軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百五十四話 ボス連戦をしよう

「直樹。あんた、弱いんだから戦闘後も油断なんてしちゃ駄目なんだからね」

「お前もだぞギャオ。注意力がなさすぎるんだ。ジローを見習え」

戦闘終了後。仲間たちが互いの健闘を称えながら素材回収を行おうという横では、直樹とギャオが弓花とガーラから説教を受け続けてうなだれていた。

実際に狂い鬼とビッグマンが間に合わなかったら致命傷コースだったのだから、さすがにチャランポランだったりイケメンだったりする彼らも反省せざるを得なかった。

「その点ではジローはさすがだな。自らの身だけではなく仲間も救うその器量、見事だった」

「いや、鎧の力だけどな。俺なんてそんな……」

一方ではジローがギュネスに褒められて照れていた。

先ほどの戦闘でジローは己の身を守り、その上でビッグマンに指示してギャオのことも救っていた。それはオダノブナガ・アシガルの鎧の警告が働いたからできたのは確かではあるが、戦闘後でも警戒を怠らなかったジロー自身の心構えあってこそでもある。叱られているふたりとの差は大きい。

だからこそ直樹もギャオも何も言えなかった。しかし、睨みつけはする。ちょっとイラッときたので。

「あん、その目は何? ジローさん頑張ったよね? あんたらとは違うよね?」

「ギャオ、てめえ。命の恩人に向ける目じゃなかったよな。俺がそういう態度が大ッ嫌いだってのは知ってるんだよな?」

ふたりの視線に「ヒィ」と怯えたジローの前に立った弓花とガーラが、直樹とギャオを睨みつけ「ヒィ」と言わせた。

荒くれ者を舎弟に持つ弓花と鬼をその身に宿すガーラのメンチ切りである。そして銀の槍と黒のハルバードで小突かれながらふたりに対しての説教は続いたのである。

その横ではライルが(なんか、あのふたり仲良くないか?)と思いながら直樹とギャオを見ていたが、飛び火されても困るので特に口には出さなかった。

『母上ー、ご無事でしたかー』

「うん。タツオも元気で何よりだよ」

直樹たちが説教を受けている一方で、タツオが風音の絶壁に思いっきり抱きついていた。心配し通しだったのでタツオもくわーくわーと鳴いて洗濯板にすり寄っていた。

そんなタツオの頭を撫でながら風音が「ふーむ」とタツオを見た。タツオがくわっと鳴いて首を傾げた。

『どうかしましたか母上?』

「んー、竜気がね。タツオ、やっぱり結構減ってないかなーと?」

風音の言葉にタツオも素直に頷いた。

『はい。あのクリスタルドラゴンゴーレムを動かしてると結構お腹が空きますから。後クリスタルシールドも連続で使いましたし』

その言葉通りに、タツオも今回の戦闘ではメガビームこそ使わなかったが竜気を多く消費していた。また、クリスタルドラゴンゴーレムを生み出せるようになってからというもの、タツオの竜気消費量は格段に増えてもいた。

「そうだねー。じゃあ、これでどうかな」

風音がタツオの体をギュッと抱きしめるとタツオがくわーっと鳴いて輝きだした。

『は、母上。なんです、これは?』

タツオが己の変化に驚きながら風音を見た。

「スキルの『進化の手』でタツオの竜気の最大値を上げてみたんだけど、変わった感じはある?」

『はい。力が湧き上がっています。以前よりもずっと竜気が高くなっているのが分かります!』

タツオがくわーっと鳴いた。そのタツオの様子を風音は満足げに見ながら頷いていた。

風音は以前よりずっと考えていた。スペリオル化により手に入れたスキル『進化の手』は自分側の魔物に該当する存在の能力を上昇させるもの。それを自分はどう使おうかと。また、今一番優先させるべきなのは、すでに十分な強さを持つユッコネエや狂い鬼ではなくタツオになるだろうとも。

それもすでに持っている強力なスキルを強化するのではなく、地力を上げることにこそ使うべきではないかという結論に達していた。そして、今日の戦闘での活躍がタツオの限界値に近いと悟った風音は、ここでタツオの竜気の最大値の上昇を行ったのである。

「あら、使ったんですの。『進化の手』を?」

その様子をティアラが見ていた。会話の内容から風音がタツオに『進化の手』を使用したのだと理解したティアラの問いに風音も素直に頷いた

「うん。頑張ってるタツオへの私からのプレゼントだよ。ここ最近は本当に活躍してるね」

その風音の言葉にタツオもくわーくわーと鳴いて風音の平坦なる大地に抱きついてゴロゴロしている。子供にとっては膨らみなどどうでも良いことである。

そんなタツオと風音を見ながらティアラが指を口に当てて問いを投げかける。

「そういえば、技の手の方はまだ使わないんですの?」

「悩みどころだねえ。前のレベルアップした時も思ったけどさー」

その質問には風音も唸る。スキル『技の手』のポイントは現在3溜まっており、今ならばレベル3のスキルを4に引き上げることも可能である。

現在スキルレベルが3なのは『キリングレッグ』『直感』『情報連携』『竜体化』『食材の目利き』の五つで、もうそろそろ自力で上がりそうなキリングレッグを外して考えると、次で成竜になれそうな『竜体化』が風音としては上げておきたいスキルであった。

ちなみに今回でレベルの上がった『情報連携』の追加効果は効果範囲の拡大であり、続けてレベルを上げたいスキルにはならなかった。

また、レベル2である『メガビーム』か『光輪』を上げるという選択肢も捨てがたいと風音は考えていた。

(現状で、特に必要ってのがないのがなぁ。うーん。けど、そろそろ次のことを考えるとなると……)

「よしっ!」

風音は己がどうするべきかを決めて、ウィンドウの操作をし始めた。そして、風音がポンポンとボタンを押して操作を終えた時である。風音たちの周囲を突然黄金の炎が覆ったのだ。

「これは?」

直樹が叫ぶ。直樹やライル、エミリィやレームなどの一部の仲間たちは突然のことに驚きの顔だったが、それ以外のこの場の多くの冒険者たちにはその状況に覚えがあった。

「カルラ王の試練だと? 今、ここでか!?」

ガーラが驚きの顔で周囲を見渡すが、その間にも黄金の炎が彼らを包み込んでいく。そのまま彼らは抵抗すらできずに別の空間へと転移させられていった。

**********

「くくく、ようこそ冒険者たちよ」

そして風音たちを覆う炎が消えた時には、目の前にはカルラ王と配下であろうガルーダたちが立っていた。黄金色の雲漂う、闘技場のような場所の中心に風音たちは転移させられていたのである。

「カルラ王。貴様、ワシらの疲労を狙ってきおったか!?」

ジンライが叫ぶがカルラ王は涼しい顔でジンライを見た。

「ここは我が領域。すべては私がルール。今日この場に有望なる冒険者たちが揃ったのだ。であれば、試さなければなるまいよ」

カルラ王の言葉にガルーダたちが歓声をあげる。そのカルラ王を風音が睨みつける。

「お風呂に入れて上げたのに、マッサージチェアだって改良してあげたのに!」

サービスは十分だったはず。己のサービス精神は確かにカルラ王に届いていたと確信していた風音が愕然とした顔でカルラ王を睨む。

「ふっ。それはそれ。これはこれとも言うだろう。しかし、例えこの戦いがどうなろうとも私は明日も通うことになろう。その時に貴様たちがいないというのは若干寂しいものではあるが、それもダンジョンマスターたる我が使命。存在意義そのものだ。こればかりは覆せぬよ」

カルラ王はそう告げる。倒したとしても倒されたとしても普通に温泉に通うという宣言……その厚かましさに一同は驚愕していた。

「それで戦うのは、今回は貴様らというわけか? まあ、良いさ。それに……先ほどの戦いの熱はまだ冷めておらんしな」

シップーに乗ったジンライがそう告げる。仲間たちも完全に臨戦態勢だ。敵を前に呆然と突っ立っていられるほど、彼らも甘いレベルの冒険者ではなかった。

「いや、今日はまた別の趣向だ。以前にお前たちは別のダンジョンでドラゴンと相対したそうだからな。今日はここでその再現をしてみようと思う。まあ、こちらで用意できるドラゴンは別のモノとなるが」

「なんですって?」

ルイーズが叫んだ。オルドロックの洞窟で討伐した黒岩竜ジーヴェは英霊ジークの力を得てどうにか倒せたほどの強敵だった。それも、白き一団が万全の準備を整えてでのことである。

もっとも風音たちも以前よりも随分と強力になっているし、ここで英霊ジークを呼び出すことも可能ではある。しかし、遮蔽物のないこの場でドラゴンを相手に正面から挑むということは少なからぬ犠牲者が出る可能性が非常に高いと言わざるを得なかった。

「ドラ……ゴン?」

そして、風音はその言葉に驚きながらもスキル『魔物創造』を選択してウィンドウを開いた。

魔素値:1280

・ドラグリフォス[1054]

(こいつかッ!?)

風音は驚きの眼差しでその名と数値を見る。魔素値1054を使用と言うとゴブリンの210倍である。それにドラグリフォスの名には風音にも覚えがあった。それはゲーム内で何度も戦ったことのある強敵だった。

ドラグリフォスとはドラゴンとグリフォンを掛け合わせた魔物で、ドラゴンらしく炎をはき、鋭い爪を有している。それだけではなく、翼の羽を射出して攻撃し、並のドラゴンよりも高速で飛行し、さらには風を纏ってあらゆる攻撃を回避するという凶悪な性能を持っている。

(こいつを産み出されたら……)

空中からの攻撃メインで回避力が高く、ダメージを与えることがまず難しい相手だ。戦士である英霊ジークを召喚しても制限時間内に倒せるかは難しい。すでにジークはカルラ王に見られているのだから、ジークの出現中は回避優先で逃げ切れられてしまう可能性も高い。そして、ドラグリフォスは英霊ジークなしでは厳しい相手だ。

恐らく目の前のカルラ王はそこまで見越しているのだろうと風音は考える。

「さて、どれだけの者が生き残るか。勇者を選別する王の試練だ。とくと味わうが良い!」

カルラ王が両手を上げて宣言する。そして全員の顔に緊張が走り、風音も決意の表情で、その指を前へと突きだした。

「えいっ!」

そして、選択ボタンからドラグリフォスの名前を押す。魔物創造開始である。

風音とカルラ王の中心に黄金の光が集まり、巨大な繭のようなモノが形成されていく。それを見てカルラ王が高笑いをする。ドラグリフォスが生み出されていくのだ。これから行われる胸躍る戦いを思えば、笑わざるを得なかった。

「ははは、はははははははは……はは……は?」

しかし、高らかに笑うカルラ王の笑いが疑問の声に変わっていくまでに長い時間はかからなかった。

喚び出したはずのドラグリフォスが、何故かカルラ王たちを向いているのである。しかもその視線から、たいそう敵意を向けてらっしゃるようにも見えた。カルラ王やガルーダたちは「?」と首を傾げざるを得なかった。

「グルゥゥゥオオオッ!!」

そして喉袋にブレスを溜め込んだドラグリフォスの口から膨大な量の炎が吐き出され、ガルーダたちを襲ったのである。

「な、なんだとぉおおっ!?」

それにはカルラ王もたいそう驚愕したがすでに遅い。驚き顔のカルラ王はそのままドラグリフォスの巨大な拳にブン殴られ、鼻血を吹き出して赤いアーチを作りながら宙を舞ったのである。