軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十四話 街を育てよう

◎オルドロックの洞窟近辺 温泉コテージ(?)

温泉伝道師カザネ。その者、洞窟に住まいし邪悪なる竜を退治せり。

そして、天より舞った二頭の竜により温泉を与えられり。

その温泉、竜の加護を得て、 真(まこと) に良き湯になりけり。

【カザネ双竜温泉誕生秘話】

そう、そこには書かれていた。

まず書かれている時点で秘話ではないし、そもそも時系列が間違っている。

風音が温泉を掘ったのは黒岩竜ジーヴェを倒す前であるし、天を舞った二頭の内一頭は当の風音本人である。しかも酔っぱらってどっかに飛んでいきそうになった青竜風音をジーク王子の白竜カーザが止めにいっただけである。

あまりにも大きいツッコミどころだが、だがそんなよくわからない秘話の看板も目の前のソレを見てしまうと霞んでしまう。

そこには白と青のそれぞれのドラゴン像が屋根の上にある、やたらと豪華な屋敷があったのである。名をカザネ双竜温泉御殿というらしい。

「何これ?」

「あー、下ったところにカザネの作った温泉があるし、場所的にはコテージがあったところよねえ」

弓花の誰に投げかけたわけでもない問いに、ルイーズが呆れたように返した。

坂を下ったところには確かに以前に風音が作成した大浴場が存在していた。とは言っても周囲はすでにかつてのような簡易テントの店ばかりではなく、いくつかの普通に建築された宿屋なども出来ており、また温泉はそちらにも引かれているようであった。

「すげえ、屋敷だな。どんなヤツが住んでるんだろ?」

「きっと、この付近の領主様とかじゃないの?」

弓花たちの後ろではライルとエミリィがそんなことを口にしていたが、弓花もルイーズもなんとなくの見当は付いていた。ティアラは特に気にしていないようで、ジンライと「温泉楽しみですわね」「ええ、そうですなあ」などと話していた。

『そういえば、カザネが以前に管理とか改修とかを頼んでたとか言っておったな。ほれ、なんといったか。あの商人』

ルイーズの腕の中のメフィルスがそんなことを口にする。

「おや、やはりルイーズ様たちですか。お久しぶりです」

そして、弓花とルイーズがメフィルスの言葉に顔を合わせているところに声がかかった。一同がその声の方を向くとそこには、部下を連れた男が白き一団の方に向かってきていたのである。

その声の主の名はザクロ。以前にオルドロックの洞窟前の市場で出会った商人で、風音からオルドロックの洞窟の風音コテージの管理と維持と改修を任されていた男だった。そして恐らくはカザネ双竜温泉御殿の原因であると思われた。

風音と直樹と分かれてから五日目、弓花たちはオルドロックの洞窟前、今や名をオルドロックの街に変えた新たなる温泉街に来ていた。そして変わり果てた風音コテージと懐かしい顔と再会していたのである。

◎ミンシアナ王国 カザネ魔法温泉街

「えいやーーー」

ズズズンッと地面から壁が盛り上がっていく。それはゴーレムメーカーで作ったストーンウォールである。部分的に見張り台も作りながら、風音が街の、特に山側に対して壁を造り続けていく。なお壁の材料は壁の外側から取っているので斜面がいくらか一緒に削れていっている。

弓花たちがオルドロックの街に着いたのとおおよそ同じくらいに、風音たちもカザネ魔法温泉街にたどり着いていた。そして挨拶もそこそこに風音は弓花たちの調査レポートを読んでこうして壁を造り始めたのである。

「こんなゲームあったよなぁ」

伐採した資材を消費し建物などを建造していく中世型のリアルタイムストラテジーゲームで見た光景だと直樹は思った。もっとも、そうしたゲームを直樹は遊んだことはないので詳しくは知らないが、風音はそうしたゲームを少しやっていたようである。ただ、本当に少しやってすぐに止めてゼクシアハーツに戻っていたので得意ではないようだったが。

『ゲームですか?』

くわっと直樹の頭の上にいるタツオが尋ねるが、直樹も「まあ、俺もよくは知らないんだけどな」と返す。その横ではユッコネエが繭を抱えたまま日に当たってスヤスヤ寝ている。それは光合成と魔力吸収により風音に微量ではあるが魔力を送るためである。

「にゃーぉ」

目をつぶりながら寝言を言っている。まあ、本人的にはただ寝ているだけではあるが、風音の役には立っているので良いのだろう。

「そんじゃあ、これで打ち止めッ!!」

魔力をほぼ0近くまで使い切った風音がそう言って見張り台を作る。

「ご苦労様です」

キンバリーが水で濡らしたタオルを持ってきて風音に手渡した。

「あんがとさんですキンバリーさん。これで全体の三分の一ほどかな」

風音が作り上げた壁を見回しながらそう口にする。

「ええ。ただこれで見張るのが難しい山の方面はカバーできました。簡易ではありますが我々の柵もありますし、警護団の数も増えました。以前に比べれば状況は俄然良くなりましたよ」

「それじゃあ、マッカさんにも色々と言われてるしここらで終いで」

そういいながら風音は、ふらふらーっとしながらユッコネエのおなかの上にボフッと乗っかった。ユッコネエがそれに少し目を開けたが、あくびをしてからまた目を閉じた。

「姉貴、マッカさんにいろいろ言われたってのは?」

「んー、あんま頑張りすぎるなって感じのことを。私がやりすぎると土建屋さんとか建築屋さんとかの仕事が減るからそれはそれでよろしくないって感じだったかな?」

「まあ、そりゃあそうか」

その言葉には直樹も頷くしかない。後から領主に乗っかった風音とは違い、元々のこの街を作るための準備をマッカは整えていた。今回の移民のことを抜かせば、街を作る算段は出来ていたのである。

それはミンシアナ王国やゼニス商会やメッシ商会、近隣のコンラッドやウィンラードの街の領主から出資をしてもらっているし、今は状況も変わっているが交易都市ウーミンからも同様である。

もっともやはりこれからもここに留まらないであろう風音の固有のスキルに依存するのは危険であろうというマッカの警戒心もそこにはある。

(防衛力不足が減ってるねえ)

そして風音は目の前のウィンドウを見ていた。

名前:カザネ魔法温泉街

特産:魔法温泉

人口:823人

領主の評価:信仰の対象

問題:【住居不足】

連絡:特になし

風音は問題の項目にあった【防衛力不足】が減っているのを確認して頷いた。このウィンドウはゼクシアハーツ内でのミニイベントである街育成モードのステータス画面である。とは言ってもステータスはこれ以上はなく、領主に就任するだけして後は部下に任せて、時折出てくるクエストなどを達成して町を発展させていくサブシナリオのひとつであった。

風音が領主となったことで表示されるようになり、またプレイヤーではないマッカもゲーム中での部下のポジションに指定されたらしく、連絡が取れるようになったのは大きい。

なお、国育成のシナリオはないのでゆっこ姉はこのステータスは出ていないようである。メールで風音が連絡したら、少し悔しがっていた。

(けど、この人口とか問題とかどうやって出してるんだろ。というか評価が信仰の対象って……)

それも風音としてはおなかがキュッと痛くなる話だ。反乱とか無能とか嫌われ者とか書かれるよりはよほど良くはあるが。

ともあれ、状況がわかりやすいのは助かる話である。そして続いてはいよいよ住居の作成だ。風音は魔力を取り戻すべく、そのまま目をつぶって眠りについたのだった。