軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九十二話 同時に倒そう

「よし、来たぞ。姉貴たちだッ!」

直樹は森から風音たちが出てくるのを見て叫んだ。もっとも、その後ろでは恐るべき勢いで木々がなぎ倒されて土煙が舞っている。ブルートゥザが来たことは誰の目にも明らかだった。

そして周囲に木々が吹き飛ばされながら5匹のブルートゥザが森から飛び出してきた。

「グルォロオオオオオオオ!!」

凄まじい叫び声で巨大な魔物たちが風音たちを追って、つまりは直樹たちの方に向かっていく。

「滅茶苦茶怒ってないか?」

ハン・モックがゴクリとノドを鳴らしながらそう言い、直樹が苦笑する。おそらくは風音が必要以上に挑発したのだろうなと直樹は考えたが、当然それが正解である。

「そんじゃよろしくーー!!」

ビューンと上空を通り過ぎる風音たちとは入れ違いに、いよいよハン・モックたちはここからが本番である。そのための準備は整っている。そして、まずは第一手。

「ユッコネエ!」

「にゃーーーー!!」

直樹の言葉に従ってユッコネエが地面に前足を、その肉球をポンッと置く。

「にゃっにゃーーー!!」

ユッコネエがユッコネエなりにゴーレムメーカーを発動させる。そして正面の大地にヒビが入った。

「グォォオッ」

ブルートゥザたちは足下までひび割れたことに叫び声をあげた。

それは早朝から用意していた落とし穴だった。風音とユッコネエのゴーレムメーカーで掘り、そして固めた土を蓋にして塞いでいたそれをユッコネエのスキル『ゴーレムメーカー』で解除したのだ。

そうなれば当然、蓋をしていた土の硬化は消える。そして……

「グァツガアァアアア!?」

当然のようにブルートゥザはその穴に落ちていった。

「よっしッ!」

直樹がガッツポーズを取り、ユッコネエもにゃーと鳴いたが、しかし、落ちたのは二匹だけだった。後続にいたほかの三匹はその巨体にも関わらず、一気に穴を飛び越えて向かってくる。

「マジかよ!?」

「ふにゃー!?」

驚く直樹と、毛を逆立たせるユッコネエ。だが、その前にハンモックと『シールドバース』の冒険者たちが立つ。その後ろにはパーティ『風使い』の面々も立ち並んだ。

「いや、よくやった。鬼殺し姫の猫よ。三匹ならば我らでもどうにかなろう」

そして両手に持つ盾を構え『シールドバース』の三名が一気に闘気を放った。手に持つ盾を境界とし、あらゆる攻撃を弾く盾士の奥義『断界』と呼ばれる技だ。それにブルートゥザたちが激突する。

ブルートゥザの頭部の骨格は硬いだけではなく魔力をも弾く。そのため、ハンモックたちの闘気の盾が破壊されかかってバリバリと魔力の火花を散らせる。

「では、我々も行きます。『風の戒めよ。我が眼前なる魔を封ぜよ』」

『『『『『風の戒めよ。我が眼前なる魔を封ぜよ』』』』』

さらに、正面で防いでいるハン・モックの背後でテラスが風縛りの魔術を発動させ、パーティ『風使い』のほかのメンバーも同時に魔術を発動させて同属性魔術の相乗効果によりブルートゥザ三体の動きがさらに止まる。

それがチャンスだった。

「よーし、ここが見せ場だぁぁあ!!」

その声はブルートゥザがハン・モックたちと激突しているちょうど真横の窪んだ場所から出てきた。

そして正面の敵を引きつけ抑える役割のハン・モックたちとは別の、真横からの遠距離攻撃を行う部隊がついに出番となったので飛び出してきたのだ。

そしてジンライの『 雷神砲(レールガン) 』、弓花とライルとジン・バハルのアダマンチウムの槍の『雷神槍』、タツオのメガビーム、量産型タツヨシくんの投擲、『シールドバース』の後衛組の魔術、さらにはヴォッカたち『流星の雨』とエミリィの矢の攻撃の、それらすべてが一斉に放たれた。

凄まじい轟音と共に三匹のブルートゥザが一気に吹き飛ばされてゆく。

「これはヒドい」

自分で立てた作戦ではあるが、そのあまりの威力に風音自身が冷や汗をかくほどである。3匹のブルートゥザは瞬時に細切れになって吹き飛んだ。

確かにブルートゥザの頭部の骨格の強度は異常とも言えるほどに硬い。だがその他の部分が脆いわけではないのだ。それが豆腐を床に叩きつけたようにビチャッと肉片へとぶちまけられた。

中でも当然ジンライの『 雷神砲(レールガン) 』の威力は絶大だが、それに併せた無数の攻撃がさらなる追い打ちをかけるのだ。ブルートゥザたちは恐らく即死だっただろう。頭部を残してほぼ原形をとどめていない姿でその場に崩れ落ちた。

だが、そこで終わりではなかったのだ。

「グォォオッ」「ギャガァア」

射撃が終わった途端に二匹のブルートゥザが勢いよく、落とし穴から出て来たのだ。そしてそれぞれが、ジンライたちとハン・モックたちの方へと突進していく。

「来るぞ。さすがに二度目は無理だッ」

ハン・モックがそう告げる。すでに一度目の突進をくい止めただけで彼らのスタミナは根こそぎ奪われたようだった。そしてそれはテラスたちも同様だ。

だが防御手段はまだある。

「ティアラ、防御を。ルイーズさんと直樹はフォロー。私はあれを仕留める!」

「分かりましたわ」「了解ッ」「行くぜ姉貴!」

風音の言葉にティアラたちが答える。一方でジンライたちは……

「 雷神砲(レールガン) でも通らぬとは見上げた石頭よ」

一発撃ったが弾かれたようだった。恐るべき強度である。

「師匠、どうしますか?」

悪態づくジンライに弓花がそう尋ねる。

「ユミカよ。バーンズ流槍術『反鏡』だ。いけるな?」

その言葉に弓花の目が見開く。

「やれますけどさすがに一瞬ですよ?」

「構わん。ワシは」

そしてジンライは手に持っていた繭を天に掲げた。

「『相棒』と共に背後に回るさ!さあ出てこい『シップー』!!」

そして繭が割れる。すでに準備は整っていたのだ。そして飛び出したのは、子猫。それが見る見るウチに巨大化し、ユッコネエと同じサイベリアンタイプの巨大猫へと変わる。現在の金毛のユッコネエとは違い、黒と銀の縞模様で、顔はユッコネエよりも若さがあった。

「シップー!ユッコネエとワシの息子よ!!いざ行かん!!!」

「ナーゴッ!!」

背中に乗ったジンライの言葉にシップーも鳴いて頷く。シップーはそのために生まれたのだ。人猫一体となるべく生まれた、ただ一体の巨大猫。風と雷を司る最速の 獣(ケモノ) 。

『私も行きます』

そのシップーの頭にボフッとタツオが乗った。

「タツオ?」

『シショー、今回は私にとっても大切な戦いなのです』

そのタツオの言葉にジンライも頷く。ジンライはタツオの目の奥の炎を見た。それは 漢(おとこ) の魂の輝きだ。

「余裕ありますねえ師匠たちは!?」

もう間近に迫るブルートゥザを前に弓花がそう言う。

そして弓花が『深化』により狼の姿に変わり、前へと飛び出した。

『そんじゃ、師匠のフォローはよろしく』

そう後ろに声をかけて、弓花は息を吸い込んだ。

目の前にあるのはまるで巨大な壁のようだとティアラは感じた。だが次の瞬間には、ティアラは天鏡の大盾から『イージスフィールド』を発動させた。それはかつて黒岩竜の鱗の射出から白き一団を救ったように、盾の正面に浮かび上がっていた文様が正面に発生しブルートゥザの衝突を食い止めた。

目の前にあるのはまるで巨大な壁のようだと弓花は感じた。だが弓花は師匠に託された。ならば成さねばならぬと、完全狼化した身体で槍を前に出して闘気を込めた。そしてブルートゥザと衝突するその瞬間にソレを放ち、その勢いを殺す。それはバーンズ流槍術『反鏡』。あらゆる攻撃を跳ね返すバーンズの奥義。

同時に風音は飛び出した。天使の翼で空を飛び、空中跳びで加速し、ブーストでさらに速度を上げ、トンファーからのファイアブーストで一気に最高速まで駆け上がる。

同時にジンライたちの乗ったシップーが駆けだした。その速度はまさしく疾風迅雷。風の加護がシップーを覆い、雷の爪が大地を抉って加速する。それはもはや目に追えぬ速度でブルートゥザの背後へと一気に駆け抜ける。

その突撃に併せて、直樹の魔剣から変じたドラゴンとイケメンホストのエネルギー体と、ルイーズのライトニングスフィアがブルートゥザの正面頭部に激突する。その威力がブルートゥザの標的を風音から直樹とルイーズに移させた。

その突撃に併せて、エミリィが竜弓術『滅竜』を放ち、ライルとジン・バハルも雷神槍をブルートゥザに放つ。竜の牙にアダマンチウム製の槍はそれだけでも強力だ。その威力がブルートゥザの標的をジンライたちからエミリィ、ライルとジン・バハルに移させた。

一気に上空にたどり着いた風音は己の中でも最速最大のスキルを放つ。それはメガビーム。風音の瞳から膨大な光があふれ出て飛び出し、巨大な閃光となってブルートゥザの身体を貫いた。

一気にシップーの俊足でブルートゥザの下に回り込んだジンライは柔らかいブルートゥザの腹部を心臓狩りで大きく切り裂いた。その切り裂かれた傷口にさらにタツオがフルパワーメガビームを放つことでその内側を一気に貫いた。

そして、二条の光が二匹のブルートゥザを貫き、破壊したのだった。