軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百四十五話 注文をしよう

白き一団の一行は、レイサンの街へたどり着くとそのままセスの宿屋へと向かうこととなった。

そして、いつも通りに警護団に呼び止められてジンライが説明をして、街の人々が恐れを抱いた顔でサンダーチャリオットを見たりもしていたが、当然いつも通りなので風音達も特に気にすることはなかった。

イメージ的に言えばヤーさんの黒塗りベンツというよりはメキシカンな麻薬カルテルの装甲車が街を凱旋という感じの反応なのだが、特に風音たちは気にしはしなかった。慣れてしまったので。

◎レイサンの街 セスの宿屋

「いらっしゃーい」

そしてざわつく街から宿屋内へと入り、その足で食堂の中へとやってきた風音達に赤髪の少女がパタパタと駆けてきた。

「冒険者8人と、この子だけど空いてる?」

その赤髪少女に風音は頭の上のタツオを指さしながら尋ねた。タツオがくわーっと鳴いて、それを見て少女が「あら、かわいいわね」と微笑んだ。

なお、通常のパーティは6人編成以下が多いため、白き一団はそこそこ大所帯のパーティということになる。

「そうね。今だとテーブルとカウンターで4・4でよければ案内できるけどどうする?」

少女の問いに風音は仲間たちを見る。そして、全員特に異存もないようだったので、風音も少女に視線を戻して頷いた。

「じゃあそれでお願いするよ」

「オッケー。父ちゃん、8名様案内するよー」

「おうよシャーリー」

厨房から勢いのある男の声が響く。赤髪少女はシャーリーと言うらしい。年は13か14くらいであろうか。客観的に見れば風音の方が年下っぽくはあるが、実年齢は風音よりも若そうだった。

そしてシャーリーに案内され、風音、弓花、ティアラにルイーズがテーブルに、直樹、エミリィ、ライルにジンライはカウンターに別れて座ることとなった。

なお、タツオは風音の頭の上に、メフィルスはいつもどおりの幼体グリフォンとなってルイーズの腕の中に、ユッコネエとシップーはヒポ丸くんと共に外で待っているようである。風音が何かの肉を取り出して置いていたので二匹仲良く食べているはずであった。

そして、街の住人たちが外でざわついているのをシャーリーは疑問に思いながらも、それが目の前の冒険者パーティのせいであるとは気づかないまま注文を取る。

「ええとね。私が牛タン定食の冷やしうどん付きに、タツオには肉ランチで、弓花はソースカツ丼でいいんだっけ?」

「うん、ご飯大盛りでお願い」

弓花が食いしん坊だからと言うわけではない。前衛職はよく動くので自然と食事量が上がってしまうものなのだ。おなかが減ってしまうのだ。

「それでは、わたくしは明太子と青海苔のワフウパスタで、ルイーズさんはオコノミヤキフウ石焼きビビンバでしたっけ?」

「うん。ビビンバ好きなのよ」

ティアラの問いにルイーズが頷いた。好きらしい。

「それじゃあ、それでお願いしますわね」

ティアラの言葉にシャーリーが頷く。ティアラもさすがに冒険者暮らしも板に付いてきたようで、こうした注文でももう戸惑いはない。パスタとビビンバを頼むことくらいお茶の子さいさいなのである。

「了解。お昼だからワンドリンクサービスだけどどうする?」

「オレンジジュース4つに、紅茶をひとつ。食後で」

風音がそう答えた。

「あいよ。そんじゃあそっちは決まったかな?」

今度はカウンター席に向けられたシャーリーの言葉にはライルが「おうよ」と応じた。

「俺とナオキと爺さんはジャンボサセボバーガーセットで頼むわ。ドリンクはリンゴ2に緑茶1だったか?」

ライルの言葉に、直樹とジンライが頷いた。ちなみに緑茶は直樹の方である。

「それで、エミリィはどうするんだ? 決まったのか?」

「うーんとね。私はサラダうどんに食後に紅茶でお願いするわ」

『我らもドリンク食後で頼もう』

そのエミリィの言葉に被せるようにジーヴェの槍がそう口にした。本体の足りないところを補う槍である。便利な槍であった。

「あいよー。父ちゃん、それじゃあ牛タン冷やしうどんに、肉、ソースかつ大盛り、明太ノリ、オコノミビビンバ、サセボセット大3にサラダうどん入ったから」

「あいよっ。すぐ作らぁ」

その宿屋の親父の言葉にシャーリーが頷いて、風音に声をかける。

「そんじゃ、ちょっと作るのに時間かかるし。まあ待っててよ」

「うん。待ってる」

シャーリーの言葉に風音が足をプラプラさせながらそう返した。牛タン定食である。ごはんにトロロ汁がついてくるらしく、風音も期待に胸を膨らませていた。もちろん、イメージ的な意味である。実際には膨らまないので問題はない。

『ふむ。思ったよりもメニューの幅があるようだな』

食事の必要のないメフィルスが、メニュー表を見ながらそう口にしていた。内容は一般的な都市のレストランメニューにもあるものが多いが、それでも傾向はある。それがこの宿屋はあまりジャンルを分けずに手広くやっているようだった。そのメフィルスの言葉に答える者がいた。

「まあ、僕の考案したものも多数あるしね」

『は、あなた様は!?』

その声の主を見て、メフィルスの目が丸くなる。

『た、タツヨシ王陛下』

いきなりの登場である。いつの間にやら達良が食堂に立っていたのである。それを見て風音が尋ねる。

「んー、コピーさん?」

「もちろん、そうだよ」

風音の言葉に達良コピーが頷いた。

「宿屋に入った時点でイベント開始になったってことかな?」

ゆっこ姉は王都にいるのだからゆっこ姉憑きの達良コピーではないようである。であれば、当然風音達のイベントがスタートしたと見るべきだった。そしてその風音の言葉に達良コピーが頷いた。

「そういうことだね。とりあえず、宿屋の部屋を取るとそこからバトルフィールドに行けるようになるよ。殺魅オルタナティブを相手に風音がどう対処するのか今から楽しみだよ」

そしてやはり戦いが待っているようである。レベル278の別タイトルのゲームの装備を持つガーディアン『殺魅オルタナティブ・白スクエディション』がそこで待ち受けているのだ。

「うーん、英霊を使うのは厳しいんだよね?」

「禁止はしないけど、推奨もしないよ。ただ英霊の攻撃を反射とかされて風音に当たったら、ちょっとフォローは出来ない。殺魅からの攻撃ではないから、安全性は保証できないから」

その達良の言葉に風音が唸る。殺魅自身の攻撃には非殺傷属性があるが、自らの英霊の攻撃が被弾すれば風音もダメージを受けてしまうのは当然のことだろう。加えて、風音の英霊ジークの攻略は完璧だというなら使用する意味はない。

「他なら良いの?」

「君自身の力ならね。例えば普通の召喚体も問題はないよ。ゴーレムなんかもありだ」

「ふーむ」

つまりはユッコネエやロクテンくんや狂い鬼などもありということだろう。

「はい、達良。質問があります」

そして考え込む風音の前に立っている達良コピーに弓花が挙手した。

「ええと、何かな?」

その弓花に達良コピーが若干しどろもどろになって返す。しかし達良コピーの視線は弓花の揺れるポニテに釘付けであった。そうした属性をお持ちの男だった。その視線が弓花に気味悪がられている要因でもあったが、ニンジンが目の前で揺れているのに気にならない馬がいようか? 達良という男は己の心に忠実な男であったのだ。

「白スクってなんですか?」

「白いスクール水着……のことだよ」

達良がそっと顔を横に背けた。真顔で聞かれるのは堪えるものがあるのだ。

「それを小さな女の子に着せてるって本当ですか?」

「うん。間違いじゃあないよ」

達良コピーは両手で顔を覆って震えだした。

改めて言われると酷い話である。小さな女の子のキャラに白いスクール水着と重武装を施して友達と戦わせるのである。良識を疑う。

そんな、とある特定の界隈では普通な話も一般的な女子高生にとってはそうではないという事実に達良コピーは打ちのめされていた。

「達良はロリコンなんですか?」

「ううん。二次元限定だよ。僕は普通の女の子が好きだよ。弓花ちゃんみたいな……その、本当だよ」

「ごめんなさい。白いスク水を小さな女の子に着せて悦に浸ってる人はちょっと……その、キモい」

勇気ある達良コピーの言葉にバッチリと弓花は頭を下げて断っていた。そして達良コピーは失意の衝撃により、その場で砕けて消えていった。心が痛い。

「後、姉似のキャラに、スク水着せて悦に浸っている人もちょっと」

ついでに弓花がそう言うとガタンと誰かが倒れた。「……なんで?」という声がした。

ローカルオンリーで楽しんでいてオンラインではきわどい着替えはしていなかったのだが、弓花は本人の部屋に入っていて見ていたのである。

当時は風音に似てる程度にしか思わなかったが、フーネの存在を知ってしまえばもはや何をしていたのかは明らかであり、百年の恋が冷めるのも当然である。

それから達良コピーが再度出現したのは風音たちが食事を終えた後のことだった。心の傷は大きかったのである。