軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百三十六話 探しに行こう

風音たち白き一団がダンジョン探索を再開してから一週間が経った。その間に風音たちが潜ったのは三回で二十階層まで降りていた。

◎ゴルディオスの街 白の館 本館風音コテージ 屋上ラウンジ

「ロクなアイテムがなかったなあ」

「まあ、それはそれで贅沢な認識だとは思いますけどね」

椅子に座ってここまでのダンジョンのことを思い出しながら出た風音の言葉に一緒に休んでいたティアラが苦笑する。

今は早朝特訓も終わり、朝食も食べ終わった昼前の時間帯。風音が人を待っているというので、ティアラも相手が来るまではと一緒に休憩をとっていたのである。

そしてその間に風音たちが話していたのはここまでのダンジョン探索のことであり、話題は風音たちが手に入れた隠し部屋のアイテムが中心だった。

とはいえ、その内容はグチに近い。なぜならば風音たちが手に入れて良かったと思えたものはマナポーションなどの消耗品のみ。ジンライを若返らせた『パナシアの雫』のようなアイテムは出なかったし、手に入った強力な武具も階層相応のものであった。

「まあ、アイテムはともかくレームとタツオの連携が上手くいってるのは良しとするところだね」

その風音の言葉通りにここまでのダンジョン探索ではピンクアダマンゴーレムとクリスタルドラゴンゴーレム、レームとタツオの操る二体の重量級ゴーレムコンビは順調に活躍していた。

「このまま、おふたりにも頑張っていただきませんとね」

「まあ、現時点ではまだ慣らしって感じだけどね」

タツオもレームもスペック頼りのゴリ押しである面が強い。階層が深くなれば近接戦では通用しなくなるだろうことは早朝訓練でもハッキリと結果は出ていた。そして、今からその方面を鍛え上げるにはさすがに時間が足りない。

だから、そのときにはメガビームとレールガンの移動砲台としてふたりには活躍してもらう予定であった。今はそのための慣らし運転に近いのである。

(そのためにもレールガンの製造は急いだ方がいいねえ)

親方にはすでに製造に入ってもらっているバックパック用二連レールガン。アダマンチウムとマッスルクレイをメインとしたものでジンライの義手『シンディ』とは違って完全に武器腕となっている。さらにはダンジョン内での使用を考え威力を若干抑えることで反動も軽減していたりもする。ピンクアダマンゴーレム専用武器の完成は近かった。

「ところでカザネ、そのレームとタツオの姿が朝から見えませんの。どちらに行ったのかはご存じかしら?」

「んー、外に出てるんじゃないかな」

少し考えてからカザネはそう返した。

「それは……あまりよろしくはありませんわねえ」

「まあまあ。多分、大丈夫じゃないかな?」

心配するティアラだが、風音は特に気にしている様子はなかった。

「レームも自由に動けるのなんて本当に久し振りだろうしね。そもそもトゥーレの田舎で育ったから、ここまで人の多い街自体が珍しいみたいだよ。だから少しぐらいは大目に見ようよ」

「……むう」

プスーとティアラが頬を膨らませる。風音の言葉も分からないでもないが、ティアラとしてはレームが心配なのである。

「けれどですわね。レームはほら王族ですし、危険でしょう。それに二年も閉じこめられていたわけですしあまり世間のことも知らないかもしれませんわ」

「まあねえ」

もっともなティアラの言葉に風音が頷いていると、ラウンジの入り口から人の気配がするのを風音は匂いで感じとった。そして、風音が視線を向けるとナイラがコテージの中からやってきたのである。

「あれ、話し中だった?」

「いんや、大丈夫だよ」

風音の待ち人とはナイラであった。そして、風音がナイラに意識を向けたのを見て、ティアラの頬がさらに膨らみ、少しプリプリしながら立ち上がった。

「むー。わたくし、ちょっと様子を見てきますわ」

そして風音とナイラの前からドタドタと去っていったのである。

「あら、お姫様は何か不機嫌だったみたいだけど?」

ナイラが首を傾げて、ティアラが去っていったラウンジの出入り口を見ながら風音に尋ねた。

「ま、心配なんだろうね。けど、イリアさん大丈夫だよね?」

『問題ねえっすよ』

「うわっ」

ナイラがビクンッとして驚いていた。ラウンジの壁にいた小さな蜘蛛からイリアの声が響いてきたのだ。

現在イリアはこの街に滞在している。風音やレーム、ティアラなどの護衛も兼ねながら、他国からの間諜等も調べているようだった。そして、身を守る手段の少ないレームの護衛には特に人が割かれていた。

『それにドラグーンが一緒にいるんだから問題ないっすよ』

ダンジョンではタツヨシくんケイローンを、街中でもタツヨシくんドラグーンをレームはお供共につけている。そうそう危険が及ぶはずもないのである。

「そうだね。ティアラも出掛けるみたいだからそっちもよろしくね」

『了解っす』

風音の言葉にイリアが返事をして、そして蜘蛛がカサカサとその場から消えていった。それは範囲が街内限定とはなるが連絡用式神だそうである。そして、風音もイリアの現在地を実は知らなかったりする。

「そんじゃナイラさん。メンテしよっか」

気を取り直した風音の言葉にナイラが「はー」と溜め息をついた。

「そちらも大変みたいね」

「まあねえ」

ナイラに風音が肩をすくめてそう返した。一番大変な存在は自分であることを、風音は当然棚にあげていた。

◎ゴルディオスの街 西通り

「むう、カザネも少し薄情ですわね」

『問題はないと思うがの』

ティアラが幼グリフォン姿のメフィルスとともに街を歩いている。

「お祖父様までそう言いますの?」

『ふむ』

メフィルスはふと視線を上に向ける。わずかに忍者の姿が見えてすぐさま消えた。

(イリアの手の者もおるし、天使教もユウコ女王が取り込み始めていると聞いとるしな。アウターも言うに及ばずなのだから、この街で余らに絡む連中もそうそうおるまいて)

メフィルスはそう考える。風音もそこまで理解してレームを好きにさせているのだし、ティアラが出歩けているのも同じ理由である。

『それでどこに行くつもりなのだ?』

「あれに探させていますわ」

ティアラが視線を上に向けると炎の召喚鳥フレイバードが飛んでいた。

**********

「おんやぁ、あんた、カザネちゃんとレームちゃんのお友達かい?」

そしてティアラが街の中を進んでいくと途中の公園で老人たちに声をかけられたのである。

「そうですけれども、あなたがたは?」

「あたしら、あの子らには世話になっててねえ。以前に一緒にいるのを見かけたから、ちょいと声をかけちまったのさ」

ティアラが首を傾げる。風音が近所の老人たちと仲良く話をしている光景は何度か見かけたことはあったが、そこにレームまで加わっているとは思わなかったのである。

「カザネちゃんが連れてきてくれてね。まあ、色々とねえ。手伝ったりしてくれたのよ」

「そうなんですの?」

「ほら、あれとかをね。造ってくれたんだよ、レームちゃんが」

老婆の視線の先を見ると、公園の中に遊具らしきものが乱雑に存在していた。それらは滑り台やシーソー等の遊具で、今も子供たちが遊んでいるのである。

「これを二人で?」

「ええ、カザネちゃんがね。レームちゃんに教えてる感じだったけれど、孫たちも楽しそうに遊べてるみたいでね。こういうのを他の公園にも造って回ってるらしいのよね」

「そうだったのですのね」

ティアラが知らぬところで風音とレームは地域の住人たちとの交流を広めていたようである。

「わたくしはそんなこと考えつきもしませんでしたのに」

そのことでティアラは少し落ち込んでいる様子だが、メフィルスはじっと口を閉ざしていた。しゃべる召喚獣自体は他にもいるが、普通の住人には縁のないものでもある。目の前の老婆を無駄に混乱させるまでもないとの判断だった。

(しかし、遊具であるか。カザネの故郷のものだろうが。なるほど、レームの訓練にはちょうど良いかもしれぬ)

レームはトゥーレ王国のグリモアフィールドの洗礼を受けており、ゴーレム魔術を使うことができる。しかし実戦で使用するには経験値が足りてないし、その能力も不足している。それを補うべく、風音はレームを指導しているのだろうとメフィルスに推測した。

「ところで、その……レームはこちらに来ておりませんの? 朝から姿が見えなくて」

そのティアラの言葉に老人たちが少し不安げな顔をした。

「それがねえ。レームちゃん、ちょっと前まではいたんだけどね」

「なんだかガラの悪い連中と一緒にいっちまったんだよ」

老人たちの言葉にティアラの顔が強ばる。

「レームちゃんはお友達って言ってたんだけどね。その、あんたに声をかけたのも、それが本当なのかと聞こうかと思ってね」

老婆の言葉にティアラが「知りませんわ」と答えた。そして最悪の想像が頭をよぎる。トゥーレの王族派のレジスタンスか、ソルダードの手の者か、或いはルーイン王国内か、下手をすればツヴァーラだってあり得る。どこの国もその内側は一枚板ではなく、危険な考えの者もいるものだ。

「そ、それでレームはどちらに」

「なんでも、ああいう連中の集まる酒場に行くって話でねえ。ホント、私らも不安で不安で」

老婆の言葉を聞いてティアラがどんどんしかめツラになっていく。

『のぉ、ティアラよ』

「ちょ、ちょっと、探してきますわ」

メフィルスが声をかけるがティアラは無視して、その場から猛ダッシュで離れていった。

「はー、あんなメンコイ子が随分と速いんだねえ」

「レームちゃん、無事だと良いけどねえ」

ティアラの想像以上のダッシュを驚きの顔で見ている老婆たちであったが、ティアラはここに至るまでに着々と肉体改造を重ね、すでに腹筋も割れ始めていた。見た目に反してティアラは内なる筋力を秘めていたのである。