作品タイトル不明
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「みなさん!お待たせいたしました。これより料理コンテストの第一試合を開始します!」
「「「「「おおおおーーー!」」」」」
耳をつんざくような大歓声が、大聖堂前の広場、その舞台前に集まった群衆から沸き上がった。
広場の両端に設置されている細長い舞台2列の後ろと、司会者が立っている大聖堂の正門前の台、その後ろにもある大型スクリーンには、男性司会者の顔が写っている。
ペペん所の所属タレントの一人だ。テーマパーク中心に顔が知られている人気者だ。
ここの広場だけで撮影機も映写機も全部で5台用意されているみたい。
流石、王家が主催するイベントだけあって、金に糸目は付けていない。
「この料理コンテストでは1対1で対決する試合をデュエルと呼びます。第一試合はデュエルになります。では、第一試合のルールを説明しますっ!」
それまで歓声などで騒がしかった広場が急に静かになった。
まだ、周りの雰囲気が変わったことに気付かない間抜けな聴衆は、周りの人から突かれたり、声を掛けられて、直ぐに黙った。
広場がある程度静かになるまでじっと待っていた男性司会者が徐に口を開いた。
「このデュエルでは、隣り合った2テーブル間で競い合います。この広場には40のテーブルがあり、第一試合が終了すると、この広場での勝者は20名になります。第二試合にコマを進めるのは、他の広場の勝者21名と併せて41名になります」
貴族家の料理長32名と国内の食堂等が50件、計82チームが出場していると事前に参加者は聞かされている。
今回のデュエル、私の相手が民間の宿屋で良かった。
貴族家の料理長とかだと、変に気を使っちゃうからね。
まぁ、もちろん、勝ちを狙っていくのに変わりはないけど。
「参加者には規定の食材2品を使用して、一皿を作ってもらいます」
「「「「「ごくり」」」」」
聴衆も参加者も一応に司会者の次の言葉を待った。
「今回のお題は、鯉とパースニップです!」
「「「「パースニップゥゥ?」」」」
参加者も聴衆も多くの人がパースニップという食材を知らないようだ。
中には少数だが、したり顔になっている参加者もいた。彼らはパースニップが何かを知っているのだろう。
「パースニップを知っている人は我が国では少ないでしょう。北端の一部の地域でしか採れない貴重な食材です。知らない食材が含まれているからこそ、難しいお題となりますっ。2つの課題食材以外で使いたい食材は、舞台の両端にある食材置き場から参加者自身で選んでテーブルまでまで運んでください。運んで良い量は、みなさんの調理台の上に載せてある籐かご2つ分までです!」
各参加者の前には、横幅1メートルちょっとしかないテーブルがあり、その上には、鍋と平鍋、ナイフそして空の籐かごが2つ並べられている。
テーブルの下、足元には水が入った甕と調理で出るごみを捨てるための木箱。
テーブルの横には一口の薪を使うコンロがあり、これが参加者が使用できる調理道具の全てだ。
ただ、ナイフに関しては慣れたものがよければ持参可なので、私は複数の包丁を持って来ている。
「食材置き場は2列ある舞台の両脇、計4か所あります」
司会者の言葉と同時にスタッフが、濃い色の布が被せてあった台から、その布をはぎ取った。
「早い者勝ちになります。1か所の食材置き場で無くなった食材を、別の食材置き場で手に入れることは可能です。ただしっ!」
既にアシスタントを連れて、一番近い食材置き場へ向かおうとしていた何人かの参加者がその司会者の言葉でぴたりと止まった。
「食材置き場へ行くことのできる時間は決められています。私が今から笛を吹きます。これが開始の合図
となり、15分間で食材置き場から必要な食材を持って、自分に割り当てられた調理台に戻ってください。15分を過ぎると私が再び笛を吹きます。その時、調理台の前にいないとデュエル失格になります」
司会者がわざとらしくゆっくりと笛を口元に持って行くと、参加者の体に力が入る。
ダッシュで他の参加者に差をつけるつもりなのだ。
「ああ、もう二つ」
口元まで近づけていた笛を下して、司会者がニヤリと笑う。
「「「「あああぁぁぁ・・・・」」」」
体に不自然なほど力を込めていた参加者たちからブーイングが起こる。
「まぁまぁ、もう二つ、大事な事を言い忘れていたんですよ。いいですか?皆さん。態と他の参加者の足を引っかける、押し倒す、使いもしない食材まで籐かごに入れ、他の参加者の妨害をした者はその段階で失格になりますから、気を付けてくださいね。それともう一つ!調味料や皿も籐かごに入れないと、塩さえ調理台にはありませんからね。ではっ!」
ピ―――――――。
高らかに響いた笛の音。
と同時に食材置き場へ殺到する参加者。
各調理台に素早く鯉とパースニップを載せた皿を配る係たち。
私はパースニップという食材を知らない。
だから、まずはパースニップを鑑定してみないと、どんな料理にするかを決められない。
男性司会者が言った最後の注意事項には重大なルールが含まれていた。
使わない食材を調理台に持って来ると失格。
出来上がった料理を載せる皿は、料理に合ったものでなければ、鍋のまま提出しなければならなくなる。
これは意外と重要なのだ。
だって、スープを作ったのに、平皿に注ぐとなると殆ど盛ることができない。
反対に鯉のステーキを作ったのに、深いスープ皿に盛ると、食べづらくなる。
私は混雑する階段へ進まず、調理台の前に佇んでいる。
早く動き出さない私にハラハラしているナスカを横に、まずは自分のテーブルの上に載せられたパースニップに視線を合わせ鑑定した。
だって、どんな食材なのか知らないと必要な食材を取ってこれないものね。
【パースニップ】
北部地域で栽培されている野菜。形状は人参に煮ているが、加熱すると甘味が強くなり、じゃがいものようにホクホク、ナッツのような香ばしさを出す。皮は硬め。バターやオイルと相性が良く、肉料理に良く合う。
なるほど!甘くなるのね。なら、今度は鯉を鑑定しないと。
だって、泥抜きがちゃんとされているかどうかは味にとっても関係するからね。
【鯉】
国中から集められた中の一匹。1週間の泥抜きが済んでいる。川魚。栄養価が高く、滋養強壮に活用できる食材。癖が強く、味付けには注意を要する。牛乳などに漬けて臭みを取ることや、香草と一緒に料理推奨。
ああ、良かった。泥抜きが済んでいるのなら、料理できる!
はっと、食材置き場を見ると凄い人数だ。
だけど、そこへ続く階段はもう空いている。
私は四か所ある食材置き場で一番人が少ないところを目指して、ナスカと一緒に向かった。