軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百三十五話 ダンジョンの半ばを越えよう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第五十階層。

「ギシャアアアアアッ!!」

「うぉっ、キタキタキタァアアア!?」

黄金の光がわずかに灯る洞窟の中、魔物の叫びとレームの声が響き渡った。それは唐突な戦闘の開始の合図。そのきっかけは洞窟内の穴から這い出たガルーダスカルがレームのゴレムスキャノンの前に落ちて襲いかかってきたことによるもの。風音の警告に反応して身構えたものの、敵はすでに目の前であった。

『レーム、剣です。剣を振るんです』

「うりゃああ。うわっ、避けた?」

タツオの助言もむなしくゴレムスキャノンのオリハルコンの大剣が空を切り、ゴレムスキャノンの懐にガルーダスカルが飛び込んだ。

「むわーかせてっ!」

だが、同時に風音がその場に飛び込みガルーダスカルを蹴り上げた。

「つぇいっ!」

さらに続けてドラグホーントンファーで左腕を殴りつけ、

「スキル・ビースティング」

三発目の蹴りにスキルで威力を上乗せし、その頭部を破壊する。

「レーム、大丈夫?」

「お、おう。ちょっと怖かったけどな」

それから風音の問いかけにもレームは若干ビビりながらも頷いた。もっとも敵の波はそれで終わりではなかった。周囲から叫び声が木霊し、そこら中の穴からガルーダスカルが這い出てくる。

「あらぁ、まだまだいますわね。お爺さま、お願いいたします」

『任せておくが良い』

ティアラが眉をひそめながら辺りを見渡し、その横に控えていたメフィルスが飛び出していく。狙いは地面に落ちてまとまったガルーダスカルの集団である。

『ぬうぅううぉおおおっ!』

そしてメフィルスの持つ動力石設置型武装『ドリルフレイムランス』が炎を噴き出しながらガルーダスカルたちを弾き飛ばしていく。同時にそこにタツヨシくんケイローンも突撃することで、逃れた個体を同じく炎のドリルで破壊していった。

「ユッコネエ、崩れたのを燃やして!」

「にゃあーーっ!」

そこに風音に指示されたユッコネエが飛びかかって黄金の高熱ブレスを発する。崩れ落ちたガルーダスカルの骨が組み直されることなく焼かれて炭化していった。

『では私もメガビーム行きます』

さらに残りのガルーダスカルに対してタツオがメガビームを放っていって数を減らしていく。

「おっと。私もッ」

それを見たレームが慌てて構えるが、

「レームは周囲を警戒して。アレは私がとどめを刺すよッ」

風音が制止し自ら飛び出していった。

(そんじゃあ試してみようかな)

風音はそう思いながらアダマンチウムソードを四つほどアイテムボックスから取り出して投げてからスキル『ソードレイン』を発動させた。すると剣が風音に併走するように回転を開始しながら宙に浮かんでいた。

それはダンジョン内でのひとつ前の戦闘でスキルレベルが2になった『ソードレイン』のオートアタックモードである。

『グガァアア』

「てりゃあっ!」

襲いかかるガルーダスカルの懐に風音が飛び込みそのまま蹴りを放つと、続けてアダマンチウムソードが突き刺さり、さらに風音は他のガルーダスカルへと蹴りとトンファーを次々と決めていく。複数で迫ってくる相手にはマアテリアルシールドで牽制し、背後からの敵には鎧から飛び出る狂い鬼の拳が反撃を行っていく。

『母上頑張れー』

「あいよー、そんじゃあいっくよー」

タツオの声援が響く中、風音は十コンボ目で発生する『キックの悪魔』の派生スキル『蹴斬波』を発動させた。蹴り上げた足から赤い刃が発生し、風音に迫っていたガルーダスカルたちを一気に破壊していく。

「ふぅ」

そして目の前の敵を一掃し風音が一息ついたが、その後ろからは砲撃音が響き渡っていた。

「あー、やっぱりまだいたか」

そう口にした風音が後ろを見てみると、さらに洞窟の穴から出てきたガルーダスカルたちをレームが 雷王砲(レールキヤノン) で砲撃していた。ガルーダスカルたちは穴から出るところを狙われて、なすすべもなく破壊され、こうして戦闘は終了となった。

「っと、これで終いか」

「かなぁ。しっかし、さすがに五十階層越えるとそこそこ厳しいね」

レームの問いに風音が答える。

骸骨系統だとスキル『犬の嗅覚』では捉え辛い。またスキル『アラーム』によって敵の接近を感じ取った風音の警告で最初のレームへの不意打ちは逃れたのだが、その『アラーム』の反応も遅れていた。『アラーム』は動いている相手でないと反応しないため、ガルーダスカルが動き出してからようやく発動したのだ。

「カザネ。さっさと行くわよ。随分とドンチャンやらかしたし、ここに留まってるとまたやってくるわ」

『うむ。すぐさま離れるに限る』

一息ついてる風音とレームに、ルイーズとメフィルスがそう注意をする。どちらもこのランクの階層の経験者である。この場に留まる危険性をふたりはよく理解していた。

「了解ッ。たく、スカル系統は臭いがたどり辛いからメンドいやね」

風音が悪態をつきながら全員に移動を指示する。

その風音たちが現在いるのは 金翅鳥(こんじちょう) 神殿第五十階層である。そこはうっすらと黄金の輝きが灯る洞窟の中で、そこに点在する穴からは無数のガルーダスカルがうじゃうじゃと出現するフィールドでもあった。

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「よーし、ここらで少し休もっか」

先ほどの戦闘エリアから十分に離れた場所で風音がそう言って、ロクテンくんやタツヨシくんケイローン、ホーリースカルレギオンを見張りに立たせて場所を確保してっから、クタッとその場に座り込んだ。

本日はカザネ魔法温泉街に向かう前にダンジョン攻略を少しは進めておこうと考えて潜ったのだが、五十階層を越えた途端に難易度が一気に上がったようだった。

なお、この場にいるのは風音、ティアラ、ルイーズにレームとタツオ、それにメフィルスで、弓花たちはいつも通り別のルートを探索中である。

「ああ、さっきのはキツかった。これからもずっとあんなのばっかかよ」

レームが悪態づく。普段であれば風音が敵の存在を察知してからの先制攻撃が多いのだが、今回はレームが先制された形である。

『いや、先ほどのはさすがにここらでも相当厳しいものはずではあるはずだ。少なくとも余の経験からすれば六十階層クラスの難易度はあったのではないかと思うのだが』

そう言ってメフィルスがルイーズを見ると、ルイーズも頷きながら口を開いた。

「まあ、そうね。とは言ってもそこらへんは団子っちゃあ団子よ。厳しさは増してくけど、敵そのものの強さはそこまで変わらないはずだもの」

「ふーん。こりゃあポータルがなかったら相当厳しいことになってたねえ」

風音の言葉にクリスタルドラゴンゴーレムに乗っているタツオもくわーっと鳴いて同意した。この街のダンジョンが黄金遺跡から 金翅鳥(こんじちょう) 神殿に変わって中身がリセットしてから約百日。

すでに第六十階層に到達しているトップパーティもいるが、わずか三ヶ月程度でそこまで新しいダンジョンを攻略できたという話をルイーズもメフィルスも聞いたことがない。

「確かにね。ポータル様々よね」

風音の言葉にはルイーズも頷く。これからポータルにより、ダンジョン攻略の有り様が変わっていくのは間違いがない。もっともどの程度が量産されるのか……という問題もあるのだが。

「けど、そのポータルもここから先はちょっと厳しいかもしれないかな」

風音がそう言って周囲を見回す。目には見えないが魔素がかなり濃い状態だ。それがスペル『テレポート』の効果にも影響を及ぼしているのを風音は感じていた。その風音の言葉にルイーズが首を傾げて尋ねる。

「カザネ、どういうことかしら?」

「それがね。魔素の影響でノイズが走ってて『テレポート』の使用が難しくなってる。短距離ならともかく、設置しても五十階層から六十階層までいけるかどうか……微妙かも?」

「となるとここから先はもしかして普通のダンジョン同様に進んでく必要があるってこと?」

ルイーズの問いに風音が少し唸りながら頷いた。

「直樹の 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) なら影響を受けないから私たちは問題ないはずだけどね。けど、他のパーティが置いてかれるっていうか、さすがに私たちだけで攻略するのは無理があると思うし」

今みたいな戦闘でも白き一団ならば抜けきることはできる。しかし、ダンジョンは広く深い。そしてチャイルドストーン持ちも倒さなければ最深層までは到達できない。

「再度、直樹の 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) でのパーティ輸送も視野に入れた方がいいかもしれないね」

六十階層の先に挑めるのはランクBでも実力派か、ランクAパーティクラスのみ。ゴルディオスの街では現時点で十パーティ程度である。

ある程度の協力関係を取りながら、その人数で回す分にはなんとかなるのでは……と風音は考え、それについて各パーティとも歩調を合わせるべきだと考えていた。