軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百三十三話 宝の場所を探そう

ゴルディオスの街に帰還した翌日。

捕まえられて体力も精神力も消耗していたオーリングにいきなりダンジョンに入れというのは当然無理な話ではあった。今は全員そろって緊張の糸も途切れている状態だ。彼らには休息が必要だったのだ。なので風音からの要望もあり、オーリングのメンバーには白の館の来客用の右館を使ってゆっくり休んでもらい、その日のダンジョン攻略は白き一団のみで行くこととなったのである。

なお、白き一団内のパーティは、

・風音、タツオ、ティアラ、ルイーズ、レーム、メフィルス、ユッコネエ、タツヨシくんケイローン、ロクテンくん

・ジンライ、シップー、弓花、クロマル、直樹、ライル、エミリィ、タツヨシくんノーマル、黒ミノくん

の二組に分かれて探索することとなった。

元々は三パーティに分ける予定ではあったのだが、カルラ王の試練を想定すると戦闘力の低い直樹組に万が一があるため二パーティ構成に変更となったのだ。

なお、どちらにせよ姉とは別れたパーティ構成なので、直樹が抗議の声をあげていたが当然無視であった。

その様子を見て、

「なんか……残念な奴なんだな」

とレームが口にしていた。風音が悲しそうに「そうだね」と呟いていた。悲しかった。

◎ゴルディオスの街 冒険者ギルド事務所

「おい、連中がついに戻って来やがった」

「ピンクの鎧や見かけねえ若手がいるな」

「いや、あの若い連中は確かカルラ王襲撃時にはいたヤツらだぜ」

「そういやカルラ王が白の館に入ってるって噂が」

「あれ、そもそもギルド公認らしいからな」

「あまり余計なこと言うなよ。消されるぞ」

「というか、 血塗れの狂戦士(ブラッディベルセルク) 様の持つ槍は何だよ」

「なんて神々しくて禍々しくてかつ淫靡な槍なんだ」

「畜生。あいつら、あんなものまで使って俺たちを惑わす気か」

冒険者ギルド事務所に風音たちが入ると、冒険者たちがボソボソと遠巻きに話をしていた。表立って白き一団の悪口を言う者はいなくなっていたが、天使教やアウターなどを使って沈静化を謀ればある程度目端の利く者ならば胡散臭い連中だと再認識する者がいるのも当然のことではあった。

「やっぱり、槍が注目されてるのかな?」

「うう……けど、馴染むのよ。こんなんだけど、もうしっくりきちゃってどうしようもないのよぉ」

風音の言葉に弓花が唸る。

弓花はあの黒い鎖に巻き付かれた神々しい槍を背負っていた。名前は聖者の槍ムータンと名付けられている。由来は親方のつけた槍の名称と弓花の家で飼っていたデブ猫の名を合わせたものである。

弓花はトゥーレで完全狼化して槍と共鳴してからというもの、シルキー以上の一体感を弓花はムータンに感じていた。元の姿に戻った後は銀色になっていた鎖もまた黒に戻ったが、それでも弓花には馴染んでいた。確かに親方が弓花のためだけに造り上げた会心の作ではあったのだ。余分なモノが絡み付いていて尚、弓花という存在にしっくりとハマっていたのである。

「ど、どういったご用件で」

そして、集団で訪れた白き一団に受付嬢が恐る恐る尋ねる。アウターや天使教のこともあるが、受付嬢はギルドマスターからくれぐれも無礼のないようにと言われていた。無礼があれば一族郎党、不敬罪で縛り首の危険すらあると脅かされていたのである。

「今ある 金翅鳥(こんじちょう) 神殿のマップが全部欲しいんだけど」

「あ、ひゃ、いえ、はい。分かりました。現在あるのは27階層までのものですが」

「あれ、そうなの? 三十五階まで進んだって聞いてたんだけど」

そう言われて受付嬢が感心した風に風音を見る。それはまだギルド側からは公開されていない話であったのだ。

「お耳に入れるのが早いですね。確かに申告は受けていますが、マッピングの情報まではまだ届いていないんですよ」

「なるほど。じゃあ二十七階までのもので良いのでください」

風音の言葉に受付嬢は奥の部屋へと入り、在庫保管所から27枚の地図を持ってきた。それを風音は受け取り、受付嬢に指定の金額を払ってお礼を言うと、そのまま隣の酒場へと仲間たちと共に向かうことにしたのであった。

◎ゴルディオスの街 冒険者ギルド隣接酒場

風音たちが酒場へと入ると、冒険者たちの視線が風音たちに向けられ、ギョッとした顔をすると全員が席を移動して奥へと引っ込んでしまった。

「おい。みんながズサーッと引いてったんだけど」

レームが引きつった顔でそう口にしタツオが『母上の威光にみな畏れを為したのです』と言葉を返した。それはまったくもって正しい認識過ぎて反論の余地がないものだった。風音は「うーん」と唸って少し考えた後、口を開いた。

「弓花の槍のせいじゃない?」

「ヒドッ」

弓花が抗議の声をあげるが仲間たちは苦笑気味である。それもまた間違いではないだろうと、その場の全員が思っていたからだ。

「いや、確かに精神汚染一歩手前な感じだけどね」

「まあ、風音の鎧もどっこいどっこいかもしれねえけどよ」

エミリィの言葉にライルがそう口にする。

今でこそ仲間たちも慣れてしまってはいるが、風音の竜喰らいし鬼軍の鎧もオーガ二十四体が宿っていて、非常に禍々しい暴力的な気配をにじませる危険なシロモノなのである。

他にもユッコネエとシップーや、シルキーと融合して常時出てくることも可能となった一角銀狼クロマル。さらにはロクテンくん、黒ミノくん、タツヨシくんケイローンまでもがダンジョンに入る前なので外で待機中である。そうしたことまでふまえると確かに色々と人を引かせる要因があるのかもしれないと風音は考えた。

もっとも風音がこれから行うことを見られないためにも、あまり近づかれていないのは好都合ではある。

「まあ離れてくれてるんなら問題なし。ちゃっちゃとやっちゃうよ」

「やるってなにを?」

首を傾げるレームに風音がチェーンのついた黒い十字架を取り出す。それは『武具創造:黒炎』で偽装した 無限の鍵(インフィニティ・キー) である。

「宝探し……かな?」

風音はレームの言葉にそう返しながら、地図の一枚一枚を広げて、その上で 無限の鍵(インフィニティ・キー) を垂らして揺らした。そして風音は 無限の鍵(インフィニティ・キー) で指し示した方向と直感に任せてペンで地図にマルをつけていく。

「なにしてるんだ。これ?」

「ああ、風音はダウジングと直感を使って隠し部屋を探れるのよ」

レームの問いに弓花が答える。その話を聞いて首を傾げるレームの目の前で風音が次々と地図にマルをつけていく。

一階層から十二階層まではそのほとんどのマップが埋められているようだが、そこから先の階層はだんだんと埋まっている場所が減っているようだった。27階層の地図に至っては十分の一程度までしか埋まっていない。

「そんじゃ、ここまで」

風音は27階分までの地図に目印をつけ終わり、そのままペンをアイテムボックスに仕舞った。

そして仲間たちが置かれている地図を見てみれば、いずれの地図にもひとつふたつかみっつ程度は丸がついているようである。

「はー、本当にここに隠し部屋が?」

レームの問いに風音は「かもしれないってだけだよ」と答える。ダウジングと直感でも絶対ということはない。またすでに見つかっている部屋もあるだろうし、ダンジョンの隠し部屋は新規に生まれることもある。なので、風音がチェックした場所もあくまで目安程度に考えていた方が良いものではあった。

「それにしてもやっぱり低階層は大体攻略されてるね。二十階までは地図もほとんど埋まってるみたいだから、そこらへんまでは隠し部屋探しを中心にやってこうか」

「二十階層以降はどうする?」

ジンライの問いに風音は「ふーむ」と唸りながらメンバーを見る。戦力的な問題でいえば四十階層までの魔物ならばタツオとレームを抜かせば不安はそれほどない。また二人に関しても自分がついていれば大丈夫だろうと風音は考えた。

「地図には階段までの道のりはあるんだし、隠し部屋を探す以外は寄り道せずに二十七階までは進もうか」

風音の言葉にジンライが「うむ」と頷いた。

「後は三十五階層辺りで冒険者が先に進めなくなってるって話だから、そこらへんでなんかやばい魔物でもいそうだし気をつけようってところかな」

「了解。そうすると姉貴、今日はどこまで進める?」

直樹の問いに風音は「ひとまず八階層まで」と答える。マップコンプリートを目指すわけではないのだ。今から入って隠し部屋を探して進んでいけば今日中には八階層までならギリギリ届くかというところである。

「そんじゃあ、いこっか」

風音の言葉と共に、全員が頷き、立ち上がる。ダンジョン探索、ようやくの再開であった。