作品タイトル不明
第五百六十六話 仲間を呼ぼう
『うぉっ、なんじゃこりゃああ!?』
「これがあの炎とか雷とかいうヤツか」
ヴァラオンと直樹が声をあげる横を通り抜けて、炎と雷が螺旋描く巨大なドリルが白き一団の陣地から飛び出していった。一同が呆気にとられている中、その巨大ドリルは唸りをあげて突き進んでいく。
「うわっはははははっははははは!!」
ジンライの笑い声とともに雷音を激しく鳴り響かせながら、雷と炎のドリルは迫り来る寄生地竜たちに接触するとまるでラッセル車が除雪作業でもしているかのように次々と寄生地竜たちを跳ね飛ばしていった。
「あれが這い寄る稲妻の新しい姿か。ヤバいな、ありゃあ」
直樹が若干ひきつった顔でそう口にする。以前に見た這い寄る稲妻よりも見た目が派手で、その威力もかなり高まっているようだった。
這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) 。それはタツヨシくんケイローンの持つドラグホーンランスを起点とし、二重螺旋のファイアードリルに紫電結界を絡み合わせ、炎と雷を巻き込みながらドリル的な勢いで突貫する突撃形態である。
そこにユッコネエの発する黄金の炎とシップーの発する雷風が混ざり合うことでその勢いをさらに強大化している。さらにジンライは、その中でただ高笑いをしているだけで凄く楽しくなっているのだ。
そんな凶暴で巨大なドリルが大地を切り裂くが如く一直線に走り抜け、寄生地竜たちを次々と突き殺し、跳ね殺し、また連鎖的に周囲の寄生地竜をも弾き飛ばしていく。それはまさしく何もかもを破壊していく死の超特急のようであった。
「ギュオォオオオオッ!!」
もっともドラゴンイーターマザーもそれをただ座して見ているだけというわけにはいかない。さすがにアレに当たるのは危険だと考え、寄生トゥースドラゴン二体を差し向け、 這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) へと突進させてぶつけたのだ。そして雷と炎のエネルギーと寄生トゥースドラゴンの竜気が激突したことで反発しあいスパークした。
「うぬぅれ。我が進撃を止めるというのか」
激突により 這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) の勢いが止まり、それにジンライが憤って、とりあえず叫んだ。
「負けるかぁあああああ!!」
「グギャアアアアア!!!」
ジンライと寄生トゥースドラゴン二体がともに叫び続ける。そして、ジンライはブチブチと血管が切れるほどに興奮していた。よくよく見てみるとジンライは特に何もしていないはずなのに体力とか血液とかSAN値とかがガリガリと削れていっていた。かなりヤバめな状態である。恐らくジンライにウィンドウがあったらオレンジ色になっていただろう。
「小癪な奴らめ。シップー行くぞッ」
寄生トゥースドラゴンたちの想像以上のパワーにジンライは怒りのままに正面を睨み付け、そしてシップーの名を叫んだ。それから「なーご」と鳴き声がした次の瞬間には巨大なドリルの中から二本角を宿した猫が出現したのである。否、それは二槍を握ったジンライの乗るシップーである。
『疾風迅雷』。人猫一体と化した彼らは一気に目の前の寄生トゥースドラゴンへと飛び出し、
「その心臓もらい受けるッ」
ジンライの奥義である二槍回転による抉り技『心臓狩り』を用いて、激突中で動けない寄生トゥースドラゴンの竜の心臓を一気に繰り抜いた。そして均衡が崩れた寄生トゥースドラゴンに 這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) が直撃し、さらにはもう一体の寄生トゥースドラゴンもそのまま跳ね飛ばされて宙を舞い、盛大に地面に激突して転げていったのである。
「むっ、こりゃあいけないね」
その状況を上空から風音はじっと見えていた。
確かに 這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) は寄生トゥースドラゴン一体を仕留めたが、その勢いを止められたことで炎と雷の螺旋は消えて解除されてしまったのだ。
そしてドラゴンイーターマザーの元に残されたのはジンライとシップー、ユッコネエにタツヨシくんケイローン。多勢に無勢というほどに小さな戦力ではないが、周囲にいる敵のランクを考えれば望ましい状況ではなかった。
「直樹ッ、予定通りのメンバーを長距離転移準備!」
そして風音はスキル『情報連携』を通じて素早く弟へと指示を行う。
『分かった』
直樹からの声が届いたのに風音はひとり頷きながら周囲を見回して状況を再度確認する。
ジンライの突貫に驚きはあったが、元々 這い寄る稲妻と(ライトニング) 捻れた炎の(フレイム) 螺旋撃(ドリル) の使用は予定範囲内のものであり、それ自体は問題ではない。
なので問題があるとすればふたつ。ひとつはジンライが興奮しすぎて、別の意味で命の危機に瀕していること。老人であった頃なら途中で死んでいたかもしれないが、肉体年齢三十代の今のジンライはどうにか持ちこたえているようであった。
また、ふたつめの問題は今ジンライたちのいるドラゴンイーターマザーの位置が白き一団のいる場所から若干遠く、その間に寄生地竜の群れがまだ残っていて分断されていることである。下位竜とはいえ、地竜もさすがにドラゴンの系譜に連なる存在である。先ほどの攻撃にも耐え切れた個体は少なくなかった。
もっとも風音はその距離をクリアする手段として直樹に指示を出していた。その前段階として未だ白き一団のいる丘へと動こうとする寄生地竜の生き残りに、駄目押しをしようと風音は動いた。
「そんじゃあ、まずは一発! スキル・ソードレイン!」
風音はスキル『真・空間拡張』の大型格納スペースから百本を超えるアダマンチウムソードを取り出しながら、そのスキルを発動させた。
そして魔法陣の中から唐突に出現した大量の剣はスキル『ソードレイン』により一瞬で制御されたことで、空中にてズラズラと整列して並んだのだ。それはまるで風音の黄金翼より連なる巨大な翼のようにも見えたのである。
また、その大量のアダマンチウムソードの剣先はすべて白き一団の居る丘へ向かおうとしている寄生地竜へと向けられていた。そのことに風音に背を向けて走っている寄生地竜は気付いていない。それはもはやただの的であった。
「全弾射出! ぶっ飛ばせーーー!」
そして、そのまま風音が空中で両手を寄生地竜たちの方へと突き出すと、それに合わせて宙に浮かんでいた剣たちが一斉に飛び出していく。
その降り注がれる先は背を向けて突進している寄生地竜たちだ。スキル『ソードレイン』は、剣に属する武器を自由自在に飛ばして動かすスキルである。今の風音にはそれらを直樹のように上手く制御できているわけではなかったが、制御数は単純に魔力に依存しているスキルであるためにこうして大量の剣を制御することはできた。さらには短時間でただ一直線に飛ばすだけならば、大した魔力も必要とはしない。風音はスキル『ソードレイン』を大量に入手していたアダマンチウムソードをまとめて投擲させる手段に利用したのである。
「グギャアアッ」
「ブギュッ」
風音の意思に従ってアダマンチウムでできた強固な剣が次々と寄生地竜たちへと降り注がれていく。文字通りの剣の雨となって寄生地竜の身体や、ドラゴンイーターの樹体、その内部のドラゴンイーターコアまでをも貫いて絶命させていく。しかし、敵も黙って見過ごしているわけも当然なかった。
「グギャァアアッ!」
「むっ?」
空中にいる風音に対して、先ほどドリルに弾き飛ばされた寄生トゥースドラゴンが跳び上がって襲いかかってきたのだ。
(空中跳びを使った?)
そうとしか思えないような跳躍力に唸ったが、それでも風音が慌てることはない。ただ飛び上がってきただけでは風音に牙を届かせることはできない。
「そーいっ」
風音は動じずにポイッと光輪を寄生トゥースドラゴンへと投げつけて、その内部に吸収していたメガビームのエネルギーを暴走爆破させて弾き飛ばしたのだ。
「ギャアアアアアアッ!?」
そのまま空中で吹き飛ばされることを余儀なくされた寄生トゥースドラゴンは、態勢を整えることもできず地面に落ちて転げていく。
その様子を後目に風音は寄生地竜たちの方を見て、その数が相当に減っているのを確認すると、さらにはジンライたちがドラゴンイーターマザーともと交戦開始したのを視認して、翼をはためかせて地面へと降り立った。
「寄生地竜の残りはルイーズさん指揮で殲滅。こっちから増援も出すから挟み撃ちで。そんで直樹は私の元へと転移して! すぐにッ!」
「よっしゃ、来たぜっ」
その『情報連携』を通じた風音の指示とほぼ同時に直樹が転移してきた。爆速であった。どうやら言われたとおりにメンバーをそろえてじっと待機していたようである。
そして直樹と一緒に弓花とロクテンくんにヴァラオンもその場には現れていた。さらに風音は併せて狂い鬼とダークオーガ軍団も召喚し、ダークオーガ軍団を寄生地竜の生き残りへと向かわせるとドラゴンイーターマザーへと向き合い、
「よし。それじゃあ私たちはあっちをッ」
『師匠ッ!?』
風音がかけ声をあげる前に弓花が叫び声をあげて走り出したのだ。
「え、ジンライさん?」
「ジンライ師匠ッ!?」
その弓花の走り出した先を見て、風音も直樹も目を見開いた。そこにはジンライが己の血潮をまき散らしながら、ひとり宙を舞っている姿があった。
そう、白き一団の中でもっとも頼りになる男の戦場で散る姿が、彼らの瞳には映っていたのである。