軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百四十三話 息子を見よう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 二十九階層 隠し部屋

「デスソードレイン?」

「うん。ギュネスさんたちはそれに負けたみたい」

ギュネスと別れた風音たちは、その後も探索を続け、夜になる頃には指定の隠し部屋で弓花組と合流していた。

それから全員揃っての夕食をとった後は、今後のダンジョン探索についてのミーティングを行うこととなった。そして議題の中心となったのはギュネスを撤退させたというデスソードレインについてであった。

「デスソードレインか。ワシもまだ遭遇したことはないが、名のあるパーティのいくつかがその魔物に壊滅させられたという噂は聞いたことがある。五十階層より前の段階で出現する上に被害率が高く、冒険者殺しとも呼ばれておる」

ジンライがそう説明する。高い戦闘力を持っていても低階層、つまりは魔素の薄いエリアに出現できる魔物も僅かながらに存在している。少ない魔素を何かしらの技能で補い、五十階層以下で冒険者を襲う強力な魔物。それがデスソードレインという魔物であった。

「ただ、普通のデスソードレインならさすがにギュネスさんも負けるはずはないんだよ。だから、相手は恐らくはチャイルドストーン持ちだったんだと思うんだよね」

風音がそう口にした後に仲間たちを、特にタツオとレームに強く視線を向けた。

「本当に手強い相手みたいだからみんなも出会ったら気をつけてね。壁際に囲まれたらアウトだし、光線系は撃つと剣の反射にやられてエラいことになるからそれも気をつけないといけない。特にタツオとレームは絶対に前に出ないで防御を優先してね。今のふたりだと攻撃を受けたら致命傷になりかねないから」

「おうよ」

『了解です母上』

風音の言葉に、レームとその頭の上に乗っているタツオが一緒に返事をした。このふたり、なんだかとっても仲良しなのである。風音のジェラシーの炎がそれを見てボォッと燃え上がったが、子供を構い過ぎて友達と引き離すような真似を母親がしてはいけないと考えてグッと堪えた。風音は良き母であるのだ。

「それでどうする? また全員で行動するか?」

そのジンライの問いに風音は首を横に振った。

「あまり人数がいても身動きがとれなくなるし戦力的には足りてないわけじゃないからこのままで行こうよ。場所が判明して合流できそうだったら仕掛けても良いとは思うけどね」

風音の言葉にジンライは「そうだな。分かった」と頷いた。そこに今度は弓花が口を開いた。

「でも、あのギュネスさんが撤退ってのが信じられないのよね。そのデスソードレインってのはよっぽど強いのよね? 本当に大丈夫なの?」

その言葉には風音は少し唸った。

話を詳しく聞いていたわけではないから推測でしかないが風音は敗退の原因はギュネスではなく、他のメンバーにあるのではないかと考えていた。

デスソードレインはパーティの中でも一番弱い相手を認識して集中的に襲う傾向がある。ギュネスはその対応に追われたのではないか……と風音は考えていたが、それもあくまで推測だ。ギュネスの仲間への陰口にもなりかねない話をするのはさすがに風音でも躊躇われた。

「ま、強敵なのは間違いないけど相性の問題の方が大きいからね。弓花はあまり過剰に意識せずに対応しておけば大丈夫だと思う。後、デスソードレインは戦力的に弱い相手から狙う傾向にあるから後方の護りには気をつけて。突破だけは絶対にされないでね」

「うん。了解した」

弓花も素直に頷いた。この手のことにおいて風音の言葉は大体正しいことは弓花も分かっていた。

「もっとも明日は三十階層を手分けしての探索だし、今回は会うことないだろうけどね」

「そうですわね。それと遭遇するまでにはレームの装備が完成していると良いのですけれども」

ティアラの言葉にレームも「だなー」と返す。

空中を飛ぶ敵が多い現状ではレームはファイア・ヴォーテックスを撃つ以外に出来ることがなく、お荷物のままなのである。早急なパワーアップが望まれていたのだ。

そして風音たちは翌日には三十階層の探索に入ることになり、その日の夕方まで探索して再び地上に戻ったのである。

◎バトロイ工房 来客室

「でだ。これがカザネの依頼で造った 雷神砲(レールガン) だ。まあ、俺にも仕組みはよく分からないんだが、言われたとおりに頑丈には仕上げといたぜ」

地上に戻ってきた翌日。

風音はレームとタツオ、それにティアラと共にバトロイ工房へとやって来ていた。目的は以前に注文をしていたピンクアダマンゴーレム用 雷神砲(レールガン) の引き取りである。

そして親方は風音たちを来客室へと通してから、完成した 雷神砲(レールガン) 二丁を部屋へと持ってきたのである。

「へぇ。これがレールガンってヤツなのか?」

レームは目の前のテーブルの上に置かれた二本のそれぞれ左右にレールの入った筒を見て首を傾げていたが、その横では風音がうんうんと頷いて満足げな笑みを浮かべているので間違いはないようである。

「うん。これだよこれ。ちゃんと可変してレールを伸ばすようにもできるようだね。さすが親方、完璧な出来だよ」

「勿論、要望通りに仕上げてあるぜ」

親方が「ガハハハ」と笑いながらそう返した。

「で、カザネ。コイツを私のゴーレムの腕と取り替えるのか?」

これまで 雷神砲(レールガン) を武器腕として使うことを聞いていたレームの問いにカザネは首を横に振った。

「いんや。腕はそのままで、 雷神砲(レールガン) はピンクアダマンゴーレムの背中につけるんだよ」

風音の言葉にレームが首を傾げる。

「あれ、武器腕って言ってなかったっけ?」

「うん。一応、腕として認識させはするけどね。普通の腕は腕として残すんだよ。そんで 雷神砲(レールガン) はこの精神感応石を用いて、レームの腕と同期させるわけ」

風音がアイテムボックスから白い石を取り出した。その名を精神感応石。ロクテンくんにも設置してある人の精神と魔力を無機物へと繋げるための媒介である。魔術師の杖などの素材のひとつとして使用されることも多く、素材としてはそれほど高いものではない。

「つまりは私のロクテンくんの操作と同じように疑似的に腕を使えなくして義手として反応させるわけだよ」

「腕を使えなく……って、なんかコエーな」

風音の説明にレームが少しだけ恐々とした顔で呟いた。その不安については風音も理解できるが、風音自身が使用しているという実績はある。

「レーム、私がロクテンくんで実証済みの仕組みだから問題はないよ。後はこの筒の中にマッスルクレイを仕込んで、魔力の流れを造らないといけないけどね。それにこの 雷神砲(レールガン) にはピンクアダマンゴーレム内蔵のマッスルクレイ製アシストパーツとは別にチャイルドストーンを仕込むことになるから付与魔術も新規で入れられるんだよ」

ちなみに現在のピンクアダマンゴーレム内のアシスト機能用マッスルクレイに使用しているチャイルドストーンはヒッポーくんハイのもの。今回の 雷神砲(レールガン) に使用するのは、先日に倒したバストァープリンのものである。

オルトヴァが調べている転送装置には、ゆっこ姉の許可が下りたためにバトロイ工房に保管されていた五十階層のものを今は使用していた。

「ただ、素材がジンライさんのシンディより落ちるから魔術の構築力は落ちるし、出力も高くないから 雷神砲(レールガン) の威力は低いんだよね。竿を伸ばせば近い威力は出せるけど連射は無理だし、なかなか難しい」

そう風音は言うが武器の性能としては十分過ぎるものではあった。その言葉にレームも感心して頷いている。

「よく分からねえが、凄いモノなんだな?」

「まあね」

レームの問いに風音は頷く。凄いモノのようである。

「ところでカザネ。この 雷神砲(レールガン) に使う弾丸はやはりアダマンチウム製なんですの?」

「いんや、威力が小さいから鋼鉄製でも問題ないし、以前みたいに岩を成形して使うこともできるよ」

「おー、それぐらいなら私のゴーレム魔術でも造れるな」

風音の言葉にレームが声をあげた。

ジンライの 雷神砲(レールガン) とは違い、レームの 雷神砲(レールガン) はメインとして使用する予定の装備である。あまりコストパフォーマンスのよろしくない弾丸は使用し辛いところもあった。

「そんじゃあ、こいつの取り付け作業に入るかカザネ?」

「そうだね。あー、そういえばモンドリーさんはまだ戻ってこないの?」

風音の問いに親方は肩をすくめる。

「連絡はくるんだがなあ。まだ、少しかかりそうだ」

「そっか。レーム、取り付け作業に入るから一緒に来てくれる?」

「おうよ。いやー楽しみだなあ」

『きっと凄い威力ですよ。母上ー、お先に行きますー』

そう言ってレームと頭の上のタツオが笑いながら部屋を出ていった。

「ぐぬぬ、母上はここにいるというのに……」

「か、カザネ。どんまいですわ」

そして、少しだけ親離れした息子の姿を見て若干涙目になっている風音と、それを慰めるティアラも後に続き、最後に親方が戸締まりをして部屋を出たのであった。