軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百六十二話 オダノブナガと闘おう

放たれたのは矢のようなものだった。それが直樹の胸に直撃したのだ。だが直樹の着込んでいるのは竜鱗で作られた鎧だ。直樹が無事であるようにと大枚はたいて風音が購入したその鎧は確かに高い防御力を誇っていた。故にその矢のようなものが直樹を貫通することはなかったが、だが威力までは当然殺しきれない。

そしてその衝撃で直樹は吹き飛ばされ、十数メートルも先の地面に投げ出されてしまう。

「直樹ぃぃいい!?」

風音が絶叫するが、だがすぐに二射が来るのを感じた風音は、森に視線を向けてマテリアルシールドを使って弾いた。

(アーチャーか!?)

風音が舌打ちをする。

現在の状況は猿はすでに全滅。アシガルはすでに残り一体で今はジンライ、ユッコネエと弓花が対応中である。しかし今のままでは後続組が狙い撃ちにされると判断した風音は後続組に直樹の治療に向かわせると同時に黒メタルミノスを護衛に付けるようにスキル『情報連携』で指示を出す。

風音も出来れば自分が直樹の治療に当たりたいが、その余裕はありそうもない。ルイーズは元々攻撃よりも(怪我を負うことが少ないのであまり出番はないが)回復の方を得意としているので任せるしかないだろうと判断して森の方を見た。

そしてそれはやってきた。森から出てきたのはオダノブナガ・ブレード三体だ。そして森の中にはオダノブナガ・アーチャーが二体いると風音の『犬の嗅覚』は感じていた。

そして森を見ていた風音に向かって矢がふたつ飛んでくるが、それを風音は再度マテリアルシールドで弾いた。『直感』との組み合わせを使えば、来ると分かっている矢ならば弾くことも可能なのだ。

(けどブレードと戦うとしてもアーチャーは厄介か)

「よしジンライさんと弓花とタツヨシくんドラグーンにブレイドを任せるよ。狂い鬼とパワーは私と一緒にアーチャーを叩く!!」

風音は先ほどオダノブナガ・アシガルを倒したことで『ダッシュ』が変化した『ハイ・ダッシュ』を発動させる。その能力は速度がダッシュよりも上がっただけではなく、Uターンや細かい動きが高速移動中でも可能になったことで機動力が上昇しているようだった。狂い鬼も背の羽から暴風を吹き出して高速移動を行い併走する。ティアラの 炎の有翼騎士(フレイムパワー) も風音と狂い鬼に並んで飛んでいる。

そして、その迫ってくる三人をオダノブナガ・ブレードが襲いかかろうとするが、

「任せよ」

「お相手はこっちでッ!!」

それをユッコネエに乗ったジンライと神狼化弓花が防ぐ。銀狼たちとタツヨシくんドラグーンはまだ追いつけていないが、すぐに合流できるだろう。

しかし未だに本命は到達してはいない。だからこそ目の前のオダノブナガたちを出来る限り素早く倒さなければならなかった。ただ倒すだけではない。時間との勝負もそこにはあった。

**********

そして風音たちが前線で戦っている頃、戦線より離れた場所では直樹が穴の中に横たわりうめき声を上げていた。そこは矢避け用にと黒メタルミノスが掘った塹壕の中である。これを掘った黒メタルミノスはすでに戦場へと戻っている。

「グッ、うう……」

倒れている直樹の横でルイーズが上位治癒スペルであるハイヒールをかけている。鎧を脱がして見たが思ったよりもダメージは少ないようだった。確かに竜鱗の鎧は衝撃をすべて殺してくれるわけではない。だが貫通もさせないし威力も減衰してくれていた。上位の魔物の一撃なのだ。普通であれば体が弾け飛んでいたはずなのだ。

「ナオキ、大丈夫?」

エミリィが心配そうに尋ねるが、ルイーズは微笑んで頷く。

「さすがに黒岩竜の鱗ね。戦ったときは本当に厄介だと思ったけど、いざ自分たちで使おうと思うと頼りになるわ、まったくカザネ様々だわね」

この直樹の竜鱗装備は風音が渡したものだ。これがなければ確実に死んでいたのは間違いない。

(撃ってきた矢もまともなサイズじゃない。あれがオダノブナガ種……というよりも闇の森の魔物の攻撃ってわけね)

冒険者として生きていた長い期間の中でもルイーズは闇の森に入ったことはない。単純にいってあの場所に入ることは自殺行為に等しい。ジンライとて2度ほど入り口付近を探索して懲りたと聞いている。あそこは未だに人の手の届かぬ地だ。

「くそっ、俺も参加できれば……」

ライルが悔しそうに戦場を見る。未だライルはあのクラスとの直接戦闘を認められていない。アシガル相手でもライル一人ではまともに戦えないだろう。ブレード相手では一瞬で細切れの恐れもある。その横ではタツオがクワーっと鳴きながらライルと同じ思いで外を見ていた。

「ライル、周囲警戒を怠らないでください。伏兵がいないとも限りません」

ティアラが 炎の有翼騎士(フレイムパワー) を操りながら、ライルにそう声をかける。もしエリミネイトモンキーでも残っていてこの塹壕に特攻でもされれば死人がでるのは免れない。ライルもその言葉に素直に頷いて警戒を続ける。

そのライルに注意を促したティアラの顔も汗でビッショリとなっている。すでに主戦力に数えられている 炎の有翼騎士(フレイムパワー) だが、主であるティアラのオフェンスとしての戦闘経験不足は否めない。僅かでもダメージを喰らえば召喚が解除されてしまうほどに敵は強いのだから、その精神はすり切れるほどに消耗していた。

クロエはそんなティアラの汗を手に持っているハンカチで拭いながら、不安な顔で外を見る。

「今はどんな感じなんだろうね?」

「あのお猿たちはおそらくは全滅でしょう。カザネの言うオダノブナガ・アシガルは3体とも倒しましたが、今は剣を使うタイプと矢を撃つタイプと戦っています」

それはクロエの独り言ではあったのだが、この場にいながら最前線で戦闘しているティアラが律儀にそう応えた。ティアラはアーチャーの相手を担当している。矢の攻撃は風音が防いでいるが、接近戦でもオダノブナガ・アーチャーは強い。手に持っていた矢のような爪が変形して今は二つの剣のようになってこちらに攻撃を仕掛けてきている。

そして風音の言葉ではオダノブナガは火に弱いらしいし 炎の有翼天使(フレイムパワー) にとっては相性の良い相手とのことだった。実際『ホンノウジーエンジョー』などと叫び声をあげながら嫌がっているので、その話は確かなのだろうが、しかし肝心の炎も甲殻を抜けなければダメージはない。

「ッぁああああ!!?」

途端にティアラが悲鳴を上げて倒れた。

「どうしたんだい!?」

クロエが驚いて倒れて崩れ落ちそうになったティアラを支えるが、だがティアラの意識はないようだった。あわてるクロエにルイーズが声をかける。

「クロエ、落ち着いて。多分召喚騎士がやられたんだと思うわ。フィードバックを最高の状態にしてるからしょうがないのよ。今は楽な状態で寝かせておいて」

ルイーズの言葉にクロエは頷きながら、不滅のマントを広げて、その上にティアラを寝かせる。

「おかしいわねえ。ジンライくんの話だと、緩みすぎず、引き締め過ぎずが好ましい仕事のはずだったんだけどね」

完全な修羅場と化している現状にルイーズが苦笑する。それにクロエが申し訳なさそうな顔をするが「まあ、ほかのパーティなら確実に全滅だったし運がいいと言えばよかったとは思うわよ」とルイーズが返す。おそらくほかのパーティならば案内役をするはずであるクロエ諸共確実に殺されていた。そう考えれば悪くはない話のはずだった。このまま生きて帰れればだが。

**********

ゴォォオオンと凄まじい音と共に、地面が粉砕される。それは黒メタルミノスの双剣の一撃の威力だ。後衛組襲撃への備えとしての塹壕を作った黒メタルミノスは戦線へと復帰し、今はオダノブナガ・ブレードとの戦いを行っていた。

もとより4メートルはある石で出来た牛男が鎧を着込み、そのサイズを一回り大きくしているのだ。その一撃が強力でないはずはない。だがオダノブナガ・ブレードはそれを避ける。そして自身の右手の巨大な刃のような爪で黒メタルミノスを切り裂いていく。だが黒メタルミノスも鎧で覆われているためにブレードの刃の通りは鈍い。ストーンミノタウロスのままであれば当に腕の一本でも飛ばされていたはずが今はそれに耐えるだけの防御力があった。

そして大振りで斬りつけたオダノブナガ・ブレードの隙をジンライは見逃さない。

「温いわっ!!」

そう言いながらユッコネエの突進力に任せるままに槍を関節部に突き入れて、ジンライはそれを捻って一気に左腕を破壊した。

「チィッ」

「ぎにゃあっ!?」

それと同時にユッコネエの体に剣が突き刺さる。別のオダノブナガ・ブレードがジンライに向けて特攻してきたのだ。ジンライがとっさにもう片方の手の槍で防ごうとしたが、だが防ぎきれずユッコネエが身代わりとなった。

「にゃにゃにゃあ!!!」

しかしユッコネエも負けてはいない。刺された状態のままで尻尾の炎玉をオダノブナガ・ブレードの顔面にぶつけたのだ。

『エンジョーーーーーー!!!!』

炎に弱いオダノブナガの顔に粘着性の炎がへばりつき、ブレードは叫び声をあげながら地面の上を苦しそうに転がっていく。

そしてユッコネエが、駄目押しに両手の爪でオダノブナガ・ブレードを切り裂いた。オダノブナガ種の甲殻は硬いが、だがユッコネエの炎の爪とは相性が悪い。切り裂かれた部位の内側から炎が吹き出してさらに転げることになるブレードを今度こそ黒メタルミノスが一撃を振るって叩き潰す。

「ユッコネエ、大丈夫か?」

「にゃー」

ユッコネエは痛そうな顔をしながらも「大丈夫っ」というような返答をする。切り裂かれた場所には先ほどブレードの顔に命中したのと同じ炎の粘着性の玉を軟膏代わりに塗っているようだ。

だが一瞬の油断が、目の前の敵では命取りとなる。攻撃を繰り出したブレードの前にとっさに立った黒メタルミノスは、

『ハカッタナアケチィイイイイイイ!!!!!』

魔物の凄まじい咆哮と共に崩れ落ちていた。さきほどジンライに左腕を破壊されたオダノブナガ・ブレードが右腕の剣爪で正面から黒メタルミノスを一刀両断にしたのだ。

「やりおるわい」

その一撃を見事とジンライは言う。まさか4メートル以上もある巨人を惚れ惚れするほどにまっぷたつに切り裂いたのだ。これが闇の森の中でも上位に位置する魔物達かとジンライの血がたぎる。

そしてもう一方の弟子の方は……