軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百四十四話 たわむれをしよう

◎シロディエの街 特別区 ルイーズの別荘

「お嬢様。そしてお仲間のみなさま、よくいらっしゃいました」

そういって迎え入れてくれたのは蜥蜴族のオバさんだった。蜥蜴族はミンシアナでは珍しいが、だが通りを歩いていて見ないなんてほどでもなかったし、人族よりも身体能力が高いため冒険者としてやっている者も多い。なので、この場にいる人間で蜥蜴族を驚く人物はいなかった。

「久しぶりねメリッサ。みんな、こちらはこの別荘を預かってくれてるメリッサよ」

ルイーズの言葉に全員が挨拶をして、メリッサも蜥蜴族特有の笑い顔で頭を下げる。そこに愛嬌があると思えるか怖いと思うかは人による。地竜もどきに襲われた経験のある直樹はややひきつり笑いだったが。

「それで、どうかしら。そっちはなんかあった?」

「そうですねえ。ここ数ヶ月の間に何度かこちらに本家の方がいらしてましたけども、いないことを確認するとさっさと帰ってしまいましたね」

「ま、しばらくはあたしもそこら中回ってたしねえ」

ルイーズが風音たちのパーティに入ってすでに2ヶ月半は経過している。その間に名ありのディアボに淫魔を封印し、暴走悪魔のヒルコも倒した。ここキャンサーの名を連ねた中でこれほど活躍できた者などここ最近は他にはいないだろうとルイーズは断言できる。

「それとお手紙も預かっております」

そう言ってメリッサは懐から手紙を差し出す。

「また仕事しろってんじゃないでしょうねえ」

ルイーズはそう言いながら手紙に向かってスペルを唱えると、蝋で固めてあった封がポロッとハズレた。

「ふむ、どれどれ」

「お嬢様、よろしいので?」

そう言いながら風音たちをチロッと見ているメリッサにルイーズは「問題ないわよ」と言いながら中身を確認する。風音はその手紙を見るルイーズが難しい顔をしていくのが分かった。

「なんかあったの?」

「うーん」

風音の問いにルイーズがどういったものかという顔をしたが、とりあえずコホンと咳払いをして風音たちに向き合った。

「悪魔の出現がね、どうもここ数年頻発してるみたいでね。書いてある内容はその警告ってところかな」

「ディアボみたいなのが出てるってこと?」

それにはルイーズは首を横に振る。

「あれは本当に大物でね。あのクラスは普通倒せないし気付くのも難しいわ。この間のリザレクト関連のことも書かれてるわね、リザレクトに経由するルートに14人の悪魔使いの所在を確認したってさ。もう終わってるけど」

ディアボについてはすでに処理済と記入されていた。と言っても倒した後に入れたのだろうが。国王が亡くなっているのだ。事前に察知していて連絡がなかったのならえらい問題になる。

(まあ、だからといって今できるようなことは何もないし)

ルイーズはそのリストを畳んでそのまま仕舞う。

「仕事のことは今は忘れましょ。それよりも、ここで長話もなんだしとりあえず上がっちゃって」

ルイーズは気持ちを切り替えて、仲間たちを別荘に案内する。

そして荷物を置き終えると風音と弓花とティアラはショッピングに、ジンライはこの別荘に設置されている温泉に、直樹は少し考えたいからとテラスへと行った。ルイーズはというと美味しそうな匂いを感じ取って直樹のいるテラスへと向かっていったのだった。

◎シロディエの街 特別区 ルイーズの別荘 テラス

「湿気た顔してるわねえ」

ルイーズがテラスに入るなり、そう口にした。

「ほっといてください」

そこにいたテラスにだらしなく座っている直樹がそう返事をする。自分でも分かってるけども気持ちに収まりが付かないといった、そんな顔つきだ。

「まあまあ、飲む?」

そう言ってルイーズは持っていたワインとグラスをテーブルに置く。

「もらいます」

直樹も無碍には出来ず、注がれたグラスを手にとって一口、飲む。

(……旨いな)

安物ではない、少なくとも酒場で飲んだことのないほど口当たりの良い、上質な味だった。

「それで、不満の原因はやっぱりお姉ちゃん?」

「言わなくても分かってるでしょ?」

ルイーズの問いに恨めしげに直樹が返す。馬車の中でのやりとりはルイーズも交えていたのだ。勘の鋭いルイーズが分からぬはずもない。

「ま、ね。けど、口にしないと分からないこともあるのよ」

「情けないって思ってるだけですよ。さっきだって変な意地張って姉貴の言うことに反発しちまったし、俺が弱いのは俺だけの問題じゃあないんだ。意地だけを張ってても仕方ない」

その直樹の言葉にルイーズは苦笑する。意地は意地で必要なものだ。芯のない男にルイーズは魅力を感じない。

「そういえば、あんた、最初にあったときにカザネに結婚を申し込んでたわね」

「えーと、それはその。姉とあまりにも似ていたのでチャンスを逃さないようにというか、姉貴分がゼロに近かったので正気ではなかったというか、ええと姉弟同士で結婚できる国ってどこかにないっすかね?」

ルイーズは最後の一言で(気持ち悪いなあ)と思ったが、とりあえず堪えた。忍耐の人である。

「でも、弓花とも付き合ってたのよね。姉以外に興味がないわけでもないんでしょ?」

一緒に馬に乗ったときは腰に手をかけてる状態で揺れに応じて下乳をボインボインと触っていた。本人は気付かれていないと思っていたろうが、残念ながらルイーズ姉さんにはまるっとお見通しだった。下腹部がそり上がったのも当たった感触で分かっていた。サイズは並であると見抜いていた。

「そりゃあ、やっぱり姉貴は姉貴ですし。分かってるんです。それに弓花も好きですし」

「なるほどね」

(好き『でした』じゃなく、好き『です』なんだぁ)

それがどうした類の好きかまでは分からないが、そっちの方面が正常ならばティアラにも目はあるのかなとルイーズは思った。聞きたかったのはそれだ。そしてもうひとつ。

「そういえばアンタ、確かジンライくんの孫とも一緒に冒険してたのよね。たしか妹の方はエミリィだったっけ? そっちとは何もなかったの?」

「いや、ないですよ。全然、ないです」

妙なキョドり方だった。

(何かはあったわねえ)

ルイーズの女の勘というか、普通に気付けるレベルの動揺だった。

「そりゃ二年も一緒にいてなんとも思わないわけないですし、でもアイツそういうのなると俺のこと避けるみたいで、多分そっちの対象には見られてないと思いますよ」

鈍感系である。鬱陶しいことこの上ない。

「なるほどね」

つまり、面白くなりそうだな……とルイーズは理解した。

「ああ、そうだ」

そう言ってルイーズは直樹の前まで顔を近づける。

「な、なな、なんですか?」

突然の顔のアップに直樹がドギマギする。お姉さんにも興味はシンシンなのである。

「んー、なんでもないわ」

だがルイーズはそう言って顔を離す。面白いものを見れたなぁ……と思いながら。

実はここから少し離れた別荘にいた少女がこちらをガン見していたのである。若い少年とお姉さんのアバンチュールに興味津々な年頃なのだろうとルイーズは理解した。そして今のはちょっと遠目にはルイーズが直樹にキスをしていたように見えただろう。少女は顔を真っ赤にして口をパクパクと動かしながら、こちらを見ていて、ルイーズの「どう?」という視線に気付くとさらに真っ赤になった顔で家の中に戻っていった。

(若いわねえ)

そうルイーズは思った。ようするにデバガメする少女に刺激の強い(ように見せかけた)場面を見せて反応を楽しんでいたのである。

だがさすがにルイーズにも気付けないこともある。まさかデバガメしていた相手が、たった今話していた言葉の中に出ていた少女だったなど、さすがにルイーズにも分からない。ルイーズはジンライの孫の顔など知らないのだから。