軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百二十四話 原因を探ろう

ここで、ムルアージの廃都に悪魔が来る二日前、つまりは風音たちが廃都に来て、そしてヨハンと再会したところまで時間はさかのぼる。

そこで告げられたのは、ランクS冒険者マーゴがムルアージの廃都のヨハンを訪ねた理由であった。

◎ムルアージの廃都 領主の館 賓客室 二日前

「竜の里の襲撃事件? あの悪魔の?」

唐突にヨハンから告げられた話に風音たちは目を丸くする。

「あら、悪魔の件まで知ってるの? だったら話は早いわね」

話が早いも何も……とは風音は思ったが、どうやら風音たちが、東の竜の里ゼーガンで悪魔と戦っていたことは知られていないようであった。

風音がジンライを見ると、ジンライは首を横に振った。

東の竜の里は元々隠れ里であり、その場所は公には知られておらず、そもそも場所が分かっても通常は霧の結界に阻まれて入ることも出来ない。そのような場所なので、悪魔の襲撃についてはハイヴァーン公国も事態を把握してこそいるが、おおっぴらに事件のことも広めてはいないのである。

そして、現時点では風音のため……というよりはタツオの身の安全のために神竜皇后とナーガの子誕生の件はさらに秘匿性が高い情報となっている。そうしたこともあり白き一団が竜の里にいたという情報も一般的には伏せられているようであった。

「なにかしら?」

そして風音とジンライのやりとりにマーゴが首を傾げるが、風音は「んーとりあえずは秘密で」と返した。風音の頭のタツオ(黒竜偽装)がくわーと鳴く。

「ま、ワケアリってわけね」

それを見てマーゴも頷いた。タツオという存在が風音と共にいる以上は白き一団が竜の里と無関係ということはないのだろうが……とマーゴは考えたが、自身が引き受ける仕事の内容にも口外無用のモノも多い。ここで秘密と言うことはそうしたものと同様に話せない内容なのだろうと理解したようだった。

「それで、竜の里の襲撃は分かったけど、それがなぜヨハンくんに結びつくのかしら?」

続けてのルイーズの問いには、ヨハン自身が答える。

「北のドーマ地方にあるレイヴェル亡国領という場所があるのは知っていますか?」

ヨハンの言葉にルイーズが頷いた。

「うん。それなりにはね」

フィロン大陸最大の忌み地『レイヴェル亡国領』。それはつまり悪魔王 雪人(ゆきと) の治めていたレイヴェル王国の跡地であり、今は怨霊の支配する領域である。

そして、そこまで聞ければ話は見えてきた。

「つまりヨハンさんはその地の浄化をお願いされているってことかな?」

風音の問いにヨハンが頷いた。

「ヨハンくんは元々ギルドに所属してるしねん。この街を浄化してしまうほどの能力持ちだからランクSとしてのスカウトも兼ねての指名依頼ってところね。ま、元々その話はギルド内でも上がってたらしいんだけど、ここ最近、緊急に対応しろって話になったのよね」

マーゴがそう付け加える。竜の里の襲撃自体は二ヶ月近く前のことだ。主犯が白王ユキトと分かっているのであれば、『レイヴェル亡国領』への対応を考えていてもおかしくはない。そして最近急ぎ動いたというのであれば、それは浮遊島の落下の話が出てきたためだろうと風音は考えた。

「しかしそうなると、僕はこの地を離れる必要がありますし、今の僕は風音さんの紹介でユウコ女王の庇護を受けている身です。なので、一旦はユウコ女王にご相談をして、その返事を待ってから今後のことを話そうということになったんです。まあ、連絡はこれからしようかと考えてたんですが」

まさしく、なるほどと頷く話ではあった。だが、疑問は残る。

「しかし、分からんな。決めたのはライノクスか冒険者ギルドだかは知らんが、ランクSのお前が護衛として出てくるのはどういうことなのだ?」

ジンライの問いにマーゴは肩をすくめる。

「まあギルドもやらかしちゃってねえ。ヨハンくんの情報を悪魔に流しちゃったのがいるのよ」

「まさか悪魔狩り?」

勢い強く尋ねたルイーズにマーゴが「さあ?」と答える。マーゴは女性には冷たいのだ。

「どういうことなのか、分からんということか?」

そしてジンライの問いにはマーゴは身を乗り出して答える。ルイーズが珍しくぐぬぬ顔である。

「そうねえ。でも情報流したヤツも、その関係の人間も一網打尽にしたって言ってたし、だいたいはとっ捕まえたっぽいわよ。私はそういう暗い方面の話って苦手だしー、よくは知らないけどね」

いちいちフリをつけて答えるマーゴに一同がゲンナリするが、マーゴは気にせず話を続ける。

「ともかくね。悪魔に知られたのは確実で、ヨハンくんが狙われてる可能性は高いワケなのよ。だから私が呼ばれたワケなのよね。まあ、ランクSスカウトとしての見定めってのもあるんだけど」

「街でワシらがおかしくなったのは、自動術式だったな。つまりはあれは悪魔用だったわけか」

自動術式とは特定の場所に設置して条件がそろうと発動する、ようするに魔術を使った罠である。

「ま、ね。今のとこ、かかったのはまだアナタたちだけだわ」

そうマーゴは口にすると、風音とタツオを抜かした全員がうんざりした顔になった。皆、さきほどの幻術を思い出しているのだろう。

「タツオは大丈夫だったの?」

『はい、母上。なんだか面白かったです』

物怖じしない子である。逞しい。

「それで、こちらの事情は話したけど、風音さんたちは僕に何か用事でも?」

「んー、何か用事がないと会いに来ちゃいけないの?」

唐突に上目遣いになった風音にヨハンが焦る。風音は冗談半分であったが、冗談に出来ない人物もいた。そしてヨハンが焦った理由は、風音の裏で鬼のような顔をして殺意の視線を向けている直樹がいたためである。

「いや、そういうことはないけど……ね」

「まあ、あるんだけどね。用事」

ああ、あるんだ……と、ヨハンとマーゴが思ったが、風音がアイテムボックスから取り出した素材を見て、目を丸くした。

「上級スケルトンコア4つに、アダマンスカルアシュラの骨だよ。武器も付けちゃう」

「随分とレアものを持ってますね」

ヨハンが驚き、マーゴも感嘆の声を上げる。

「なるほどねん。確かにこれはヨハンくんにお願いするのが正解だわねえ」

風音たちがヨハンに会いに来た理由、それは自分たちのスケルトンを造ってもらうためであった。

その後、風音はヨハンと相談をし、上級スケルトンコア2個とアダマンチウムの骨をヨハンに譲渡することで、二体分のスケルトンを作成してもらうことなり、そして二日後にはそれは完成したのだった。

◎ムルアージの廃都 中央通り 現在

「あー、出番なしかー」

ライルの悲しい声が響く。そのライルの横にカラカラカラと音を立てながら立ち止まる物体があった。

その巨大な物体の名をホーリースカルレギオンという。

それは二日前にヨハンが風音に依頼されて造った巨大骸骨兵であった。

ホーリースカルレギオンはそのすべてがアダマンチウム製の骨ではあるが、ヨハンにはアダマンスカルアシュラを再現するスキルがなかったために六本腕ではない。しかし、その代わりと言ってはなんだが、アダマンチウムの骨を豪勢に使って骸骨の集合体として組み立てられていた。さらにはヨハンの祝福により神聖属性付きである。

またその胸部からは一体だけ、別で動いているスケルトンが突き出ていた。風音の依頼は二体作成であったが、残りの一体はこの巨大スケルトンの内部に存在しているようである。

ちなみに武器はタツヨシくんドラグーンからとりあげた、斧に長柄を付けたような武器『神聖物質のバルディッシュ』で、胸からでているスケルトンには祝福されたアダマンチウムソードが二つ持たされており、見た目に反して聖なる属性をフルで帯びた個体である。

現在はライルが『双骨玉』という上級スケルトンコアふたつを並べて加工したもので指示しており、特に所有者を選ぶわけではなく、誰でも操れるように調整もしてもらっていた。

ともあれ、新たに生まれたホーリースカルレギオンの出番は露と消えた。風音とマーゴのコンビプレイによって完全に活躍の場は消失していたのである。

「終わったみたいですね」

背後から二体のアダマンチウムの骸骨兵を連れた白骨の少年がやってくる。

「よお、せっかく造ってもらったこれ、出番なかったわ」

ライルがすでに親しくなっているヨハンにそう声をかけた。年齢も近く、誰にでも気安いライルはヨハンともすぐに仲が良くなったようである。

「あははは、まあ、出番がないのは安全にことが済んだ証拠じゃないですかね」

「ま、そりゃそうだけどよ。しかし、ひでえもんだ」

ライルは風音の作り出したクレーターを見てぼやいた。

「まあ、今は誰も住んでませんから」

そう言うヨハンも少しションボリ目だ。せっかく時間をかけて浄化したのにこの有様では気を落とすのも仕方がないだろう。

「姉貴がすまない」

ライルといっしょにいた直樹が頭を下げる。姉に近づきさえしなければイケメンである。フォロー役としては最高の男だった。