリーに告げると、それからユッコネエに視線を向けた。

「そんじゃあ、ユッコネエ。変身して」

「にゃーー」

風音の言葉にユッコネエが鳴き、その場で輝き出して10メートルを超す巨大な黄金の水晶竜へと姿を変えた。

サイズは風音の竜体化と同じで水晶の鎧のようなものに覆われ、素のフォルムは飛属と呼ばれる飛行に特化したものとなっている。その上にユッコネエの太陽属性により全身が光り輝いていた。

「これがカザネ様の黄金の守護竜か」

「なんという神々しさだ」

どうやら天使教らしい兵たちが声を上げて拝んでいる。

「それではこちらはもう一方のドラゴンらしきものの探索を開始するぞ。倒してしまうかもしれんがな」

ジンライの言葉に風音が頷いた。

「それならそれで問題はないんだけどね。ただ予想通りなら手強いはずだから気をつけて」

風音の言葉にその場の全員が頷いた。そして風音がユッコネエドラゴンの背に乗った。

「そんじゃあ師匠、行ってきます」

『レームも気をつけてください』

それから風音に続いてユッコネエドラゴンの背にタツオと弓花も乗っていく。

今回、風音たちの目的はグリグリだが、先に銀腹の魔物と出会ってしまう可能性がある。そのための戦力として弓花が同行することとなっていた。

「よーし、出発するよー」

風音が声をかけるとユッコネエドラゴンが『にゃー』と鳴いて天へと昇っていく。その向かう先はアルゴ山脈、目的はそこにいるであろうグリグリの探索である。