軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百八十一話 ロボットと話そう

風音たちがその奇っ怪な存在と出会ったのはヴォード遺跡一階のボス部屋に入ったときである。

ヴォード遺跡の攻略も順調に進行し、二階への階段のあるボス部屋まで、予想外に早くたどり着いた風音たち一行であったが、ボス部屋へと勢い込んで入ってみるとなにやら状況がおかしかった。

一階の 守護者(ガーディアン) は 神機兵(マキーニ) という古代の機械文明ではお約束の4メートルほどの巨大な鎧のような人型ロボットだったのだが、それがデーンと部屋の中央に立ってはいるのだが動かない。よくよく近づいてみてみるとメンテナンス中の貼り紙。そしてその巨大ロボットをメンテナンスしていたのが今風音たちの目の前にいる鉄の箱と鉄パイプを繋げただけのような人型ロボット『バットラー13号』であった。背中にはパイプがついていて銀色の蒸気のようなものが出ている。

『スミマセンネ。サスガニ1000年モ経ッテイルトがたモクルンデスワ』

そう言って、バットラー13号はボス部屋の横に設置されていた待機室に風音たちを案内した。敵意はないようなのと、興味に惹かれ風音たちも中に入ったが、案内されたのは機械らしき部品の散らばった部屋だった。恐らくは 神機兵(マキーニ) の部品なのだろう。

「いや、別に私たち戦いたくて来た訳じゃないからいいんだけどね」

『左様デスカ』

風音の言葉にバットラー13号はキリキリと音を立てながら頷いた。ジンライが無意識に舌打ちしたが無視である。戦闘狂に付き合ってばかりもいられない。

そしてバットラー13号に周辺の機械のパーツを押し分けて、風音たちに座るようにと促した。そして周囲に危険がないのを確認すると風音はバトラーの前に座る。

「というか、私たちをこんなところに案内して大丈夫なの? 君はここのガーディアンだよね?」

風音のゲームの記憶が確かならば、この浮遊島はイシュター人という古代文明の人間が作り上げた移動大陸であり、実体は侵略用の空中戦艦である。ゲームの時点ではそのイシュター人も滅亡しており、主なきまま施設は稼働し続けているという状況の筈だった。

そして内部は、さきほどまで風音たちが戦っていたようなアダマンスカルアシュラのようなガーディアンが存在していて侵入者に襲いかかるよう設定されている。

だが目の前のバットラー13号は風音の言葉に首を横に振る。

『私ハコノ施設ノめんてなんす要員デスカラ非戦闘員デスヨ。ソレニスデニ我々ニソレヲ強制サセル制約ハアリマセン』

「制約?」

『ハイ。外ノ骸骨タチハ侵入者排除トイウ簡単ナ命令シカ受ケツケナイノデ変ワリマセンガ、私ノヨウニアル程度ノ自由裁量ヲモツ機械種ハスデニ制限ガ解除サレテイテ好キニ行動スルコトガ許サレテイマス』

その後『マア、他ニヤルコトガナイノデ結局ハめんてなんすヲシテルンデスケドネ。ハハハハ』と口にした。

そしてバットラー13号の話によれば、久方ぶりに風音たちが遺跡に入ったことで遺跡の機能が稼働し、バットラー13号も活動を再開したのだそうだ。とはいえメンテナンスの途中で風音たちが来てしまい、仕事は果たせなかったとのことだが。

また地上で暮らす鳥人族は知らぬことだが、浮遊島の内部にある制御施設では現在もバットラー13号の仲間たちが稼働し、島の維持を行い続けているのだという。この島は自然の産物ではない。人工のバイオスフィアであり、その維持には彼らの存在が必要なのだという。

「あー、なるほどねえ。機械種の方って長命種なのねえ。エルフよりも寿命長いって凄いわね」

「ルイーズ姉さん、世の中には我々の知らぬ種族が実に多くいるものですな」

バットラー13号の話を聞きながら、ルイーズはそのバットラー13号を1000年を超える長命種の人間と理解したようだった。ジンライはあまり興味がないらしく適当に相づちを打っているだけであった。

そもそもジンライはこの浮遊島に大きな憧れを持っていた筈だが、実際入ってみるとそこまで「スゲエッ!」という部分もなく、こんなものかなーという感じになっていた。夢が叶うとその先には現実が待っているのである。そして現実は夢ほどに輝かしいものではない。

もっともジンライにしてみれば、この島に来る前のオダノブナガ戦の印象が鮮烈過ぎたという面もあるのかもしれないが。

そして、特に質問もない弓花と 炎の有翼騎士(フレイムパワー) (CV:ティアラ)は黙ってその風音とバットラー13号の会話を聞いていた。

「700年前には天帝の塔が離れちゃったけど、それは大丈夫だったわけなの?」

その話の過程で風音は気になる部分を尋ねてみた。当然この島を管理しているのが彼らロボットたちであるならば、悪魔が島を襲って天帝の塔を分離させたことは大きな事件であった筈である。

『ソレガソノ出来事ニツイテハ我々モヨク分カラナイノデスヨ。ナニシロ突然ヤッテキテスグニ切リ離サレマシテ』

「えーと、じゃあ島が分離したのは大丈夫だったの?」

『アマリ大丈夫デハナカッタノデスガ、アノ地域ハ元々別区画トシテ存在シテイマシタシ、島モ辛ウジテ保テタ形デス。トハイエ、無理ガ祟ッタセイデ後10年ホドデ落下スル予定デス』

「へー」

その言葉に風音が頷き、

「ふーん」

何か違和感を感じつつも弓花も流し、

「ほぅ?」

ジンライは首を傾げ、

『え?』

ティアラがまさかと声を上げ、

「落下する?」

ルイーズが信じられない顔で、目の前のバットラー13号を見た。

その仲間たちの反応を見て、風音が先ほどの言葉を反芻する。

「えーっと、無理が祟って」

『ハイ』

風音の言葉にバットラー13号が頷く。

「10年ほどで落下する」

『ソウデスネ』

風音の言葉にバットラー13号が頷く。

「大変じゃん!?」

風音が叫んだ。いきなり大変なことを言われていた。

『マア形アルモノハ、イツカ滅ビルモノデスヨ』

さらりというバットラー13号に風音が「いやいや」と首を横に振る。

『ソモソモコノ浮遊島ハモウ2000年ハ飛ンデイルワケデスシ、ヨク保ッタト思イマス』

「まあ、そうだけどさー」

この浮遊島はゲームの時代よりもさらに1000年も昔に建造されたらしい。それを考えれば確かによく保ったといえるだろう。だが、だからといって仕方ないと言って良い問題でもなかった。

(10年後って、そりゃ明日落ちますっていう話じゃないけどさあ)

風音の頬を嫌な汗が垂れる。

「それ、すっごくヤバいよね?」

風音が後ろにいるジンライに尋ねる。さすがのジンライも「うむぅ」と顔を青くしている。問題はこの島の上だけのことではないのだ。島が落ちると言うことはハイヴァーンの地に巨大質量の物体が落下すると言うことでもある。周辺への影響もかなりのものであろうし、ジンライの生まれたソラエの村も壊滅するかもしれない。

「ワシの村も危険だが、いや、それよりも下の闇の森か。あれも当然崩壊するだろうが、それが不味いな」

「森の魔物たちが周辺に逃げ出したら手に負えないわね」

ジンライの言葉にルイーズが同意する。

「手に負えないって言うと?」

弓花がルイーズに尋ねる。ここまでの話だけでは弓花にはいまいち状況が読めない。

「あの闇の森の中の魔物たちは高濃度の魔素の中でしか生きていけない。外に出てしまえば、長くは生きられないのよ」

弓花にルイーズはそう答える。

「となれば、その魔素を補充しなくちゃいけないんだけど。てっとりばやく補充するなら周辺の生き物を喰らって魔素代わりに魔力を手に入れるしかなくなるでしょうね。ま、実際には代わりにはならないんだけど」

ルイーズの言葉通り、魔力では魔素の代わりにはならない。魔素とは大地に流れるナーガラインの 魔力(マナ) に魔物などを生み出す何かしらの因子が混ざり、半物質化した霧状のもの。魔素のない苦しみは多少は取り除けるが、代用品にはなりえない。故に苦しみを和らげるためにあのオダノブナガ種やエリミネイトモンキークラスの魔物がこの周辺地域を一斉に襲い出すだろうとルイーズは付け加えた。

「この一帯、ハイヴァーンの南地方は壊滅であろうな」

ジンライが苦々しくそう口にする。いきなり聞かされた祖国であるハイヴァーン公国崩壊の危機である。寝耳に水過ぎる話ではあった。

『マアソレモアッテ皆様ニオ声掛ケシタ次第デハアルノデスヨ』

「何かしら策はあると?」

ジンライの問いにバットラー13号がキリキリと音を立てて頷いた。

『10年ヲ100年ニスル程度デアレバ、方法ハアリマス。アナタガタノ協力ガ必要デスガ』