軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百五十一話 合同で行こう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第三十一階層 隠し部屋

「すごいな。カザネたちはあの転送装置なしで転移ができるのか」

「制作者だしね」

金翅鳥(こんじちょう) 神殿の第三十一階層へと転移してきたギュネスが、風音の言葉に頷きながら驚きの顔で周囲を見回していた。階層を飛び越えて転移できるという効果自体はすでに聞いてはいたはずだが、やはり初転移ともなるとギュネスの中でも驚きが大きかったようである。

「また、テメエかよ」

「ちっ、そりゃこっちの台詞だぜ」

「おいおい、仲良くやれっての」

その後ろではギャオと直樹が火花を散らしジローがオロオロと仲裁していた。どうもギャオと直樹の相性は良くないようである。ギャオは馴れ馴れしく風音と口を利くし、直樹は女癖の悪い男と姉が近くにいること自体が激オコであった。まさしく水と油の関係であった。

「相変わらず仲が悪いようだな」

「はあ、仲間割れするようなら両方ともぶっ飛ばしてここに置いてくからね」

そのジンライと弓花の会話にギャオと直樹の言葉が止まった。それを可能なだけの力がこの槍使い師弟にはある。

また、ここ数日で何故か舎弟というものを従えることになった弓花は若干考えが物騒になっているようだった。

それは相手の意見に染まりやすいチョロインの特性である。もちろん、弓花も舎弟たち相手に逆ハーレム気取りでいるわけではないが、彼らの思考が若干弓花の中に混ざってきているのも事実である。チカライズパワー。多少強引にでも迫っておいた方がコミュニケーションは開かれるものだと弓花は彼らから学習していた。

また、今この場には『白き一団』『マザーズナックル』『ブレイブ』の三パーティが揃っていた。

そして彼らが何故、 金翅鳥(こんじちょう) 神殿第三十一階層に直樹の転移を使って集まっているのかと言えば、それは昨日に風音やギャオが冒険者ギルドで受けたギュネスからの指名依頼によるものであり、そして弓花たちがその話を聞いたのは昨晩のミーティングの時であった。

◎白の館 リビング 前日

「指名依頼?」

それは風音たちが 金翅鳥(こんじちょう) 神殿に再度潜る日の前夜のことである。いつも通りに次のダンジョン攻略のミーティング時に、風音からその話が出たのだ。

「うん。ギュネスさん率いるマザーズナックルからのクエスト依頼だよ。昼に会ってギルドを通して依頼を受けてきた」

風音が書類を取り出してテーブルの上に置いた。それに仲間たちの視線が集まる。

「どうも思ったよりもデスソードレインが強いらしくてね。今回はマザーズナックルが私たちに指名依頼をかける形でパーティ共同での討伐って話になったんだよ」

風音の言葉通りにクエスト依頼書には第三十五階層指定魔物討伐 魔物名:デスソードレインと書かれている。

「ふむ。思ったよりというのはどの程度なのだ」

ジンライが訝しげな目で風音を見て問いかけた。

風音の見立てによれば白き一団の風音組と弓花組で別れた状態でも対処が可能だという認識だったはずである。

「どうもね。デスソードレインの剣の本数が七十から八十本くらいはあるらしいんだよね」

「……なるほどな」

その言葉にジンライも納得したらしく、頷いてそのまま口をつぐんだ。

「よくは分かりませんが、それは多いんですの?」

「ええ、多いわよ。もっとも問題なのは数だけじゃないわ。それだけの剣を制御できる相手の能力の高さも問題よ」

ティアラの問いにはルイーズが答える。抱きしめられている幼グリフォン姿のメフィルスも眉をひそめて聞いていた。やはり、難しい相手だと理解したようである。

実は通常のデスソードレインの剣の本数は二十から三十が良いところで、チャイルドストーン持ちだとしてプラスしても四十程度だろうと風音は考えていたし、ジンライの想定も同様であった。

しかし、風音がギュネスからの話を詳しく聞いたところ、第三十五階層のデスソードレインは想定よりも相当に強力な魔物であることが判明したのである。

「あの連中もただ接近戦が苦手で圧し負けただけというわけではなかったようだな」

「そういうことみたいだね」

ジンライの言葉に風音が頷く。そこにエミリィが手を挙げて質問をする。

「はーい。それで指名依頼は良いとして、パーティは『マザーズナックル』と私たちだけなの?」

「いんや『ブレイブ』には声をかけるって言ってたよ。来るかどうかは分かんないけど」

「チッ、あの野郎がいるパーティかよ」

直樹が舌打ちをし、その横にいるエミリィとライルが苦笑いをしていた。『ブレイブ』、つまりはギャオのいるパーティである。ふたりの仲はヒドく悪いようなのだ。

「直樹ー、ギャオと揉めないでよ。面倒だから」

「分かってるよ。姉貴の邪魔にはならねえよ」

「なら良し」

ギャオをどうするかについては特に触れない直樹の返答に風音もテキトーに頷いた。面倒にならなければ良いのだ。風音も弟の交友関係にまで口を出すつもりもない。男同士の友情は拳で語って固まるものなのだと風音は考えていた。

「さてと。それで今回は早めにって話だったんで勝手に取って来ちゃったんだけど、不参加希望の人はいるかな?」

その風音の問いには誰の反応はない。特に不満の声もないようだった。

「んじゃあ、全員参加で」

風音は仲間たちを見ながら頷いた。そこにジンライから質問を寄せられる。

「しかし、ワシらだけで挑むという選択肢もあったと思うが、それは良いのか? スキルだって取り逃すかもしれんぞ?」

問題はそこである。素材は当然人数が少ないほど取り分は多いし、風音がトドメを刺せばスキルを手に入れることもできるはずである。

「そうだけど。デスソードレインの特性を考えるとちょっとね。今回は安全優先で行くよ」

風音としてもスキルの取りこぼしはしたくはなかったが、ギュネスから聞いた話では白き一団のパーティだけで挑んでも後衛を護りきれるかが微妙であると考えていた。

「んー。見辛れーけど、ゴレムスキャノンにバイザーも付けておくか」

『バイザーは私が水晶化して透明におきましょう。私もクリスタルドラゴンゴーレムの中に入れるようにしておきますよ』

クエスト確定となったので、レームとタツオがそう話し合っていて、そのふたりに風音は視線を向けた。

(こっちは大丈夫としても)

風音は続けて視線をティアラたちにも向けた。

元よりゴーレムの防御力も高いレームとタツオは後衛にいる限りはそれほどの心配はない。しかし生身であるティアラ、ルイーズ、エミリィはそうもいかない。そう考えていた風音にタツオが声をかける。

『母上、みなさんは私が護りますので大丈夫です』

風音の懸念を察したタツオがドンと胸を叩いたのだ。母の考えを察し、ちゃんと自分が対応すると答えたタツオは良き息子であった。

なお、今回タツオは光線反射を持つデスソードレインにはメガビームは使用できないため、元々防御に徹するつもりであった。そしてタツオは今回、以前に習得したスキル『クリスタルシールド』をメインに使用するつもりで意気込んでいるようだった。

「わたくしの 炎の騎士団(フレイムナイツ) も大盾二枚で護りに入りますわ」

「そんじゃ私はライトニングスフィアで攻撃しようかしらね」

「私は攻撃専門だし、タツオとティアラに護ってもらうことにしようっと」

ティアラ、ルイーズ、エミリィがそう続けて言い合う。前衛に関しては各自個別に挑めば良いとの判断だった。

そんなわけで依頼も確定し戦闘での役割についても話し合った風音たちは、翌日にはパーティ『マザーズナックル』とパーティ『ブレイブ』と合流しダンジョン内へと潜ることとなったのである。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第三十二階層

そして現在、風音たちは道すがらに魔物と遭遇していた。

「盾の陣、構えっ」

ギュネスの言葉にマザーズナックルの四人が正面に出て横一列に構える。

「クェエエッ!?」

そこに飛び込んでいくランドイーグルが、次々と弾き飛ばされていく。

(ふーむ。デスソードレイン対策かな)

その様子を風音は注意深く観察していた。以前に見たときに比べると彼らのメイン武装である手甲は分厚く、盾のような形状になっていた。デスソードレインの猛攻に耐えきれなかった反省を生かしての装備かもしれないと推測しながら風音は眺めていた。

「へっ、辛気臭ええッ」

「おまえは前に出過ぎだバカが」

また、盾の陣を展開したマザーズナックルの上をギャオと直樹が飛び越えてランドイーグルに攻撃を加えていった。そのふたりの攻撃により三匹のランドイーグルが仕留められたが、敵の数はまだ多い。残り六匹のランドイーグルが一斉にその場から散ろうとして……

「なー」

「ふん。遅いな」

そこへシップーに乗ったジンライが突撃して蹴散らして、

「頼んだぜビッグマン」

『ジジィィィイイイ』

最後のトドメをジローに指示された幼体ビッグストーンワームの召喚獣ビッグマンが仕留めていく。

その召喚獣はカルラ王襲撃時にジローが手に入れたもので、ジローの魔力不足もあって幼体の姿をしていた。またビッグマンという名は『いずれは本当の意味での大きな男になりたい』という願いを込めてジローが付けた名ではあったが、明らかに周囲はアレの隠喩と考えている節があるようだった。

そもそも幼体とはいえ、ビッグマンの身体の太さはタケノコほどもある。ジローの真実を知る者たちにとっては、それがジローのモノと重なって見えたとしてもおかしいことではなかった。

「なるほど。なかなかのお手並みだね」

「そっちには負けるがな」

その戦闘を少し離れた場所から風音、ギュネス、ガーラと各パーティのリーダーが眺めていた。それはもちろんデスソードレイン討伐時の連携を想定しての各パーティの戦力確認のためであった。

「つーか、あれも投入したら俺らの出番なくないか」

その風音とギュネスの会話の横で、ガーラが後ろに立っているタツヨシくんケイローン、ロクテンくん、黒ミノくんを見て呟いた。

さらには風音の隣にはユッコネエが丸くなっている。白き一団は現時点で出ている数だけでも三パーティ分に匹敵する。しかし、ギュネスはガーラの言葉に首を横に振って口を開いた。

「いや、分散させて本体を叩くには囮も多い方がいい」

「そんなに強いの?」

風音の問いにギュネスが強く頷いた。

「ああ、デスソードレインとは初めて会ったがあそこまでとは思わなかった。俺も仲間には囮に徹してもらって本体に特攻したんだが連携攻撃を喰らってね。拳を届かせることができなかった」

「ふーむ」

悔しそうなギュネスの言葉に風音が考え込む。

操る剣の数が普通のデスソードレインよりも多いと言うことはそれだけ処理能力もある個体であるということだ。つまりは知力が高いのである。

パーティの弱い側から叩く戦術からも相手がそれなりに頭を使って攻撃してくることは想像に難くない。

(もしかしてユニーク個体かも……)

ネームドなどとも呼ばれる変異種、あるいは異常種の可能性もあるかもしれない……と風音は考えた。

未だ最深層には遠いが、どうやら風音たちはこの 金翅鳥(こんじちょう) 神殿での二度目の試練に挑むことになりそうだった。