軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百三十話 荒ぶる鷹で出迎えよう

ベネットが気付くと、いつの間にやら見知らぬ建物の中にいた。そこは先ほどまでジンライたちと戦闘をしていた封印の間の前とはまったく違う場所だった。

「どこだ。ここは?」

そう口にしながらベネットは周囲を見回す。その場にいるのはどうやらトゥーレの兵士たちとタツヨシくんケイローン、それにゴーレムジャガーだけのようである。

「全員……いるな。あのジンライや召喚体にクーロたちはいないようだが」

ベネットは思う。ここはどこだろうかと。

窓の外から見える風景はどうやらイプシロンの街並みのようだが、妙に暗いのも気にかかる。そして、周囲を観察してやはり状況が分からぬのでひとまずは下に降りようかとベネットが考えたときに、壁の向こう側から妙な作動音と共に何かが上昇していくような音が聞こえたのだ。

「なんでしょうか?」

それに気付いた兵の質問にベネットも首を傾げる。

「分からないが、何かがいるのは確かなようだな。隊を半分に分ける。半分は下に降り他の者たちに連絡を、もう半分は私と共に上がるぞ」

ベネットはそう言ってゴーレムたちと兵十名を従えて塔を上がっていくと、その途中の階層で何名かの兵たちを発見した。どうやら封印の間よりも上の階層にいた者たちらしく、状況が分からずその場に留まっていたようだった。また、その他にもセフィロの塔内部にあったものが部屋や床に無造作に転がっていた。ベネットの部屋にあった書類なども落ちていたのである。

(これは……どういうことだろうか?)

ベネットは起きている状況に困惑したまま、先へと進んでいく。さらにはベネットたちが、この建物をセフィロの塔と同じ階層であると換算したときに三十階となる階層にまで辿り着くと、ついには外に繋がる出口を発見したのである。

「いや、出口だと……?」

塔らしき建物の最上階に出口があるのである。その事実を前にベネットは困惑の極みにあった。窓から見えた街は間違いなく王都イプシロンだったはずである。であれば、今自分がいるのは果たしてどこなのか……

その答えを知るためにベネットは日の射す外へと駆け足で出た。そこでベネットは信じられないものを見ることとなった。

「炎……全体に広がった。よく残っていた……な」

「広場が破壊されたのは予想外だったけど、街が燃えるのは想定してたからね。耐火用のコーティングはちゃんとかけてたんだよ」

目の前にあるのは焼け焦げた広場と巨大な穴、その先には水晶でできた城を中心とした幻想的な町並みがあった。さらには何故かワルギレオと風音が仲良く並んで歩いているのである。

その側には白き一団の面々とクーロ、それに女王であるレームもいる。ベネットには目の前の状況が、何がどうしてこうなったのかがまったく分からなかった。

「ワルギレオ様」

やむなくベネットはワルギレオに対して声をかけることにした。他に尋ねられる人物がいなかったのである。

先ほどまで敵対していたジンライたちがベネットに気付き視線を向けているが、それを無視してワルギレオの前に進んでいく。

「待ってくださいベネット」

しかし、そのベネットの前に立ちはだかる人物がいた。クーロである。

「クーロ、なぜ止める?」

唐突なクーロの言葉にベネットは首を傾げる。しかし、続いてのクーロの言葉にベネットはさらに混乱を深めることとなる。

「こちらの方はワルギレオ様ではありません」

「なんだと?」

ベネットが何を言っているんだ? という顔をするが、その場の誰からもフォローは入らない。

「こちらはモンデール様です」

「ど……どうも」

「は、はあ……それはどういうこと……で?」

ワルギレオからも挨拶をされたベネットは目を丸くして尋ねるしかなかった。目をパチクリとさせているベネットにクーロは現在の状況説明を始めたのだ。

**********

「つまりワルギレオ様は 魔力の川(ナーガライン) に流されて亡くなり、残された身体にはモンデール様が宿られた……というわけなのか?」

「そう。けど、俺……も神になった後は 魔力の川(ナーガライン) と繋がって、自我薄れてた。風音が……持ってきたこれの記憶を複製して……今は意識ある」

ワルギレオ改めモンデールの取り出したものはカルラ王から譲り受けた 知性の金属(インテリジェンスメタル) であった。その中にはモンデールが神となる前、魔物であった頃の意識が宿っていた。それをコピーしたことで、モンデールは久方ぶりに己の自我を取り戻すことができていたということのようであった。

「は……あ?」

一方でベネットはそう答えるしかなかった。ワルギレオが死んだということに関しての悲しみは特にはない。元々、そうなって当然の男ではあったのだ。しかしそうなると、ベネットは尋ねざるを得ない。

「それでは、その……我々はこれからどうなるの……でしょうか?」

「さあ……?」

モンデールが首を傾げる。神は答えてはくれない。

「まあ、それは追々ということで。すべてはワルギレオの暴走……ということで収めておくのがスマートでしょうね。まあ、私が決めることではありませんが」

モンデールの横にいるクーロがそう言う。

「それに、すでにゴーレムマスター教会はそちらの風音さんのものです。彼女がこの場におけるゴーレム使いでもっとも優秀なのは間違いようがありませんし、僕たちは彼女の判断を仰ぐだけですよ」

「それは……」

ベネットがワルギレオと一緒にいる風音を見て、戸惑いの顔を見せる。風音は「どやーどやどやー」という感じのドヤ顔であった。同時に首を傾げてもいた。何かとても面倒なことを押し付けられた気がしたからだ。

「我々にこんな街のゴーレムを生み出すことはできません。正直に言ってもうお手上げですよ」

「こ、これがゴーレム?」

その言葉に地面を見て、さらには周囲を見回すベネットにクーロが頷く。

「ええ。いくつかに分割はされていますが、街の機構、主に水道類ですが……そこにはチャイルドストーンなどを動力として動作するように造られているそうです。言うなればゴーレムの集合体なんですよ、目の前にある街そのものが」

信じられない顔で、周りを見回すベネットに対してクーロがさらに説明を続ける。

「それと、さきほどベネットが上がってきた塔を含めて、この島を支えているそれぞれの柱には昇降機が付いています。それも動力石で動くそうで、水も引き上げてくれるそうですよ」

ベネットはあんぐりと口を開けて話を聞いている。そして疑問が生じた。

「ちょっと待て。支えているっていうのは……何を、いや島をどこに?」

「王都イプシロンの上ですよ。ここは」

「そんな馬鹿な……」

「そう思うんなら、そこの穴から下を眺めたらどうです。王城が見えますよ?」

そこまで言われてベネットが慌てて、穴まで行って下を見ると「ギャー」という悲鳴が上がった。壊れたようだ。

騒ぐベネットを見ながら弓花が苦笑する。

「まあ、下に住んでる人たちはこの先も暗いままだろうけどね」

「日照権については王族に文句を言ってください」

「なんでだよ!?」

レームが非難の声を挙げるが風音は無視である。風音の頭に久々に乗れてご満悦なタツオがくわーと鳴いた。

『母上に言いがかりは止めてください』

「ひでぇ。戦友だと思ってたのに」

先ほどまで背中を任せて戦っていたタツオの掌返しにレームが涙目である。しかし、真の涙目はそこから先にあった。

「つーか、なんだ、ありゃ。私の巨大な像があるっ!?」

クリスタルの城までの道をズラズラとレームのクリスタル像が立ち並んでいる。しかもなんの脈絡もなく全員「障ると火傷するぜ」的なドヤ顔の荒ぶる鷹のポーズをしていた。

「なんでだーー!」

「女王として頑張るレームを応援するポーズ?」

「止めろ、どうにかしろ」

「いや、さすがにあれだけでかいのを動かす魔力はちょっとないから」

なにぶん、セカンドキャラを暴れさせることを想定していたために、街全体が強固に造られている。今の風音のレベルでそこまで強化したものを動かすのは難しかった。

「噴水も私の口から水が出る感じじゃねえか」

「ふっ、一応水道類もしっかり造っておいたからね。まあ細かいのは自分たちで増設しておいてよ」

ドヤ顔で風音がそう答える。レームの涙目が止まらない。

なお、すべてがクリスタルっぽく見える城、カザネーパレス改めクリスタルレームパレスだが、実際にはクリスタルだけではなく、鏡面加工と水晶化の合わせ技の鏡になっていたり、実際には大理石的なコーティングがされてあったりと見た目に反して内部は普通な部分も多かった。

ちなみに周辺の街の建物はいくつかの建造物データをコピーで並べているので、同じ建物がいくつも存在しているのである。

元々カザネーランドを造っていたとは云え、すべてを風音ひとりでは手がけられない。

水路などの街の土台を最初に用意した後、デフォルトで入っていた建造物やここまでのコテージなどを中心にしたもので街は賑やかしの建物で埋められていたのである。

そして進む一行はクリスタルレームパレスへと入っていく。

そこはまさしく幻想を現実としたような城だった。日の光を鏡の反射によって、建物内にくまなく通るように設計された光の世界。

それがトゥーレ王国の新たなる城、新たなる象徴であった。

そして城内で待っていた荒ぶる鷹のポーズのドヤ顔クリスタルレーム像を前に再び怒りの咆哮が轟いた。