軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百三十六話 良いモノを見つけよう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第五十階層 隠し部屋

「はいタッチ」

「ターッチ」

隠し部屋で風音と弓花がパンと手を叩き合う。本日も無事探索終了し、風音組と弓花組が合流したのである。

そして風音たちが隠し部屋にやってきたのは十九時前辺り。ダンジョン内では時間の感覚が分かり辛いものだが、風音たちのウィンドウには時計機能も付いておりそうした問題はない。

何度かの魔物との遭遇戦後に風音たちは弓花たちが隠し部屋を発見したとメールを受け取り、そこにたどり着いたのである。

「ふむ。なにやら疲れているようだな」

少しばかりゲッソリとしている風音たちに、あまり普段と変わりないジンライが首を傾げながら口にした。

「ちょいとガルーダスカルとの戦闘がねえ。もう、五回だよ五回。臭いはしないし、動かずに待ち伏せしてるから『アラーム』の反応も鈍いしで神経すり減った感じだよー」

その風音の愚痴にジンライが笑った。

「それが普通の冒険者というヤツだ。とはいえ、カザネはもう少しそうした経験を積んでおいた方が良いとは思うがな」

「そうかもしれないけどね。まあ、ともかく疲れたよ」

この階層の魔物は風音お得意のスキルによる感知が通じ辛い。そのため普段以上の警戒が続いたことで風音は若干参っているようだった。

「確かにありゃあ、やっぱりキツかったよなぁ」

『むー、私の鼻も利きませんからね。勉強にはなりますけど』

風音たちの後ろではレームとタツオがそんなやり取りをしている。

「まあ、俺たちはいつも通りって感じだけどな」

「実力はともかく経験はそれなりにあるからな、俺たちは!」

対して直樹とライルはそう言い合っていた。風音組の中でもルイーズやメフィルスはそれほどの精神的な消耗はないようで、そこらへんは経験的なものが大きく影響しているようだなと風音は仲間たちを見ながら考え込む。

「むー。そういう部分が私には足りないってのはそうだとしても、スキルを切って進むのもなぁ」

「実際にお前のスキルは便利ではあるからな」

風音の愚痴にジンライが苦笑する。緊張感を持続して行動するのはやはり経験がモノを言うものだが、風音は己のスキルの優秀さのせいでその手の経験値が少ない。なお、逆に弓花はジンライに仕込まれているためにそうしたことが自然体で可能となっていたので、やはりそうした精神的な疲労はないようだった。

「まあ、それはそれとしてさ。やっぱり五十階層になって四十階層よりも手応えが急に上がった気がするよね」

風音の言葉にその場で聞いていた全員が頷く。特に遭遇率の高かった風音たちはそれを痛いほどに感じていた。

「ふむ。四十階層は駆け足で進み過ぎた面もあるからな。楽に過ぎてしまったということもあるかもしれんが。それで収穫の方は何か見つかったのか?」

そのジンライの問いには風音がうーんと唸る。

「ガルーダスカル相手じゃあ骨しかないし特に素材ってのなかったんだよね。大体は増援が来る前にさっさと去っちゃったし」

また風音は口にしなかったが、今回スキルも手には入らなかった。そもそもがガルーダスカルはガルーダたちの成れの果てである。厳密に言えばダンジョン内のガルーダスカルはその姿で生まれるのでその認識は正しくはないが、再生体であるのだから扱いとしては同じものだ。なのでガルーダとスキルが被っていたのではないかと風音は予測していた。

「じゃあ収穫なしかよ?」

ライルの問いに風音組の全員が微妙な顔をする。そして風音が口を開いた。

「一応ね。普通の宝箱を一個見つけたんだけど、中身は鋼鉄製の剣だったんだよね。それなりによくできたモノみたいだったけど、今の私たちじゃあ売るしかなさそうかな」

見つかったものが武具類だった場合、今の風音たちの装備に比べると何が出てもどうしても見劣りしてしまう。なので、ここまで手に入れたものも消費アイテムの方がありがたいことが多かった。

「で、こっちはそれぐらいだけど、そっちは何かあったの?」

その風音の問いには「あったよ」とあっさり弓花が答えた。

「こっちはここの隠し部屋にあったアイテムだけだけどね。ほら、これ。結構強そうな感じはするんだけど、どういうものなのかはよく分からなくて」

弓花がアイテムボックスから取り出してきたのは青い色をした投槍であった。それを風音が受け取ると、風音も鑑定メガネを取り出して投槍を確認した。

「ふーん。これ、彗星の投槍って投擲用のヤツみたいだね。隕鉄でできたもので魔力を込めると威力が上がるみたい。槍使いというよりは……魔術師向けの魔法具だけど」

風音がチラリとルイーズ、ティアラに視線を向けてから最後にライルを見た。その視線を受けてライルが自分を指さして「俺?」と首を傾げた。

「うん。魔力でなくても竜気でも問題ないだろうし、総量の多いライルに渡しておいた方が良いかなって思うんだけど」

魔力量はプレイヤー基準で言えば一般的な戦士が50、魔術師で150前後。対してライルの魔力に該当する竜気は600を越える。それは、ジンライは当然として弓花よりも遙かに多い。

風音はさらにその1.5倍の魔力値だがそれが異常なだけである。またライルは風音の様に魔力を多く必要とする技もなくエミリィに竜気を回すぐらいなので、風音の選択はもっともなものであった。

「そうだな。じゃあライル、お前が持ってろよ」

風音の言葉に直樹が頷き、他のメンバーも特に異論はないようだった。

「マジでいいのか? まあ、いいんならもらっちまうけどよー」

そういうライルも嬉しそうではある。ともあれ、手に入れたモノをどうするかはこうして決まり、後は寝床の確保である。

「それじゃあいくよっ」

風音がフンっと気合いを入れてゴーレムメーカーを起動すると、隠し部屋の中が変化し内部構造が変わっていく。そしていくつかの部屋が生み出され、休息しやすいように改造されていった。

「これで良しと。ダンジョン内の土はちょっと硬いというか魔素混じりで扱いづらいのが難点だよね」

一息ついて風音が地面から手を離すと複数パーティでも扱えるように部屋割りされたセーフルームが完成されていた。また、特に重要なのは扉が付いたことであった。

基本ダンジョンの魔物は隠し部屋には入ってこないのだが元々魔物に追われていたり、中にいる人間を視覚に収めた場合にはその限りではない。だが、あからさまな扉であっても見えなければ魔物は通り過ぎるし、対して冒険者たちには存在が気付けるようにセーフルームと扉には大きく書かれている。

それから白き一団は夕食に入り、その後は全員で囲んでのミーティングを行い、翌日の方針は第五十階層と五十一階層に分かれての探索、夕方に五十二階層への入り口前で合流することを決めて、その日は終了となったのである。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第五十階層

そして隠し部屋で一夜を明かした翌日、風音たちは二手に分かれてダンジョンの探索を再開していた。風音組は今日も五十階層の探索である。

「にゃー」

ユッコネエが後方で鳴いている。並びとしては風音を先頭にメフィルス、ティアラ、ルイーズ、タツオ、レームにロクテンくん、ホーリースカルレギオン、タツヨシくんケイローン、最後にユッコネエという配置である。

「ん、了解。問題はないね」

ユッコネエの鳴き声に風音は頷きながら先へと進んでいく。前日の反省により探知能力の高い風音と同じスキルを共有するユッコネエを背後に回すことで風音たちは周囲の警戒を強めることにしていた。

「しかし、こうも敵を気にしてちゃあ、なかなか隠し部屋を見つけるのも難しいね」

風音の言葉にルイーズが頷きながらも、言葉を返す。

「そうねえ。けど、ここら辺ならかなり価値のあるものも出てくるんだから、探してみるに越したことはないわね。あの彗星の投槍ってのも結構なモノだったんでしょ?」

ルイーズの言葉に風音が頷く。瞬間火力だけでいえば、現在の風音たちの装備の中でも高ランクのもので闇の森などから出てきた魔物用や攻城兵器として国が買い取る、或いはランクA冒険者たちが切り札としてとっておくようなレアアイテムである。

「あれ売るだけで当分遊んで暮らしていけるだろうしなぁ。そりゃあみんなダンジョンに潜るわけだよね」

その風音の言葉通り、そうした一攫千金のアイテムもあるのだから冒険者たちは日夜ダンジョンに潜り、お宝を探しながら日銭稼ぎに魔物の素材を持ち帰って換金して暮らしているのである。それは金銭感覚のブッ壊れたパーティである白き一団ではあまり感じられない冒険者たちの常識である。