軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

灼熱のガーネットと不屈のダイヤモンド

『ついに、ついにベアトリクス様が学園にご入学!!こんな美少女を不幸にはさせないわっ!!私がメイドとなったからにはベアトリクス様の悪役令嬢破滅ルートはなんとしてでも阻止してみせるっ!!!』

よくぞ言った!!我が同志よ!!

絶対ベアトリクスを不幸になんてさせない!!

悪役令嬢なんていなくても、ヒロインたちはヒロインたちで勝手に恋愛してればいいよな。うん。

制服姿のベアトリクスを前に、熱く拳を握りしめるリリアの心の声に内心でそう返す。

前世のじいちゃんごめんな。

テレビのニュースキャスターの「こんにちは」とか「こんばんは」の言葉に「はい、こんにちは」とか「こんばんは」って返すじいちゃんに、ずっと「なにテレビと会話してんだよ」って思ってた。

けど俺、確実にじいちゃんの性質受け継いでたわ。

謎の能力に目覚めてから心の中の独り言がハンパない件。

若干(じゃっかん) 遠い目をしながらも、なんとか表には出さずに堪える。

なにせ表に出せばどうなるかのいい見本がここに居る。

滾(たぎ) るリリアを見つめる通りすがりの使用人たちの目は「今日も変な人だな」と雄弁に物語っていた。

ああは成りたくない。

これぞ反面教師。

有難う、リリア。

君の犠牲は忘れない……!

今日はついにベアトリクスの入学の日だ。

見送りに玄関まで出向き、緊張した様子のベアトリクスを微笑ましく眺める。

「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。ゆっくり息を吐いて、肩の力を抜いて」

綺麗な金髪を撫でながら声を掛ければ、声に従いゆっくりと小さな肩が下がった。

「ベアトリクスを宜しく頼むよ、生徒会長サマ?」

続いて隣に立つガーネストに声を掛ければ頼もしい返事が返ってきた。

さり気無く妹の荷物を持ってやってるところもいいお兄ちゃんっぷりが光ってる、そんなガーネストは二年生にして圧倒的支持率を誇り生徒会長へと任命された。弟が優秀。

そうしてこの場に居るもう一人。

「学年は違うけど、困ったことがあれば僕もガーネストもいつでも手を貸すから大丈夫だよ。ベアトリクス」

二人に並んで立つ美少年。

プラチナブロンドの髪に輝くダイヤモンドのような瞳、髪が幾分短いことと幼いことを除けばその容姿はティハルトにそっくりだった。

ティハルトの弟であり第四王子であるダイアだ。

ダイアの言葉にベアトリクスは頬を染めて礼を告げる。

恋する乙女の表情を目の当たりにしてしまい、心の中で胸を押さえた。

「そろそろ出ないと初日から遅刻してしまうよ?行っておいで、ベアトリクス、ガーネスト、ダイア」

傷心を胸に隠したまま送り出せば、

「行って参りますお兄様」

「行ってきます兄上」

「行ってきますカイザー殿」

と、それぞれ挨拶を返しながら馬車へと乗り込んでいく子供達。

馬車から手を振ってくれる姿ににこやかに手を振り返しながら遠ざかる馬車を見送った。

さて、ここいらで攻略対象者たちの話をしよう。

乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』における攻略対象者は全部で六人。

ちなみにあるかわからない裏隠しルートのキャラは除外する。

まずは現状ベアトリクスともっとも関わりのある人物が二人。

一人目は兄であるガーネスト。

公爵家の嫡男でありゲーム設定では傲慢な俺様キャラだ。異能は『炎』。

次男ながら『無能』でぱっとしない兄に代わって(これ俺のことね)公爵家を継ぐことを定められており、幼い頃から兄と比べられ持ち上げ続けられた結果、他人を思いやれず自分より下の者を見下しがちだった。

容姿は金髪に燃えるようなガーネットの瞳。

正直プレイ中は俺様っぷりが鼻につくキャラだったし、ガーネットのイメージで俺様なら髪色も赤髪にすりゃーいいのにとか思ってた。

だけど今は金髪で全然いいと思うよ!

ガーネストもベアトリクスも天使だし。

だから金髪だったんだねっ!て超納得してる。

俺的には俺様っぷりがひっかかったが、世の女性たちは俺様系強引キャラの人気は根強く、我が家の次女の推しキャラでもあった。

決断力が強く行動力もあり、壁ドン・ 顎(あご) クイ等の強引な仕草も大人気なメインヒーロー。

実際のガーネストは……。

天使である!!

まだ成長途中ながらも、あの男前系の顔立ちに育ちあがることは今の姿を見ても簡単に想像できるイケメン。ゲームと違って傲慢ではないものの、意思の強さや強引さはちょっぴり健在だ。

真っすぐで感情に走ることもあるけど、そんな行動力も魅力の一つだよね。

そしてなにより、めっちゃ懐いてくれてる!!

『無能』な兄を見下し蔑む?

はぁ?

めっちゃキラキラしい瞳を向けて下さいますけど何か?

そしてゲームでは仲の悪かった筈の妹のベアトリクスとも良い関係を築いている。

俺に対する従順な態度とは違ってちょっとぶっきらぼうなところもあるが、なんだかんだでいつも妹のことを気にかけて守ってあげてるし。年子の二人は距離が近いからか喧嘩することもあるけど、それも仲良しの証拠だよね。

そしてその喧嘩の原因ナンバー1の理由を占めるのが俺ですよ。

大好きなお兄ちゃんの取り合いです。

何なの?天使なの?

お兄ちゃん嬉しい!!

二人目は幼馴染でもあるダイア。

正真正銘の王子様であるダイアはゲーム設定では生真面目キャラ。異能は『異能無効』。

こちらも兄と比べられて育つ。ダイア自体非常に優秀なのだが、それを上回る何事においても優秀な第一王子のティハルトと比べられるあまり、自分に自信が持てずにいた。

容姿は兄であるティハルトと瓜二つで、輝くプラチナブロンドにダイヤモンドの瞳。

性格は堅剛・実直で常に努力を忘れないイケメン仕様なものの……麗しい外見と王子というロイヤルな身分にも関わらず甘いシーンが少ない為か女性人気は伸び悩んだようだ。……俺的には高評価だったが。

実際のダイアは……。

ゲームと変わらず堅剛・実直……ややゲームよりいい性格な気もするが……。

ティハルトそっくりの王子様フェイスに真面目な性格で、冷静で慎重な面もあり、友人であるガーネストとは互いを補い合うよい相棒である。

ゲームでは我が家のメンバーとの仲はあまり良くはなかったのだが、俺とティハルトが親友なこともあり幼い頃から付き合いがある。

俺のことも慕ってくれてて、ティハルト同様に敬称は公の場以外禁止されている。 曰(いわ) く、「王となる兄上が敬称なしなのに弟である僕が様付けされるのは可笑しいです」とのこと。

俺にとってもう一人の弟のような存在だ。

そんなダイアはガーネストやベアトリクスとも親しくなった。ゲームの傲慢な俺様でもわがまま姫でもなくうちの子たちは天使だしね。

そして………特筆すべきなによりの変化。

ダイアがまさかのベアトリクスに一目惚れである。

もうね、一瞬でしたね。家に遊びに来て初対面を果たした途端、幼いダイアの顔が真っ赤に染まった。ダイヤモンドの瞳は同じく幼かったベアトリクスへロックオン。

可愛いもんね、ベアトリクス。

堅剛・実直な性格は健在ながら、ゲームと違い兄に劣等感を抱き自信がなさげだった姿とも、真面目で甘さとは縁遠かった姿とも違い、好意を全面的に露わにするダイアにベアトリクスも恋に堕ちたらしい。

実に仲睦まじいことである。

お兄ちゃん哀しい!!

別にダイアに不満はない。

むしろ可愛い妹を預けるには適任の相手だとも思っている。俺を尊敬してくれて弟妹も大事にしてくれるし、身分も能力もロイヤルだし。

だけどそれとこれとは話が別だ。

まさかゲーム開始前に早々に可愛い妹が恋に堕ちるとは思わなんだ!!

むしろ一分、一秒でもその日が遅くあることを願ってたのに……。

可愛い妹の倖せを願いつつも、イチャつきを見せつけられる度に、お兄ちゃんのハートは瀕死である。

お願いだからまだお嫁に行かないで!!