軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百八十五話 骸骨を倒そう

魔王の威圧によってアダマンスカルアシュラが飛び退いた状況のなかで最初に飛び出したのはユッコネエとジンライだった。こうした機を見る目をジンライは持っている。

続いては風音の召喚した狂い鬼が特攻し、風音もそれを追うように走り出す。

直樹とライルは、タツヨシくんドラグーンとノーマルとともにティアラとルイーズの守りにつく。彼らの実力ではまだアダマンスカルアシュラとの積極的な交戦は危うい。だが、守勢に限定するのならばふたりとも対応出来る域には到達している。

そしてティアラは 炎の有翼騎士(フレイムパワー) を、ルイーズはヴォード遺跡で手に入れた召喚術『ライトニングスフィア』を呼び出す。それは雷の球体で、 炎の有翼騎士(フレイムパワー) とともにアダマンスカルアシュラの元へと飛んでいく。

対するは34体のアダマンスカルアシュラ。袋小路に大量のアダマンスカルアシュラが詰め寄せてくる状況もあり得るヴォード遺跡とは違い、ここは周囲に障害物も多いが、開けていて身動きはとりやすい。そして奇襲されるのではなく正面からの戦闘であるならば、後れをとることはない。何よりも目の前の『魔物』は遺跡のソレとは違う。

「んー大漁だぁ」

「よくもまあ、これだけ潜んでいたものだ」

風音の言葉にジンライが呆れ顔で、そう答える。

「しかし、この骸骨にはコアがあるな」

「こっちはスタンドアローンタイプみたいだね。コアも良い素材だろうけど、命あっての物種だから気にせずぶっ壊そー」

そう言いながら風音は狂い鬼と『情報連携』の完全同期によるコンビネーションでアダマンスカルアシュラを倒していく。それにはジンライも目を見張る。

(コンビでまるで一個の生き物のように戦いよる。まったく底が知れんヤツだな)

そう心の中でボヤきながらジンライも血がたぎる。目の前でこうも見せつけられては、気合いが入らないわけがなかった。

「ワシらもやるぞ、ユッコネエ!!」

「うにゃーーー!!」

狂い鬼にライバル心を燃やすユッコネエもジンライの言葉に呼応し、トップスピードを上げる。対なる戦鬼が二組、そこには存在していた。そして彼らは加速していく。

そして、戦場はそこだけではない。

風音たちが戦っている場所からわずかに離れた地点では、激しく雷が解き放たれ骸骨たちが吹き飛ばされていた。

「凄い……」

その光景を 炎の有翼騎士(フレイムパワー) を通して見ているティアラが感嘆の声を上げる。召喚術『ライトニングスフィア』、それは高密度な雷属性のエネルギーをその場に留めただけの存在だ。意思はなく構成された魔力が尽きるまで術者に従い戦い続ける消費型召喚体である。

「うーん。応用性は高いけど、随分と暴れ馬みたいねえ」

ティアラの横でライトニングスフィアを操るルイーズは眉をひそめながら、そう口にする。確かに強力である。その姿はいくらでも変化可能で、様々な攻撃が出来るがその制御にはかなりの精神力を吸い取られる。

「まあ、グリモア最終章クラスなら、そんなものか」

そう言いながらルイーズは再度ライトニングスフィアをスピア状へと変えて、アダマンスカルアシュラへと突撃させる。そしてその攻撃でアダマンスカルアシュラが体勢を崩したところに 炎の有翼騎士(フレイムパワー) がフレイムランスでコアを貫く。

そんな白き一団のもう一組の師弟コンビの戦闘がそこにはあった。その中でルイーズは器用にライトニングスフィアを使いこなす。

槍に変えて特攻し、背後に回っては分裂して、矢となって突き刺して、 炎の有翼騎士(フレイムパワー) へとアダマンスカルアシュラが攻撃すれば盾となり、動きを止めるために巻きついて感電させ、一瞬の隙をついて針状に圧縮してコアを貫き破壊する。それは確かに風音の言う通り、強力な召喚術であった。

「要は水精霊を扱うのと同じ感覚ってわけね」

この白き一団の中では攻撃力が突出しているメンバーが多すぎて、ルイーズも最近では特に使う機会がない水精霊の召喚術。それは自由自在に変形させることで攻守ともに使え、傷口に入り血流操作をすることで回復を早めたりも可能な応用性の高い召喚体なのだが、ライトニングスフィアの扱いはそれに似ているようである。

「凄いですよルイーズさん」

ティアラが横ではしゃいでいる。

(まあ使えるけど疲れる。サンダーストームの方が楽だわね)

魔力消費量も高めだが、そこは遺跡のなかで手に入れた『蒼天の棺』という青い四角い水晶体で補える。 紅の聖柩(クリムゾン・アーク) の下位アイテムではあるが、魔力総量は+150。それは並の魔術師のひとり分に相当し、つまりはルイーズは以前のほぼ倍近い魔力を手に入れていた。問題なのは魔力とは別に精神力の消耗をかなり強いられること。もっともルイーズには、ティアラのように平行して10体も召喚体を動かせるような天才肌ではないが、長年のキャリアというモノがある。『ライトニングスフィア』を扱うだけの実力は備わっているのだ。

(ま、手に入れちゃったもんはしょーがない。もう楽は出来ないわね)

「ティアラ、コンビネーションで決めるわよ」

「はいっ」

そして炎と雷が戦場を舞う。

「うわ、派手だな」

「感心してないで戦え。ちくしょうっ!」

直樹がルイーズの『ライトニングスフィア』を感心して眺めるが、横に一緒にいるライルから叱責が投げかけられる。目の前にはアダマンスカルアシュラが2体。タツヨシくんドラグーンとノーマルとともに、それをくい止めている状態だ。

そして直樹たちの背後にはヒポ丸くんたちに護られているティアラたちがいる。前線を抜けてきたアダマンスカルアシュラに対しての、後衛に対する護衛が直樹たちの役割で、そして今それを果たしているところであった。

「分かってるさ。ティアラとルイーズさんにゃあ指一本触れさせねえよ」

直樹が魔法刃を出した魔剣を振りながら答える。

「チッ、邪魔だぁっ!!」

ライルがさらに迫ってくるアダマンスカルアシュラに槍を持っていない左手を掲げると、ドンと音がしてアダマンスカルアシュラがよろけた。

「ナオキッ!」

「おうよっ」

アダマンスカルアシュラの隙をついて直樹の水晶竜の魔剣から光撃『セブンスレイ』が放たれる。それは一体のアダマンスカルアシュラに対しては些かオーバーキル気味な攻撃ではあったが、確実に潰すためには全力を惜しむ余裕は直樹にはなかった。

「一丁上がりッ!と、レベルアップか」

そして直樹はレベルが33から34へと上昇する。3年もこの世界にいるのに姉たちに届いていないのは、それまで戦ってきた敵の質と量の差であろう。

もっとも普通に冒険者をしているのであれば、それはそれで問題はなかったし、クエストも積極的に受けていたのだから直樹が怠慢だったというわけではない。ただ戦闘の質が上がっている現状においてはそれで満足しておくわけには行かなかった。

「ライル。姉貴からもらったその盾章、使えてるみたいじゃねえか」

直樹が先ほどアダマンスカルアシュラの体勢を崩した『反響の盾章』のことをライルに尋ねる。ライルは風音が使うマテリアルシールドのようにアダマンスカルアシュラに対して盾章の力を使い動きを奪っていたのだ。

「おうよ。思ったよりも使い勝手が良い。お前の姉ちゃん様々だぜ」

「だろう。けど姉貴に手ぇ出したら殺すからな」

「ははは、まさか」

乾いた笑いでライルが返答する。恋の盲目故かエミリィは未だにお姉さん想いぐらいにしか思っていないようだが、だがライルは男であり、直樹にとって姉に近付く男はすべて敵である。そして本気の殺意をたびたび向けられればライルもさすがに気付かざるを得ない。目の前の男が重度のシスコンであることを。

(エミリィもティアラも苦労するぜ。相手がこれじゃあな)

そう思いながらライルはタツヨシくんたちが足止めしているもう一体のアダマンスカルアシュラに向かっていく。

なお、直樹のそんな態度を把握しつつもライルは風音に近付くことを抑えたりはしない。別にライルも風音に対して恋愛云々の気持ちは一切ないが、しかし風音とライルは妙に馬が合う。それはどちらかといえば男の子同士の友情に近く、直樹がどう思おうがやましいところのないライルは態度を改めるつもりはなかった。

ともあれ、戦闘は白き一団有利で進んでいく。

別の区画から何体かアダマンスカルアシュラが来たようだが、ヴォード遺跡のように雪崩れのような数に襲われるわけでも不意打ちを喰らうわけでもない。直樹やライルにとっても戦い自体はシビアであっても決して負ける要素は少なかった。

しかし本命はまだ姿を見せていない。

戦闘終了後もモーフィアの言っていた機械の竜は出てこなかった。

恐らくは別の区画にいるのだろうと考え、風音はとりあえずは敵の掃討も終わったこの入り口付近の区画の探索を開始するのだが……

(……『六刀流』って)

風音は自らのスキルウィンドウに新たに追加されたスキルを見て唸っていた。今回倒したアダマンスカルアシュラはスタンドアローンタイプでコアもあり、魔物に該当するため今回はスキルが手に入ったのである。そして手に入れたスキルは『六刀流』。無論二本しか腕のない風音には使えないスキルだった。