軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

陰謀は動き出す

そして隠しルートとは違い、全キャラ共通の避けられない道筋がある。

それが以前にも少し触れたジャウハラとの関係悪化だ。

大筋はこうだ。

気候の暖かいジャウハラではここ数年、日照りによる作物の不作が続いている。そして折り悪くもそんな時に病が流行る。

自然、国民たちの間には悲観や 鬱屈(うっくつ) が溜まっていた。

そんな時にジュエラルにて幾つかの傷害事件が起こる。女性や幼い子供たちが傷つけられ、そしてその犯人たちは一様に褐色の肌をしていた。

アレクサンドラやシリウス 然(しか) り、ジャウハラの民は褐色の肌をした人間が多い。これは暑い地域特有の種族的なものだろう。そしてジャウハラの民は前世でいうならばアラビアンナイト的なイメージで服装なども独特だ。

つまり、色白で西洋的な的な雰囲気の我が国では非常に目立つ。

そしてそんな中、誰かが言った。

「これはジャウハラの連中の仕業だ!!!奴らには魔人の血が流れてる!!俺達を同じ人とは思っていないんだ!!」

完全なる暴論だ。ジャウハラの全ての人間に魔人の血が流れているわけではないし、むしろアレクサンドラのように魔人とのハーフで魔術を扱える人間というのは現在は極めて少ない。

それにそもそも、魔人は脅威かというとそうでもないのだ。

魔人=悪というイメージが湧きがちだが、意外にもこの世界の魔人はそんなこともない。人を喰らったりもしないし、特別狂暴なわけでもない。

魔術という大きな力を有し、人とは異なる長い寿命による深い知識を有する 故(ゆえ) に強気な者は多いし、人の常識と異なる 故(ゆえ) に自由な性格の者も多い。

だがそれだけだ。中には残虐な一面を持つ者も居る、だけどそんなことは人間だって同じで、狂暴な性格の者も居れば、理知的な性格の者、大人しい者、様々な魔人が存在する。

そもそも魔人を忌避しているのなら、魔人の血を引き継ぐ王族が居るジャウハラと友好関係など築けていないし、アレクサンドラがこの国で受け入れられている筈もない。

だが、人は知らないことに恐怖を覚える生き物だ。

普段は平気でも、一度凶事が起これば不安や恐れは鎌首を 擡(もた) げる。

そして不安や恐れは伝染し、商人たちはジャウハラとの取引を控えるようになる。ただでさえ不作に困窮していたジャウハラだ、そんなことになれば当然糧を失い貧困者が出た。

飢餓と病。

嘆きと、絶望と、 慟哭(どうこく) と……全てが混ざった行き場のない怒り。

魔人の血を継いでいるからとあらぬ忌避に、ジャウハラの国民の怒りはジュエラルへと向かう。

その怒りがジュエラルの国民へと向かえば、傷つけられた者たちはまた怒りと憎しみを募らせ……その繰り返し。

これが共通ルートだ。

ヒロインや攻略対象者たちの活躍により、問題が解決し友好を取り戻したり、国交の悪化に留まるパターン、戦争に発展するなど様々な展開が繰り広げられる。

……が、実はこの一件全て仕組まれたものなのだ。

フラストレーションの大元になった日照りによる作物の不作や病はさすがに自然発生的なものだろうが、その後に起こった傷害事件。事件そのものも、それをジャウハラの仕業だと煽ったのも黒幕が居る。

そしてその背後に居るのが、アンジェスの狂信者たちだ。

奴らの狙いは国に混乱を招くこと。

狙われたのはジュエラルやジャウハラだけでなく、アイリーンの母国であるラトゥミナや他国もだった。国力の低下を狙って大小の問題を起こしていた中で、不作などにより国民の不満が蓄積していたジャウハラに白羽の矢が立ったというのが真相だ。

奴らはアンジェスの末裔を手に入れることと同時に、帝国の建国の邪魔になるであろう他国の国力低下を狙って秘密裏に活動を続けていた。

実にはた迷惑な話である。

そしてそんな大規模な犯罪を行うには当然、資金が必要となってくる。

その資金源の一端が、このイミテーションの宝石たちだ。

たしか…………ゲームではヒロインの家族となった貴族が偽物を掴まされて、ヒロインが身につけていたそれを攻略対象者が一目で見抜くんだった。

スゲーな。鑑定もしないで一目で偽物見抜くとか……。

俺も今世では高価な宝石なんて見慣れてるし、あからさまに下手な偽物ならわかるかもしれないが……コレを一発で見抜く自信ないわー。

そんなことを思いつつ摘んだルビーをまじまじと見つめる。

うん、無理。

いっそ鑑定士とかなればいいんじゃね?

ダイアとかサフィアはまだわかるけど、メラルドも見抜けるってのが解せぬ。

あの子絶対宝石とか興味ないだろ?あれか、動物的カンとかそういったものだろうか?

ジストルートの魔族の不法取引、あれの資金も実は奴らへと流れていたことが発覚する。

俺はそのことをゲームの知識として知っていたから、前もってアランにお願いをしていた。彼は大手商会の次男坊だ、商品の流通などその道には詳しい。

なのでイミテーションの宝石や魔獣の不法売買などの噂を手に入れたら教えて欲しい、と伝えてあった。

実はこの件、同じく転生者でありゲームのストーリーを知っている皇太后様も一枚噛んでいたりする。なにせ未来を知っているのだから、ただ相手の出方を待つ必要はない。

宝石や魔獣を始め、違法な取引の洗い出しは以前から進めているし、病に対する薬の研究なんかも着々と進められている。

もっとも皇太后様も転生者であることはオフレコなので、あくまで国に 蔓延(はびこ) る違法犯罪の撤去や万が一の為の備えとしての薬剤の研究を名目としてではあるが。

……とはいえ、今までは 殆(ほとん) ど成果がなかった。

さすがに王族や公爵である俺らのところに偽物を売りつけようとする商人が訪れないのはともかくとして、市場にもほぼイミテーションの宝石などは出回っていなかった。

魔獣の件に関してはそもそも裏ルートの取引だろうし、ジストが出てくる前に下手に動いて展開が全く読めなくなるのはそれはそれで怖い。

病に関する薬にしても、当の病の症状が詳しく出ていなかったため特効薬を作るのは不可能だ。

結果、出来ることはそれらが起こった時に迅速に対応出来るよう、様々な研究や人手を確保するぐらいしか打つ手がなかった。

そしてついに こ(・) れ(・) らが出回りはじめた。急速かつ大量に。

事態が動き出したと見て間違いないだろう。

きらきらと美しく輝く幾つもの宝石たちを俺は無言で眺め続けた。