作品タイトル不明
第五百四十四話 キヤノンを付けよう
「なんか厳つい格好になっちまったなあ」
レームがそう口にして、風音と親方が笑みを浮かべた。
そのゴーレムが完成したのは日が落ちる直前の頃合いだった。すでに周囲に不滅の水晶灯を置いての作業となるくらいには暗い時間になっていたが、風音と親方は当日中にアダマンゴーレムの魔改造を完了させていたのだ。
出来上がったゴーレムの全長は 雷神砲(レールガン) を合わせれば3.5メートル近くにはなる。そして全身のピンクカラーは相変わらずであった。
また、本拠を設けたことで黒岩竜戦の際に加工を依頼していた竜葬土がようやく風音たちの元へと届けられたため、風音はそれを使ってさらにマッスルクレイを増量させており、それと10階層クラスのチャイルドストーンを連携させた『マッスルアシスト機構』はさらなる能力の向上を実現していた。
そもそも通常のアダマンゴーレムの動力はレームの魔力に依存しているのだが、このマッスルアシスト機構があれば搭乗者のゴーレム魔術に頼らなくともアダマンゴーレムを動かすことも可能となったのだ。
もちろん戦闘時にスペックをフルに使う場合には術者の魔力も必要にはなるが、レームの負担は確実に減ることとなった。
そして今回の改造の最大の特徴は、やはり背中に増設された二門の 雷神砲(レールガン) であろう。それは20階層クラスのチャイルドストーンを動力とし、精神感応石を通してレームの意志に従って動くのだ。
またジンライの 雷神砲(レールガン) と区別するために、名称も 雷王砲(レールキャノン) と変え、ピンクアダマンゴーレムの名称も『ゴレムスキャノン』と変えられていた。
砲身を二門、背中から突き出すのであればやはりキャノンを最後に付けるべきと言う風音の拘りによるものである。というか 雷王砲(レールキャノン) もゴレムスキャノンに決まってから「ガンだとおかしいよね」と風音が言って改名したのであった。なお、レームはよく分からないからとりあえず頷いていた。
こうして出来上がったゴレムスキャノンだが、すでに空も暗い。そのため試験運転は明日行うこととなった。
◎ゴルディオスの街 近辺岩場
轟音が、ゴルディオスの街近辺にある岩場に響き渡った。
ゴレムスキャノン完成の翌朝。普段、白き一団が早朝訓練に使用している場所に、今日はピンクの金属の巨人がいた。それは四つん這いとなり、その背後から突き出された巨大な一門の砲身が煙をあげているようだった。
「なんじゃこりゃーーー!」
ゴレムスキャノンの中から叫び声が聞こえる。
目の前の岩が完全に破壊されていた。というかその先の、先の、そのまた先の岩までもが破壊され、弾丸はお空の先へと飛んでいってしまった。
試運転とはいえ、あまりにも強力な一撃。搭乗しているレームは目を丸くしてその光景を見ていたのである。
「ふむ。ワシのものと威力は同程度か?」
少し離れた場所では、ジンライが唸りながら破壊された岩場と四つん這いで動かないレームのアダマンゴーレムを見比べていた。
「そうだね。今のはアダマンチウム弾を使用しているし、ジンライさんの 雷神砲(レールガン) とほぼ同等の威力があるはずだよ」
共に見ている風音はジンライの言葉を肯定する。
「といってもジンライさんの義手に使われてる『竜の心臓』よりもゴレムスキャノンに使われてるチャイルドストーンの出力はかなり低いからね。チャイルドストーンの魔力をマッスルクレイに溜めて、さらに砲身を伸ばして接触部分を増やしてようやく同等ってところ。あの 雷神砲(レールガン) モードでは連射は無理だね」
「ほぉ……」
続けての風音の言葉にジンライがさらに声をあげる。とはいえ、それは感嘆の声が漏れたもの。自分が今までこんなとんでもないものを撃っていたのかと客観的に見せられ、改めて己の義手の素晴らしさを実感してホッコリしていたのである。
『レーム、凄い威力ですねえ』
「凄いってだけで済ませて良いものなのか、これ?」
「とりあえずはもう、そういう風に考えておいた方が精神的によろしいと思いますわよ」
レームの元へと駆け寄って話しているタツオとティアラを見ながら風音も目の前の成果には満足していた。
「単発式だけど、レールが長くて安定性が増してるからジンライさんの 雷神砲(レールガン) よりも命中精度は増してはいるし、狙撃タイプとしては十分に使えると思うよ」
「それはまあ、そうだな。正直、 雷神砲(レールガン) を連続発射しとるときはもうどこを撃っているのかほとんど分からんしな」
しかし連続ブッパは気持ちが良いので、特に改善したいとはジンライは思わなかった。撃ち終わった後の心が震える感覚がジンライにはたまらないのである。
「よーし、そんじゃあレーム。続けて通常の射撃訓練もしてみよっか」
「お、おう。任せろ」
風音の言葉にレームがゴレムスキャノンを立ち上がらせる。現時点でのレームの本当の両腕は風音がロクテンくん搭乗時と同様に動かないように魔術がかけられており、腕の感覚は精神感応石を通して 雷王砲(レールキャノン) と連動している。
そして同時にゴレムスキャノンの本来の両腕は通常のゴーレム制御でレームの指示に従う自動制御で動いていた。
「そんじゃあ通常モードっと」
レームの意識の切り替えと共に、今打ち放った 雷神砲(レールガン) モードの 雷王砲(レールキャノン) を可変させていく。長かった右側の 雷王砲(レールキャノン) のレールが仕舞われていき、左右の 雷王砲(レールキャノン) のサイズが均一となる。そして、 雷王砲(レールキャノン) の付け根のフレームが動き出して、二門の砲身が正面へと向けられた。
「続けて付与魔術『フライ』『ラピッドスピード』発動」
レームの言葉に従い、ゴレムスキャノンの周辺を二重の魔力の膜が覆う。それぞれが『フライ』の魔術と『ラピッドスピード』の魔術効果の膜である。
それに覆われたゴレムスキャノンが走り出し、飛び、跳ねていく。その速度は鈍重そうなゴーレムとはとても思えないほどである。
「とても金属の固まりが動いているようには見えんな」
「遠距離攻撃の手段は持っているからファイア・ヴォーテックスは外して身体能力向上を優先したんだよね。中のレームはあくまで普通の子だし、攻撃力よりはそっちを優先させた方が良いと思って」
普通。そう、一体普通の子とはなんなのか……それはジンライには分からない。分かっているのは少し前まで身体能力的にはただの女の子であったレームは今やダンジョン中階層の魔物以上の異常性能ゴーレムの乗り手となったということだけであった。
そんなジンライの遠い目に風音は気付かず、続いての指示を出す。
「レーム、 雷王砲(レールキャノン) の試射いってー」
「あいよっと」
レームが飛び跳ねながら、背中の 雷王砲(レールキャノン) を手頃な岩に向けると「いけっ」と言いながら、 雷王砲(レールキャノン) から岩弾を連続で発射した。
そして、ガガガガガガッと激しい音がしたかと思えば、的にされた岩が吹き飛んだのである。
「こちらは連射付きか」
「さっきと違ってチャイルドストーンの魔力をため込まずに使ってるから威力は低いし撃ってるのは岩だよ」
「なるほどな」
金属製の弾に比べて岩弾はかなり脆い。とはいえ、連続で撃たれれば当然大きなダメージは与えられるのである。
「レールガンなのになんで岩を撃ってるのか分かんないけどね」
「ふむ。 雷神砲(レールガン) は、普通は岩を撃てんのか?」
首を傾げるジンライに風音は「多分、無理だよ」と頷いた。相変わらずゲームに沿った部分は常識に理不尽な謎仕様となっているのだ。
もっともアニメやゲームなどによっては、レールガンは静音・無反動であったり、二本のレールの間を放電させた謎の現象で飛ばしている描写があればソレでオーケーだったり、そもそもレールすら必要としなかったりする場合もあるロマン兵器扱いなので、あまり気にしても仕方のないことなのかもしれない。
「お、切れたか」
「マガジンに装填されてるのはそれぞれ六発だからね」
そう口にする風音とジンライの前でゴレムスキャノンの本来の腕が動き、腰に下げられているマガジンを外して差し替えていた。
「うりゃあああ」
そして再びレームは動き出し、目の前の岩を破壊していく。
「腰に予備の弾丸を入れた箱があるわけか」
「最初に装填したマガジンに加えて予備マガジンが左右に三つずつ。併せて計四十八発だね。これとタツオのメガビームと合わせて後方支援はバッチリって感じだと思うよ」
そういう風音の前で、タツオがクリスタルドラゴンゴーレムを生み出し、続いてタツオとレームのゴーレムコンビの連携確認へと移っていく。
タツオが自分以外の相手と楽しそうにしている。それは母としては寂しい面もあるが、親としてあるならば避けられない道でもある。風音は寂しさの混じった慈愛の笑みを浮かべながら、目の前で暴れ回るタツオたちを見守っていたのであった。
「……というかさ。あれ、もうロボットだろ。それも未来兵器的な」
「今更よ直樹」
そして、少し離れた場所にいる直樹と弓花が少し遠い目をしてその光景を見ていた。
パワードスーツ型の人型ロボットと竜型ロボットが二機、レーザーとレールガンの連携で共闘している。ファンタジーはどこに行ったのか。それがふたりを悩ませていた。