軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百三十一話 激しくやりあおう

「ィィイイケエエエ!!」

直樹が操者の魔剣『エクス』を操りながら、迫り来るクラーケンの足を魔剣解放状態の飛竜たちを使って撃破していく。

さらには、ブルートゥザ戦より参戦していた悪魔ジルベールの剣『夜王の剣』の魔剣解放状態であるイケメンホストが海を軽やかに走っていく。

そのまま迫るイケメンホストを蹴散らそうと延びた触手に、イケメンホストは微笑みを浮かべながら特攻し、まるで赤の子を抱き寄せるように繊細にそっと触手を抱きしめると触手の中へと浸食を開始した。イケメンホストは相手の内側に入り込むのがお上手なのだ。

「夜王の剣、クラーケンの触手への接続完了っと」

直樹は魔力のパスがクラーケンの触手と繋がったことを把握すると、己の意志で黒く変色しつつある触手を操り始めた。

『ギュギャアアッ』

ジェネラルクラーケンとは違い、すでに知性を失っているクラーケンはその状況に叫んで暴れる。己の身体の一部が動かないどころか、攻撃を仕掛けてきているのだ。その事態にパニックになっていた。

「そのまま、巻き付いとけ」

直樹の言葉通りに黒く変色した触手の一本がクラーケン自身を縛り上げていく。それは『夜王の剣』の能力。対象物を浸食し操る外法の剣。東の竜の里ゼーガン襲撃ではジルベールもその剣でドラゴンを操っていたことがあった。

相手の知力や耐性、また操る直樹自身の魔力量の問題もあるので、ジルベールと同等というわけには行かないが、魔剣を自在に操れる直樹にも当然それは可能であったのだ。

ともあれ、直樹は触手の一本を操ることに成功しその動きを封じていく。

そして身動きのとれないクラーケンに白き一団の総攻撃が仕掛けられる。直樹の飛竜が、エミリィの矢が、タツオのメガビームが、ライトニングスフィアが、 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) が一斉に突撃し、クラーケンを圧倒していく。

水晶ガレー船の中から量産型タツヨシくんA・Bも上がってきて投擲攻撃もプラスされているのだ。如何に巨大なイカとはいえ、そこまでの攻撃を連続で喰らえばもはや虫の息である。

(よし、こっちは上手くいった。そしたら姉貴たちは)

戦闘が終わりに近付くのを感じながら、直樹は他の戦場を確認する。ユッコネエと狂い鬼のコンビは、クラーケンへのダメージこそ少ないものの状況を有利に進めているようだった。

一方で風音たちの戦闘の方は苛烈を極めていた。

9メートルのドラゴンと水面から出ている部分だけで25メートルはある巨大イカ。怪獣たちはその剣と、刀と、20メートルの小型戦艦トンファーによる壮絶など突き合いをしていたのだ。

**********

『ぬりゃあああッ!』

『ぐぉおおお!!』

風音ドラゴンとジェネラルクラーケンの叫びが交差し、ぶつかり合う。

(サイズが違う。パワーじゃ勝てないかっ)

トンファーの攻撃で弾き飛ばされながらも、風音は冷静に判断する。

(だったらこれはどうだっ!)

『クッハァアアアアアッ』

風音ドラゴンは空を飛びながら距離をとって炎球を連続で吐き出した。

『しゃらくさいッ』

それをトンファーを回転させてジェネラルクラーケンが散らす。周囲に炎がまき散らされ、海面に落ちてジュッと海水が蒸発する。

『蒸発? ああ、だったら』

その様子を見ながら風音は足下の海面にコールドブレスを当てて、凍らせた海面に降りたった。

『オリャ!オリャ!オリャ!オリャ!』

そして召喚剣『黄金の黄昏』と妖刀『弓花』を振るって、飛ぶ斬撃を無数にジェネラルクラーケンに飛ばしながら炎球も連続で吐き出していく。

『同じ手をっ』

それをジェネラルクラーケンはトンファーで弾く。弾かれた刃は海面にぶつかり、いくつもの水柱が出来、炎球の欠片と海水とで出来た蒸気で周囲の視界が塞がれていく。

『む?』

それをジェネラルクラーケンが訝しげに見る。

(無作為に放ったにしても考えがなさ過ぎる。視界を制限させたか)

だがジェネラルクラーケンとて武人の魂を持つイカだ。相手の気配が近付いて来ていることなどお見通しである。目の前の水の壁の先に風音ドラゴンがいることなど……と、ジェネラルクラーケンは考えたが、一歩読みが足りなかった。

「スキル・キリングレェエエエッグ!」

『なにっ?』

水の壁を抜けて、正面から凄まじい速度で何かが突進してくる。それをジェネラルクラーケンはトンファーをクロスして防御するが、

『防ぎきれない……だと?』

バキバキと受け止めたトンファーが破壊されていく。その攻撃はカザネバズーカ・テラバスター・オルタナティブ。

それは、天使化の飛翔能力をスペル・フライで代用したカザネバズーカ・テラバスターである。威力もあまり変わらないので普通にテラバスターでもいいのではないか。オルタナティブとか言いたいだけだったのではないか。そんなことすら思わせるほどの驚異の必殺技だ。

それはチャージしたキリングレッグを、ブーストで加速、ドラグホーントンファーに装填したファイアブーストで回転を付けながらさらに加速し、遠隔視からの俯瞰視点でも観測することで、その命中精度も向上させた、暴力的な威力を誇る飛び蹴りだ。

その、ドラゴンから元の姿に戻った風音の最大攻撃がジェネラルクラーケンを襲ったのだ。それが戦艦トンファーを破壊していく。

『グゥゥオオオオオオオオオ!』

「うりゃぁああっ!!」

そして、完全にトンファーは打ち砕かれた。しかし、ジェネラルクラーケンには届かなかった。想像以上に戦艦の装甲が堅かったのだ。そして、砕けた戦艦の欠片の舞う空間で風音はジェネラルクラーケンと対峙する。

『惜しかったな、小娘がぁあ!!』

「あははは、それはどうかなぁ?」

そして風音の言葉と共に、空から巨大な刀が……

『ぐあぁあっ!?』

ザクンッと妖刀『弓花』がジェネラルクラーケンの身体を切り裂いた。

『上からの攻撃にはご注意をってね』

ドラゴン解除前に妖刀『弓花』は予め、空に投げられていたのだ。それはジェネラルクラーケンが風音に集中しているところに上から奇襲を行うためで、その目論見は成功した。

そして弓花が妖刀化を解除してそのまま完全竜化すると、翼を広げて風音の元へと飛んでいく。

『仕上げよ、風音ッ!!』

「よっしゃっ」

風音は弓花にガッチリと手を握り締められ、海面に落ちることなく弓花の飛行能力で空へと飛び上がる。さらには再び『友情タッグ』により、ふたりの力が上昇する。そして放たれるのだ。

「そんじゃあ、トドメのスキル・メガビーーーーーームッ!!!!」

風音の両目からビームが放たれ、天をも切り裂く一筋の光の剣がジェネラルクラーケンをまっぷたつに切り裂いた。

『グァアアアア、ミンティア様ぁああああ!?』

貫通したメガビームは海を切り裂き、まるでモーゼの十戒のごとく、真っ二つに海が裂けた。『友情タッグ』によりその威力も上昇しているメガビームだ。普段の1.5倍はあるその威力は凄まじいものがあった。

そのままジェネラルクラーケンは燃えていく。600年の怨念を散らしながら、その形が霧散していく。

「……終わったか」

それを男は一人、もの悲しげに見ていた。

ジンライ・バーンズ、すべてに出遅れた男の指示に従って、そっとシップーは踵を返して島亀へと戻っていく。ジェネラルクラーケンと二体のクラーケンはすでに討伐されていた。そこにジンライの出番はなかった。

シップーの背に雫が一滴こぼれ落ちた。シップーはそれに気付き「なー」と一言鳴いて、さらにスピードを上げて走り出す。男の涙は人に見せぬものなのだ。それをシップーは知っていた。