軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七十六話 遺跡に入ろう

ヴォード遺跡へはエンジェリートの街からヒポ丸くんたちで4時間過ぎた辺りで到着した。徒歩でなら1日か2日はかかる距離を大幅に時間短縮して踏破した風音たちではあったが、さすがにもう夜である。

エンジェリートの街でも戦闘はあったし、無理に遺跡に潜る必要もない。なので今夜は遺跡の前に泊まり、探索は明日の朝から開始となった。

◎浮遊島 ヴォード遺跡前 風音コテージ 夜

すでに夕食も終え、明日の方針を話すためにリビングに全員が集まっている。そして風音がヴォード遺跡に入る際の注意事項を述べるとあからさまにジンライが嫌そうな顔をした。

「戦わずに逃げろと?」

風音から出た言葉はまず逃げるということであった。

これまでの白き一団の方針とは違いを感じてジンライが渋い表情で風音に尋ね返した。ちなみにジンライにとっての白き一団の基本方針は『サーチアンドデストロイ』である。特にそうした方針を掲げたことはないはずだがこれまでのことを思えばその認識も間違ってはいないだろう。前回のオダノブナガ戦は撤退はしようとしたが、あのときはジンライも相手の強さは理解していたので賛成していた。

だがアダマンスカルアシュラという知らぬ魔物を前に最初から逃げと言われるのはジンライとしては面白くはない。無論風音の言葉に何の根拠もないとは思っていないが、その根拠について話してもらわないことには納得は出来なかった。

「うーん、戦うことは駄目ではないけど一定時間その場にいると集まられちゃうし、あれに集団で襲いかかられたらアウトなんだよ」

風音もジンライの問いには真剣に返す。正直なところ、命の危険で言えば事前に分かっている中では今回が今までで一番危険ではあると風音は考えている。

「あのオダノブナガ種よりも厄介か?」

ジンライのその問いには風音も「微妙かな」と返す。

「オダノブナガ・アシガルよりも単体なら弱いと思うけどね」

だけど……と風音が続ける。

「腕が6本だから単純に手数が多いし堅さは確実に上。あと普通のスケルトンみたいに崩れても一定時間で復活するんだよね。集団行動とるのもスケルトン系の特徴通りだし」

「どれだけ硬かろうとコアを叩けばよかろう?」

ジンライのその言葉には風音は首を横に振る。

「コアがないんだよね」

「何?」

それにはジンライが意外だという風に風音を見返す。

「厳密にはアダマンスカルアシュラは魔物じゃあないんだよ。私のゴーレムと同じで魔術によって動いてるだけのものでね。倒すんなら関節部分の接合部の魔術式を破壊するぐらいしか方法がないの」

「それは面倒だな」

ジンライが唸った。

「でしょ?」

「しかも一定時間で離れたパーツも元に戻ろうとしますし、腕だけでも単体で攻撃しかけるんですよ」

続けて弓花がジンライにそう言う。弓花もゼクシアハーツではずいぶんとこのヴォード遺跡で死んだものだった。回復アイテムと爆破アイテムをバカ買いし、アーチに自爆特攻を繰り返させてどうにか先まで進めたのだ。英霊アーチのあの特攻精神はこのヴォード遺跡で鍛えられたと言っても過言ではない。

「魔道トラップの類か。であればその術式の元を破壊すれば良いのではないか?」

「この島を浮かせている浮遊石と直結の術式らしいから、元を破壊したら島が落ちる」

という設定であったはずだと風音は思い出していた。そして確証はないが、恐らくは同じであろうと風音は考えている。

「それもまずいのか」

ここまで聞いてジンライもその状況がわかり始めた。

「ま、今回は戦闘メインじゃなくルイーズさんをグリモアフィールドに連れてくのがメインだからね。タツオに直樹とライル、ティアラとメフィルスさんはお留守番かな。ティアラもフレイムパワーだけでついてきてもらうと思う」

「マジかよ!?」

ライルは自分が待機組に指定されたことでそう返したが直樹は何も言わなかった。直樹自身がヴォード遺跡に自分が入れるところまで達していないと理解しているのだろう。またティアラとしては召喚騎士だけでもついていけるのであればと張り切ってはいる。タツオは寂しそうな顔をしたが、だが風音の邪魔にはなるまいとクアッと鳴いた。なおメフィルスは元々戦闘参加してないので特には何も言わない。ただティアラもそろそろ限定的なルビーグリフォンの制御を覚えようと言うところにまで来ているので、もう少しするとメフィルスも戦闘参加するかもしれないらしいが。

そしてそんななか、ひとり抗議の声を出そうとしたライルに直樹が肩に手をかける。

「ナオキ、なんだよ?」

「ライル。今回も俺らには荷が重い」

直樹の言葉にライルが苦い顔をする。実力不足という実感がライルにそれ以上の言葉を出させない。そのライルに風音は補足をする。

「まあ、今回に関して言えば移動速度の問題ではあるよ。トップスピードが高いメンバーだけで組まないと逃げるときに置いてけぼりにしちゃうからね。ジンライさんもユッコネエがいなかったら微妙ではあったんだよ」

実戦で成長を促すという余裕はないし、今回は逃走力が求められていた。

「ただ、ここも安全とは言えないからね。ティアラの護衛をお願いするよ」

風音の言葉にライルも渋々頷いた。確かにライルは普通の人間であるため移動速度と言われればどうしようもない。

「続けてパーティ構成だけどユッコネエにジンライさんとルイーズさんを乗せて、私と 炎の有翼騎士(フレイムパワー) が前、弓花が後ろの護衛のフォーメーションでいくかんね。弓花は『化生の巫女』のスキルで『俊敏』をかけておいてね」

「了解。いざとなったら神狼化で乗り切るし」

「まあ実際やってみないと分かんない部分もあるだろうし、明日はいつも以上に慎重にいくからね」

風音の言葉に全員が返事を返すと、パーティ会議はそれで終了となった。

◎浮遊島 ヴォード遺跡 早朝

ヴォード遺跡、その建造物はこの浮遊島のもっとも最南端に存在している。元々の最南端は天帝の塔とそれを囲う岩山だったがその姿は今はなく、恐らくはヴォード遺跡を越えた先は崖になっていると思われた。そのヴォード遺跡の入り口前に今風音たちが立っている。

「とりあえずスケールサイズがゲームと違うしどうせ構造も変わってるんだろうしね。マッピングしながら進んで無理そうだったら戻るの繰り返しでいこう」

風音の言葉に全員が頷く。そして遺跡の中に一歩踏み出す。

その遺跡は外からは木々や緑に覆われた石造りの建造物で、ソレは中も同様であったが、しかし壁の表面が緑色のラインが流れるように光っていた。

「遺跡は生きてるみたいだね」

風音の言葉に緊張が篭もっている。

「そのスケルトンってのはすぐには出てこないのか?」

「うん。そもそも侵入者防止用のトラップだからね。正しい道筋を歩いている人には反応しないの。だから入り口付近は当然出てこない。一度襲われると追ってくるけど」

「ただ、正規ルート以外の道には宝箱もあったよね」

「うん。復活ありのヤツだね。ダンジョンのヤツと同じ仕組みだろうから、今もあると思うよ」

そう返しながら風音は進んでいく。そして分岐点のいくつかを越えて進んでいくうちに、やはりゲームとの差異は大きいことに気付き、ウィンドウのマップを確認する。

(やっぱり広さがゲームとは違うのか。まあ分かってたことだけど)

ヴォード遺跡は5階構成で、風音がお目当てとしているグリモアフィールドは3階に存在している。階層ごとにボスが存在しているので今回はボス2体を倒す必要がある。微妙にダンジョンに似ているが、心臓球もなければそもそも出てくるのは魔物ではない。

そう考えているうちに風音の耳に突然『リンリンリンリン』という音が響き始めた。

「へ、なに?」

いきなりのことに風音が声を上げる。

『どうしましたの。カザネ?』

その突然の風音の反応に隣にいる 炎の有翼騎士(フレイムパワー) を通してティアラが声をかけるが、風音は周囲を見回しながら首を傾げる。

「ティアラたちには聞こえない? いや、これ。あ、そうか『アラーム』のスキルか!?」

『犬の嗅覚』でも『直感』でも反応しない敵の存在。だがガードミリタリーアントのスキル『アラーム』は50メートル範囲内のどのような動体にも反応するスキルだった。

(てことは来てるのか。でもどこから?)

「カザネ、上だ!」

風音が思案している後ろからジンライの声が響いた。

「え?」

そして風音は見た。

天井から降ってくる6本腕のスケルトンの姿を。