軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百五十一話 仮入団をしよう

◎シロディエの街 特別区 ルイーズの別荘 テラス 夕刻

「再会を祝して」

「再会を祝して」

少女達が浴場でガールズトークで盛り上がっているのと同じ頃、テラスでは直樹とライルが掲げたグラスを重ね合い、二人で酒を飲み干した。

「うわ、なんだこれ。口当たり良すぎるだろ」

「まあ、この家にあった酒ならバカ高いもんだろうなあ」

昨日出されたものよりは落ちるだろうが、それでも直樹の飲んだことのないお高いものであることはなんとなく分かる。

「そういや、ヨークとも同じことしてたな」

ドンゴルの街での再会を思い出す。今頃はヨークも地竜狩りに参加している頃だろうかと直樹は思い浮かべる。

「あいつと会ったのかよ」

ライルの言葉に直樹が頷く。

「会ったな。お前等がもうちょいオルボアの街に滞在してたらもう少し早く会えたかもしれないな」

「そりゃタイミングが悪い……いや、ここで会えたんなら、そうでもないのか。親父のよく分からん誤解も解けたようだしな」

「そうらしいな。ジライドさんとは結局俺は会えなかったけどな」

ジライドの去ったあとで合流した直樹は何があったのかを知らない。ジンライが土下座した理由くらいは聞いているが。

「にしても爺さんがあんな美人のエルフ姉ちゃんとデキたってのが未だに信じられねえ。すごいオッパイだぞ」

こう腕で胸のあたりをぐりんぐりんと形作る。さすがに男子組だけのときはライルの言葉も行動も砕ける。ちなみにジンライは部屋で一人反省中である。

「ああ、あれは良いものだな」

感触を知っている直樹も同意する。最愛の人はちっぱいだが本来直樹はオッパイ好きだ。ヒッポーくんハイに乗ったときに得たオッパイの感触を直樹は忘れてはいない。

「ま、婆さんのこともあるから強くは言えないけどうちの爺さんはやっぱり凄いな」

あの歳であんなお姉さんとネンゴロ、それをライルは羨ましいという。まあ思春期の男の子などこんなものだ。おっぱいが価値観の8割を占める。

「それに親父にも勝っちまったユミカってこもトンでもない強さじゃねえ?」

「ああ、今朝方もボコられた」

早朝稽古の軽い手合わせでも直樹はフルボッコさんだった。あの女、益々手がつけられない。なぜ目立たないのか不思議なくらいだ。

「お前がね」

「あのメンツの中じゃあ俺が一番ミソッカスなんだよ」

直樹が苦々しく言う。実力の不足を感じる。

「そんで俺がこのパーティに入ると、俺が一番ミソッカスになるわけだな」

「……ライル」

直樹でミソッカスならば実力で劣るライルは尚更だと思っているのだろう。エミリィのように後衛職ならばまだしもライルは前衛だ。

「このパーティには入らないのか?」

すでにライルとエミリィは風音からパーティへの誘いを受けていた。直樹の友人でジンライの孫ならば歓迎だと。

「喜ぶべきなんだろうけどなぁ」

ライルは苦笑する。

「お前はここに残るんだろう?」

そして直樹の質問にライルは質問で返した。

「ああ、姉貴達と離れる気はない」

直樹はそれだけはキッパリと言った。ライル達も直樹にとっては大切な存在だ。だが姉と別れるという選択肢は今の直樹にはなかった。それは直樹の表情からもライルは察していた。

「エミリィとはさっき話したんだがな。仮入団って形にさせてくれ」

「仮?」

「正直、このパーティで俺が使い物になるのかが分からない。だから許されるなら、それを確かめる時間が欲しい」

「そっか。お前がそうしたいってんなら俺が口出すことじゃないさ」

直樹はライルの判断を肯定する。

「ま、それはそれとしてなんだけどよ」

ライルがジト目で直樹を見る。

「なんかお前随分と丸くなったよな。張り詰めた感じがなくなったというか」

「みんなそう言うんだよな」

ライルの言葉に直樹がそう返す。何度言われても自覚がないので首を傾げるばかりだった。

そして仲間も増えた一行は、翌日は予定通り一日休みを入れて、翌々日には別荘の使用人のメリッサと別れを告げてドラゴンステーキのメッカであるドルムーの街へと歩を進めるのであった。無論、お約束のようにサンダーチャリオットとヒポ丸くんに兄妹が驚いたがライルはジンライと趣味が近いのか肯定派のようだった。

◎首都街道 ドラゴンロード

「ジンライさん、元気になってよかったねぇ」

馬車の中で風音がそう口にする。

昨日、一昨日と死んだような状態のジンライであったがサンダーチャリオットに乗った途端に若干血色が良くなってきたようだった。自分に素直な老人であった。

「まあね。でも全然本調子じゃあないんだよねえ」

弓花が心配そうにジンライを見ている。

なお、馬車の中にいるのは風音、弓花、ティアラ、ルイーズ(+メフィルス)、エミリィの女子組。ジンライ、ライル、直樹の男組は御者席に横一列に座っている。ヒッポーくんハイとクリアはいつも通り後ろを追尾している。

「それよりもこれ、もらっちゃって良かったのカザネ?」

そう尋ねるのはエミリィ。彼女の手には折り畳まれた『竜翼弓』と呼ばれる弓があった。これは竜骨を魔鉱で補強した魔道弓使いの持つ武器としては最上のもの。そしてライルの背にも普段持っていた竜骨槍に代わって竜牙槍が下がっていた。それは親方作のジンライの竜牙槍に比べれば落ちるが、しかしエミリィの『竜翼弓』と同様に今のライルが持つには過ぎたシロモノだ。

そして2人は風音たちと同様に不滅の名を持つ白いマントも身に着けていた。

「うん、いいの。直樹が2年もお世話になったからね。そのお礼。こんなもので足りるか分かんないけど」

そういう風音の言葉にエミリィは「世話になったのはどちらかというと私の方だし」というが、風音は「またまたー」と言って笑った。弟の信用度が激しく低かった。

「また黒岩竜の素材を使ってるし。それにいつ作ったのよ」

「直樹の鎧と一緒に作ってもらっちゃった」

その言葉に弓花も「あのときか」と呟いた。確かに風音がリザレクトの武具店で何かを引き取っていたのを思い出した。

「いやー、作ってもらったらお金がマイナスになっちゃってさー。優勝資金がなかったらちょっと危なかったよ」

「あんたってこは……」

弓花が天を仰いでため息を 吐(つ) いた。まあ実際には素材を売り払えば足りるだろうが、基本素材は仲間のために使うと決めており、借金のカタに使おうものなら制裁は必須である。一度弓花に提案されたお小遣い制になる可能性すらある。風音もそれだけはごめんだった。ちなみに今は地竜とクリスタルドラゴンの報酬と素材換金で潤っている状態だ。散財待機モードだった。

「そろそろ魔術の一つも買いたいけど、あんま良いのないんだよねえ」

「またお金使おうって考えてるし。大体あんたは魔術なんてなくても攻撃手段なんていくらでもあるじゃない」

「まあねえ」

実際魔術にしても『ファイア』のカスタムのヴォーテックス、『ファイアストーム』のカスタムのスライサーで事足りるのだ。それより上位だとタメが必要で、後衛職ならともかく前衛の風音では使い辛い上にカスタム化した下位魔術の威力は上位魔術のソレに勝っている。グリモアの四章、五章を手に入れる意味は今のところあまりなかった。

またグリモアというものの扱いもこの世界においては中々面倒なものである。本来魔術とは時間をかけて知識を得て 理(ことわり) を知り、身に付けるもの。だがグリモアというのはそうした知識を本の内に閉じこめ、使用者に制作者の知識を強制的に植え付けるのだ。制作は魔導研究院等によって作成されるが第四、第五の上位魔術のグリモアは作成できる魔術師も少なく、売り買いされる金額も桁が違う。なおさらあえて無理をしてまで購入する理由がなかった。

「うーん。ユニークスペル用の最終章クラスのグリモアでもないと今だとあんま覚える意味はないよねえ」

そして、ミンシアナ、ツヴァーラやこのハイヴァーンは魔術がそれほど盛んではなく、そうしたグリモア最終章の購入自体が殆ど不可能でもある。最初のシグナ遺跡のようにその場に寄るだけで手には入る魔術もあるが、主立って知られているところは厳重管理されていると聞いていた。もうひとつ、ジンライの行きたがっている『エルスタの浮遊王国』、鳥人族の浮遊島でならば或いは……と風音は考えていた。

「確かソルダードとミンシアナに面してるっていう、アモリアとかいう国が魔術が盛んとか言ってなかったっけ?」

弓花の問いに風音も頷いた。アモリアは攻略を予定しているダンジョン『ゴルド黄金遺跡』のあるゴルディオスの街からも国境が近い国だった。

「辛気臭いところだけどねえ」

風音の言葉にルイーズがそう口を挟む。

「ルイーズさんは行ったことあるの?」

風音の問いにルイーズは「実家があるしね」と返す。ルイーズの実家と言えば悪魔狩りでチョクチョク話には出てくる家だったなと風音は思い出す。が、ルイーズの面白くなさそうな顔に、それを質問をすることは躊躇われた。

(ま、あっちに着いたらチョイと行ってみてもいいかな)

そう風音は考えて外に視線を向けると僅かではあるがもう街の姿が見えていた。

ドラゴンステーキのメッカ、ドルムーの街。そしてこの国の匠のいる街でもある。だが、今回はお預けとなった。一旦はまずは首都ディアサウスに行くことになったのだ。主に息子が奥さんに報告すると聞いた後のジンライの精神状態が保たなさそうだったので。

一行はドルムーの街で一泊した後、そのまま首都へと直行する。はたしてジンライは保つのだろうか?