軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百六十五話 近況を聞こう

朝食が終わった後、風音は親方と話した通りに一度冒険者ギルドに行くことにした。午後にはまた親方もやってきて、メンテナンス用の装備、使用素材の引き取り、また 神聖物質(ホーリークレイ) の生成やタツヨシくんシリーズ改造の細かな検討を行う予定もあるのでそう時間もかけられないのである。なので、そこそこに急いで用を済ませる必要があったので風音たちはすぐに準備をして外に出た。ようやく動き出したダンジョン攻略を前に風音は大忙しであったのだ。

「ふむ。ダンジョンか。早く入りたいものだな。期待しているぞ」

「うん。行ってきまーす」

中庭で完全回復したシップーのおなかを撫でながらジンライがそう言って風音や一緒にギルドに向かう弓花とティアラ、エミリィたちを見送っている。ジンライは日々の疲れをこうして癒していた。

「ナー」

「良いのかシップー」

「ナー、ナーゴ」

「ふふふ、かわいいヤツめ」

そんな会話を背に風音達は立ち去って行く。

半生キュクロープス戦でシップーに救われたジンライのシップーラブ度はさらに上昇しているようでだが、あえてそれにツッコミを入れる勇者はここにはいない。特に弟子と孫はまったくの無言であった。そこにどういう気持ちが込められていたかは不明ではあるが、おなかを触りたいという思いは確かにあるはずである。

「にゃ、にゃあ?」

『どうしましたかユッコネエ?』

謎の視線をおなかに感じてビクッとしたユッコネエに、頭の上に乗っているタツオ(黒炎装備)が首を傾げていた。なお、彼らも風音の同行メンバーである。

そんな風音達一行だが、本日の冒険者ギルドに向かう目的は『 金翅鳥(こんじちょう) 神殿』に対する現在の状況確認である。また、ついでに知り合いのパーティがいれば挨拶をしようとも風音は考えていた。

なお、風音と交流がある人間のいるパーティは今、この街にみっついることになっている。

ひとつはパーティ『レイブンソウル』。

かつてリザレクトの街で別れた知り合いのミナカ・ライドウが在籍しているパーティである。また、リーダーのオロチはカルラ王の言葉が確かならばプレイヤーであり、アーティファクト『 制約の黄金鎖(ギアス・ゴルディチェーン) 』の所有者でもあるはずで、そして恐らくは英霊使いでもあるはずだった。

続いてはパーティ『オーリング』。

ゴルディオスの街で再会する約束のあったオーリたちだが、現在は街を留守にしているとのことである。ライルとエミリィが聞いた話では、今は街を出てトゥーレ王国へと行っているらしく、戻りも不明とのことだった。

最後にパーティ『ブレイブ』。

ウィンラードの街で共に狂い鬼と闘ったガーラ、アンナ、ギャオ、メロウ、ジローのパーティである。なお、カルラ王最強の 僕(しもべ) であるビッグストーンワームを体内に入って切り裂いて討伐という離れ業を行ったジローが、同時にビッグストーンワームを従僕にしたとも聞いていた。

それはビッグストーンワームはカルラ王よりもジローの方を主と認めたということであり、人々の心の中でジロー>カルラ王の構図が完成した瞬間でもあった。

それ故に、ジローがカルラ王と、ついでに魔王アスラ・カザネリアンと鬼殺し姫も討伐する日はそう遠くないとすら言われている。最強の勇者ジロー。それはすでに人々の心の中では確定された事実であったのだ。

とまあ、風音も彼らの内の誰かにでも会えればいいなと思っていたのであった。

◎ゴルディオスの街 冒険者ギルド事務所

「『 金翅鳥(こんじちょう) 神殿』なら、もう入れるわよ。レイブンソウルのみんなも戻ってきたみたいだし、とりあえずは普通のダンジョンらしいってのもハッキリしたからね」

それが冒険者事務所に着いた風音達が受付嬢から告げられた言葉であった。

「レイブンソウルが戻ってきたの?」

風音の問いかけに受付嬢が頷く。だが、その顔は浮かない。

「ええ。ただ、仲間のひとりが大怪我したみたいで、今は王都へ馬を走らせていってしまったわね」

その言葉に風音たちの目が見開かれた。

「それってミナカさん?」

「ん? ミナカの知り合いなの?」

その問いに風音が頷くと受付嬢からは「怪我をしたのはミナカじゃないわ」と答えが返ってきた。

「負傷したのは癒術士のロイよ。腕を食いちぎられたらしくてね。再生魔術を使える神官の元に向かったのよ。まあ、そちらも命には別状はないとは思うけどね」

その言葉に風音と弓花がホッと一息ついた。

「どうやらミナカさんとの再会はお預けみたいだね」

「まあ、無事で良かったのではないですか。ミナカさんもまた戻られるでしょうし、この街にいればまた会えますわよ」

そのティアラの言葉に風音も「そうだねえ」と返し、弓花も頷いた。

「それにダンジョンにも入れるようになったみたいだし、お爺さまもきっと喜ぶわよ」

エミリィもそう口にする。つまりダンジョンの確認という当初の目的は果たしたわけである。

「とはいっても午後には装備品は渡しちゃうけどねえ。まあ上層階を回るだけなら問題はないし、明日にでも希望者だけで軽く降りてみようか?」

その希望者にはジンライが当然含まれているはずで、装備を完全に新しくする弓花も今の装備のそのまま参加出来る。そして風音もトンファー抜きという程度なので問題はない。

「私は午後には王都に行くからなあ」

装備品を預けたら、直樹は王都に飛んでイリアから二刀流を学ぶ予定であった。併せてエミリィも王都にいってミンシアナ所属の竜騎士からライルとの竜騎士契約をする話になっている。エミリィは己の力不足を実感し、ライルの竜気を借りて竜人化を行おうと考えていたのである。

そして、そんな話をしているところに筋肉質の男が近づいてきた。それを風音が「?」という顔で見たが、その男は弓花を見て挨拶を交わしてきたのであった。

「あれ、ユミカさんじゃねえか。おお、ティアラさんもいる」

「あ、ギュネスさんじゃん」

「その節はどうも」

その男の言葉に、弓花とティアラも挨拶を返した。それを風音とエミリィが不思議そうに首を傾げて見ているとティアラが「襲撃の時に共闘した冒険者の方ですわ」と説明をしてくれた。そして、それを聞いて風音も思い出した。

「ああ、確か『マザーズナックル』ってパーティの」

風音も以前に弓花からギュネスの名前は聞かされていたのである。思い出したのはティアラの言葉でではあったが。

「おお、そっちは噂の鬼殺し姫さんか。思ったよりも普通なんだな」

そう言ってギュネスが笑う。鬼をもひと蹴りで殺す鬼殺し姫が普通のチンチクリンだったことが意外だったようである。それを笑って言える辺り、ギュネスは大物であるようだった。

「アンタのゴーレム兵には世話になったからな。あのときは助かったぜ」

「お役に立てたなら何よりだよ」

弓花たちと共闘したということはロクテンくんやタツヨシくんドラグーンとも一緒に戦ったということであり、風音もその言葉には頷いた。

「それでギュネスさんもダンジョンのことを聞きに来たんですか?」

「あーいや、俺らは昨日、一昨日と潜ってるからな。レイブンソウルの報告が先に来ちまったようだが、指名依頼で内部の調査をしてたんだよ」

弓花の問いにギュネスはそう返した。

マザーズナックルはランクAのパーティだ。指名依頼が入ったということは事前にそうした調べを行うに足る信頼のあるパーティということでもあるわけで、故に風音達も感心してギュネスを見た。

「優秀なんだねえ」

「まあ、同じ竜殺しの同類としては君たちにも負けてられないからね」

風音の言葉にギュネスは笑ってそう返した。

「黄牙竜ゼロモス討伐参加パーティなのよ、ギュネスさんは」

その弓花の言葉に風音が「おー」と声を上げる。ここ最近でダンジョンで倒されたという名ありのドラゴンは黒竜ハガス、黒岩竜ジーヴェ、そして黄牙竜ゼロモスの三体だけであり、当然風音達の耳にも黄牙竜ゼロモスの名は届いていた。

「装備だってゼロモスの牙から造った竜牙拳だし、今着てるのも竜麟の胸当てよ」

弓花の言葉を聞いて風音が改めてギュネスを見ると、それは黄色がかってはいたが確かに竜装備であった。

竜装備は竜殺しの勇者の特権ともいえるシロモノだ。白き一団は何気なく装備しているが、それも黒岩竜、クリスタルドラゴン、ベアードドラゴン、ドラゴンイーターとほとんど独占して倒して素材を確保しているからこそ出来ることなのである。

「それじゃあ、その報告にここに来たんですか?」

「いや、実は同郷の知り合いに会いに来たんだが今日は来てないみたいだな」

「知り合い?」

「ああ、ギャオって言ってな。女好きでどうしようもないヤツなんだが、あいつの親父さんにも気にかけて欲しいと頼まれててな」

「ギャオかぁ……」

「ん、そちらも知り合いか?」

風音の反応にギュネスが問い掛ける。

「うん。私たちも会えたらと思ったんだけど……ま、いないんなら仕方ないか」

その会話の後ろでエミリィがひとり罰の悪そうな顔をしていた。

その彼らの話すギャオという人物にエミリィは心当たりがあったのである。

それは魔物襲撃の際に狂戦士化した直樹がフルボッコにして、癒術院送りにした男の名であった。