軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガストの憂鬱

「はぁ~。熊のまどろみ亭は旨い事やりやがったな」

「父ちゃんどうしたのけ?」

「ラーラ、お前、何ていったか・・・・。王都から来ていたマノロんところの姪、仲が良かったよな?」

「ん?アウレリアのこと?」

「ん。そんな名前だったなぁ」

「で、アウレリアがどべこたの?もうポンタ村さはいねし?来たど思ったきやすぐ王都へ戻る事サなたんだし」

ラーラが他の村から嫁に来た母親の訛りをまんま引き継いだ口調で答えた。

「その子は大公様に見初められたって聞いたが」

「うん。魔法のスキルを持ってたみてで、王都の学園さ通わせてもきやえるきやしいし。いいなぁ~。羨ましいなぁ~」

「まぁた、お前は。王都なんてお前みたいな田舎者は騙されて身ぐるみ剥がされて落ちて行くだけだそ。しかもそんなに方言が強くて、一言でもしゃべりゃぁ、田舎モンだってすぐバレらぁな。そんな事より、花嫁修業でもして、良い所に嫁に行ける様に勉強しろ」

「えええ~~~」

ラーラはまたこの話題かぁとばかりにウンザリした顔を隠しもせずに背を向けた。

「しかし、魔法ってどんな魔法スキルを授かったんだ?」

「なんがね、料理さ関する魔法きやしいし」

「料理に関する魔法ぉ?」

そんな事は聞いた事がない。

そうか、だからあんな面白いもんを作って、熊のまどろみ亭を盛り立てたのか?

しかし、どんな魔法なんだ?料理関係の魔法?

パイだってパンの様なモノだろう?なら村でたった一軒のウチのパン屋で売るのが当たり前だろう?

くっそぉ!

俺だって、熊のまどろみ亭のヒットメニューのパイをウチでも作ってみようと奮闘してみた。

しかし、ベチャベチャのパイというかパンしか作れなかった。

焼きあがったばかりの時は底がちょっとべっちゃりしてるなっていう程度なのだが、それが時間を置けば置く程、水分が滲みだし、客からのクレームが後を絶たない。

確か天火を貸していた時、窯に入れる直前に成形しないとベチャベチャになると言っていたので、俺も成形は焼く直前にしている。

にも関わらず、底はいつもベチャベチャ。

中に入れる具の水分を絞ったら良いのかと試作品を作ってみたら、パサパサで食べれた物ではなかった。

ウチのラーラが学校でギジェルモの娘と一緒のグループって言ってたから、何か情報を引き出せないかと思ってみたが、都会へ行く事しか考えてないウチの娘では大事な事を聞き出すだけの技量を持っていなかった様だ。

まぁ、俺とカミさんの子だからそれもしょうがないと思う反面、例の子供からなんとかヒントを貰ってウチでもパイなるモノを販売できないかと息巻いてみたが、何ともならなかった。

未だに、パイは熊のまどろみ亭の独壇場だ。

パイ生地とかいうのの作り方が分からないので、いつものパン生地で作ってみた。

パンは多少固いが、パイよりも食べ応えがあるはずだ。

にも関わらず、客は熊のまどろみ亭のパイを買いたがる。

俺もウチの親戚に頼んで、あそこのパイを買って来てもらって研究はしてみたから分かるが、あの生地はパンとは全く違う。

サクサクで濃い旨味がある。

パイがダメなら、 一時(いっとき) 熊のまどろみ亭で売ってたサンドイッチでもいい。

あの時のパンはウチの普通のパンを使っていたから、ウチでも作れるはずだ。

そう思って作ってみたが、同じ味のものは作れなかった。

多分あれは何かの調味料を使っていると思うんだが・・・・。

でも、その調味料の正体が分からない。

ウチでもパンにハムと塩を塗した野菜を挟んだモノを売り出してはみたが、客は熊のまどろみ亭のサンドイッチと同じモノだと思って買って行き、食べると全然違うモノだと分かりガッカリする様だった。

そこで名前を変えて売り続けてみたものの、この村に来る客はまずあそこのパイを買いたがり、パイが買えない時だけサンドイッチを買って行く客がチラホラ。

手軽に持ち運べるってところは一緒なんだから、それなりに売れても良いとは思うのだが、最近あそこのパイは売る個数を増やしてるからなぁ。ウチのサンドイッチの売れ行きは鳴かず飛ばずだ。

「父ちゃん、うちが特さアウレリアど仲が良い訳だばなぐって、彼女ど仲が良いのはパメラだし~」

「ん?何で仲良くしなかったんだ?」

「え?仲が悪り訳だばねけど、うちの興味のある事さ興味ねみてだったし、年下だし、パメラやランディがべったりだったがきやうちが入り込む隙間なんてながたし・・・・」

「はぁ・・・」

「ため息吐ぐ様な事かな?」

もう何も言う気にならず、俺は明日の営業に向けて、いつもの様に早い時間に寝床に入った。

しかし・・・、なんとかラーラから例の子に連絡を取らせる様にしてみる方法はないだろうか。

そう思いながら、朝早くからの仕事で疲れ切った体は、ベッドに横たわると同時に意識をとどめておく事は出来なかった。

アウレリアから何らかの便宜を得る事はできないのだが、自分の身内が近い将来彼女に多大な迷惑を掛けてしまう事をガストはまだ知らない。