軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百三十二話 報告をしよう

◎オーリオル海 島亀甲羅港

「なるほどな。大変だったなカザネよ。まあ、ワシも多少は大変だったがな。リヴィアタンを倒してしまってな。そちらも大変だったようだが、おあいこと言うところだろうかな? な?」

「うん。そうだねえ。リヴィアタン、白鯨の化け物かぁ。近くで見ると相当大きいね」

ジンライの言葉に風音も頷いた。

現在風音たちは島亀にたどり着いて、リヴィアタンの素材回収場に立ち会っていた。

風音たちはジェネラルクラーケンたちを倒した後は探索を再開せずにそのまま島亀に向かっていた。ドラゴンの気配があるとまた怨霊が目覚める可能性がある……ということで残念ながら探索は諦めたのだ。そして風音たちが島亀にたどり着くとそこではジンライとシップーにライルが待っていた。

そしてジンライから聞いた話では、ジンライは風音たちが来るまでこのリヴィアタンの素材の回収をしていたらしかった。

このリヴィアタンの主な素材は、その肉と骨格である。また鯨なのだが何故か竜の心臓も持っていて、それはすでにジンライが回収していた。

「ジンライさんが来てくれれば、もちっと楽にやれたんだけどね」

「すまんな。中々作業が終わらなくてな。まったく、クラーケン3匹か。惜しいことをしたものだな」

風音の言葉にジンライがそう返す。

もっとも風音としてもただの軽口ではある。ジンライが来てくれれば、もっと有利に戦いを進められただろうが、もう終わったことであり結果は大勝利だったので特に言うこともなかった。

そして、風音とジンライの後ろではライルが苦笑いをしながらジーヴェの槍の口を塞ぎ、シップーが「ナーナー」と鳴きながら頭をかいていた。もちろん、風音にはその行動の意味は分からなかった。

「それでクラーケンの亡骸は霧散したのであったか?」

リヴィアタンの素材は取れた。しかし、クラーケンは元が怨霊であったので、そのまま消えてしまったのだ。もっとも何も手に入らなかったかといえばそうではなかった。

「うん。普通の素材は特に取れなかったね。魔生石は手に入ったんだけど」

「ほぉ。3つともか?」

「うーん。ジェネラルクラーケンからは、ユッコネエを強化したモノの半分くらいのが出てきて、普通のクラーケンからはもうちょい小さいのが出てきたんだよね。直樹たちの倒したのは、そのまま海に落ちちゃって回収は出来なかったんだ」

遠隔攻撃でしとめた為に、クラーケンが消えて残った魔生石を船の上に乗っていた直樹たちは手に入れることは出来なかった。そして魔生石はそのまま海の底に沈んでいってしまったのだ。

「では二個あるのか?」

ジンライの問いには風音は首を横に振った。

「狂い鬼が一個は食べちゃって、ジェネラルクラーケンのも、ここにね。今埋まってるの。なんか狂い鬼が食べたのと共鳴してくっついちゃったんだよね」

風音は己の鎧の胸の中心に収まった赤紫色の玉石をジンライに見せた。

「そんでこんなことが出来るようになった」

そう言って風音がブンッと自分の拳を下に振るうと、瞬時に風音の篭手から黒い豪腕が現れて、地面を殴りつけた。そして殴りつけた後はその豪腕はまたすぐに篭手の中に消えていった。

「ほう、それは?」

「狂い鬼を『竜喰らいし鬼軍の鎧』の中から部分的に出せるっぽい。一応、私の意志を反映して出てるみたいだけど」

それは風音個人の近接戦闘能力の低さを憂いてか、或いは単体での召喚頻度が減ってきたことに対する狂い鬼なりの苦肉の策といえたかもしれないが、結果的に『竜喰らいし鬼軍の鎧』はさらなるパワーアップをしたようだった。

というような説明を風音から聞き、ジンライも頷いた。

「まあ、それは確かに悪くはないかもしれんな、カザネよ。お前は確かに強いが、自分の爪をまだ研ぎ切れてはいない部分も目立つからな」

「自覚はあるんだけどねえ」

ジンライの言葉に風音が苦笑する。

風音自身の戦闘力は高いのだが、近接戦においてはジンライや弓花には見劣りするのだ。それは戦闘技術の熟練度に問題があった。

複数のスキルを使い分ける風音と、ひとつのスキルを使いこなす弓花。

風音は、通常の戦闘においては非常に有利に進めることが出来るのは間違いない。しかし、相手の土俵に立った場合にはその状況は逆転することがある。例えばスケルトンジェネラルとのトンファー対決のようにである。

そしてジンライと弓花は自らの土俵に相手を立たせることが上手い。勝つための技術として、そこまでを含めて鍛え続けているためだ。そうした強さは風音にはまだなかった。

「ひとまずはトンファー使いのためのお勉強を続けてみるつもりだけどね。あのツヴァーラの将軍さんかなんかのスケルトン見る限り、ツヴァーラにもトンファーの技があるっぽいし、そこらへんに入門書の下巻があればいいんだけど」

「ふむ。そうだな、レイゲル騎士団長にでも聞いてみると良いのではないかな?」

ジンライの言葉に「ああ、そうだね」と風音も頷いた。アウディーンの腹心の部下であるレイゲルならば、そうしたことまでも知っていそうだった。

「せっかくトンファー使いを倒したのだからスキルも一緒に手に入れば良かったのだがな」

「うーん。手に入ったスキルはそれはそれで強力ではあるけどね」

そしてふたりの視線は前の港に停まっている20メートルの小型戦艦に向けられる。何故、海に浮いているんだろうと疑問に思うほどに強固な装甲板で覆われた戦艦である。グリップ代わりの太い煙突が突き出ていて、中からは魔力のカスである銀霧蒸気が噴き出ていた。

それは現在のフィロン大陸では失われている技術の、 自然魔力(マナ) を動力とした魔動船であった。そして、それが二隻並んでいた。それこそが風音の新たなる召喚体『戦艦トンファー』である。そして、20メートルはあるのでどう考えてもトンファーとしての活用は不可能なシロモノであった。

「見事ではあるが、これから海に向かうことなどほとんどなさそうだがな」

「別にトンファーとして使ったり、船として使ったりしなくても、こんだけデカいんだし敵に落として使おうかなーと思ってるんだよねえ。 戦艦トンファー(メテオ) 召喚ー的な?」

「 戦艦トンファー(メテオ) か」

「 戦艦トンファー(メテオ) だよ」

質量兵器である。 戦艦トンファー(メテオ) ということであった。

「ふむ。まあ、よかろう。その実力のほどは、実際の戦闘で見せてもらうとしようか」

「ダンジョンの中だとやっぱり使い辛そうだから出番ないかもしれないけどね」

風音は苦笑いをしてそう言った。全長20メートルの船を落とすのだ。呼び出すにはそれなりに開けた場所という条件が必要だった。

「あの、ジンライさん、そろそろよろしいですかな」

そして、風音と話し込むジンライに声がかかる。

「む、ああ、すまんなモンロー」

ジンライは後ろにいる人物に頭を下げて、改めて風音たちを見た。

「モンロー、こちらが白き一団のリーダーのカザネだ。カザネ、この方はこの島亀の亀人族のリーダーであるモンローだ。共にリヴィアタンに挑んだがなかなかにやる方だ」

ジンライの言葉に頭をかくモンローだが、風音はそのモンローの握る銛を見て(なるほど)と頷いた。

海王の銛。海水を操る銛系統では上位武器である。それを使いこなせているのならば、確かに、その実力はあるのだろうと風音は理解する。

「まさかツヴァーラの姫君まで訪れるとは思いませんでしたので少々気後れしとりますが、ようこそ島亀へ。歓迎いたしますよ」

そう言ってニコヤカに笑うモンローの顔は優しそうではあった。それは亀人族全般にいえることではあるが、彼らの表情には妙な愛嬌があるのだ。

「うん、ありがとう。こちらこそ突然お邪魔してごめんなさい。こういうの見るの初めてだったんで気になっちゃって来ちゃいました」

『来たのです』

風音の言葉に続いて、頭の上に乗っていたタツオがくわーっと鳴いた。いつもの黒炎装備ではあるが、角が増えたりと若干成長したために、以前よりも物々しい姿にはなっていた。

「それにしても素晴らしい船ですね。しかもこの人数で二隻を動かせるとは。ツヴァーラの国力の高さが出ておりますな」

そのモンローの言葉には風音は「あっはっは」と笑って返した。召喚で呼び出しましたとも言い辛い。

もっともあのジェネラルクラーケンが呼び出せていたのだから、600年前のツヴァーラには存在していたのかもしれないのでツヴァーラの国力の高さというのは間違いではないのかもしれない。600年前の話だが。

「それじゃあカザネよ。せっかくだし、モンローに案内してもらって温泉で汗を流してきてはどうだ?」

「温泉? ここ島亀の上だよね?」

風音が首を傾げていると、ジンライがにたりと笑って答える。

「ここにはあるのだ。温泉の水珠がな」