軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百五話 成果を確認しよう

◎ゴルディオスの街 白の館 リビング

「酸っぱい酸っぱい」

「酸っぱい酸っぱいのじゃー」

「ふにゃー」

ダンジョン探索も無事終了した弓花組とジンライ組が白の館へと帰ってくると、リビングではミカンっぽいものを食べている風音(妊婦もどき)とクロフェ(妊婦もどき)と置かれたミカンっぽいものの皮の臭いを嗅いではふにゃーという顔をして離れてはまた戻って臭いを嗅いでいるユッコネエ(嫁)がいた。

一同はその意味不明な様子を見て首を傾げ、ひとまず直樹が代表してその状況を尋ねたのであった。

「姉貴、何をしてるんだ?」

「妊婦の嗜み?」

そして疑問系で返された。姉フリークで姉フリークスである直樹であっても姉の行動については不明な点が多い。言わんとすることはまったく分からないでもないが、風音もクロフェも妊婦ではないので酸っぱいものが食べたいわけでもないはずだった。

「本当はガソリンを用意したかったんだけどね。確か飲むんだっけ?」

その言葉に弓花が頭を抱えながら口を挟む。

「いや危ないから。鉄分不足の人はガソリンの匂いを好む傾向があるって話でしょ。妊婦の人も良い匂いだって思っちゃうことがあるみたいなんだけどガソリンが身体に悪いのは当たり前のことなんだから絶対に飲んじゃダメよ」

「へぇーそうなんだ」

なぜか妙な知識を持っていた弓花の解説に風音が感心した顔で頷く。飲んで即死ということはないようだが、身体に害があるのは間違いないのでガソリンを飲んではいけないのである。駄目なのだ。

とまあ、そんなやり取りがあったが無事帰ってきた仲間たちを風音は労いながらみんなにミカンっぽいものを振る舞ったが全員「酸っぱい」という顔をしていた。どうやらこの中に妊婦はいないようだった。

なお、そのミカンっぽいものは風音が市場で買ってきたものだが、調理用の果物で煮詰めたりして使うものであった。そしてユッコネエはその臭いに耐えきれずにその場から去っていった。会話には参加していないがアオはニコニコと風音とクロフェを見ていた。つまりはいつもの光景だったのである。

それから一同は軽くやり取りをした後一旦解散し、タツオを頭に乗せた風音は弓花と直樹、ジンライに連れられて一階の倉庫へと降りていくこととなったのである。

それは今回ダンジョンで手に入れたアイテムのいくつかがどういったものなのかを風音に確認してもらうためであった。

◎ゴルディオスの街 白の館 倉庫

「ほーほー」

そして一階の倉庫へと降りた風音の前には今回隠し部屋の宝箱から手に入れたアイテムが並べられていた。

それはオリハルコンの大剣、水珠、流線型のデザインの鞘に収まった妙な形の剣、九つの革紐の鞭の四点である。

「えーと、オリハルコンの大剣はゴレムスキャノン用でいいんだよね?」

すでにメールを読んでいた内容を風音が改めて確認をすると、弓花と直樹、それにジンライが頷いた。

『レームが凄く喜んでいましたよ母上』

「あの子から取り上げるなんて私にはできないわ」

それはもう嬉しそうに「マジか。くれるのか?」とオリハルコンの大剣をゴレムスキャノンに振らせているレームを思い出しながらタツオと弓花が答える。ふりふりしていた大剣がまるで犬のしっぽのようであったのだ。

「うーん、この量なら溶かして他の武器に転用もしやすいんだけどな。まあゴレムスキャノンもコイツ持っときゃリーチも伸びるしこれはこれでいいか」

風音もふたりの言葉を聞いてとりあえず納得して頷いた。基本 雷王砲(レールキャノン) による後方支援がゴレムスキャノンの役割ではあるが、接近戦での攻撃手段がある方が望ましいのも確かである。

ちなみにオリハルコンとはアダマンチウムと同硬度の上にアダマンチウムよりも魔術などを付与したりする加工がしやすく魔法具の素材として優秀なものであった。単純に剣として使うにはもったいない素材である。

「水珠はまあ、一個あれば良いけど予備用に持っておくかなあ。これはこれで貴重だし」

「換金はしないの?」

予想はできていたことだが、風音は溜める主義である。

「他の人もお金の方がって言うならするけど、今のところ問題はないよね? ダンジョン内でパーティを分けることも多いし、どちらも持っておけるのはありがたいと思うよ」

弓花もジンライも、また直樹もその言葉には頷いた。発見した直樹は思ったよりも姉の評価が高かったので少しニンマリしていた。

「それでこの剣は……と」

風音が続いて置かれている剣を見た。流線型の独特な鞘に収まってはいるが、見えている柄からだけでも実に妙な気配を放っているのが分かる剣である。

(この形、どこかで見たことがあるような……?)

それを触ろうとした風音に直樹が「ちょっと待った」と前に出てその剣を先に手に取った。

「何?」

弟の突然の行動に首を傾げる風音に、直樹が少しだけ苦笑いをしながら口を開く。

「悪い姉貴。どう説明しようか悩んじまって、こいつについてはメールには書いてなかったんだけどさ。この剣は俺以外には扱えない、ちょっとやばいものなんだ」

「やばい? 呪されてんの?」

「ある意味では」

そのふたりのやり取りに弓花とジンライも少しだけ苦笑いする。ジンライはもちろん、弓花もすでにその剣のことは聞いていた。

『母上、それ生きています』

頭の上から聞こえるタツオの言葉に、風音が目を細めてその剣を見る。

「こいつ、魔物なんだよ。ほら」

続けて直樹がそう言いながら鞘を抜くとその剣の全体が明らかになった。

「ガカカカッ」

それは生態的な奇妙なフォルムをしており、刃には目玉と口がついていて、金属を摺り合わせたような笑い声を出す赤黒い剣であった。

その姿に風音が眉をひそめる。全体像を見て風音の方もようやくその剣に対しての記憶が蘇ったようである。

「魔王剣。これ……まさかアンタがテイムしたの?」

「おう。やっぱり姉貴は知ってたのか?」

直樹もウィンドウの機能で名前自体は分かったのだがゲームのことを思い返してみても見覚えがあるという以外の記憶がなかったのである。それは弓花も同様で、またジンライたちは見たこともないようだった。

「うん。魔王剣ってのはメインシナリオのラスボスである魔王が所有している剣だよ」

その風音の説明に直樹と弓花も「ああ」という顔をする。魔王が装備していたから魔王剣。そのままである。

「魔王剣はメインシナリオ後に行ける高レベル用エリアだと通常エンカウントするところもあるんだけどね。ふたりのレベルだと多分行ったことはないだろうけど」

「ああ、そういうことか」

風音の言葉に直樹も弓花も自分たちがその剣をどこで見たのかを思い出した。一度きりの戦闘でしか見ていなかったのだから覚えが悪いのも当然であったのだ。

「もしかしてこれを直樹がテイムしたってこと?」

そして剣をジロジロと見ながら尋ねる風音に直樹が頷いた。

「そうなんだよ。隠し部屋で出現して、どうにか捕まえてさ。その……支配したらできた」

「支配って……ああスキルの『魔剣の支配者』でねえ。なるほど」

直樹にテイムスキルはないが、魔剣を支配するスキルを直樹は持っている。それは例え魔物の剣であろうとも例外ではないようだった。

そして直樹たちのやり取りの間もガカカカッカッと剣が笑っている。鞘から出たので活動を再開したのだ。

「うわ、かわいくない……」

嫌そうな顔の風音に直樹が少しだけ慌てて風音に言う。

「けど、こいつがないとちょっと不味くてさ」

「ん、不味いって?」

再度首を傾げる風音に直樹が躊躇いながらもこう言った。

「操者の魔剣エクスがこいつに喰われた」

「はぁ、何してんの?」

風音が呆れるのも無理はない。操者の魔剣エクスは魔剣使いである直樹のアイデンティティそのものだ。『魔剣の支配者』スキルとも相性が良く、エクスがなければ魔剣を自在に操り飛ばすこともできない。つまりはエクスがなければ直樹は遠距離攻撃のできない一介の魔法剣士でしかなくなる。

「ああ、いやいや。それでコイツなんだよ」

直樹が魔王剣を風音にグイと見せる。ギュロと剣の平から出ている目玉が風音を見てガカカカッと笑った。

「うう……」

「エクスを吐き出させようと捕まえたらテイムできたんだけどさ。結局もう融合しちゃってたんだよな。こいつ」

「ガカカカッカッ」

少し引いている風音に対して魔王剣が笑っている。

「魔剣喰いか。そういえば、そんな能力もあったね。倒したら魔剣は戻ってくるはずなんだけど……多分テイムしちゃったから消化までいっちゃったんだろうなぁ」

喰われた魔剣は魔王剣を倒せば通常はドロップして戻ってくるはずだというのが風音の知る魔王剣の能力である。

「え、倒せば良かったのか?」

「消化しちゃったんなら、もう手遅れだとは思うけどね」

風音の言葉に直樹が情けない顔をしたのだがもう後の祭りである。

「ハァ……一応エクスの能力はコイツも持ってるんだよ。つーことはもうこれで代用するしかないみたいだな」

直樹が口を尖らせて愚痴を言う。少し拗ねているようでもあった。

姉に媚びずにこういう顔をする時の直樹は風音の好きな直樹である。なので、風音は「かわいそうに」と頭を撫で撫でしてあげた。そして直樹が気持ち悪い顔になったので一歩引いたのである。